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「戻って出世してくれ」 ベンチャーで大企業人材を受け入れて気づいたこと

「彼らには、戻って出世してくれと期待しています(笑)」
そう語るのは株式会社チカク代表の梶原さん。

株式会社チカクでは、2017年に1人目のレンタル移籍者・田村さん(関西電力)を受け入れて以来、2018年に大西さん(パナソニック)、2019年に木付さん(エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ)を受け入れている。

株式会社チカクは、家族が距離を超えてつながれる世界を目指し、まご専用のチャンネルサービス「まごチャンネル」を開発・販売しているベンチャー企業。2018年には、世界的に権威ある「iFデザインアワード」を受賞するなど、IoTスタートアップとして注目を浴びている。
アップル社の日本法人を経て同ベンチャーを立ち上げた梶原さんは、大企業とベンチャー、両方の視点を持っている。両視点があるからこそ、レンタル移籍が両社にもたらす影響が見えるという。

「実際のところ、レンタル移籍者を受け入れたベンチャー企業は、大企業で働く彼らのことをどう捉えているのか……?」
梶原さんに、レンタル移籍を受け入れての気付きや、大企業で働く人材に期待することなどをお話し頂いた。

ーピュアなモチベーションに刺激!?

Q:率直に聞きますが……、レンタル移籍を導入し続けている理由は?
やはり人手が足りないという問題も大きいのでしょうか?

それはもう……、お1人目の関西電力の田村さんがすごく良かったからですよ。確かに受け入れ当時の2017年秋頃から人が全方位的に足りていなくて。とはいえ新卒を雇って教育するのは難しいという状況。

田村さんはビジネスマンとしてしっかりと教育を受けてきた方でしたので、そういう方に来て頂けるって本当に有難いなと思いました。実際、キャッチアップは早いし、特定分野の知識は持っているし、即戦力でした。当時デットファイナンスを僕がひとりで動いていたので、財務の知識がある田村さんにサポートしてもらえたのは有難かった。それは、その後に入ってくれた2人目の大西さんや、3人目の木付さんも一緒。本当に助かっています。

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PROFILE :梶原 健司(かじわら けんじ)
TVで流れたThink different. のCMに感動してアップルの日本法人に新卒で入社。以後12年半に渡り、ビジネスプランニング、プロダクトマーケティング、ソフトウェア・インターネットサービス製品担当、新規事業立ち上げ及びiPodビジネスの責任者等を経て、独立。2014年に株式会社チカクを設立。


ただ、当然3人とも、今までのスキルを使うために(ベンチャーに)来たわけではなく、三者三様、新たな経験を積みに来たわけですから、そこはちゃんと「何をしたいのか?」を伺って、色々と本人の希望に合わせてチャレンジして頂きました。

スピード感も、仕事の進め方も考え方も、大企業とベンチャーは全然違うので、いかに大企業でご経験があるとはいっても、その辺はまたいちから教えないといけない状況で、正直大変だったりもしますが、みなさん飲み込みは早いですし、教える労力以上に貢献してくれています。

最初に「本人が何を経験して、何を持ち帰りたいのか」、そこは僕も本当に大事にしていて。こちらが想定していなくても、本人がやってみたいということがあったら、「じゃあ、こういうことをやってみますか?」って提案するようにしています。本人のやりたい意志も強いから、それも大きな力になっているんじゃないでしょうか。

例えば、パナソニックからいらっしゃった大西さんは、今までやってこられた研究・開発という専門性を活かしてもらいつつ、新規サービスの検証と立ち上げ準備をしてくれている。エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズの木付さんは、営業の新規開拓領域を自由にやってもらっています。

Q:なるほど。必要なスキルを借りながら、本人が挑戦したい領域で新たな経験をしてもらうと。貢献が大きいというのは、成果が出るということでしょうか。

それもありますが、マインドの部分も大きくて。彼らの「ピュア」な姿勢というか、モチベーションの高さはいい刺激になっています。

もちろん、うちのスタッフも仕事に対するモチベーションは高い。でも6期目を迎えて、最初の立ち上げ期からは進んできているので、少し落ち着いてしまってる部分があったりします。だから半年とか1年という決められた期間で貪欲に吸収していこうとしている、彼らの「ピュア」なモチベーションが、我々に初心を思い出させてくれました。

Q:ピュアですか。確かにそのモチベーションから受ける影響は大きそうですね。では、社員の皆さんも、移籍者が来ることをポジティブに考えていらっしゃる?

