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「自分から動いてみることで、可能性は広がる」NTTPCコミュニケーションズ 柴田喜匡さん
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「自分から動いてみることで、可能性は広がる」NTTPCコミュニケーションズ 柴田喜匡さん

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IoTやクラウド基盤、セキュリティなどのインターネットソリューションを提供している株式会社NTTPCコミュニケーションズに勤めているのが、柴田喜匡(しばた・よしまさ)さん。1997年に入社してから現在までシステム開発一筋で、現在は部門のマネージャーをされています。20年以上、1つの部署に所属し続けてきた柴田さんのもとに舞い込んだ話が、1年間ベンチャーに在籍する「レンタル移籍」。転職どころか異動の経験もなかった柴田さんにとっては未知でした。しかし、システム開発以外の経験がないことに不安や焦りを覚えた柴田さんはチャレンジすることを決めます。

移籍先は、排泄予測デバイス「DFree(ディー・フリー)」を開発・販売しているトリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社。「DFree」の販路拡大のため、初めて営業や新規事業の推進を行うことに。初めて外に出たことで柴田さんはどんな気づきがあったのか、そしてマネージャーとしてどのようなヒントを得たのでしょうか。伺っていきます。

マネジメント層から始まったレンタル移籍

――柴田さんは1997年入社ですが、当時のインターネット業界は現在とはまったく違ったのではないでしょうか?

おっしゃる通りで、私が大学生の頃に、NTTPCコミュニケーションズが一般家庭向けのインターネットプロバイダを始めたんですよね。当時は、年間20万~30万円くらいかけて、家庭にインターネットを引く時代でした。

 インターネットに関しては詳しくなかったのですが、将来伸びそうだし面白そうだなと興味を持って、採用面接を受けたんです。 最初はシステム開発の部署に配属されたのですが、私はプログラムを書いたことがなかったので、入社してから勉強する日々が始まりました。

その頃はインターネットそのものが新しかったですし、入社して10年くらいはVPNというネットワークサービスやデータセンタの提供など、新しいことを積極的に進めていた時期で、その様子を内側から見られて面白かったです。自分が携わったプロダクトを使ってもらうことも、嬉しかったですね。

 ――入社してからずっと、システム開発を続けてきたのですか?

 社内でも珍しいケースなのですが、私は入社から一度も変わらずシステム開発に携わってきました。途中でマネージャーになり、自分でプログラムを書くことはなくなりましたが、部署は同じです。

私自身、長く同じ部署で働いてきた分、この部署に貢献したいという気持ちもありましたし、会社としても「別の部署の人に入ってもらうより、このまま柴田に任せた方がスムーズだろう」という考えがあったのだと思います。

――その状況から、どのような経緯でレンタル移籍が決まったのでしょう?

 ネットワークやセキュリティが当たり前になった今、会社としては次なる一手を考えなければいけない状況になってきています。その状況を打破する手段の1つとして、従業員に新たな環境で新たな経験をさせる必要があると考え、導入が検討されました。また、人事の面でも、いかに従業員のモチベーションを上げて働き続けてもらうかという課題がありました。そこで、ベンチャーで経験を積むことで、そのヒントが見つけられるのではないかという話になりました。

――会社の課題とマッチングしたのですね。なぜ柴田さんが赴くことに?

 初めての施策なので、まずはマネジメント層で試してみようということで、私に声がかかったんです。私も長年所属した部署で会社に貢献したいと思う一方で、一社どころか一部署しか経験していないキャリアへの不安があったんですよね。

マネージャーとなって会社全体の議論に参加しても、知識不足・経験不足を感じることもあったので、自分の幅を広げるためにも、レンタル移籍はいい機会になるのではないかと考えました。新しい経験に対する期待だけでなく、未知の環境への怖さもありましたけどね(苦笑)。

 経営視点を得るために

――ベンチャーで行くことで、どのようなことを得ようと考えていましたか?

