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小国士朗さんと語る “大企業人材”はベンチャーで覚醒するのか? -オンラインイベントレポート-

経済産業省、パナソニック、トヨタなど、官公庁・大企業が、イノベーションの創出及び人材の成長機会として導入する「レンタル移籍」。そして、レンタル移籍者を受け入る側のベンチャーも増え続け、移籍可能な企業は300社を超えています。
そこで今回のオンラインセミナーでは、現在1名の移籍者を受け入れ、今後も新たな受け入れを検討されているという、株式会社小国士朗事務所代表・小国士朗さんをお招きしました。
現在受け入れ中の移籍者は、「すでにチームになくてはならない存在」と話す小国さん。若手人材が新たなフィールドで活躍し、覚醒する様子を間近で見ている中、レンタル移籍者ならではの成長について、小国さん自身の”越境経験”も踏まえながら語っていただきました。
その一部を要約してお届けします。
(ファシリテーター=ローンディール代表・原田)

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(左上:進行=ローンディール・及川、ファシリテーター:ローンディール代表・原田   中央下:小国士朗氏)


ーー小国さんは2018年に、長年勤められたNHKを退局され、株式会社小国士朗事務所を設立。現在はプロデューサーとして、認知症の人がホールスタッフをつとめる「注文をまちがえる料理店」の運営や、みんなの力でがんを治せる病気にするプロジェクト「deleteC」の運営ほか、様々なプロジェクトに関わっていらっしゃいます。
NHK時代は、ドキュメンタリー番組のディレクターをされてきた小国さんですが、同局の社外研修制度を活用し、9ヶ月間、株式会社電通への出向経験があるとのこと。そして出向から戻ってきた後、苦労も経験されている様子。自ら”越境経験”をしている小国さんだからこそ、今回は移籍者を受け入れる立場となり、様々な思いがあるようです。小国さんは今、どんな思いで移籍者に向き合っているのでしょうか? 伺っていきます。

—人が覚醒する瞬間とは?

最初のトークテーマは「人が覚醒する瞬間」について。大企業経験しかない移籍者が、ベンチャーに行くことでどう覚醒してくのでしょうか…?

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原田:
大きな組織の場合、業務範囲が決められているので、自分を持て余している人も多いと思うんですね。そんな環境から一転して、仕事の境界線がなく、できるできないではなく、何でもやらなきゃいけないというベンチャーに身を置くことで覚醒していく…。そんな瞬間を何度も見てきました。小国さんも実際、移籍者を受け入れて8ヶ月くらい経ちますが、移籍者に変化はありましたか?

小国:だいぶ変わったと思いますよ。彼は10年くらい営業をやっていて、最初に会った時には、「自分は営業というものがわかってきている」って言ってたんです。それを聞いて、その考えをぶっ壊したいって思いましたね(笑)。というのも、僕も以前、NHKで番組作りをしている中で、”わかったつもり”になっていることがあったんです。でもそこで気づいたのは、“わかったと思い込んでいただけだった”ということ。思い込みによって、そこから先にいけないというか、自分で自分の限界を勝手に決めつけているということがわかったんですね。
だからまずはそれを変えたいって。

なので、彼には「deleteC」の事務局を中心にやってもらっていますが、それだけじゃなくて、営業もイベントもデザインもPRも医療従事者とのやり取りも法務も会計も・・・要するに全てってことですが、超横断的に業務をお願いしています。その際、それぞれの業務について簡単な説明はするけど、細かな指示は出しません。とにかく中に入ってもらって、泳ぎ方は自分流でいいからって伝えて、泳ぎながらもがきながら経験してもらっています。
移籍してすぐにイベントの運営をいくつかやってもらったんですが、すでに熱量100%の「deleteC」チームの中に、何もわからない状態で入っていったわけですから、大変だったと思います。でもそうやって半年過ぎたくらいから、彼らしさがどんどん発揮されてきて、すごいことになっている気がしますね。

原田:示していくのではなく、背中をドンと押す感じですね。

小国:たとえば僕はイベントのプロじゃないので、指示をしたり、僕の背中を見ろなんて言えない。でも、チームメンバーには必ずそれぞれの分野のプロがいるので、プロに触れながら、自分は何ができるのか、何者なのか? って見つけて欲しいと思っていました。最初はプロの姿を見て、動きを真似たりしていたみたいですけど、いつの間にか、自分はこうしたいんだっていうのが見えてきたみたい。今はすごくスッキリしている感がある。

原田:自分で見つけていくってすごく大事だと思いますね。ちなみに「deleteC」のメンバーはプロボノで参加されているんですよね。そんな中でもすごく団結力がありそうな印象を受けます。コロナ以前から、皆さんリモートで業務をされていると思うんですが、うまく走れているコツってありますか?

