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「『地道なことからコツコツと』 ひたすら動くことで仲間が増え、作り出した活躍の場」住友生命保険相互会社 田邉亮太郎さん

住友生命保険相互会社(以下、住友生命)で働く田邉亮太郎(たなべ・りょうたろう)さんは、2021年7月から1年間、HR Techスタートアップの株式会社ZENKIGEN(以下、ZENKIGEN)に「レンタル移籍」を行いました。生命保険会社から、IT系ベンチャー企業へ。全く畑違いの環境に飛び込んだ田邉さんは、1年間で何を感じたのでしょうか。お話を伺いました。


通用しなかったとしても、良い経験になる

 ーーなぜレンタル移籍に行ってみようと思ったのですか?
 
住友生命に入社以来、いくつかの部署を経験してきました。次の人事異動(転勤)が見えてきたタイミングで、レンタル移籍の社内公募を知って興味を持ち、社内向けの説明会に参加しました。そこで印象に残った言葉がありました。
 
「レンタル移籍先のベンチャー企業は意思決定も課題解決も”スピード感が異次元”なんです」
 
その言葉を聞いたとき、異動を見据えて感じていた「これからは自ら課題を発見し、解決していく能力が大事になる」という課題意識にマッチし、これは成長できそうだなと感じ、参加を希望することにしました。
 
ーーベンチャー企業へ興味を持たれたのですね。
 
新卒での就職活動時は、「日本で働いている人たちの生活基盤を支えたい。人の役に立つ・世間の役に立つことができる会社で働きたい」との想いから、住友生命に就職したいと考えたんです。
 
一方で、ベンチャー企業やIT企業に対しては「今の世界を動かすキーマン」というイメージから、漠然とした憧れを持っていました。なので今回、研修というかたちでベンチャー企業に行って、外から自社を見ることができるのはいい機会だなって。
 
ーー移籍にあたって不安はなかったですか?
 
レンタル移籍は1年間の期間限定。行ってみて、とにかくやってみる。それで「通用しなかったら通用しなかった。通用したら通用した。」でどちらにしても良い経験になると考えていました。
 
また、環境にも恵まれており、尊敬している当時の熱い上司からも「ぜひ行ってこいよ!」と後押ししてもらったこともあって、前向きな気持ちが大きかったです。 

ーー1年の挑戦を決意されたのですね。移籍先としてZENKIGENを選ばれたのはどんな理由からですか?
 
事業内容とビジョンへの共感です。
まずは、「人」に関わる事業に取り組んでいること。そしてベンチャー企業の中でも、よりスピード感をもって事業に取り組んでいるイメージの「IT系」かつ、今伸びているフェーズの企業でした。
 
そして、「テクノロジーを通じて人と企業が全機現できる社会の創出に貢献する」というビジョン、「For Our Next Generations(次世代につなげる、引き継ぐ)」という経営理念への共感です。
 
ZENKIGENは人が全機現(能力を最大に発揮するという禅の言葉)することを、人事領域でサポートをするサービスを提供している会社です。具体的にはAIを活用した採用DXサービスと1on1の改善サポートAIサービスを提供しています。
 
ーーまさに「人」×「IT」でサービスを提供している企業ですね。
 
当時、グループのリーダーとして働いていたこともあり、「人を活かすって大変なことであり、大切なこと」と痛感していたので、とても共感しました。そこから複数回の面談を通して、ZENKIGENの方々とお話する中で、社内の雰囲気も伝わってきて、この会社に行きたいと思いました。
 
ーー田邉さんは「人」に興味があるんですね。
 
なぜかと言われると難しいのですが、「人」が成功する姿を見ると嬉しいし、自分の行動によって相手が喜んでくれる姿は、想像するだけでやりがいにつながります。

「できることからとにかく動く」を意識

ーーZENKIGENでは、どんな業務を担当されたのですか?
 
