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ベンチャー経営者に聞く!「outsight」で見つけた新事業の可能性-南部彩子さん-
週1回90分の「他流試合」プログラム「outsight」。ベンチャー企業が抱えるリアルな事業課題に対して、大企業のミドルマネジメントたちが解決策を提案するというもので、プログラムをきっかけにさまざまな可能性が生まれています。
これまでは、「outsight」を通じて、思考力が深まり業務の質が高まったという大企業参加者の声をお届けしてきましたが、今回は、課題提供側のベンチャー企業の視点にフォーカス。ファッションスタイリング関連事業を展開するリワードローブ株式会社の取締役・南部彩子さんにお話を伺いました。
南部さんが「outsight」に登壇したのは、同社の事業の方向性に迷っていた時期。その中で、「outsight」が新たな突破口を見つけるきっかけになったといいます。具体的にどのようにして可能性が広がったのか、その体験談をインタビューしました。
こんなに大勢の大企業の人たちから
アイデアを提案してもらえるなんて
ー まずは、リワードローブのお取り組みについて教えてください。
リワードローブは、ファッションスタイリングをサービスの核に、プロフィール写真の撮影や、ファッションをテーマにした女性向けオンラインサロン、企業とのコラボレーションなどを行っている会社で、2022年に、スタイリストの川村と創業しました。
私自身はアパレル出身ではないのですが。「その人らしさ」を見出す支援に関心があって、これまでコーチングやメンターなどを行なってきました。ファッションは個性や好みを表現しやすいツールです。スタイリングを通じて「その人らしさ」を引き出ししたいという思いで取り組んでいます。
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ー そうした中で、なぜ「outsight」に登壇されたのでしょうか。
リワードローブは2人の会社です。起業して間もないこともあって、無人島にいるような感覚で過ごしていたんです(笑)。周囲に人もいないし、船も通らないので、すごく心細いというか。
ー 無人島ですか!?
私も以前は企業に勤めていたり、大きな会社にいたこともあったので、わからなければ誰かに相談して進めることができたり、勝手にいろんなものごとが進んでいくのですが、今は、相談する上司もいなければ同僚もいない。自分たちが動かなければ何も進まない状況です。
会社の事業や方向性について相談したり、誰かと会話するような機会がなかなか持てないでいました。そうした中で、「outsight」への登壇に声をかけていただいて。私たちの事業のためにみんなが時間を使ってアイデアを考えてくれるなんて、「お金を払ってでも出たい!」と思いましたね(笑)。
ー 事業について対話できる相手を求めていたと。
もちろん、知り合いの方に「ちょっと相談に乗ってくれる?」と話を聞いてもらうことはありますが、「事業としてアイデアを提案してもらう」のとはまたちょっと違いますよね。それに、さまざまな業界・職種の大企業の人たちが大人数で真剣に事業を考えてくれるなんて、なかなかないことです。
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ーちなみに、「outsight」に参加している方々とは初対面ですよね。そうした方々から、どんなアイデアが出てくるか、不安ではありませんでしたか。
それはなかったですね。私自身、大企業で働いていた経験がありますし、ローンディールの「レンタル移籍」で大企業人材のメンターもやらせていただいていますが、大企業の人たちは、ビジネスの観点で「基本のキ」をおさえていらっしゃるので、信頼がありました。
それに、そもそも「いただけるアイデア自体がどうか」ということはそんなに重視していませんでした。皆さんのアイデアをヒントに、「自分たちが何に気づけるか」みたいなことの方が大事だと思っていましたので。
「この方向で動いてみよう」
outsightを経て新会社を設立
ー実際、「outsight」でリワードローブさんが出されたアイデアのお題は「会社の象徴となるような商品やサービスを作りたい」というもので、かなり広めのテーマだったように思います。登壇したときはどういう課題を抱えてらっしゃったのですか。
正直、当時は何やったらいいか全然わからない状態で(汗)、めちゃめちゃ悩んでた時だったんです。今はオンラインサロンや企業コラボなどいろいろ動き出しているんですが、あの時は、何を実行してどこにフォーカスするかということが決められてなくて。主軸のパーソナルスタイリングも、どんなふうにしたらもっと届けられるんだろうかとか、迷子状態。こんな状態で登壇していいんだろうかと思うくらいでした(笑)。
なので、これまでの取り組みや、自分たちのコアバリューや目指すところをお伝えした上で、「どんなことにフォーカスして取り組んでいくと良いのか」と、広くアイデアをいただくことにしました。