小国:そうですね、プロジェクトのミッションはもちろん重要なんですが、それ以上に大事なのが行動指針。関わるみんなが、自分たちはこれからどういう姿勢で、新しい世界を作っていくのかってちゃんと描けることだと思っています。
「deleteC」には「明るく 軽く 柔らかく」という行動指針があります。日本だと“明るく軽ろやかな寄付”というコンセプトのプロジェクトがなかなかありません。だからこそ、誰もが気軽に参加できて、がんの治療研究の応援者になれる仕組みを実現したいですし、遠くにある課題というイメージを払拭して、身近なものにしていきたい。

移籍者の彼の場合、事務局でリーダーをやってくれていますが、当然、想定していたこと以外にも様々なことが発生するわけです。わからないけどやらなきゃいけないこともあって。判断に迷った時に行動指針があればうまく自走できる。だから、ベンチャーにおいて、バリューやビジョンを語るのって本当に大事だと思います。言葉の力ってやっぱりすごい。


—覚醒を邪魔するのは“自分の思い込み”

ここで、参加者からの質問コーナーへ。まずは、「覚醒できる人とできない人の差は? 覚醒できない年齢はありますか?」というもの

小国:年齢は関係ない。大事なのは自分の中の“蓋”が開けられるかどうか。年齢より蓋の重さが影響すると思います。10代、20代でも蓋が重い人は重いし、一方、60代、70代でも軽やかな人はいる。ひとつの業界に長くいると、この蓋が開けにくくなるとは思いますが、「何かしたい」とか「モヤモヤしている」って、蓋を開けたいという思いがある人は覚醒できる可能性はあるんじゃないかな。

原田:もし、覚醒に必要なものをひとつ挙げるとしたら何だと思いますか?

小国:冒頭にもお話ししましたが、覚醒を邪魔しているのって、結局は、自分の思い込みだと思います。わかったつもりでいるとか、肩書きに縛られちゃうとか。そうやって、自分で自分を規制している。それら思い込みのフレームを全部取っ払えるかどうかじゃないかなって。

原田:それって、自分に素直でいられるかってことでもありますよね。ちなみに、僕らが移籍者に対して重要視しているのは素直さ。自分が変わらなきゃって気づいて行動できるかどうか。そこが覚醒の入り口だと思っています。

ーー続いては「小国さんが覚醒した瞬間は? 覚醒する魅力は何か?」という質問

小国:僕の場合は、…ディレクターという道が途絶えた時でしたね。33歳の時に、ディレクターとして本当に脂がのっていた時に突然心臓病になって番組が作れなくなって、僕が今まで存在していた場所にいられなくなった、じゃあどうしようって。
結果、そのタイミングで電通さんに行けることになって、戻ってきて新しいことを始めるわけですけど。やっぱり自分が得意だと思っていることや強みだと感じていること、ずっとここで生きていくんだろうなと漠然と思っていた場所から断ち切られると覚醒するんじゃないかなと思います。

覚醒の魅力でいうと…、気持ちがいいですよね、やっぱり。今まで自分で自分を閉じ込めていたということがわかって、怖いものがなくなった。周りも気にしなくなる。そうすると、やりたいことに集中出来て、思考や行動、アイデアの純度も濃度が上がります。

ーー次の質問は「外部出向で小国さんが学んだいちばんのこと」

小国:PR局にいたので、PRに関する学びはもちろんですが、一番は、はじめて外から自分の会社を見たってこと。NHKにいると自信がなくなってくる。コンテンツには自信があっても見て欲しい人に見てもらえないと、どうせオワコンだしみたいな…。でも電通さんに行って気づいたのは、NHKってクリエイティブ天国だってこと。

広告代理店はどうしてもクライアントさんという制約がありますが、NHKはピュアに“世の中のために”という視点で番組を作れる。深海から宇宙までどこまでも追うことができるし、会社の知名度もあるし、公共放送というフラットな立場なので外部との連携もしやすい。
そういう会社の価値に気づけたというのが、圧倒的に良かった。


—個人の多様性は組織の中で育てられるのか?

