【第4章 諦めたくない! 】「想いよ、届け」 〜180日で身につけた諦めない力〜

「移籍者たちの挑戦」シリーズでは、大企業で働く社員が「レンタル移籍」を通じて、ベンチャー企業で学び、奮闘し、そして挑戦した日々の出来事をストーリーでお届けします。
 今回の主人公は、日本郵便株式会社から、紙やプラスチックに替わる石灰石で作る新素材LIMEX(ライメックス)を製造・販売している株式会社TBMに移籍した武澤歩沙美さん。武澤さんは2018年4月から移籍を開始し、6ヶ月間の移籍を終えて2018年10月に帰って来ました。そんな武澤さんのストーリーを全4回でお届けしていきます。

<過去記事>
第1章 この人たちと一緒に働きたい!
第2章 本気で挑むということ
第3章 何のためにやるのか?


—夢のようなトライアル企画に向けて

移籍も残り約1ヶ月となり、「自分がいるうちに、できる限りのことをしたい……」と、ラストスパートをかけていた武澤。

———しかし、そんな想いとは裏腹に思いもよらぬ大事件が起こった。

それは福井県鯖江市との協定においてのこと。
武澤は笹木のサポートを受けながら、移籍当初から協定の締結に向け、資料作り、関係機関との連携など、数ヶ月にわたり調整を行っていた。

そして8月末に、無事、締結が完了したところだった。
その際のプレスリリースがこちら

今回の協定は、鯖江市内の印刷物の一部をLIMEXに代替するなど、その利用シーンを模索し、持続可能なものづくりの新たな方法であるアップサイクル(※1)を目的にした取り組み。

そして、まずは本格導入の検討にあたり、トライアル施策を9月中に行うことを決め、武澤は、施策に向けた準備に追われていた。

その施策とは、住民に配る回覧板のお知らせの中に、LIMEXで作ったチラシを配布し、それを郵便局や公民館などで回収するというもの。集まったLIMEXのチラシは、街の伝統工芸である漆塗りの器にアップサイクルする、という仕組みである。

住民たちを巻き込み、アップサイクルした漆仕上げの器などを国内外に発信していくことで、鯖江市のブランディングはもちろん、この街の新たなストーリーになると思った。

武澤はワクワクしていた。
このトライアルが、鯖江市を世界に発信する大きなきっかけとなるかもしれない、と考えていたからだ。

ギリギリのスケジュールだったが、TBMのメンバーと連携しながらその準備を急いだ。

そんな中、鯖江市から電話がある。
電話を切った後、武澤は愕然とした。

鯖江市の担当部門の変更の影響で、「やっぱり今回のトライアルの実施は難しい……」という連絡だったからだ。

—ひとり鯖江市に乗り込む

「せっかくここまでやったのに……」

応援してくれたTBMのメンバーにも申し訳ない。
それに、鯖江市に何度か足を運ぶうちに、いつの間にか強く愛着を持っており、鯖江市のPRになる施策だと確信していたため、そのショックも大きい。

しかし相手の事情も分かる。
武澤は悔しい気持ちを抱えながらも、「仕方ないか……」とただ肩を落すばかりだった。

そして、ずっと近くでサポートし続けてくれた笹木に事情を報告する。
ガッカリされると思った。

しかし笹木の反応は、
「俺だったら……、鯖江市に行くね」と予想外の答えだった。

武澤はハッとする。
6月末の合宿で、山﨑や笹木をはじめ、諦めないこと、挑戦し続けることの大切さを教えてもらったばかりなのに、何もしないで諦めようとしていた自分に気がついたからだ。

「私、行きます!」

こうして、武澤は鯖江市にひとり乗り込むことに決めた。
すでに移籍終了一週間を切っていた。

—もうダメだ…! みんなごめん。

———しかし、その壁は想像以上に厚かった。

鯖江市のとある会議室。
武澤は改めて、関係者数名の前で今回のトライアル企画の重要性を話した。

この取り組みにより、市はもちろん、住民にとってもどんなに良いことなのか、ただ懸命に説明した。

しかし鯖江市も実施が難しい事情がある。
鯖江市側の関係者は、「そろそろお時間いいでしょうか?」と打合せを終わらせたい様子。

これ以上話しても進展はないという判断だったのだろう。
武澤は心の中で思った。

(みんな、ごめん……。やっぱり無理だ)