ー実際にどうでしたか。いただいたアイデアから、気づきやヒントがありましたか。
皆さんが考えてくださったアイデアが一覧で見られるんですが、川村と一緒に、「こんなに考えてくれるなんて本当にありがたい!宝にする!」みたいに喜んでたのを覚えています(笑)。
アイデアの幅が広くて面白かったですね。たとえば、奥様が保険の営業をされていて、何を着たらいいのかといつも気を使ってるから、営業職の女性へのスタイリングはいいんじゃないか、といった個人的な経験からアイデアをくださったり。エステと組むのがいい、あのジムと組めそうだとか、販売百貨店やアパレルブランドと組むと良いなど、コラボの提案もいただきました。
そうした中で、改めて客観的に自分たちの立ち位置をとらえることができたというか。今後の方向性を決めるうえで、ヒントとなるようなアイデアや視点をたくさんいただけてありがたかったですね。「だったらこんな動きをしてみようかな」とか、「こんな可能性を検討してみよう」とか、さまざまなトライにつながりました。
登壇後、数名の方に、個別ヒアリングにもご協力いただいて。みなさん協力的で、深くお話をすることができました。
ー新しくリワードローブの関連会社を作ったと伺いました。outsightの登壇を経て動き出したそうですね。
はい。株式会社fit the local という旅のファッションを軸にした会社を作りました。「旅 × ファッションはいいね」という構想やアイデアは以前から出てたんですが、そこから止まってしまっていたんです。
そんな時に「outsight」に参加していた旅行会社の方と話す中で、かなり可能性がありそうな領域だということがわかって。それで改めて検討し始めたんです。そこからご縁があって、会社を作ることになって。
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ーそれはいい後押しになりましたね!
やっぱり「スタイリング単体で事業にするというのが大変なんだな」ということが、改めての皆さんとのディスカッションでわかったことのひとつ。別のフィールドや別の価値と掛け合わせることが大事だなと。そういう気づきもあったので、旅とファッションの掛け合わせという出てきたアイデアを別会社で実現しようと吹っ切れたというか、方向性が定まったのだと思います。
試行錯誤しているベンチャーにこそおすすめ
立場を超えて、いろんな人と交わる大切さ
ー改めて、ベンチャーにとって「outsight」への登壇が役立つことがわかりました。特に「こんなフェーズのベンチャーにおすすめ」などありますか。
そうですね。何かしらサービスやブロダクトはあるけど、試行錯誤を繰り返しているような状態で、まだ最終的な結論が見えていないような状況だと、方向性を決めるにあたって、いろいろヒントが得られると思います。
もうある程度出来上がっていて、あとはどうやって営業するかとか、どう広めていくかみたいな具体的なハウやテクニカルなことを求めている場合は、ちょっと違うのかもしれません。
ーなるほど。まさに当時のリワードローブさんにはピッタリだったわけですね。ちなみに、南部さんはこれまでいくつもの組織で働かれた経験があるということですが、大企業の方が「outsight」のような場に参加する良さみたいなところも感じられているのではと思いますが、いかがでしょうか。
以前、大企業で働いていましたが、外に出て改めて感じるのは、企業の仕組みやブランド、社内でのつながりから得られるものはもっともっとたくさんあったな、ということです。会社がこうした機会を提供してくれるのはとてもありがたいことだと思いますし、積極的に活用した方がいいと思いますね。
また、普段関わることが少ない人たちと一緒に何かをするという経験はとても大切です。たとえば、ベンチャー企業の人たちには勢いがあって圧倒されるように感じることもあるかもしれません。でもそうした思い込みをなくして、「ベンチャーだから」「大企業だから」という枠を超えて「みんな同じ目線で向き合える」と気づけると、その出会いが面白くて楽しいものになります。
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ーさまざまな組織を経験した南部さんだからこそ気付ける視点ですね。最後に、今後のビジョンを教えてください。
「outsight」を通じて、会社としての方向性が見えてきて、新たに会社をスタートするきっかけになったということは本当にありがたいなと思っています。様々な出会いもありましたし。
先ほども言いましたが、いかにたくさんの人たちとコラボレーションしながらカタチにしていくか、ということが大事だと思えたので、新しく立ち上げたfit the local に関しては、「旅 × ファッション」を軸に、いろんな地域とつながり、広がりのあるサービスにしていきたいなと考えています。
「旅先クローゼット」と言っているんですが、旅先にある服をみんなでシェアして旅行を楽しめるといいなって思いますね。地域づくり、観光に取り組まれていらっしゃる方、アパレル業界の方など、関心を持って頂けたらぜひお声がけください。
Fin