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「一生懸命だけじゃ通用しない。大企業→スタートアップで学んだ、結果を出すためにやり切る力」NTTコミュニケーションズ 木付健太さん -前編-

ー自分の力を試してみたい。入社8年目の“越境体験”

2011年、NTTコミュニケーションズに入社。約2年間、法人向けコールセンターで統括業務を経験したのち、新潟支社で約3年、東京本社で約3年、法人営業として力を磨いてきた木付健太(きづき・けんた)さん。

自分のスキルにある程度の自信はあった。けれど、「NTTコミュニケーションズ」という看板を外したとき、それがどこまで通用するのかはわからなかった。この社会という大きなフィールドで、はたして自分は今、ビジネスパーソンとしてどれくらいのポジションにいるのだろうか。ここまで積み上げてきたものの価値を、純粋に確かめてみたかった。

“レンタル移籍”に挑戦しようと思ったのは、そんな好奇心と冒険心がきっかけだった。

 「入社して8年。今後は新規事業にチャレンジしてみたいという気持ちもあって。それに足るだけの実力があるのか知りたかったんです。でもそれはずっとひとつの会社の中にいるとわからない。だからと言って転職となるとリスクが高い。そんなとき、人事の方から今回の“レンタル移籍”の話を聞いて。自分にとっていいチャンスじゃないかと思いました」

研修・出向という形式で、大企業の人材をベンチャー企業へと一定期間“移籍”させる。それは、新卒からずっとNTTコミュニケーションズに籍を置き続けてきた木付さんにとって、ある種の“越境体験”だった。

「正直、自分にはベンチャー気質がまったくなくて。就活のときも安定した会社で働きたいなという気持ちが大きかったし、自分がスタートアップに飛び込むなんて当時からまったく想像していなかった。周りにスタートアップで働いている友人もいなくて。完全に未知の世界でしたね」

数ある候補先の中から株式会社チカクを選んだのは、いくつか理由があった。ひとつはBtoCのサービスを展開していること。チカクのメインプロダクトである『まごチャンネル』は、テレビに専用の受信ボックスをつなぐだけで、スマホの専用アプリから写真や動画を送れるコンシューマー向けサービス。BtoBの領域で経験を積んできた木付さんにとって、今まで使ったことのない筋肉を鍛えるチャンスだった。

また、チカクはアップルジャパン出身の共同創業者兼代表取締役・梶原さんや、ソニー出身の事業開発責任者・伊藤さんなど大企業でキャリアを磨いてきた精鋭が経営に参画していた。大企業とスタートアップのギャップを知るためにも、両方のフィールドで活躍してきたメンバーが揃っているチカクは魅力的だった。

「あとは、『まごチャンネル』というサービスが非常に温かくて、いいなと思ったのも大きかったです。僕自身、当時は結婚したばかりで、妻の両親が地方にいることから、実家の両親に子どもの成長を簡単に見せられる『まごチャンネル』は自分ごととして捉えられた。実際に梶原社長と面接をさせていただいたときも、社長ご自身の強い課題意識から『まごチャンネル』というサービスが生まれたんだという話が聞けて。これだけ事業に対して強い想いを持っている経営者のもとで働けたら面白いだろうなと思ったのが、最終的な決め手になりました」

“レンタル移籍”が開始となったのは2019年4月。当時、チカクのメンバーは15名程度。オフィスは、恵比寿にあるマンションの一室だった。およそ10畳の室内に長机を並べて、社員たちが働いている。すぐ隣には、梶原社長。文字通り経営者と肩を並べて仕事をするなんてことは、NTTコミュニケーションズでは考えられない環境だった。

ー自分ひとりでなんとかできる。プライドが、成長を阻害した

移籍開始後、木付さんが任されたのは、新たなパートナーの開拓業務。ずっと法人畑を歩んできた木付さんにとっては、最適なミッションとも言えた。しかし、環境が変われば方法も一変する。

「NTTコミュニケーションズのときは、CRMソフトを使って、あらかじめ自分に割り当てられている営業先を掘り起こしていくというスタイル。でも、チカクではどこにアタックするかも、どうやってアプローチするかも全部自分で決めなくちゃいけない。その違いに、最初は戸惑いましたね」

さらに、従業員が1万人を超えるNTTコミュニケーションズと、15名のチカクでは、一人ひとりが担うミッションの重さも段違いだ。

「極端な言い方をすれば、NTTコミュニケーションでは自分が目標を達成できなくても、会社が潰れることはない。でもチカクは15人しかいないので、もし商談が停滞したり失敗したら、その分、会社に与えるダメージは非常に大きい。それがやりがいになっている部分もあったんですけど、同時に緊張感やプレッシャーもありましたね」

