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【仲山進也さんのはみだしのすすめ】“自分のプレー”を社外でもできるようになろう

勤怠自由!? 楽天で唯一のフェロー風正社員。クラフトビールメーカーのエア社員。Jリーグクラブとプロ契約。それでいて経営者。ツッコミどころ満載の働き方をしている仲山進也さん。仲山さんは、『「組織のネコ」という働き方』 『組織にいながら、自由に働く。』をはじめとする著者でもあります。今年春には、サッカーの世界観をビジネスに置き換えた『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方』が出版され、話題になりました。

「4th place lab」 では、そんな超自由すぎるかつ、ユニークな働き方をする”はみだしの先輩”である仲山さんをお招きし、トークイベントを開催。ずばり、「どうしたら仲山さんみたいな働き方ができるようになるのか?」を伺ってみました!

参加者からは「自由に働く具体的なステップが分かった」「社外で活動するハードルが下がった」「もっと自分の強みを生かして、行動してみようと思った」などという感想が続々と寄せられました。そこで今回、イベントの一部をレポートでご紹介! みなさんのはみだす一歩になれば嬉しいです。

ー 仲山さん、改めて「エア社員」って何ですか。それって私たちもなれるんですか?


小林:仲山さんのプロフィールを拝見すると、気になるキーワードがありすぎるんですが(笑)、ヤッホーブルーイングの“エア社員”ってなんでしょうか。会場の皆さんからも「気になる」とコメントが!

仲山:いわゆる業務委託での仕事になるんですが名刺もあって、中の人なのか外の人なのかよくわからない、いても気にならないけどいなくなるとちょっと困る、空気のような存在なのが、エア社員です。

小林:わかったようなわからないような(笑)。 それは外の人でいるよりも、何か良さみたいなものがあるんでしょうか。

仲山:元々は知り合いの経営者がSNSで人材大募集を出していて、その際、「正社員、契約社員、パート、アルバイト、エア社員、どんな形態でもOKです」と書いてあったんですね。たぶんノリでエア社員と書いただけだと思ったんですけど、「エア社員、興味あります!」と連絡してみたら、「一緒に仕事しましょう」となって、名刺もつくってもらえることになりました。

いまヤッホーブルーイングでは、チームビルディングのお手伝いをしているんですが、そういう研修みたいなものって、「社外の講師」として関わると非日常的なお勉強イベントに思われがちです。逆に、社内講師になると、「忙しいから欠席します」と軽く扱われやすくなりがちなところありません? だから完全に中の人ではないんだけれども、完全に外の人でもないっていう関係性は気に入ってます。それ以来、企業さんとお仕事する際は、「ほかではエア社員をやっています」と言うと、「ウチもそれで」となることが増えました。

ゲスト:仲山進也さん


小林:いいですね!私も使ってみたいです(笑)。 ちなみに「横浜F・マリノス」と“プロ契約”というのも気になるところですが・・・。

インタビュアー:小林(4th place lab)


仲山:
横浜F・マリノスはご縁があって一緒にお仕事をすることになった際に、「契約形態どうしましょうか。正社員、契約社員、パート、アルバイト、プロ契約、いろいろありますが」と言われて、「プロ契約ってどういうことですか?」と聞いたら、コーチの人とかが個人事業主として会社と契約することだと。試しに「僕でもいけますか?」と言ってみたところ、「確認したら、いけます」となって。単に「マリノスとプロ契約してる」と言いたかったんです(笑)。

ー 早いうちにレールから外れてみたほうがいい。他にも道があることに気付くから。


小林:エア社員、プロ契約もそうですが、仲山さんは本当に独自の働き方をされているなぁと思います。楽天大学の学長をされながら、ご自身の会社経営、それから本も多数執筆されている。多くの会社員が憧れる働き方でありながら、やってみたくてもできない人がほとんどだと思うんですよね。仲山さんは元々、“はみだし気質”だったんでしょうか。

