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【第3章 「足りなかったもの」が見えてきた】自己イノベーションを起こすために

今回は、NTTドコモから株式会社VALUにレンタル移籍した亀山直季さんを紹介します。VALUが提供するのは、"なりたいもの"や"やりたいこと"を実現するために、個人を応援するアプリ。
ドコモ入社以来、主に企画屋として事業企画の最前線に携わってきた亀山さんは、2018年8月から2019年1月までの半年間、VALUに移籍しました。そこで何を感じ、何を得たのか。全4回でお届けします。

亀山 直季(かめやま なおき)
2010年にNTTドコモ入社。入社後は4年ほど写真関連の事業企画・開発に携わる。その後3年間は人事部採用育成担当として若手社員の育成に尽力、2017年から現職のイノベーション統括部グロース・デザイン担当として新規事業開発を行う。日々の仕事をこなしながら、「自分も会社も、このままではいけない」という漠然とした課題を抱えていた。

<過去記事>
第1章 入社9年目、胸をかすめた「もやもや感」
第2章 初日から「相手の言葉がわからない」

第3章 「足りなかったもの」が見えてきた


プログラミングのスキルだけじゃない

自分とまわりのエンジニアの力の違いに圧倒された亀山さん。
その差を少しでも埋めるべく、日々努力を続けた。
決して平坦な道ではなかった。
小さなトラブルはもちろん、アプリが起動しないというトラブルにも見舞われた。

バグの原因分析に追われて、土日を費やすこともあった。

亀山:まわりの優秀なエンジニアのレベルにはほど遠いかもしれませんが、実戦で学んだことで、プログラミングのスキルは上がったと思います。できることも少しずつ増えていきました。

移籍の大きな目的のひとつであるプログラミングスキルの向上は、叶いつつある。亀山さんは移籍によって、他にも大きな学びを得たという。

驚くべきベンチャーのスピード感

亀山:僕がVALUで学んだのは、プログラミングスキルだけではありません。ひしひしと感じたのは、ベンチャーと大手企業との違いでした。

亀山さんには

①プログラミングスキルの獲得

のほか、

②スタートアップの経営を学ぶ

③意思決定力を磨く

という目標があった。
ベンチャー独特の空気は、そこにいなければ感じ取れない。VALUに在籍した6ヵ月間で、ベンチャーの企業のビジネスフローを観察し続けた。

亀山:驚いたのが、仕事のスピード感です。ずっとドコモという大きな企業で働いてきた自分にとって、VALUのスピードには目を見張るものがありました。

たとえば、ユーザーから改善要望の報告があったとする。
ドコモの場合、アウトソースによる開発が多いため、開発会社のメンバーと連携しながら原因を究明し、修正に必要なリソースの見積もりを取る。その後関連各組織と調整を経て社内で承認が下りたあと、修正の実装を行う。修正後十分にテストを行い、然るべく承認プロセスを経てようやく世の中へのリリースが可能となる。

改善要望の程度によるところはあるが、一連のプロセスに半年から1年かかることもある。
ところがVALUでは、このプロセスがたった1時間で終わってしまうのだ。

亀山:VALUはSNSですので、バグや改善要望のメッセージが社長の元へ届くんですよね。その後、情報が共有され次第、CTOが原因を分析し、修正方針をPMがその場で決定し、担当のエンジニアがその場で修正を行い、問題なければdeploy する。これがほんのわずかな時間で日々行われている環境でした。このスピード感をなぜ実現できるか、ですが様々なファクターがあると思います。その中でもトップがリスクをとって瞬時に判断をする。それが事業の大きな推進力になっていると感じました。

たとえばとあるアプリの機能改善について僕の力不足で想定より時間がかかってしまったことがありましたが、社長(小川さん)から「どこまでできてるの? それでいいよ、一度出してみよう」とその場でリリース判断がなされます。”何かあっても俺が責任とる”と口には出さないものの、リスクを一手に引き受ける社長の姿はカッコよかったですね。ドコモでは見たことのない景色でした。そんなダイレクトな経営判断が日常茶飯事です。

