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「外を知らない」は通用しない時代に。週1回の他流試合が、経営者育成にもたらすものとは?

変化が求められる時代において、組織の中核を担うミドルマネジメント層への期待が高まっています。そうした中で業務はますます忙しくなり、「内部の業務に集中する時間が増え、外部の情報やつながりに目を向ける機会が減っている」という声も聞こえてきます。

そこでローンディールでは、大企業のミドルマネジメント層に「他流試合」を提供する、週1回のオンラインプログラム「outsight(アウトサイト)」を展開。登壇したベンチャー企業が提示した事業課題に対して、ミドルマネジメント層が解決策を考え提案するセッションの場が設けられています。そこでの議論を通じて、ベンチャー経営者だけでなくファシリテーターや他社の参加者と“他流試合”を経験できるのが特徴のひとつで、これまで50社以上に導入いただいています。

今回は、「outsight」を2023年10月から導入を実施している、パナソニック株式会社で主に白物家電の開発・製造を行う社内カンパニー:くらしアプライアンス社DEI・組織開発室 室長( ※ 取材当時)の呉怡(ウィニー・ウー)さんと、「outsight」に参加した森村淳(もりむら・じゅん)さんに、経験したからこそわかる他流試合の意義について、お話を伺いました。


既存の「幹部育成プログラム」と連携させることで、経営者視点の強化になる


――まずは「outsight」の導入を決めた経緯を聞かせていただけますか。

ウィニー:背景としては、当社で2022年の秋に「ネクストキャビネット」という幹部開発プログラムを立ち上げたのですが、こちらと連動できないかなと考えたからです。

これまで、幹部育成を行う中で、「候補者に経営者視点が足りない」「育成計画の効果を測れていない」「意思決定層の多様化が進んでいない」という3つの課題がありました。「ネクストキャビネット」を通じて、これらの課題を解決しようと、課長職の社員を対象に、1年間、経営者としての思考、アクションする練習の場を提供しています。

例えば、社長や役員が議論する戦略会議などに参加してもらったり、経営にインパクトを与えるような施策を考え提案したりする経験を積んでもらう施策を行いました。

Profile 呉 怡さん
中国生まれ。名古屋大学大学院経済学研究科卒業。2004年(株)東芝で人材・組織開発・多様性推進を担当。同社の外国籍社員が活躍できる組織づくりや働き方改革、キャリア自律支援仕組みの導入に注力。2022年パナソニック(株)に入社し、くらしアプライアンス社の新人事制度の立ち上げに携わりながら、DEI推進を主担当。2023年DEI推進室長を経て、2024年より現職。

――そうした中で、「outsight」に着目したのはなぜでしょうか。

ウィニー:参加者の方にはウォーミングアップとして、事前にコーチングプログラムを受けていただいたのですが、経営者視点を身につけるためにはそれだけでは足りず、もっと外に目を向ける機会も必要だと感じたからです。

「outsight」なら、ベンチャー企業の経営者や、他社の新しい考えに触れられる良い機会になると思い、導入を決めました。

――課題とプログラムの目指す先がマッチしたのですね。

ウィニー:「本当は社外の越境経験を提供したいけれど、優秀な幹部候補生は、忙しくて長期間現場を離れづらい」というジレンマがありました。その点、「outsight」は週1回のオンラインプログラムで越境経験ができるので、業務とのバランスという観点でちょうど良いなと思いました。

――森村さんは参加者として「outsight」に参加したわけですが、どのようなことを期待していましたか。

森村:私は2006年にパナソニックに入社しましたが、同じ会社で働き続けているので、30代に入った頃から「自分の考えが社外でも通用するのか」といった課題意識を抱くようになっていました。ですので、他社の方々と交流しながら、自分の力が社外でも通用するのかを確かめるには良い機会になると感じました。これまで社外との接点も少なかったですし。

ウィニー:社外との接点の少なさは、社内全体の課題と感じています。規模が大きい組織だと社内に知見が豊富で優秀な人材も多いので、さまざまな事業を自社だけで進められてしまうところがあります。でも、これからの時代、生活者のニーズがますます多様化していく中で、すべて社内で対応できるかというとそうではないのですよね。

森村:ウィニーさんの言う通りで、大企業だと過去の成功体験があることで外に目を向けられず、社外に飛び出せない風土が少なからずあるのでは。「outsight」がそこを変えるきっかけの1つになればいいなと思いました。

Profile 森村 淳さん
2006年に松下電工株式会社(当時)に入社し、これまでに住設建材や家電製品の品質管理を担当。2018年にインドネシアにある家電製造会社の子会社に出向し、品質管理を担当しながら、新規事業責任者としてウォーターディスペンサーの立ち上げにも注力。2023年に帰任し、現在は掃除機事業の事業企画を担当。

ベンチャー経営者、他社の参加者、ファシリテーター。多様なメンバーと「他流試合」でわかった社外とつながる価値


――森村さんはある意味、このような他流試合は初めてだったと思いますが、森村さんが出したアイデアがベンチャー経営者の方からとても評価されたと伺いました。

森村:ありがとうございます。初めてのセッションで出したアイデアに対して、お題を出された経営者の方が、「考えたことがない案なので、実行したい」と評価してくださいました。自分がちゃんと社外で通用するか不安な中での最初の提案でしたが、自信につながりました。