仲山:比較的、順調にレールを進む感じで大学まで行きました。司法試験の勉強をしていたんですが、4年生の時に受けて落ちたんですよね。どうしようか考えたら、受験勉強が苦手だったことを思い出して(笑)、浪人するイメージは持てないなと。しかし、就職するにしても氷河期で、新卒じゃないと採ってもらえないと言われました。

卒業しないために「自主留年」というやり方があるということで、親に「すみません、もう1年お願いします」と言ってスネをかじらせてもらい、大学5年生になりました。この時に「レールから外れた」感覚がありました。同時に気が楽になったというか。それまでは、ちゃんとやらなければいけないっていうのが強かったんですよね。

なので、その後新卒で入った大企業をやめて、当時20人くらいだった楽天に転職するときも、まだインターネットのことをみんなあまり知らない時代で、普通だったら「なぜ上場企業をやめてその会社?」となるところを、「もうすでに1回レール外れてるしな」という感覚でした。

小林:レールを外れたことで、気軽に動けるようになったんですね。

仲山:そうですね。レールから外れた経験がある人の方がはみだしやすいと思うので、致命傷にならない程度でレールを外れちゃった人はラッキーだと思うんですよね。逆に言うと、常に一番良いレールを進み続けて、1回もレールから外れたことない人は、だんだんしんどくなってくる可能性がある。結構、「レールから外れたら死ぬ」みたいに思ってる人、多いと思うんですよね。外れたらゲームオーバーみたいな。

でもレールから外れて気付くのは、他にも道があるということ。レールから外れてウロウロしていたら道路というものがあることを見つけて、車をゲットすれば、列車と同じくらいのスピードで移動できるし、レールや駅がない場所にも行けることに気づくわけです。そのうち船も飛行機も使えるとわかる。なので「そんなレールにしがみつき直す必要があるんでしたっけ」と。

小林:外れることで、選択肢が増えていくわけですね。仲山さんもそうやって新しい道を切り開かれてきたということなんでしょうか。

仲山:僕の場合は、成り行きなんですけどね。たまたまいろんなご縁で、今はこういう働き方をしているだけで。今のようなスタイルを目指して成し遂げたわけでもないですし、明日はどうなるかわかりませんし(笑)。

ー 目標はなくてもいい。夢中になって取り組んでいると、次がやってくる。


小林:“成り行き”っておっしゃってますけど、お話を伺っていると、仲山さんのところにいろんなオファーが来て、そこから広がりが生まれているような気がします。仲山さんのご経験や実績が大きいとは思うのですが、オファーが来る流れみたいなものってどうやったら作れるのかなっていうのが、気になります。

仲山:僕が考えた「加減乗除の法則」というのがあって、働き方のステージは4つあると考えています。まずは足し算のステージ。苦手なことでもとりあえず選り好みしないで何でもやってみる時期。次が「引き算」で、強みを磨いて、強みと関係ある仕事を選び取って、関係ない仕事はやらずに済むように工夫するステージ。

そうすると強みがだんだん目立つようになって、周りから見て「あの人、あれが得意だよね」とわかるレベルに磨かれます。そうやって“強みの旗が立つ”とお声がかかるようになる。自分の強みと他人の強みを掛け合わせて価値を生み出す「掛け算」のステージに移るわけです。

小林:「この人はこれができる人だ」って認識されることで、必ずしも自分から「これを成し遂げるぞ!」みたいな目標を掲げて動かなくてもチャンスがやってくるのかもしれないですね。

仲山:よく、「成功するためには高い目標を掲げて努力して達成することが大事」みたいに言われるじゃないですか。でも僕は目標を立てて頑張るみたいなことができないので、「自分はダメな人間なんだな」と思っていたんですよね。

でもある本に、人間には「目標達成型」と「展開型」の2タイプがいると書いてありました。展開型の人は、今ここを夢中に取り組んでいるうちに、物事が展開していって、気づいたら自分が思ってなかったような面白いところにたどり着いたりすることがあると。

「俺こっちだ!!」と思って。僕は完全に受身な働き方をして今に至っています。自分から目標を決めてそれに向かって動いたことがないというか、そのやり方をしようとするとあまりうまくいかないんですよね。