CX(カスタマー・エクスペリエンス)業務です。参加当初はまだできたばかりの役割で、業務の幅はFAQ(よくあるご質問)作成や、顧客(求職者)からのお問い合わせ対応等のみでした。そこから1年かけて、開発チームとCS(カスタマーサクセス)チームをつなぐ役割をはじめとして、開発やリリースの調整、顧客(企業)対応、障害対応、カスタマーサクセス活動の改善などに広がっていきました。
 
定められたものはなかったので、CXに関する書籍を読んだり、社内外での関わりを広げる中で効果的なものを業務にしていきました。
 
ーーCX業務は初めてですよね?
 
CX業務というより、ZENKIGENが提供しているプロダクトを触るところからなので、一般的なITの知識含め、わからないことだらけでした。なので、最初は自分の中で勉強期間と位置づけて、社内のメンバーに積極的に1on1をしてもらうことにしました。
 
ーー自分から1on1をお願いしたんですか?
 
ZENKIGENには「1on1文化」が根付いていて、その土壌がありました。
メンバーのスケジュールをみると、カレンダーに1on1の時間が入っているんです。
 
みんな1on1に慣れていることもあり、また、話しやすくて親切な人が多かったので、1on1を通して教えてもらうこととともに、自分を知ってもらう機会にもなったと思います。
 
あとはなるべく出社して、顔を覚えてもらい、メンバーと食事に行ったり。フロアが一つだったこともあり、いろんな所属の人たちとコミュニケーションがとれたので、わからないことは積極的に相談して教えてもらっていました。
 
ーーまずは自分を知ってもらうところから始めたんですね。
 
そうですね。1on1を通して、人柄も含めて、お互いに理解が深まったと思います。と同時に、業務のキャッチアップをしていくためには、できることからとにかく動くことを意識しました。

ーーたとえばどんなことをされたのですか?
 
1例としてはFAQやSlackの過去投稿の読み込みです。
「FAQの精度向上」は、ZENKIGEN参加時に伝えられていたCXの担当課題だったので、ポイントポイントだけでなく、勉強も兼ね、全体の読み込みから取り組みました。
 
当時の課題としては、「何かわかりにくい」といった漠然とした課題でしたが、わかりにくさの原因を「お客さま向けの記載」と「社内向けの記載」が混ざっていることと仮定しました。
 
また、FAQ の質を上げることで、顧客からの問い合わせを減少させ、問い合わせ業務に割かれていた時間をアップセルなどの業績向上につなげる事ができるのでは、と目的を整理し、正面から取り組むことにしました。
 
お客さま(利用企業・求職者)はどのような意図で FAQ を参照するのか、実際にCSチームにはどのような問い合わせが来ているのかも踏まえて、「開けてガッカリ、開けてウンザリ、読んでイライラ」体験を引き起さないよう、既存の174個ある FAQ の全てに目を通し、改善を行いました。
 
ーーすべてのFAQに目を通されたんですね!それは業務への理解にもつながりそうですね。
 
知らないIT用語も含まれたFAQ全てを確認するのは大変でしたが、このとき改めて、価値を発揮する観点で大事なのは「動くこと」だと再認識しました。課題発見力も必要だけど、単なる評論家は不要だなと実感できたんです。
 
ーー「動く」。わかっていても難しいようにも感じるのですが…?
 
できることは何でも拾いました。
顧客からの問い合わせを通じて開発チームと連携する必要があるときは、ハブ的な役割を率先して担ったり。質問ではない誰かのつぶやきに反応して、役立ちそうな知識を返したり。社内のSlackで「新規事業開発のためにユーザーヒアリングをしたい」という話を見かければ、条件がマッチする前任地の責任者を紹介したこともありました。
 
するといつの間にか視野が大きく広がり、また、仲間が増えていることにも気づいたんです。自分でも驚きましたが、1on1や出社を通して人間関係を築いていたことも生きたと思います。
 
ハブ的な立ち回り等、周囲と関わる動き方は住友生命のグループリーダー時代に鍛えられ、いつの間にか得意になっていたことにも気づき、自信につながりました。
 
ーー動き続けることで、新たな気付きがあったのですね。
 
はい。その後も積極的に課題を発見し、「動く」ことは意識し続けました。
 「手数を打つ」中で、外れることもあれば当たることもある。そのうちに、ここは当たるなというゾーンが見えてきて、そこを自分の仕事にしていった感じです。自分の仕事についての定めがなかった中で、CXという枠組みを入口に、自分の仕事の範囲が作れた気がします。
 
ーー有言実行。手を動かし続けたんですね。
 
とにかく”動く”。製品やサービスが顧客に提供されるプロセスを可視化する基礎資料として、「ブループリント」づくりに挑戦してみたり。過去の問い合わせデータ2000件の分析に取り組んだり。
 
そんな中で、とある企業からのクレームを対応することになりました。
 
ーークレーム対応、お得意だったのですか?
 
