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【第3章 売るって甘くない・・・】「売る」って甘くない! 〜「排泄予測デバイス」と奮闘する1年3ヶ月の日々〜

<今回のストーリー>
「移籍者たちの挑戦」シリーズでは、大企業で働く社員が「レンタル移籍」を通じて、ベンチャー企業で学び、奮闘し、そして挑戦した日々の出来事をストーリーでお届けします。
今回の主人公は、NTT西日本から、排泄予測デバイス「DFree」を開発・販売しているベンチャー企業・トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社に移籍した新田一樹さん。新田さんは2017年7月から移籍を開始し、1年3ヶ月の移籍を終えて2018年10月に帰って来ました。そんな新田さんのストーリーを全4回でお届けしていきます。

<過去記事>
第1章 「 転職、それとも島流し?」
第2章 「 社長に直訴」

ー仮説はすぐに覆る

発売が7月に迫った3月頃。
新田は開発を進めながらも、売り方も同時に考えていかなければならなかった。

しかも、まだプロダクトがしっかり決まっているわけではない。
引き続きトライアル&エラーを続けており、かっちりと決め過ぎず、どういう方向性になっても素早く対処できるように準備しながら進めていた。

実際に、大きく方向転換せざるをえないことも起こった。
例えば、A・B案があり、社内ではダントツでA案が良いだろうという仮説のもと進めていたところ、モニター検証の結果、B案だったこともある。

仮説はすぐに覆される。
手間はかかるが、やはり検証は必要不可欠だと思った。

デスクで「検証結果」をまとめる新田

ー答えは現場にある!

この頃の新田は、だいぶモニターの本音が聞き出せるようになっていた。

例えば、介護する家族側に、利用したい動機や利用によるメリットをヒアリングしたとしても、本当は「自分の時間が欲しいから……」「夜まで介護したくないから……」という、自分が楽になりたいという本音があっても、それはいけないことだという概念があり、他人にはなかなか話してくれない。

新田は、何回も通って関係性を築いていった。
商品のビジョンを伝えつつ、共感することで本音を言ってもらえるようになった。

1人のお客さんに10回以上会いに行き、ずっと話し相手になることもあった。そうすると、普段考えていることやその人の生活がイメージできるようになる。「平日はどう過ごしている? 土日は何をしている? 外出中はどこに行く?」など。

移籍初期にヒアリングした時は、どこまで触れていいのかわからなかったが、今では臆せず聞くことができる、自分の思ったことを伝えることもできる。「聞かないと分からない、言わないと伝わらない」、そのことに改めて気づいたからだ。

何度も改良したプロダクトは、ようやく多くのモニターから合格ラインの評価を得ることができた。1歩ずつではあるが、形になりつつあり、サービスローンチが"不安"から"楽しみ"に変わってきた。
春の訪れとともに、新田の努力も開花しようとしていた。

そして発売を3ヶ月後に控えた4月、3ヶ月間の移籍延長も決まった。
当初は6月末までの1年間の予定だったが、このままでは発売前に終了してしまう。
新田の方から延長を打診した。中途半端で終わりたくなかった。

ー誰も正解を知らない! だからこそ大切なことは……

プロダクトがある程度固まり、一番肝となるプライシングとビジネスモデルを決めるフェーズになった。

そこで気づいたことがある。
料金やビジネスモデルに関しては、社長の中西であっても、経験豊富なスタッフであっても、答えを持っているわけでなく、やってみてから考えるしかないということだった。

中西が「俺もわからんねん!」と言っていたのが印象的だった。
NTT西日本では、「上司は知っていて当然でしょ?」と思っていた。
けれど、決してそうではなく、答えを知らないからこそ、判断材料をたくさん集めているのだ、と理解できた。

今回のような、はじめての事業開発は特に分からないことだらけ。ある程度の情報で決断せざるをえない。
だからこそ、いかに良い判断材料を持ってこられるか、その辺りが経営者のセンスなのだろうと感じた。