小林:受け身でありながら、これだけ独自の働き方ができているのは改めてすごいです。たくさんのオファーの中から、何をやるか? というのも大事だと思うんですが、仲山さんが引き受ける、引き受けないの判断基準はどこにあるんでしょうか。

仲山:先ほどの「掛け算」ステージになると、誘われて「いいよ」「やるよ」とか言っているうちに関わるプロジェクトがどんどん増えていって、どれも中途半端になって、ちょっとモヤモヤし始めることって結構起こるんです。

そこで次の「割り算」のステージに進むわけなんですけど、要は共通の因数で括ることができるようにするんです。やってる仕事が全部一つの要素で括れるようにする。それが「強み」で括られてもいいですし、「理念」で括られてもよくて。

そうすると、別々のプロジェクトをしていても、得た知見や成果を別のところでも利用・活用・転用しやすいですし、繋がってくるわけです。僕の場合は、個人の理念として、「子どもが憧れる、夢中で仕事する大人を増やす」というのがあるので、それと関係あることしかしていません。

ー はみだしの一歩目が軽くなる。組織のネコになるトレーニング“ネコトレ”とは?


小林:これまでのお話を伺って、自分の強みを生かして、どんどん“はみだしてみる”ことが選択肢を増やす上で大事なことかなと思います。とはいえ、「会社一筋で言われたことをそつなくこなす」、みたいな働き方をしていると、いきなりはみだして何かやってみるみたいなことは躊躇する人も多いですよね。そこで仲山さんが考案されたという、めちゃくちゃハードルの低いはみだしをする“ネコトレ”(組織のネコになるトレーニング)について、お聞きしたいのですが?

仲山:前提をお伝えすると、『「組織のネコ」という働き方』という本の中で、組織で働く人を「イヌ」「ネコ」「トラ」「ライオン」にわけています。イヌタイプは組織に忠実で、ネコタイプは自分に忠実。トラタイプは組織にいながら自由に活躍している人を指し、ライオンタイプは社内を統率するリーダー。

はみだせない人というのは、もしかしたらイヌタイプの人に多くて、先ほどの「加減乗除の法則」で言うと、「足し算」ばかりで、自分の強みもわかりにくい状態にあるんじゃないかって。だから、自分の強みに集中するネコ型の働き方にヒントを得るのがいいと思ってます。

小林:そのネコタイプになるためのトレーニングってことでしょうか。

仲山:イヌの人がネコになる必要はないので、イヌの人であれば「ネコ要素を取り入れてみよう」という考え方です。組織優先で、言われたことをきちんとやるのが得意なイヌですが、「言われてないこともやってみる」ということです。日常業務の中でできる小さなことからで構いません。それがネコトレです。

たとえば、社外の人にメールを送る際、宛先の「様」を「さま」にしてみるとか。距離が縮まったら「さん」にしてみるとかね。

小林:めちゃめちゃ簡単!(笑)

仲山:あとは、メールでは「◯◯会社の◯◯です。」って名乗ると思うんですが、その「◯◯会社の」を外してみるとか。最初は違和感があるんですけど、慣れてくると結構いけます(笑)。こういう一つひとつは大したことじゃなくても、いつものやり方からちょっとはみだすようにしてみると、だんだん怖くなくなってくるはず。

小林:なるほど!いつもの定型文にちょっとだけ自己流のメッセージを加えてみるとか、そういうアレンジを増やしていくのもいいのかもしれないですね。

仲山:そうです。「言われたことしかやっちゃいけない」わけではないんですよね。あと、はみだすときに、よく「越境」という表現が使われますけど、そもそもウチとソトの境界線が本当にあるかどうかもよくわからなくないですか? たとえば、八百屋さんで働いている人が店の前の道路でお客さんと話すのは越境ですか? それは越境でないとしたら、お店から1キロ離れた場所でお客さんと話すのは越境? 相手がお客さんだったら越境でない、としたら、まだ一度も自店で買い物をしたことがない人と話すのは越境? 野菜以外の話題だったら越境? それがオンラインだったら越境? そうやって考えると、どこが境目なのかって、よくわからなくなりますよね(笑)。