はい、みんなプラスに捉えてくれていると思います。
当然、動き方や物事の進め方は大企業とは違うので、コミュニケーションミスやギャップが発生することもありますけど、みなさん人柄も良いですし、うちのメンバーも気持ち良く働けているようです。移籍者3人のうち終了したのは田村さん1名だけですが、今でも社員含めて交流が続いていますし、田村ロスと名付けるくらい、彼の移籍が終わった当時は、皆、寂しさを感じていたようです(笑)。

ー戻って出世してくれ。いつか一緒に事業をやりたい

Q:ですが、どんなに育てても社内に馴染んでも、結局は期間限定で去るというところにデメリットは感じませんか?

去っていくのは寂しいですし、もっと長期間いて欲しいと思います、当然。でも、ベンチャーを続けている以上、人も組織も拡大していくのが前提になっていますので、本当はフルコミットしてくれる人を採用すべき。とはいえすぐには採用できない。間というと言い方が良くないのかもしれないですが、そういう期間に埋めてもらえるのって、すごく有難いこと。こちらも助けてもらっているので仕方ないかなと割り切っています。

なので、とりあえず僕は彼らが戻った後、社内で出世してくれと(笑)。ここで身につけたことを活かして、自分がやりたい事業をどんどん推進していって欲しいと思っています。

彼らには十分その素養があります。とにかく学ぼうっていう姿勢があって、ちょっと教えてあげればすぐに吸収するし、モチベーションも高い。それに、「圧倒的な当事者意識」をしっかり身につけてもらっているから、それが大きい。

大企業では経験することが難しくて、ベンチャーで一番経験できることの一つは「圧倒的な当事者意識」を持つこと。これは、大企業で新規事業を進めるためにも不可欠です。

極端な話、大企業の場合、ひとりが頑張っても頑張らなくても、会社全体にはそんなに影響がない。大企業の本質は人に依存せず仕組みで回していくことなので。そうしたしっかりしたビジネスモデルがあるから、大きくなっていったわけです。

でも、ベンチャーはアーリーステージにある。ひとりがうまくできなかった場合、下手したら会社が潰れることだってありえます。ひとりが与える影響が大きいので、当然「自分がなんとかしなければ……」という圧倒的な当事者意識がないとやっていけない。

大企業に戻って新しいことを始める場合、どうしても色んな反対意見が出てくると思います。そういう時にベンチャーで経験した「自分が何としてもやり遂げる」という当事者意識を持てれば、複雑な社内の調整や上司・経営陣への説得も乗り越えていけるでしょう。

だからこそ移籍から戻った後は、当事者意識を持ってどんどん事業を実現していって欲しいと思っていますし、いつかは一緒に事業をやりたいですね。

ーベンチャーと大企業がともに解決できる取り組みはある

Q:確かに。居続けてもらうことだけがいいわけではありませんね、外から共にすることもできますよね。

とにかく、戻った後も諦めないで頑張って欲しいなと。
Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズがインタビューで何度か言っているのですが、スタートアップで一番大事なのは、「優秀なメンバーをどう集めるか」「やろうとしていることに対して情熱を持っているか」だと。

