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【第3章 SLに夢を乗せて 】「大志」を探して 〜IT企業から、絶景に囲まれた老舗鉄道会社へ〜

<過去記事>
第1章 「環境を変えたい!」
第2章「今日も電話が鳴り止まない‼」

—自分へのチャレンジ、そして……

移籍して5ヶ月。
季節は晩秋から冬へと移り変わろうとしている。

紅葉の行楽シーズンを過ぎるとSLの乗車客数も一気に減少し、大井川鐵道は冬の閑散期に突入する。慌ただしい繁忙期を終え、社内はすっかり落ち着いていた。

一方、この頃の菅原は、先日のトレンドマイクロでの面談で「何のために移籍したのか?」そう問われ、エンジニアスキル以外の部分で何か挑戦したくてうずうずしていた時だった。

菅原のミッションは営業部の事業改善。
システム改善以外にできる営業施策を考えることにした。

そこで、冬季に乗客を増やすための施策を実施することにした。
日本各地で運行されているSLの多くは冬季期間は運休しているのだが、大井川鐵道は、日本で唯一、一年中ほぼ毎日SLを運行している。
それが、多くのSLファンを惹きつける魅力でもあるのだが、客車数が少なくても常に運行せねばならず、乗客数が少ないほど損失が出る。
閑散期である冬季に「乗車客を増やさねばいけない」という課題があった。

菅原は、SNSキャンペーンを行い、集客することにした。
普段SNSキャンペーンを身近で見聞きはするものの、もちろん自身で企画を遂行したことなどない。

それでもこの機会にトライしようと思ったのは、自身へのチャレンジに加え、もうひとつ大きな目的があった。

—「冬季のSL」だってこんなに魅力的!

「この時期は毎年こんな感じなんです」
12月~3月初旬までの期間、乗客数を増やすために、大井川鐵道では過去いろいろな施策をやってきた。しかし、成功した事例はほとんどなかったため、スタッフのモチベーションも下がってしまっていた。
菅原には、そのことがもったいなく思えて仕方なかった。

この土地にやってきてまもなく半年だが、そのだいぶ前、移籍が決まった時から、休日の度にこの土地に訪れ、人や自然に触れ、この街の良さを様々な角度から知り、素晴らしさを感じてきた。

「冬には冬の見どころがある……」

菅原自身が、日々当たり前にやってきたエンジニアの仕事が、この場所に来たことでスキルとして再発見できたように、営業スタッフにとって当たり前になってしまっているこの街の資産を、もっともっと活かしたいと思った。

それは、外部から参画した自分の視点だからこそできることかもしれない。
お客さんの方からSNSを通じて冬のSLの魅力を発信してもらうことで、集客につなげることはもちろんだが、「こんなにも冬のSLを楽しんでくれている人たちがいる!」という、営業スタッフたちのモチベーションにしてほしいと考えた。

なので、SNSキャンペーン自体は短期ではあるものの、この1回で大きな成果を出すというよりも、毎年何かしらの施策を継続的に行うきっかけにしたいという想いの方が強かった。

—全部が全部はじめて。でも「楽しい!」

SNSキャンペーンの企画タイトルは、「大井川鐵道の冬のイイトコ教えて!キャンペーン」に決定した。冬季期間、大井川鐵道のSLに乗車し、SNSにハッシュタグを付けて写真を投稿してもらうという企画。

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駅に設置したキャンペーンの看板

▼実際のキャンペーンサイト

菅原は、企画からはじまり、キャンペーンのWEBページやチラシ制作、沿線での看板設置など、運用からディレクション、現場作業まですべてに携わった。

トレンドマイクロではもちろん、学生時代に遡っても、こういった企画を実行した経験はなかった。すべてが初めて。

しかし、始まる前は不安や大変さを感じていたものの、いざ始まると作り上げている感がすごく楽しかった。どんどん形になっていくのが嬉しくて、「楽しいなぁ!」純粋にそう思えた。

—SNSキャンペーンを終えて。ドキドキの結果は……!?

キャンペーンは2018年2月から約1ヶ月間行われた。
結果、期待を超える反響があり、Instagramを中心に美しい写真の数々が投稿された。

▼Instagramで集まった作品

初めての取り組みということもあり、あまり告知はできなかったものの、多くの方が参加してくれた。最優秀賞を受賞すると「電車とSLの運転体験ができる!」という入賞特典の効果もあったかもしれない。

今回、入賞特典も菅原が企画した。
その他の特典としては、大井川鐵道限定グッズの詰め合わせや、オリジナルのめざまし時計・ハーモニカ・ホイッスルなど、ファンにはたまらない魅力的な特典を設けた。

菅原はこのキャンペーンを通じて、「ファンの方による発信が継続的に増えていくことで資産となる」そう確信した。(最優秀賞の運転体験の時期が移籍終了後だったため、立ち会うことはできなかったのは心残りであった)

—みんなとやり遂げた一体感!  他者を巻き込むという経験

菅原はSNSキャンペーンを通して、自分のマインドを変える経験も得られた。それは「他者を巻き込む」ということ。

菅原は「自分でやった方が早い」とか、「お願いするのが苦手」ということもあり、何でもひとりでやろうとしてしまう癖があった。トレンドマイクロで課長職になってからも変わらず、菅原の中でも大きな課題だった。

だから今回のキャンペーンは、知見のあるスタッフを巻き込まないと遂行できないというのもあったが、巻き込むことを意識した。

キャンペーンの準備から始まり、終わった後も受賞者との連絡や賞品の発送、看板の片付けなど様々なタスクがある。それをそれぞれ得意な人を見つけて、サポートを依頼した。

結果、皆が協力的にサポートしてくれ、当然だが、自分一人で遂行するより効率的に進んだ。皆で作りあげるという経験があまりなかった菅原にとって、この一体感を味わえたことは大きかった。巻き込む大切さ、そして巻き込むことによって得られる楽しさ、喜びを知る。

———気づけば季節は春を迎えようとしていた。


→ 最終章「地域への興味」へ続く

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取材協力:トレンドマイクロ株式会社、大井川鐵道株式会社
storyteller 小林こず恵
提供 株式会社ローンディール
https://loandeal.jp


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