それを、言われたこと以外やらない、社内でしかやらない、部内でしか・・・というのは本来ない境界線を自分でつくってしまっているようなもの。サッカーの場合、試合をホーム(本拠地)とアウェイ(相手の本拠地)の両方で行いますが、別にアウェイで試合するからといって、境界線を越えた、とはならないですよね。

小林:確かに。

仲山:なので、仮に違う会社で仕事しても、別に境界線を越えているわけでもない可能性はありますよね。「社外」というとハードルが高く感じられがちだけど、日々の延長だと思えばいいんですよ。

小林:そう考えると、はみだしの一歩目が軽くなりそうですね。

仲山:僕は、Jリーグの「ヴィッセル神戸」にお手伝いしに行ったことがあるんですが、Jリーグクラブで何かするのなんて全くの初めてでした。

「とりあえず自分に何かできそうなことないかな」って探して、まだネットショップとかサッカークラブはあまりやっていない時代だったので、ユニフォームとかグッズとか売るものがあるならネットで売れるところを知っているな、と思って楽天市場にショップを立ち上げました。

楽天社内にいると、ネットショップ立ち上げができる人はそこら中にいるけど、外の会社に行ってみたらそれができるのは自分しかいないわけです。

外に出ることで強みを認識できる機会にもなりますし、会社も一緒に働く人も違うけど、自分のやっているプレーは変わらない。

小林:先ほど仲山さんがおっしゃっていた、「自分にできることないかな」という視点で仕事をしていくと、日々の業務も工夫できるし、社外でも自分のプレーができるんじゃないかなと思いました。

仲山:常にそういうアンテナを張って生きていると、会社の中だからとか外だからとかじゃなくって、自分のプレーをいろんなところでできるようになるんじゃないでしょうか。なので、もしみなさんが、まだそういう経験をできてないとか、レールに乗っかり続けているみたいな状態だとしたら、まずは何か試しにはみだしてみるといいんじゃないかなと思います。

小林:“試しに”くらいの気持ちでやってみると、うまくいかなくてもいいやって思えますね。仲山さん、今日はありがとうございました!

Fin

【仲山進也さんプロフィール&著書のご案内】


■ 仲山進也さん  プロフィール
創業期(社員20 名)の楽天に入社。楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立、人にフォーカスした商売・組織育成のフレームワークを伝えつつ、出店者コミュニティの醸成を手がける。楽天で唯一のフェロー風正社員(兼業自由・勤怠自由)となり、仲山考材を設立、考える材料(考材)をファシリテーションつきで提供している。「ヴィッセル神戸」でネットショップ開設。「横浜F・マリノス」とプロ契約、コーチ向け・ジュニアユース向け育成プログラムを実施。数万社の中小・ベンチャー企業を見続け支援しながら、消耗戦に陥らない経営、共創マーケティング、指示命令のない自律自走型の組織文化・チームづくり、人が育ちやすい環境のつくり方、仕事を遊ぶような働き方を探究している。「子どもが憧れる、夢中で仕事する大人」を増やすことがミッション。「仕事を遊ぼう」がモットー。

※ もっと仲山さんのことを知りたい、働き方のヒントが欲しいという方は以下の著書をぜひご覧ください!


【参加者募集】私たちと、はみだしてみませんか?
「4th place lab」次回イベントのご案内


「はみだして、ためそう。」をコンセプトに、会社の枠を超えて、本業ではできないチャレンジを支援するコミュニティ 4th place lab(現在メンバー募集中!)では、定期的にイベントを開催。
9月16日は「はみだしてみたいけど、何から始めればいい?」という方に向けて、自分にぴったりのはみだし方がわかるワークショップを開催!
また、9月20日は「組織にいながら、地域で事業を起こすには?」というテーマで、地域で活動をするためのヒントをお届けします。ぜひ、お気軽にご参加ください!


レポート:小林こず恵(4th place lab
提供:株式会社ローンディール


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