システム開発の部門にいるため、プロダクトをビジネス展開させることや、収益を出すところは間接的にしか関わってこなかったので、その部分の実行力を得たいと考えました。アイデアで終わらせずに、収益化まで持っていきたいなと。開発から収益化までのすべての業務を経験することで、事業全体を俯瞰する視点を持つことができて、結果的に経営視点が身につくのではないかという期待もありました。なので、ベンチャーではシステム開発はやらないと心に決めていました。

それから、移籍の経験をNTTPCコミュニケーションズに戻ってから生かしたかったので、1つの部門くらいの人数の会社がいいという思いもありましたね。マネージャーとして最高で20人くらいの部門を見ていた時期があるので、20人以下を基準にしました。

――その条件に合致したのが、トリプル・ダブリュー・ジャパンだったと。

はい。トリプル・ダブリュー・ジャパンには排泄予測デバイス「DFree」という唯一無二のプロダクトがあり、事業展開や拡販のフェーズに移行していたので、自分が思い描いている経験ができるのではないかと感じたんです。介護やヘルスケア業界は知識がなかったものの、純粋に興味があったので、いままでにない経験ができそうだという思いもありましたね。

私が移籍した時はメンバーも15人くらいで、初めての環境で緊張しましたが、スムーズに迎えていただいたので当初からフランクにコミュニケーションが取れました。

――いいスタートでしたね。リアルな場でコミュニケーションが取れていたのですか?

はい、週1~2回はリモートという方やフルリモートの方もいましたが、私はできるだけ出社しようと決めていました。事業開発のポジションに入れていただいて、製品の発送やトライアルの準備、問い合わせの電話の応対など、会社にいないとできない業務がほとんどだったので、必然的に出社する形になったところもありますが。

とはいえ、会議はZoomでできますし、社内でのやりとりはSlackが基本だったので、その辺りを使いわけることができて、コミュニケーションで困るということはなかったですね。 

代表の中西さん(左)と柴田さん(右)

一つひとつ丁寧に積み上げることが大事     

――事業開発のポジションとのことですが、どのような業務を担当されたのでしょう?

法人向けの「DFree」の事業展開、拡販、改善の業務を担当しました。アプローチ方法の企画からプロモーション、営業、サポートまで、プロダクトと顧客をつなげる部分のすべてです。ですが、事業開発という業務に漠然とした知識しかなく、目標を立てても、最初はそこから自分がどういう動きをしていけばいいかわかりませんでした。

そのような状況で、トリプル・ダブリュー・ジャパンの上司の方と話す中で、「まずはプロダクトを自分で説明して売れるようにならないとプロダクトの改善、開発はできないのではないか、それがベースになるのではないか」というアドバイスをいただいたんです。

――その言葉もあって、企画からサポートまで一貫して行うことになったのですね。

そうですね。これまで営業経験はなかったし、もともと緊張しやすい性分でもあるので、不安もありました。ただ、初めてのことに失敗はつきものだし、何事も経験だと思ったので、まずは商談の場に同席して、現場を知るところから始めました。週2~3回は商談があって、2週間経った頃に実際に自分でプロダクトを紹介し始められるようになりました。

排泄予測デバイス「DFree」

――独り立ちしたわけですね。

いや、完璧な独り立ちにはそれなりの時間がかかった気がします(苦笑)。プロモーションからアポ入れ、プロダクトの説明まで1人で行えるようになったのは4ヶ月目くらいからです。6月に「DFree」の新機種がリリースされることが決まっていて、2月からプロトタイプでの先行トライアルを募集し、4月・5月で実施していくというプロジェクトの担当を任されたので。「30施設以上の施設に、新機種の先行トライアルを実施してもらう」という目標が掲げられていたので、施設へのご案内、トライアルキットの発送、トライアル期間中のサポートをするといったことを、行っていきました。

――目標は達成できましたか?

目標数には到達しました。「DFree」について対外的に説明できるようになりましたし、徐々に1人でもできるという自信は湧いてきましたね。ただ、トライアルを終えて、実際の導入に向けてアプローチする段階になると、なかなか思うように進まないといいますか…。

「DFree」は介護ロボットという分類になるので、導入にあたって国から補助金が出るのですが、補助金の割合や募集時期が都道府県によって異なることも導入の難しさにつながっていたと思います。たとえば、施設が4月にトライアルをしてくれたとしても、その施設がある県の申請期間が7月だったりすると、「3ヶ月後に検討」となってしまうんですね。なので、補助金申請のタイミングを意識してアプローチをかけるなどの工夫も。

 ――導入しやすいタイミングを見極めて、動いたのですね。

補助金が出るタイミングに合わせることで成果につながるのではという仮説をもってアプローチしていたので、ただアタックすればいいわけではなく、顧客にとっていいタイミングを見計らうことが大事なんだと知りました。

結果的に、1年間で私が担当した20施設ほどが新機種を導入してくれました。導入までの交渉なども担当して、すごく貴重な経験になったと感じています。

正直な話、最初はビジネススクールで習う経営戦略的な仕事をするイメージを持っていました(笑)。なので、実際に自分の現場での業務がどう事業開発や経営につながっていくのかがわからずに悩んだこともありました。ですが、上司やメンターさんからのアドバイスもあって、事業開発を進める中で、現場の業務を一つひとつ丁寧に行っていくことと、自分の業務を常に事業全体や経営と紐づけていくことが大切だと気づいたんです。それは一貫して経験してみないとわからないことでした。  

複数の事業開発に触れて気づいたこと

――移籍している1年間は、ずっと「DFree」の事業展開に専念していたのですか?