続いては「個人の中に多様性を育む」というトークテーマ。
個人の中にある多様性の育て方について探っていきます。

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原田:覚醒する可能性と同じくらい、誰もが内側に多様性を持っていると思うんですね。それらを育てていくことで、組織において様々な立場で活動する人が増えて、結果、組織が良くなるって考えています。でも、そういった多様性って、たとえばひとつの企業で10年以上同じセクションで働いている人とかでも、育てられると思いますか?

小国:これも覚醒と同じで、「私は財務だ」とか「私はプランナーだ」とか決めつけて…自ら多様性に蓋をしてしまっていると思うんですね。多様性はもともとみんな持っているけど、自分はこうだと決めつけたり、あなたはこうですって言われたりして、“それしかない”って思い込んで気づかない。でもいざ取っ払ってみると、意外と自分って何者かわからないという…。

原田:個人もそうかもしれませんが、役割を与えることによって組織が多様性を否定してしまうこともあると思うんですね。ちなみに小国さんは、電通さんから帰ってきた後、「注文をまちがえる料理店」など、NHKで色々自由にやっていたように思うんですが、どうやって新しいことを実現していったのですか?

小国:そもそもNHKには危機感があった。テレビ離れもあって、今のままだと成り立たなくなるよねって。でも、それ以上に僕の場合は、上司が良くて。自由に動ける土壌を作ってくれたんですね。一方、現場からは、広告代理店から戻ってきたというだけで色眼鏡で見られる。だから理解をしてもらうために、僕が外に出たことがどれだけNHKに役に立つかってことを発信していましたね。

出る杭は打たれるじゃないですけど、やっぱり会社から外に出る人(レンタル移籍する人など)も必死になって自分の経験やその経験が持つ価値を言語化したり発信したりしないと、簡単には理解されないかもしれない。

ーーここで再び、質問コーナーへ
「所属企業から、”外”へ出る機会を得る秘訣は? どうしたら選ばれると思うか?」という質問

原田:普段から口に出している人は指名されやすいんじゃないかなと、「外に行ってみたい」とか吹聴していると、いざそういうチャンスが来た時に、「そういえば、誰々が言っていたな」って白羽の矢は立ちやすい。

小国:僕もそうでした。出向する3年くらい前からずっと、外に出してくれって言っていた。そしたら、「行ってみる?」って打診をもらって、実現しました。

原田:言い続けることは大事ですね!


—大企業人材の覚醒によって、世の中が変わる

続いての質問は、「移籍者を受け入れたことで、組織としての変化」について

小国:最初は「deleteC」のメンバーも心配していましたよ、「deleteC」のことをよく理解していない人を中に受け入れて大丈夫なの?って。みんな、プロジェクトにかける思いがとても強いので。でも受け入れてみたら、あっという間に、移籍者を頼りにするようになった。というのも、中の人たちも、何もわからない外の人を受け入れることで、柔軟性が身についたんですよ。

ともすると、ベンチャーって代表と共感した仲間で突き進むみたいになりがちだと思うんですが、外の人が加わってもイキイキ活躍してもらうためには…ってみんなが考えたことで、組織の柔軟性がものすごく上がったと思います。

最後の質問は「レンタル移籍」に関するもの。
「アフターコロナにおいて、レンタル移籍の価値とは?」

原田:今回のようなタイミングって、守ることが優先されて、外に行って挑戦するということが、組織の中でも優先順位が下がると思うんですね。でも社会は確実に変わらないといけないという中で、守りだけやっていくことはリスクじゃないかなって。
ベンチャーという”越境の地”に、セイフティネットがある中で行けるので、こういう時だからこそ、チャレンジして欲しいと思いますね。

小国:ノーリスクハイリターンですよ、レンタル移籍は。ベンチャーしか知らない人からしたら、大企業の人材と触れることこそ、ある意味、越境です。大企業ってこういう人材がいるんだって。だからお互いにいいことなんじゃないかと。

ーーイベントの最後に、小国さんからひとこと頂きました。

小国:コロナを経て、これからますます大企業の力が求められていくと思います。大企業の人材が覚醒してくれると世の中は間違いなく良くなるし、“中に”そういう宝があると思っています。何度も言いますが、自分で自分に蓋をしているだけ。開けてもらえたら、楽しいことが起こりますから。
ちなみに、「deleteC」は本当に人が足りないので、メンバーを募集しています。いろんな舞台がありますので、興味があればローンディールさんを通してご連絡ください(笑)。

原田:小国さん、皆さん、ありがとうございました!

Fin

【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計36社95名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年5月実績)。→詳しくはこちら

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協力:株式会社小国士朗事務所
レポート:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
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