「慎重な青年が得た、一歩踏み出す行動力」 富士ゼロックス 安藤正登さん –前編-
富士ゼロックス株式会社へ入社して10年。研究技術開発本部に所属し、いろいろな部署のパイプの架け橋として、複合機(コピー機)の品質改善に力を注いできた安藤正登(あんどう・まさと)さん。彼は2019年の秋から半年間、家族の健康を支えるベンチャー企業である株式会社カラダノートに移籍し、一歩踏み出す勇気を得て戻ってきました。安藤さんは移籍先で、どのようなことを感じ、学び、進んできたのでしょうか。
カラダノートのメンバーと。写真一番左が安藤さん。
思いがけず巡ってきたチャンスを掴んで
「若い頃、野球部でキャッチャーをやってたことが、自分の性格を作ってると思ってて…。野球って9回2アウトから逆転することも多いじゃないですか。ゲームセットの音が鳴るまで、どんなに上手くいってても満足しちゃいけないというか。そういう考えが染みついてるから、何をするときも不安が付きまとうんです。自信がないのかもしれないですね」
困ったように笑いながら、そう話すのは富士ゼロックスの安藤正登さんだ。普段は研究技術開発本部という部署に所属し、開発部門や生産部門で発生するトラブルへの対応や品質改善の業務を担当している。
「複合機(コピー機)はひとつの機能をとってもいろんな部門が関わってるので、不調が生じたときに問題がどこにあるかわかりづらいんです。そういった時に、データや裏付けを用いてロジカルに対処するのが僕の仕事。原因を明らかにして、どこへ対策を打つべきか各部門に納得させます。機械を相手にする技術職でありながら人との関わりも多く、部門ごとの調整で板挟みになることも。いろんな人と話しながら『ここが原因ですね』って見つけていくのはおもしろいんですけどね(笑)」
仕事におもしろさを見出しながらキャリアを重ねている姿は、まさしく順風満帆。何も不足していないように思える彼が、レンタル移籍をしようと踏み切ったのはなぜなのだろうか。
「タイミングがちょうどよかったんです。社内で自分の役割が変わったとこともあって、経営視点も身に着けたいと思っていました。あとは、その時にけっこう悩んでたっていうのもありますね。富士ゼロックスのなかでAI・IoT分野の新しい事業を始めようとしてたんですけど、なかなか思うようにサービスをリリースできず…。他の企業がどのように物事を進めているのか興味がありました」
そして、思い出すように続ける。
「普段の自分だったら、絶対に行かなかったですね(笑)。長年経験も積んで、自分のポジションもあって。これからというときに一定期間、会社を離れるのは勇気がいることですから…。もしかしたら、部長が後押ししてくださったから、踏み出せたのかもしれないです」
「製造業をゲームみたいに」を実現したい
こうしてレンタル移籍へと踏み出した安藤さん。慎重派な彼が選んだのは、“家族の健康を支え笑顔をふやす”をビジョンに掲げる株式会社カラダノートだった。
「いま流行ってるものって、技術の高さを前面に打ち出してないものが成功していると思っていて。それよりも、UX(ユーザー体験)重視というか。富士ゼロックスは技術を追求してきた会社なのですが、そういう分野をもっと強化したほうがいいと感じていました…。転換期なのかもしれないと思い、ユーザー体験に重きを置いている会社を探したら、カラダノートと出会いました」
たしかに最近は、“ユーザー体験”という言葉をよく耳にする。しかし、毎日のように技術を追求している安藤さんとの接点が今ひとつ見いだせない。「なぜ“ユーザー体験”に興味を持ったんですか」と食い気味に尋ねると、とある研修の話をしてくれた。
「会社の選抜研修で、任天堂Wiiの開発者である玉樹さんの講座を聞いたのがきっかけです。『なぜゲームが面白いのか』というお話が、すごく興味深くて。ゲームの真髄は、仮説を立てて結果を得るというルーティンの繰り返しらしく、それは自分の業務にも通じるような気がしたんですよね。僕たちの仕事も仮説・検証を繰り返し、原因が何か突き止めること。同じようなユーザー体験を作り出せれば、製造業をゲームみたいに面白くできるんじゃないかと思ったんです」
「製造業をゲームみたいに」。パワーワードの登場に、思わずそのまま復唱する。