得意というわけではないのですが……。
クレーム対応ってみんな嫌がるところですよね。なので、自分から引き受けました。問い合わせ対応が、顧客(求職者)から顧客(利用企業=企業の人事部)に広がる大きな変化のポイントでした。それまで企業対応はCSの領域となっていたんです。
 
お話を聞くと、先方としても無理難題を主張されているのではなく、障害対応含めて当然のことを求められているので、ご要望をお聞きしながら社内ではエンジニアと調整して、というように対応していきました。当初原因自体が不明で、また多くの人が関わることもあり、一筋縄では解決できませんでしたが、エンジニアも「仲間」になってくれ、解決まで至りました。
 
ーークレーム対応を率先して引き受けられる。なかなかできることではありませんよね。
 
次にクレームがきたときも、周囲からの期待を感じたこともあり引き受けていきました。対応することで、チームにも貢献できました。そのうちに、他のクレームも自分のところに集約されるようになっていったんです。
 
ーーなるほど。仕事を拾うことで仕事が集まってきたのですね。この頃、社長賞(月間MVP)を授与されたとか?
 
そうなんです。クレーム対応への貢献や、仲間へのヘルプの姿勢を評価していただきました。社員じゃないメンバーへのMVP授与は異例で、自分も期待していなかったこともあり、社内投票で選んでいただけたのはとても嬉しかったです。

疲れと成長、2度目の社長賞(月間MVP)

ーーとても順風満帆な移籍生活ですね。
 
それがそうでもなく……。
じつは半年が過ぎた頃、同じ日に3人連続で「疲れてる?」って声をかけられたことがありました。
 
よくよく考えてみたら、移籍開始以降、ずーっと走り続けていたので、自分でも気づかないうちに疲れが溜まっていたのかもしれません。知らず知らずのうちに気持ちに余裕がなくなり、他人の粗が目について他責思考に陥ったり。その他責思考になっている自分が嫌になったりしてたんです。
 
みんなから「疲れてる?」って言われた日の夜、雑談していたメンバーの中に札幌出身のメンバーがいて。
 
「そうだ、札幌に行こう!」と。その場で飛行機のチケットを予約して、翌日から札幌にワーケーションと休暇に行きました(ZENKIGENは働く場所が自由なんです)。
 
ーーなんと!すごい行動力ですね。
 
でも札幌に行って、休暇の日に一人で動物園とか行ってみたんですけど、結局Slackを見ちゃうんですよね(見たくて見ちゃう。楽しいんですよね)。
 
この半年間、できないことができるようになる感覚が嬉しかったし、ZENKIGENはとにかく感謝のフィードバックが多いので、その分やってしまう……みたいな。
 
環境的にも、どこにいてもオンラインでつながっていられるので、考え事をしたかったらできるし、働くスイッチが常時ONになっていたんだと思います。自分は走ること(仕事をすること)とZENKIGENが好きなんだなって再認識する機会になりました。
 
ーー「仕事と私生活が融合するような働き方」がマッチしている部分があったのですね。
 
思い切ってワーケーションしてみて、また、つかの間の休日を過ごしたことで、この移籍期間中に自分の成すべきことは、 ZENKIGENに貢献することであり、イキイキと働く大人を増やすことだと気持ちを新たにして東京に戻りました。
 