今回、「事業の認知度を上げる施策を考える」というお題でしたが、「地方のローカルCMを活用する」という案を提示したのです。CMというと莫大な広告費がかかる印象がありますが、実はローカルCMのコストは低いという話を聞いたことがあったので、いろいろ調べて提案したところ、ファシリテーターの方からも「一般的な発想の逆をついたアイデア」と評価していただきました。

3ヶ月間の参加でしたが、以降、「逆目(順目の逆)の発想」を意識したおかげで、他のベンチャーへの提案においても高評価をいただいた結果、年間の成績優秀者のひとりに選んでもらうことができました。

――それはすごいですね。

森村:一方、各セッションを重ねて他社の方々のアイデアに触れれば触れるほど、自分の引き出しはまだまだ足りないと思いました。発想の引き出しはもちろんですが、どれだけ情報を持っているか、多様な経験をしているかということも大事になってくる。

だからこそ“越境を日常化”させて、異なる分野の方々に触れる機会を継続的に作っていくことの大切さを改めて実感しました。もっと頑張らないといけない、という決意にもつながりました。

一度に、ベンチャー経営者、他社の参加者、そしてファシリテーターという様々な立場の方の意見を聞いたり議論したりすることができて、とても有意義でした。

――ウィニーさんは、森村さんのこうした変化をどのように感じましたか。

ウィニー:森村さんをはじめ、参加者の多くが社外に出て、知見を広げる重要性を実感され、「outsight」が終わった後も、自ら社外に働きかけているようです。森村さんもかなり積極的に連絡を取っているそうですね。

森村:そうですね。1ヶ月で6社くらいとコンタクトを取りました。幹部開発プログラムの取り組みの一環で、「愛される商品を生み出し続ける仕組み・風土づくり」をテーマに新たな施策を模索しているのですが、社外には成功している企業がたくさんあるので、お話を伺って成功のヒントを得たいと思っています。

このテーマは私の所属するランドリー・クリーナー事業部の課題でもあるので、本業にもいい影響を与えるのではないかと感じています。

これからは他社とどんどんつながる時代。
社員一人ひとりが外に発信していくことが大事


――改めて「outsight」の成果は、どのように受け止めていますか?

ウィニー:森村さんをはじめ、皆さん、視野の広がりや社外との接点づくりにつながっているようですので、もともと期待していた他流試合の意義はあったと感じています。今後、事業や経営にインパクトを与えていくことを期待したいです。

森村:個人的な反省点としては、「outsight」で出会った方々ともっとつながりを作ればよかったと思いますが、「outsight」に参加していなかったら、そもそも社外に出るという発想がなかったですし、あったとしても「忙しくて時間がない」と避けていたのではないかと思います。

今は少しでも多くの会社にヒアリングしたいというマインドになっているので、参加した意義は大きいですね。

――週1回の参加は、負担ではありませんでしたか?

森村:「自社での経験しかない」という課題意識から、自分に必要なことだと考えていたので、自分の場合は「忙しいのに大変」というマインドにはならなかったです。

ウィニー:人によっては「outsight」が意義のあるものとわかっていても、たくさんの業務を抱えていて集中できないことや、家事や子育てなどで時間が取れないという人もいるでしょう。ただ、経営者は常に自分が持つリソースの配置や配分、優先順位などを考えて動かしていくものですので、経営者視点を得るためにも、時間管理の力を鍛えてほしいと思います。

森村:ウィニーさんの考え方には大賛成で、自身の成長のために必要な時間は見つけ出していくものなのかなと思います。

――「outsight」の経験を活かして、今後やっていきたいことはありますか?

森村:とある参加者が、「NewsPicksに積極的にコメントをつけ始めた。最初はレスポンスがなかったけど、繰り返すことで返信をもらえるようになった」という話をしていたのです。外に目を向けるだけではなく、自分の意見もどんどん出していくことでさらに成長が加速するのではないかと感じ、私も実践したいと思っています。

ウィニー:「outsight」参加者の方から様々な感想を聞きました。「自分自身をうまく出せるかがすごく不安で、毎回顔がこわばっていた」という話もあれば、一方で、「ワクワクしたし、参加者同士で刺激し合ってつながりもできた」という方も。両極端のように思えますが、どちらも大切な経験だと思うので、私も怖いと感じることにもチャレンジしていきたいと思うようになりました。

――ウィニーさんも参加者から刺激を受けたのですね。

ウィニー:パナソニックは「社会への貢献」を理念に掲げているのですが、ひとつの会社にいるだけでは限界があり、他社とのつながりからイノベーションを起こしていく必要があります。そのためにも、社員一人ひとりが外に対して知見を発信し、社会に変化をもたらすような活動をしていけると良いと考えています。

まずは私たち人事の立場から経営者視点を育むような施策を仕掛け続け、活発化させていきたいです。

Fin


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ミドルマネジメントを"他流試合"で目覚めさせる「outsight」

outsightは、様々なベンチャー経営者が抱える課題に対して解決策を議論する週90分のオンラインプログラムです。詳しくは以下よりご覧ください。

協力:パナソニック株式会社 
インタビュアー:有竹亮介
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/

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