もう1つ並行して担当していた業務がありました。トリプル・ダブリュー・ジャパンでは、私が移籍する直前に「DFree」を導入している施設向けの「おむつ・パッド月額定額プラン」、いわゆるおむつのサブスクを始めていて、その事業展開も担当させていただきました。どちらの業務も事業展開や拡販という目的は同じだったのですが、施設側での導入に対する考え方や環境が違ったので、違うアプローチの仕方が必要でした。

「DFree」は施設にとって新しいプロダクトなので、機能を伝えれば、導入するメリットを理解してもらいやすいといえます。一方、おむつは既に施設で使っているもので、競合もたくさんいるので、どのような魅力や効果を伝えれば切り替えてもらえるかといった難しさがありました。切り替えとなると、いくら価格の低さを訴求しても、「今のおむつの方が慣れてる」「販売店とのつながりがあるから」といった理由で、導入に至らないケースがほとんどだったんです。

――確かに、新規購入と比べると、切り替えはプロダクトの良し悪しだけで判断できない部分もありそうですよね。

そうなんです。「弊社の方がコスト削減になりますよ」と伝えるだけでは施設側の気持ちを動かせないので、手を替え品を替えアプローチしてみたのですが、施設の方には刺さり切らなくて、苦しみました。

――ターニングポイントとなるような出来事があったのですか?

移籍して半年くらい経った頃、おむつ業界に20年くらい携わってきた方が入社して、その方に施設向けのおむつ業界の構造やアプローチの仕方なども改めて教えていただきました。その結果、話を聞いていただける場は増えましたが、導入までは簡単にはいかなかったです。まずは試してもらうところから地道に始めました。現場の方には気に入っていただけても、決裁者への説明などに手こずり、こちらは移籍終了までに結果を出すことはできませんでした。

ただひと口に事業展開といっても、扱うプロダクトで動き方が変わることを知れましたし、状況に応じてアプローチの仕方を変えていくことが大事だという気づきも得られたので、私個人の経験値はかなり上がったのではないかと感じています。

思い描いたことを自社で実現できるチャンスはまだまだある

――改めて1年間を振り返って、もっとも大きな学びはどのような部分ですか?

大きかったのは、“自分で動く”ことの重要性。ビジネスの教科書に書いてあるような「数字を見て戦略を立てる」こと「机上調査してフレームワークに落とし込む」ことも大事だと思いますが、実際に顧客やパートナーと接する中でいただいた言葉や得た気づきが、事業開発や経営の方向性を決めるのだろうと感じたんです。 

そう思えたきっかけの1つに、移籍中の相談相手になってもらったメンターの方の言葉もありました。最初の頃は、自分の業務が目的としていた実行力や経営視点にどうつながるかが見えなくて、焦っていたんです。その時に、メンターの方から「事業展開のノウハウを得るには、ひたむきに日常業務をやっていくなかで、常に自分の業務が事業展開や経営と紐づいているかを考える癖をつけましょう」という言葉をいただいたんです。

 トリプル・ダブリュー・ジャパンでも、「DFree」の事業を続けてきた中で得た顧客の声からおむつサブスクが顧客課題の解決につながるということに気づき、事業化したという話を聞きましたし、顧客と接することが最初の一歩なんだと知ることができました。

 顧客の声を得るためには、自分でプロダクトの説明をして、売上を上げて、顧客をサポートするところまで経験するのが一番良いやり方だと思います。移籍当初に上司の方からアドバイスいただいた内容とつながって、今ではすごく納得できています。

――納得感を持った上で経験ができたわけですね。

はい。さまざまな業務を通して、売上につなげるところまで試行錯誤する経験ができたので、移籍の目的である「実行力をつける」のスタートは切れたかなと感じています。

もう1つの「経営視点を身につける」には、まだ道半ばかなという感覚です。NTTPCコミュニケーションズに戻ってからも顧客とのコミュニケーションを継続する中で、見えてくるものなのかなと思っています。

 ――初めて外に出てみたことで気づいたことはありましたか?