ベンチャーでのスピード感は、頭ではわかっていたつもりでしたが、在籍していたからこそ実際に体験できました。

もちろん、パーフェクトな製品を世に送り出すことも重要だ。
ドコモにはドコモの、VALUにはVALUのやり方がある。

ベンチャーがバグ修正に半年かけていたら、とても成り立たない。
だからこそ、ベンチャーのトップ層には、意思決定の速さが求められる。
そしてその判断力が、会社を大きく変えていくのだ。

亀山:もちろん、ユーザーがドコモに求めるもの、VALUに求めるものは違います。企業としてのビジョンも違う。同じようにすべきだとは思いません。ただ、余計なコミュニケーションプロセスを省く、権限委譲による意思決定の在り方など、これからのドコモとして取り入れるべき点が多くあるなと強く感じました。

自分たちで決めるから熱量が乗る

亀山:もうひとつおもしろかったのが、ベンチャー企業では意思決定において主観が大きいところです。たとえば大企業がデザインを外注するなら、実績のある会社をピックアップして、コンペして、客観的な意見をまとめた上で決定します。
ところがベンチャーでは社員のデザイナーが初期案を作成し、メンバーであーだこーだ言いながら議論しながら全員が良いと思えるものに仕上げていきます。

大企業では、議論を重ねて、あえて客観的な判断をしようとする。
ベンチャーは合意できれば主観的な判断で進むこともある。
そこには、スピードだけではないメリットもある。

亀山:客観と主観にはそれぞれ良し悪しがありますが、主観的な判断をすることで、プロダクトに熱量が乗ります。「自分たちがやりたいこと・自分たちが好きなもの」だからこそ、チームや会社全体に「プロダクト愛」のようなものが生まれやすくなるんです。

客観的に判断して外注すれば、どうしても決められた枠組みの中での空気感になってしまう。もちろん出来上がったプロダクトは、決められたクオリティはしっかり確保されていますが、そのアウトプットがどこか他人事にも感じられることも私の経験からもありました。“それって自分が決めたことではないしな、と。”
そうすると、そこまでの熱量が生まれにくくなることもあると思います。

ベンチャーでは個人の裁量権の幅が広く、一人ひとりに意思決定が求められる。それぞれのアウトプットにも、「自分の裁量で決めた」という責任感が乗るため、当事者意識も強くなる。

そのため、いいものをつくりたいという思いが強くなり、プロダクトの伸びしろが大きくなる。枠にとらわれず、無限大に改良が進むという好循環が生まれるのだ。

ここはプロフェッショナルの集まりだ

亀山さんは、VALUで感動したこと(ドコモのと違い)を、「心・技・体」で表現してくれた。

先ほどの熱量の大きさが「心」、スピードの速さが「体」である。

亀山:「技」の部分ですが、ベンチャーにはエンジニア、マーケター、プランナーなど、得意な領域を持つプロフェッショナルが集まりやすくなっています。

ドコモのように組織が大きくなると、多くの関係者の中でプロジェクトを推進してゆくマネジメント能力が必要になって、スペシャリストよりもゼネラリストが増えてくる。現状、多くの社員が自身を表現するのであればゼネラリストと答えるのではないかなと思います。これも携わるプロジェクトによって良し悪しがある部分ではありますが、例えばスマートライフを実現するようなITサービスを推進するチームであれば、少しバランスを考えるべきなんじゃないかというヒントになりました。

「心・技・体」まとめて、ベンチャー企業で何を見たかと言われると、一言でいうと、“一人一人を信じる強さと支え合う強さ”に尽きるかもしれませんね。

大企業とベンチャーの違いを、日々間近に感じた。
強固なチームづくりやスピーディな意思決定などは、大企業でもできるはずだ。それにドコモの強み(豊富なリソース)が加わることで、大きく変われる。そう感じた。

VALUの強みは、それまで自分や会社がこれまで抱えていた課題に直結するヒントだった。

移籍期間を終え、VALUからドコモに戻ったとき、亀山さんにどんな変化が起こったのだろうか─。

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