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【第2章】 自ら“仕事を拾いにいく”ということ



→ 第1章「自分のスキルは外で使えるのか?」はこちら

—インド人・パキスタン人を束ねていたからこそ

テラドローンのスタッフは皆、若かった。
「Terra Lidar」のプロジェクトリーダーは二十代であり、日本の事業統括をしている関隆史も新井より年下だった。

学生インターンも多く活躍しており、社内の熱量は常に高い。部門はあるものの、タテの日揮とは違い、ナナメやヨコの関係で仕事をしていた。

スピード感やトップとの距離が近い、ということに加え、ヨコの関係で仕事ができるということも、新井にとっては働きやすい環境だった。

「年齢や役職を気にすることなく対等に接したい」という、もともと新井が持っているスタンスと合致した。

新井は、日揮でも上下関係なく、ひとりひとりをプロフェッショナルだと捉え、対等に接するよう心がけていた。年下だから未熟だとか、役職があるから従うとか、そういう考え方が嫌だった。それは、新井自身の経験によるものから生まれた。

———入社1年目のこと。
新井は、海外の現場で現地のワーカーを束ねて仕事をしていた。インド人、パキスタン人…、様々な国の人々と共に働いた。彼らは皆、経験抱負なプロフェッショナル。
しかし社会人1年目の自分が、日揮の人間だから、という理由でプロである彼らを束ねなければいけなかった。現場を全く知らない日本人が来てあれこれ指示をするという関係性に、新井は違和感を持った。

だからこそ、上からの意見を彼らに伝えるというやり方ではなく、彼らから出た意見を尊重して、吸い上げ、上に提案するということをやり続けた。

そこには、下請けだからとか、年下だからというような理由で“意見”を潰してしまってはいけない、立場や会社は関係なく、意見を尊重し、いいアイデアはどんどん取り入れるべきだ、という新井の発想があったからである。

—このまま終わったら、成長ゼロ

“やりやすい”環境でスタートしたレンタル移籍だったが、まさかの1ヶ月目にして、新井は頭を抱えることになる。

それは「仕事がうまくいかない」ということではなく、「仕事がない」ということだった。新井は当時を振り返り、この1ヶ月を「臥薪嘗胆の日々」と名づけた。

担当した新製品は、少数精鋭のプロジェクトチーム。
既に2019年のローンチに向け最後の大詰めで手一杯の状態。もともと新井は「理系だからシステムのことがわかる」という理由でアサインされたものの、新井が直接プログラミングを書くわけでもない。結局は海外のベンダーへ発注することになり、スケジュール管理が新井の主な仕事となった。

ベンチャーならでは、業務が変わることは心していたが、「補う」役割がメインであり、決して“熱量高く仕事ができている” とは言えない状態だった。

新井は危機感を感じた。
スケジュール管理は、日揮でも散々やってきた。
自分が持っているスキルをここで発揮し、貢献することは必要だ。しかし今更スケジュール管理をしても仕方ない。事業開発のスキルを得たいと思ってここに来たのに、これで半年経ってしまったら成長ゼロ、終わりだなと思った。

「自分がやりたいことをやらないと…」
スイッチが入った新井は、仕事を獲得するために自ら仕掛けていくことになる。

—「オイル&ガス」といえば新井

仕掛けるというのは、自分の仕事を自らつくることだった。
それは仕事をもらうとか、誰からから奪うということではなく、“拾いにいく”ということだった。

新井は周囲の部門の動きを観察するようになった。
「テラドローンの中で、他に自分ができることはないか?」
それを注意深く探すようになった。

そんな時、別部門で「オイル&ガス分野における点検用ドローンの市場を狙いたい」という話を耳にする。技術自体は既に保有していたが、市場選定とPMF(Product-Market-Fit)はこれからだった。当然、すぐに立ち上がるかもわからない事業フェーズであり、多くの人材は充てられない。適任をさがしていた。

「この分野なら、自分の経験も役立ち、日揮とのつながりによる貢献も大きそうだ…」

この事業を遂行できたら、自身の事業開発の経験にもなる。そう確信した新井は接点がない部門だったにも関わらず、「僕にやらせてもらえませんか?」と自ら手を挙げた。

新井は新製品開発の業務サポートをしていたため、とりあえずは空いている時間に動いてみることになった。

オイル&ガス分野といえば自社にアプローチしない手はない。
まずは日揮に出向き、ヒアリングを始めた。何度かヒアリングを重ねた結果、日揮内の保守点検チームと関係性が築け、テラドローンとつなげるまでに至れた。

最初は“いったん”で関わっていた新井だったが、積極的な働きにより「この事業、ぜひ新井さんにお願いしたい!」と責任者に任命される。

この事業が成功するも失敗するも自分次第。
まさに新井が求めていた状況だった。

「みんなで成し遂げた結果」ではなく、うまくいかなければ自分のせいだし、うまくいけば自分の成果だと胸を張って言える状況で仕事がしたかった新井にとって、それが実証できる絶好のチャンスだった。

この頃、新製品もローンチに向けた大詰めの作業に入っていた。
そんな時、海外に在住していた、もともと開発を手掛けていたスタッフがタイミング良く戻ってきた。それもあって、新井は携わっていたプロジェクトを引き継ぎ、オイル&ガスのプロジェクトに専念することになる。

今思えば、外から来た人間に、しかも半年しかいないのに、新事業を任せてくれたことに心から感謝している。

———初めて自分の仕事をつくる、という経験をした新井。
本当の始まりはここからだった。

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テラドローンのメンバーとの1枚(左から3番目が新井)


第3章へ続く

【テラドローンさんより、人材募集のおしらせ】

今回、新井さんがレンタル移籍をした、テラドローンさんでは、各種分野の人材を募集しているそうです。東京に本社をおき、全国6拠点、海外20拠点以上を構える、世界で注目されているベンチャー企業です。ぜひ、チェックしてみてください。→採用情報はこちら


【レンタル移籍とは? 】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計29社68名以上のレンタル移籍が行なわれている(※2019年10月実績)。→ お問い合わせ・詳細はこちら

協力:日揮株式会社、テラドローン株式会社
Storyteller:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/

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