TBMで送り出してくれた仲間の顔が浮かぶ。
その時ふと、LIMEXを日本郵便で導入したいと奮闘した、あの打合せを思い出した。

説明がうまくできなかったために誤解されて傷ついたこと。
それでも諦めきれずに、もう一度説明させてほしいと再挑戦し、最後は理解してもらえたこと。

そうだ、もう一回頑張ろう。
これが本当に自分が交渉できる最後のチャンスかもしれない。
武澤は悔いないように、もう一度だけ最後に粘ることにした。

—「想いよ、届け!」

武澤は口を開いた。

「私、この取り組みをやっていただけないことが本当に残念です。私はこの街で、ぜひLIMEXの最初の取り組みをしたかったんです。他の街じゃなくてこの街でぜひ!」

武澤は、本当にこの取り組みが鯖江市のためになると思っていること。
ここまで一生懸命なのは、自分はこの街が好きだからであるということ。
心の内にある想いを全部伝えた。

(……どうか届いて欲しい!)

すると、

「……なんで、そんなにこの街(鯖江)が好きなの?」

先方が耳を傾けてくれた。
武澤はこの街に何度か訪れ、そこで感じたこと、体験したことを話した。

「そこまで思ってくれるなんて。なんとか実施できないかもう一度調整してみます」

「……ありがとうございます!」

想いは届いた。
武澤はやりきった。

————その後のこと。

見事その交渉は成立し、再びトライアルを実施することが決定した。
諦めなかったことで想いは実った。

—そして迎えた移籍最終日

移籍最後に「やりきった満足感」があった武澤だが、最終週まで忙しい日々を送っていたため、移籍残り数日となっても、日本郵便に戻るという感覚がまったく持てないでいた。

しかし、ふと休憩時間になると「あぁ、もうこれで最後か……」と感慨深く思うこともあった。

そして迎えた最終日。
当日はTBMのメンバーが壮行会を開いてくれた。

メンバーがオフィスに飾り付けをしてくれ、ビデオレター上映会が行われるなど、社内全体で盛大に行われた。

そして、「武澤さんがいることで周りが明るくなった」「鯖江市との取り組みが、今後の取り組みに大きく貢献した」とたくさんの言葉をかけてもらい、武澤は心から嬉しかった。

壮行会のあと、TBMのエントランスでの1枚

—気がついた「日本郵便」の資産

2019年2月。
日本郵便に戻って3ヶ月が経った。

戻ってからもTBMとの関わりは続いている。
それは鯖江市とのトライアル企画や、その他各自治体との取り組みなどである。
日本郵便で、LIMEX導入に向けての調整も引き続き行っている。

そして武澤は、様々なプロジェクト実現に向けて動いている中で、改めて気づいたことがある。それは日本郵便が持つ資産である。

例えば「全国の郵便局」の存在。
この地域で何か取り組みたい、となった時に既に拠点があるのは非常に大きい。

すでに自治体と各郵便局が持っているネットワークを、もっともっと有効活用していくべきだと思った。

—本社から仕掛けていきたい!

その想いは、自主的な提案へとつながる。
今までは郵便局側からあがってくる提案を本社で調整するのが主だったが、これからは地方創生室主導で提案をしていく予定だ。

また、各地の郵便局と自治体が連携しやすい仕組みづくりも行っていきたいと考えている。更には自治体だけではなく、企業も巻き込んでいこうと考えている。

それもすべて、今回のTBMでの経験により、挑むことの楽しさ、諦めないことの大切さを身をもって知ったからだ。


武澤にとって、ここがはじまり。
中学生の頃、先生の優しい想いに触れて教師を目指したものの、大学生の頃、ボランティアで出会った郵便局社員の行動に胸打たれ、日本郵便へ入社した。

あれから数年がたった———。

たくさんの人の想いに心動かされてきた武澤だが、これからはきっと、自分の熱い想いが、周囲の人の心を動かしていくことになるだろう。


END

(※1)アップサイクルとは?
サスティナブル(持続可能)な「モノづくり」の新たな方法論のひとつ。従来から行われて きたリサイクル(再循環)とは異なり、単なる素材の原料化、その再利用ではなく、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すことを最終的な目的としている。

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【「&ローンディール」編集部 よりお知らせ】

武澤さんの移籍先、株式会社TBMさんでは一緒に挑戦できるプロジェクトメンバーを各種職種で募集しているそうです! ご興味ある方は是非チェックしてみてください。
https://tb-m.com/recruit/entry/

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協力:日本郵便株式会社、株式会社TBM
storyteller:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/

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&ローンディール

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移籍者たちの挑戦vol.7「想いよ、届け」

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