ーーワーケーションを経て、リフレッシュされたのですね。
 
そうですね。戻ってからはシステムのリプレイスを実施したり、新人の早期オンボーディング化等、前にも増して幅広い業務に取り組みました。
 
入社時は30名程度だったメンバーも気づけばどんどん増えていて、最終的には倍以上になっていました。組織の急拡大とそれに伴う課題を体験できたのも貴重な体験です。
 
ーー成長フェーズの企業で働いてみたい。の言葉通り、組織の拡大も体感されたんですね。
 
そんな中で、社内の360度評価では、メンバーから嬉しいフィードバックをもらいました。
 
「田邉さんがきて、CXってこんなに素晴らしいんだ、と、世界がかわりました」「タナーが楽しんで仕事をしている姿がとても励みになります。」など。素直に、みんなからこんなフィードバックをもらえたのは嬉しかったですね。

ーー移籍の最終月には2度目の社長賞(月間MVP)を受賞されたとか。
 
はい。最終月に発生したトラブルへの対応や、1年間広げてきたCX業務のメンバーへの継承、また、それまでの頑張りを含めて2度目の賞をいただきました。みんなが見ていてくれたこと、ありがたかったです。ZENKIGENだったから1年間を大変ながらも楽しく過ごすことができたと思っています。
 
レンタル移籍を決意した当初に考えていた「異次元のスピードでの意思決定」「課題発見と課題解決を最前線で経験すること」もできました。

次の世代につなげたい

ーー1年間のレンタル移籍を経験して、ご自身で変わったと思うことはありますか?
 
「自分の価値」に対する考え方が変わったと思います。自分がそこにいていいんだと思うためには、どうしたらいいのか? 自分の価値を発揮していくことに対しての意識が強まりました。
 
ただ会社にいるだけでは楽しくない。レンタル移籍を通して社外に出てみて、動き続けていたら、大変なことがあってもその先に楽しさがあることを知りました。仕事に熱がこもる感覚を体験しました。
 
ーーレンタル移籍を終え、住友生命に戻られて、仕事に熱を込めることはできていますか?
 
実のところ、復帰後つらい時期がありました。CXに関わる部署に配属になり、とてもありがたいなぁと思いながらも、初めての役割ということもあり、取っ掛かりもつかめず、全くうまくいかなくて。
 
なんでうまくいかないんだろう?
自分はなにがわかっていないんだろう?
それもわからず、どんどん視野もせまくなり、という悪循環に陥っていました。
 
そんなときに、移籍期間を1年間伴走してくださったメンターの横田さんが、ご自身のコンサルタント時代の経験を踏まえて、メンタル面での気の持ちようをはじめとして、プロジェクトの進め方、資料に対する考え方等のアドバイスをしてくださり、とても業務に活きました。
 
また、上司からの「仕事の悔しさは仕事で返せ。期待してるぞ。」という檄は今も心に残っており、折れることなく食らいついていくことができました。
 
そういった周りの支えや仲間のおかげで、価値を発揮した実感が得られたり、少しずつですが良いフィードバックも積み重ねてこられています。
 
引き続き“動き続け”、より大きく価値を発揮し、お客さまのお役に立つことで「100年受け継がれてきた住友生命を、次の世代につなげたい」と思っています。

1年を通して、軽やかに動き続けた田邉さん。
はじめて飛び込んだ会社で自ら1on1をお願いしたり、クレーム対応を引き受けたり、どんどんと業務を拡大。フットワーク軽く動き続けた田邉さんに、「どうやったらそんなに動くことができますか?」と聞いてみると、「やりたいと思って、障壁がなければ、やらない理由はなくないですか?」ニコニコしながら、そう語る姿がとても印象的でした。
 
ZENKIGENで得た経験をもとに、これからも軽やかに手を打ち続けていくであろう田邉さんのこれからが、ますます楽しみです。

Fin

【ローンディールイベント情報】

3/17「多様な人材を活かして伸ばす、ミドルマネージャーのあり方とは?」
今回のイベントでは、部下をレンタル移籍へ送り出した2社のマネジメント層の方にご登壇いただき、実例を交えてミドルマネジメントとしての取り組みについてお話を伺います。


提供:住友生命保険相互会社 / 株式会社ZENKIGEN
インタビュー:管井裕歌
撮影:宮本七生
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/

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