自分一人では大きな事業はできないので仲間が大切だということ。それから、事業を立ち上げるにはパッションが大事だという話でした。

ベンチャーのように新しい事業を進めていく過程は、短期的に見れば労力に見合わないことだらけです。世の中の多くの人にとって理解ができるような合理的なことは普通誰かが先に実現しているからです。新規事業の起ち上げもそうだと思います。企画を通すのも、検証するのも、答えが見えない中で行動するのも、失敗もたくさんあると思いますし、周りからは疑念や不安や反対意見をぶつけられたりで、割に合わないことだらけ(笑)。
だから一つひとつのアクションの成果や効率を重視する、合理的な人ほど諦めてしまう。でも自分が情熱を持てていれば乗り越えられると思います。予算がついたからとかチャレンジするとか、誰かに言われたからやるとか、仮にきっかけはそうであってもそれで終わっちゃダメだと思うんです。ちゃんと自分はこれをやり遂げたい! という情熱を持ってのぞむことが大事なので、(ベンチャーで)その気持ちを持って帰ってもらえたら。

Q:現在、大企業との取り組みや関わりも多いと思いますが、 そういう中で梶原さんが望むことはありますか?

大企業には、もっとベンチャーをうまく使ってくれたらいい。大企業には大企業の経営課題があると思いますが、ベンチャーと一緒に解決できる取り組みはいっぱいあると思いますので。

それから、大企業の中には優秀な人が山ほどいるから、そういう人たちにどんどん出てきて欲しいですね。今もそうですけど、前職でも色んな方々とご一緒する中で、「うわぁ、この人たち優秀!」みたいな、極めて優秀な人材に何人も出会ってきました(笑)。それは年代役職問わず。

大企業は彼らを活かしきれていない、と言うとベタな話になってしまいますが……、日本の企業はScrap And Buildが苦手ですし、既得権益や昔からの風習があるので、優秀で、頑張ろうとしている“個人”が突出しにくい。色々取り組んでいらっしゃる会社もあるとは思いますが、例えば合弁会社を立ち上げてみるとか、優秀な人に力を発揮してもらう機会をもっと増やしたらいいと感じています。

ー少しずつ染み出してコラボレーションするのが日本的!?

Q:最後に。今後人材が流動化していくことに対して、期待することはありますか?

流動化の話でいうと、シリコンバレーがとか、海外のやり方を取り入れる…とか色々ありますが、やはりその国の風土、日本企業に合うやり方があるわけです。日本酒は日本の風土でつくられるように。

日本の場合、優秀な人が大企業の中だけで活動するのではなく、だからといって完全に外に出るのでもなく、少しずつ染み出していってコラボレーションする、というやり方が合っていると思います。ONE JAPAN など素晴らしい取り組みも出てきています。

社内の優秀な人を“社会で活躍させる”ことは、結果会社にとってもポジティブだし、転職と会社に居続ける以外に、もっといろんな選択肢があってもいいんじゃないかなって。そういう意味では、ローンディールをPRするわけではないですけど、全大企業、全NPO、全官庁、全自治体がレンタル移籍を実施したらいいのではと思いますけど。

ちょっと大企業寄りの話になっちゃいましたけど、当然、全ベンチャーが受け入れ先としてアカウントを持っているような状態が理想です。ライバル(のベンチャー)が増えると、僕らの会社も、優秀な人に選ばれるように努力しないといけないですけどね(笑)。

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株式会社チカクにてIOSエンジニア、サーバーサイドエンジニア、
UI/UXデザイナーほかを募集!

株式会社チカクさんでは、 現在、エンジニアやデザイナーを募集しているそうです。取材にご協力くださった代表の梶原さんよりコメントを頂きました。「今、家族と離れて暮らすご高齢の方は1300万世帯にもなります。そういった離れて暮らす家族が、世代や距離を超えてつながれる世界を目指して、我々のプロダクトが家族をもっと幸せにすることを信じて、日々開発をしています。興味がある方は、ぜひ一緒に働きましょう」とのこと。
興味がある方は、以下よりチェックしてみてください!


(※1)レンタル移籍

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計24社48名以上のレンタル移籍が行なわれている(※2019年8月実績)。→ お問い合わせ・詳細はこちら


取材協力:株式会社チカク
Interview:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/

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&ローンディール

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