「やっていることがゲームと一緒なら、サルのようにハマるぐらいに面白くできると思うんですよ。まだ、状態が整っていないだけというか。製造現場にありがちな慣例って、『なぜそれが必要なのか』を説明できないものも多くて。そういうものを取り払って誰でも必要な情報が得られるようにしたら、もっと自由に、自発的に仮説・検証ができる気がしてるんです。そうするためにユーザー体験を作り込むための知識があれば、もっとみんなでわくわくしながら働ける環境を創れるんじゃないかって」
自身と組織、両方のパワーアップのため選んだカラダノート。「レンタル移籍するなら絶対にここがいい」という強い思いがあり、面接は少し緊張したそう。無事に決定したときの喜びは一入だったとか。
「カラダノートに決まったのは、嬉しかったですね。息子が生まれたタイミングとも重なっていたので、私生活で育児系のアプリも試せるなって」
穏やかな声で目尻を下げながら話す姿は、ひとりのお父さんだった。
一言に救われて、一気に広がった視野
意気揚々と向かったカラダノートだったが、最初の頃は戸惑うことが多かったと話す。
「僕がレンタル移籍したときは、カラダノートでは目前の課題と一生懸命に向き合ってる感じだったんです。Chatworkに流れてくる膨大な情報を追いながら、目の前の改修をこなしていく。誰が何をやっているか見えづらいし、自分が何の役に立てるのかもわかりづらい。すごく困惑しましたね。
とにかく早く役に立とうと思い、最初の1週間でアプリの機能実装をしてみたものの、自分のできる限界が見えてしまって。このままプログラムを実装していても、わざわざレンタル移籍をした意味を、カラダノートにも富士ゼロックスにも残せる気がしなかったんですよ。もっとすべきことがあると思い、『もう実装はしない』とその時点で決めました。反対されるかと思ったんですけど、カラダノートは僕の意見を尊重してくれて。そこから、自分だからできることを探るようになりました」
とはいえ、移籍先は発展途上中のベンチャー企業。現状は目まぐるしく変化していくし、懇切丁寧に誰かが状況を説明してくれるわけでもない。自分の意志で試みたアプリ改修も、自分がやる意味も見いだせない。「頑張りたい」けど「どうしたらいいか、わからない」というジレンマに揺れ動く安藤さんを救ったのは、メンターである青木さんの言葉だった。
「『富士ゼロックスの安藤とカラダノートの安藤を比べちゃいけないよ。人は無意識に、過去の自分とは全く違うところにいるのに、色々なことを過去と比べてしまいます。カラダノートは来たばかりの場所。そこに「思った通りのペース」はありません。焦らないで頑張りましょう』って声をかけてくれたんです。会社に投資をしてもらってレンタル移籍をさせていただいたわけなので、焦燥感がすごかったんですよね。『すぐに結果を出さなきゃ』って。青木さんの言葉で心がほぐれたというか。とても精神的に助けられました」
ここから安藤さんの行動に少しずつ変化が出始める。
運命の波に飛び乗り、レンタル移籍へ踏み出した安藤さん。
ビジョンとは裏腹に、出だしは苦戦したようですが、その後、どう変わっていったのでしょうか? 後編は「安藤さんの躍進」や「移籍中のこだわり」について、お伝えいたします。
【株式会社カラダノートより、人材募集のお知らせ】
株式会社カラダノートは、「家族の健康を支え、笑顔をふやす」をビジョンに掲げ、妊娠育児層向けアプリ運営と家族のライフステージごとの意思決定支援サービス事業を行っております。
カラダノート公式noteにて、社員ストーリーや当社取り組みについて公開しているので、ぜひご覧ください。また、現在カラダノートは事業成長に向けて積極採用中です。ご興味がある方は採用情報をご覧ください。
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【レンタル移籍とは?】
大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計36社95名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年6月実績)。→詳しくはこちら
協力:富士ゼロックス株式会社 / 株式会社カラダノート
Interview & Writing:坂井彩花
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/