期間は1年。この限られた時間の中でどれだけのことを学び、NTTコミュニケーションズに持って帰ることができるか。その使命感と同時に、どうすればチカクの役に立てるかという貢献意識も強かった。なんとかバリューを発揮しなければ。その責任感は焦りとなって、少しずつ空回りしはじめた。

「最初に強く違いを感じたのは、スピード感。資料ひとつにしても、それまでは時間をかけてでも80~100%のクオリティに達してから出すという意識だったんですけど、ベンチャーではそのスピード感じゃ通用しない。20〜30%の内容でいいから、言われたその日か次の日には出して、一緒に壁打ちをしながら100%に近づけていくのがチカクのスタイル。はじめのうちはそのやり方に慣れなくて、よく周りから指摘をもらいました」

たとえここでは新参者でも、自分には8年間のキャリアがある。そのプライドが壁になって、はじめはなかなか周囲に壁打ちの相手をお願いするのも避けていた。自分ひとりでもなんとかできる。そう息巻いて資料をまとめて持っていっても、次々と矛盾や不足を指摘され、またやり直しになることが多かった。

「そうすると、結局ただの時間のロスになる。スタートアップは成長スピードが速い分、そのちょっとしたロスが致命傷になりかねない。自分の業務の進め方を根本から変えなきゃいけないんだということを、最初の1〜3ヶ月で徹底的に叩き込まれました」

中でもよく壁打ちの相手となってくれたのが、事業部長の伊藤さんとメンターの小川さんだった。伊藤さんはソニーでグローバルマーケティングや商品企画などを経験したMBAホルダー。資料作成から市場調査の基本まで丁寧に木付さんにアドバイスをしてくれた。

メンターの小川さんは、木付さんの書いた週報に毎回細かくコメントを添え、月1回の面談では木付さんの“レンタル移籍”の目的を常に確認しながら、これから何をするべきか、第三者の視点から助言をくれた。どちらも、1年に及ぶ木付さんの“レンタル移籍”には欠かせない存在だ。

ー本当にあらゆる手を尽くしたか。重要なのは、思考の解像度を上げること

「あとはやっぱり梶原社長ですね。特に今でも覚えているのは、社長が言ってくれた『一生懸命やるのは当たり前。その上で、結果を出すにはどうすればいいのか考え尽くすことが大事』という言葉です」

それまで木付さんにとって“一生懸命やる”は得意技だった。ひとつのことにがむしゃらに取り組むのは好きだったし、火事場の底力もある方だと自負していた。けれど、それは同時に安定した立場にいる者に孕む“甘え”と背中合わせだった。

「大企業なら一生懸命やって結果が出なかったとしても『今回は残念だった』で終わるかもしれない。でも、スタートアップはそうはいかない。頑張ったけどできませんでしたじゃ許されないんです。社長の言葉で、僕はそのことに気づかされました」

スタートアップは、不安定だ。だからこそ、できる限りを尽くして確実性を少しでも上げていかなければいけない。その覚悟が、まだ木付さんには足りなかった。

たとえば、まだ取引のない業界に営業を仕掛けるとき。もちろん自分なりに顧客がどのような課題を抱えているのか仮説は設定する。けれど、あくまで自分の狭い机の上で広げた空論で木付さんは終わっていた。

「自分が知らない業界のことを、自分ひとりで考えていても仕方ない。だったら、社外の人でもなんでもいい。その業界に詳しい人を探して、実際にどういった課題があるのか確かめてみる。そういう努力を自分は今まで全然してきませんでした。でも、本当に結果を出したいなら、あらゆる手段を使わないと。相手が社内の人間とか社外の人間とか、自分が好きとか嫌いとか一切関係ない。最短のスピードで最大の結果を出す。そこにとことんフォーカスしきる姿勢が、当時の自分にいちばん欠けていたものでした」

その気づきが、少しずつ木付さんの行動を変えていった。いろんな投資家のもとを訪ね、業界の動向を調査したり、チカクの先輩たちに頼んで、新しい人脈を紹介してもらったり。今までやったことのないようなことにも果敢にぶつかっていくようになった。

「そうやって行動するようになって、初めて自分の殻を破れた気がした。手持ちのカードを眺めて終わりじゃなく、他にもっとどんな選択肢があるか、より解像度高く考え行動する癖が身につきました」

気づけば“レンタル移籍”開始から3ヶ月が過ぎた。木付さんのブレイクスルーは、もうすぐそこまで近づいていた。

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(チカクメンバーとの合宿時の1枚)


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協力:エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 / 株式会社チカク
文:横川良明
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