外に出てみることで会社を俯瞰できましたね。実は、私が移籍する前に、NTTPCコミュニケーションズの中では「移籍させたら、そのまま転職してしまうのではないか」という懸念点も上がっていました。確かに、ベンチャー現場を見て触発される人はいると思います。

ですが私は移籍したことで、勤めている会社に「NTT」という看板がついていることの可能性をより感じられたんです。ベンチャーに身を置いたことで、会社の規模で対応を変えられてしまうという現実もあると感じました。

ベンチャーでチャレンジすることは、それはそれで夢のあることなのですが、「NTT」の看板があるからこそ、思い描いたことを実現できるチャンスを広げられるという考え方もあるのではないかと思ったんです。

――大企業にもベンチャーにも、それぞれの可能性がありますよね。

だから、レンタル移籍が会社のリスクになると捉えるのは違うのではないか、むしろ外での経験が社員のモチベーションをアップさせることがあると、伝えていきたいんですよね。

さまざまな経験をすることの大切さは今後も社内で発信していきたいですし、移籍したいと考える人がいたら、サポートできたらと考えています。

自分でも動く姿を見せながらチャレンジしていきたい

――移籍が終わってからは、もとのシステム開発の部署に戻られたのですか?

いえ、システム開発には戻らずに、一旦はサービス戦略担当という部署に所属しています。いずれにしてもレンタル移籍で経験した事業展開のノウハウを生かせる業務を担当する予定です。これまで開発部門として裏側からしか見てこなかったので、営業部門や顧客がどのように見ているのか知れたらと思い、今は社内のプロダクトを表側から見る活動をしています。

その第一歩として、営業部門にお願いして商談に同席させてもらっています(笑)。当社だと、エンドユーザへはパートナーが販売している場合が多いので、パートナーがいかに売ってくれるかを考慮する必要があることや、なかなかエンドユーザーの声を直接聞くのが難しそうという気づきがありました。サービス開発にそれらをどう生かしていくかが課題なのではないかとも感じています。

いずれは自分でプロダクトの説明をして、売れるくらいにはなりたいですね。そうすることで、課題の解決策や事業展開のアイデアが見えるだろうという仮説を立てて、動いています。

――“自分で動く”を実践しているんですね。

経験はちゃんと生かしたいし、自分の担当でない商材でも、定期的に顧客の声を聞きにいくことはルーティンにしたいと思っています。会社の構造を変える上でも、エンドユーザーや販売パートナーの声は大きなきっかけになると思うんですよね。

あと、戻ってきてからいろいろな部署の人と話してみると、それぞれに事業や社内環境を改善するアイデアを持っているんですよ。でも、実現の方法がわからない。だから、現場の声もヒアリングして、意義のあるアイデアを収益化するところまで持っていくということも、今後やっていきたいです。

――柴田さんの世界が一気に広がった感じがしますね。社内としては、マネジメント層がレンタル移籍に赴くこともチャレンジの一環でしたが、マネジメントの面での気づきなどもありましたか?

トリプル・ダブリュー・ジャパンに行ったことで、会社として掲げているゴールをメンバーにも共有することの大切さに、改めて気づかされました。自分の部署にメンバーが入ってきたら、ゴールを共有して、そのゴールに向かってそれぞれの業務があることを全員が意識できるように、私も実践していきたいです。

NTTPCコミュニケーションズは機能別組織という構造のためか、自分の業務に対して責任を持って取り組むものの、その業務が事業にどう影響しているかあまり意識できていない人も多いような気がします。たとえば、プロダクトの資料を作るにしても、資料作成そのものが目的ではないはず。事業展開や利益の創出のための資料のはずだから、その目的を意識するべきだし、そうしていくと資料のクオリティもきっと上がりますよね。

会社全体を一気に変えることは難しいから、まずは自分のチームで実践して、意識を変えていきたいです。いろいろ模索しながら、トライアル&エラーを繰り返していくことになると思いますが、自分で動く姿も見せながらチャレンジしていきたいと考えています。

「事業展開の実行力」「経営視点」に関する学びを得るため、レンタル移籍を決意した柴田さん。1年間の経験の中で得られた学びは、すべての働く人に必要といえるであろう「自分で動くこと」の重要性でした。そして、移籍を終えた柴田さんは、早くも自ら動き出しています。その成果が見えるのはもう少し先になるかもしれませんが、その一歩が、より良いプロダクトがユーザーに届くきっかけになることは、間違いないでしょう。

Fin

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協力:株式会社NTTPCコミュニケーションズ / トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社 
インタビュアー:有竹亮介(verb)
撮影:宮本七生
提供:株式会社ローンディール
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