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『ヤフーの1on1』著者 本間浩輔さんに聞く!越境による個人の多様な経験を、組織の成長に変えるには?

個人の価値観や働き方が多様化していく中で、一人ひとりがもっている経験や考えを、組織の成長に変えていくにはどうしたらいいのか・・・
これは企業でマネジメントに携わる多くの方が直面している課題ではないでしょうか。

ローンディールは、大企業の人材を一定期間、出向のような形でベンチャー企業に参画させ育成する「レンタル移籍」というプログラムを提供しています。自組織から「越境」させ、自社では得られない異質な経験を社員に積ませることで、個人のみならず組織の成長を加速させたいという目的で大企業70社以上にご利用いただいています。

しかし、この異質な経験を自組織に持ち帰り、発揮してもらうためには周囲がその経験をどのように受け止め、組織内に広めていける状態を作るか、ということが非常に重要です。

そこで、ローンディールでは、2024年9月より「越境者に伴走する上司のための1on1講座」という新しいプログラムを開講します。まさに個人の多様な経験を、組織の成長に変えていくには?という課題に取り組むプログラムです。

このプログラムには、日本企業における1on1の第一人者であり、ローンディールのアドバイザーでもある本間浩輔さんが監修および講師として関わってくださっています。講座の開講にあたって、本間さんにインタビューを実施。「越境という取り組みをどう捉えているか」、「組織が越境施策を活かすにはどうすればよいか」といった点について、本プログラムを立ち上げたローンディールの笠間がお話を伺いました。

越境の魅力は「強烈なリアリティ」


笠間:
本間さんには1年以上前からローンディールのアドバイザーとして私たちの取り組みを見ていただいていますが、そもそも本間さんは「越境」という取り組みの価値や意義をどのように捉えているのでしょうか。改めて聞かせていただけますか?

本間さん:やっぱり「リアリティ」じゃないかな。どんなにいい本を読んでも、研修を受けても、結局それを学びとして昇華させるのはリアリティだと思うんです。そして、まさに人材育成で苦労するのはその点で、ただ教えるだけじゃなく、学習転移(学んだことを新しい状況で適用すること)を起こさせることをしたいわけです。

そしてその転移には、「強烈なリアリティ」があるっていうことが極めて重要なんですよね。それに一番近いのが「越境」だと思うよ。ケースメソッドをやってみたりグループ討議をしてみたりするけど、所詮、越境のリアリティと比較したら霞んでしまう。

笠間:なるほど、ありがとうございます。その中でも私たちはベンチャー企業への「越境」ということにフォーカスしているわけですが、この点についてはどうでしょうか?

本間さん:イノベーションは移動距離に比例するという話があるよね。たとえばバックパッカーで世界中を回った人の方がいろんなことを知っているというニュアンスに近くて、大企業の人にとってみたらそれくらい遠いところに行って衝撃的なリアリティと出会うという感覚だろうなと思う。

笠間:これまで企業は、どうやってこういうリアリティを獲得してきたのでしょうか?

本間さん:社内でガンガン異動させるとかっていうやり方があったよね。だけど、そういう機会を企業の中で作りづらくなってきている。そう考えると、越境くらい効果のある選択肢って他にないんじゃないかな。

越境経験を組織にどうやって還元するか


笠間:
今、私たちが特に力を入れているのは「越境経験を組織にどうやって還元するか」というところなんです。課題と感じているのは、越境経験者と上司の経験のギャップです。

越境したメンバーが経験してきたことって、上司は未経験なんですよね。だから、どんな経験をしてきたか上司が理解できない。そして結果的に、越境者の経験をうまく活かすことができない、ということになってしまいます。でもこれは構造的に仕方がない部分もあると考えていてるのですが、自分が経験したことがないことを他者に促し、組織で活かしてもらうということはできるのでしょうか?

本間さん:そうだよね。きっと上司は越境経験の1%も理解できないんじゃないかな。だけど、越境経験がどういうものだったのかということをじっくり聞いてあげて、一緒に解釈していくことはできると思うんですよね。

笠間:例えばベンチャー企業に越境してきた人がいたとして、具体的にどういうやり方が考えられるでしょうか?

本間さん:もしその人がベンチャー企業の経営者からすごく影響を受けてきたということがあるとします。そうしたら、自組織にある課題に対して、上司から「この課題、ベンチャー企業の経営者だったらどんなふうに解決すると思う?」というような問いを立てる。そうすると、越境経験者は、自社の課題を自分の視点で捉えるのではなく、全く異なる視点から事象を捉え、解説をしてくれるはずです。

「そういう視点をぜひ聞かせてほしい」というスタンスで上司の方がコミュニケーションを取ってくれたら、組織の中に越境経験の解釈を根付かせていくことができると思うんですよね。テクニック的には「name it」なんて言いますが、その経験に名前をつけてあげる、みたいなやり方もあると思います。

笠間:そうすると、越境者がもっと成果を出しやすくなるかもしれませんね。

越境経験は大河の一滴


本間さん:
ただ一方で、育成論的にいうと、安易にすぐ結果が出るということは考えない方が良いと思う。あらゆる人材育成がそうであるように、越境経験も同じ。数年経って何かしら成果と呼べるものが出た時に、振り返って、「大河の一滴が、越境経験だったな」ということに気づく。そういうものなんじゃないかと思うんですよね。

笠間:でもそうなると、目の前の業務で結果を出すことは諦めるということになるのでしょうか?

本間さん:いや、そうではなくて、それは積み重ねなんだと思う。さらに言えば、結果が出るかどうかという以前に、越境経験者が組織にいるということはすごい価値のあることだと思う。ジョーカーのように、異なる視点を持ち込んでくれる可能性があるから。そういうのを引き出すために、1on1の応答技法というのが使える場面もあるのではないかな。

笠間:まさにこういう越境経験を組織に広めていくための1on1ということですね。

越境者を増やすための1on1


笠間:
それでは、最後に、これから一緒に1on1講座をやらせていただくわけですが、本間さんご自身として、どのような期待を持っているかお聞かせいただけますか?

本間さん:世の中には1on1講座も増えたし、技術論はいくらでもある。だけど、本当の目的は1on1をできる人を増やすことではないよね。越境者を増やし、かれらが越境を通じて得てきたことを組織に還元してくれるようになることがゴール。

どうやって「経験を解釈するか」「組織で活かすか」というところで、1on1の技法を使える場面があると思うんだよね。そういうものを参加者の皆さんと考えていけたらいいなと思っています。

笠間:これからの講座でご一緒できることを楽しみにしています。本日はありがとうございました。

Fin

Profile
本間 浩輔さん:Zホールディングス株式会社 シニアアドバイザー

上司と部下が個々で対話をする「1on1」という手法を約10年前にヤフーで取り入れ、事業の成長に繋げることに取り組んできた第一人者。1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、野村総合研究所に入社。コンサルタントを経て、後にヤフーに買収されることになるスポーツナビ(現ワイズ・スポーツ)の創業に参画。2002年同社がヤフー傘下入りした後は、主にヤフースポーツのプロデューサーを担当。2012年社長室ピープル・デベロップメント本部長、人事担当執行役員、コーポレート管掌常務執行役員などを経て、2019年Zホールディングス執行役員、2022年退任。神戸大学MBA、筑波大学大学院教育学専修(カウンセリング専攻)、同大学院体育学研究科(体育方法学)修了。2023年7月より、ローンディールのアドバイザーを務める。

【お知らせ】

本間 浩輔氏が監修する上司のための1on1講座を9月より開講
ー越境学習経験者の上司を対象に、個人の経験を組織に還元する1on1スキル強化を支援ー


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