ー予約は順調! しかし……

7月の発売開始に向けて、まずは6月に予約サイトをオープンする流れになっていた。

そこで、製品の準備をしながらも各所へのリリース、バックオフィスの体制を整えるなど、4月以降も引き続き慌ただしい日々を送っていた。

商品名は「DFree Personal」に決まった。

そして遂にやってきた、予約サイトオープンの前夜。
メンバーが「DFree Personal」の0歳の誕生日ケーキを買ってきてくれるというサプライズも。新田は、今まで一緒にやってきた開発メンバー、営業メンバーの想いに胸が熱くなった。

予約の反響は大きかった。
NTT西日本でも、サービスのリリースに携わったことがあるが、「これ、本当にお客さんに届くのかな? 誰のためなんだろう?」という疑問を抱きながら、どこか客観的に携わっていた。
というもの、ユーザーの顔が見えていなかったからだ。

今回は違う。
困っている人たちに触れ、彼らに届けるという意義があった。

ーニーズはあるのに・・・商品を売る難しさ

予約は、以前から待ち望んでいたユーザーがいたために動きは良かった。

そして7月、いよいよ発売開始。
しかし発売後、商品を売る難しさに苦しむことになった。

リリースに対しては、各種メディアからまずまずの反応があった。
ヒアリングを通じてニーズがある、困っている人がたくさんいることも分かっていた。

しかし、本来必要としている人のところに情報が届いていないのかも、そう思った。

そこで、出稿媒体を検討することになった。
地方新聞の広告、Google、Facebook広告、あらゆるメディアを試した。
しかし、紙は反響が期待ほどはなく、ネット広告は「表示させない」を押されてしまうこともあった。

媒体が違うのか、クリエイティブが違うのか、それともメッセージが違うのか……。商品のショッピングカートも自社のものではないため、ユーザーの動向が検証できない。何のために買われているのかわからないでいた。

様々なアプローチをするも成果が出ないまま、「どういうメッセージを、どういう層に伝えれば響くのか?」 ただそれに悩まされた1ヶ月だった。

ー原点に戻って、直接聞きに行く!

そこで、まずはできることとして、購入者にサポートがてら電話をしてヒアリングすることだった。

それによって、どういう人がどういう理由で購入しているかは分類ができたものの、電話では話しづらいのか、なかなか本音をしゃべってくれない。

「どうしたらいいんだろう……」
悶々としていた時、ローンディールのメンター細野との面談があった。
そこでの細野の言葉にハッとした。

「つくり込む時は散々ユーザーに寄り添ったのに、販売の時は直接聞きに行かないんですか? 現場を見に行ったらどうですか?」

その通りだと思った。
あれだけ、ユーザーの感覚を知っていることが自分のスペシャリティで、その重要性を知っていたのに、施策を急ぐばかりに本来すべきことを見失っていた。

そこで新田は、再び自分の足で調査することにした。
認知調査や商品の告知も兼ねて、まずは巣鴨に行ってみた。

その時立てていた(販売数が伸びない理由の)仮説は、「認知の低さと料金の高さが原因。もっとリーズナブルだったら利用者も増えるのでは?」というもの。

そこで街行く人に話を聞いて回った。
「知っていますか? どう思いますか?」

しかし反応はほぼ同じで、「要りません」とピシャリと言われてしまう。
個人のセンシティブな課題を扱う商材なので対面で売ることは難しく、アクティブなシニア層には正面からアプローチしてもダメだと改めて思った。

購入者へ電話でヒアリングした結果、当初想定していた仮説からさほどずれていないことが分かった。それでも誰にどう伝えればもっと売れるのか分からない、その現状に焦りを感じる。

検証を繰り返す日を送りながら、日々「どうしたらもっと売れるか」を考え続け、悶々としていた。

移籍終了まであと1ヶ月。
何をやってもうまくいかず、閉塞感しかなかった。


最終章「事業開発で本当に大切なこと…」へ続く

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協力:NTT西日本、トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
storyteller:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp

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