「600人を超える社内コミュニティ創造と事業の収益性改善はこうして行われた」 パナソニック株式会社 ハウジングシステム事業部 濵田 広大さん
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「600人を超える社内コミュニティ創造と事業の収益性改善はこうして行われた」 パナソニック株式会社 ハウジングシステム事業部 濵田 広大さん

2019年10月から1年間、大阪・浪速区のベンチャー企業「YOLO JAPAN」にてレンタル移籍を経験した濵田広大(はまだ・こうだい)さん。様々な国の在留外国人向けのライフサポート・関連施設YOLO BASEの運営を行う「YOLO JAPAN」では「イベントプロデューサー」を任され、イベント運営から広報・集客などあらゆる業務に携わることになった。大企業との風土の違い、使用したことのないデジタルツールに奮闘しながら、持ち前の対応力を活かして、コロナ禍でも200~500人規模のビッグイベントを次々に成功させた。途中コロナの影響で、いくつもの壁が立ち塞がることもあったが、「小さなことから実験的に始める」「高速でPDCAをまわす」「敵をつくらない」など、ベンチャーで働くなかで多くの学びが身についたそうだ。

あれから9ヶ月が経った(※ 取材当時)。パナソニック株式会社ハウジングシステム事業部に戻った後、システムバスの事業にて商品企画・販売企画を担当している濵田さんは、どうやら、600人を超える大規模な社内コミュニティを発足させるだけでなく、事業の収益性改善にも大きく寄与しているそうだ。移籍から戻った濵田さんはどんなことに取り組み、どんな思いで仕事や仲間に向き合ってきたのだろうか。これまでの道のりを語ってもらった。

100名以上の方に話し続けた結果     

濵田さんはまず、パナソニックに戻ってから、レンタル移籍での経験や学びを社内外100名以上の方に話し続けたそうだ。それは半年ほど続き、部署外からも「濵田さん、ちょっと話聞かせてよ」と声をかけられて、仕事が終わってから話すこともあった。

移籍経験の記事がWEBで出てからも、いろんな部署や関係各所からお声がけがあって。基本はオンライン勉強会というような形で、しばらくは定期的に開催していました。どういう仕事を経験したかということだけでなく、その時の自分の感情や考え方を伝えました。聞いている方が、レンタル移籍を擬似体験できるような伝え方を意識していて。『こんなこともできるんだ』『そういう考え方もあるのか』と、自分も何か挑戦してみたいなと刺激になったらいいなと思ったので」

そんな濵田さんの移籍体験を聞いて「チャレンジを頼もしく感じる」「とてもためになった」「応援しています」というような声が、濵田さんの元へ多数届いた。「ハマちゃんみたいな人が増えたら、会社はもっとよくなるね」と、周囲の部署の責任者からの激励もあったそうだ。

「単に経験を伝えるだけでなく、自分の支援者を増やそうという気持ちも込めてお話をしていました。これはYOLO JAPANで、何か事を動かしたいときは支援してくれる人をつくっておく大切さを、身に染みて感じたことが活きています」

※ 写真は移籍時に撮影したものです。

「お風呂好きコミュニティ」の発足

こういった地道な活動は、社内でコミュニティを作るときの素地にもなった。

「YOLO JAPANでも、日本に住む外国人の皆さんと日々仕事を一緒にするなかで、繋がりを強め、情報をしっかり伝播させるために、コミュニティ作りは大切だと感じていました。そこで、パナソニック社内で『お風呂好きコミュニティを作りたい』と会社に提案しました。主にオンラインコミュニケーションツールの『Teams』を使って、バスルーム(お風呂)に関連する情報共有をグループ会社内で行うコミュニティです。”炎上するようなことがあればすぐに閉鎖”を条件に始めさせてもらえることになりました」

最初に行ったのは、「開発秘話セミナー」。パナソニック独自のシステムバスの機能はどのように開発されたのかを、実際に開発者から話を聞くことができる時間を設けた。営業職やショウルーム、グループ内の販売会社の人など、多くの人が参加し、反応も上々だった。

「1〜3月まで、全6回セミナーを行ったのですが、その時に『バス・オンラインサロン(コミュニティ)を開設します』と声をかけ続けました。開発秘話に興味がある人なら、親和性があるはず。自分の仕事に直結する情報はメリットに感じてもらえると思ったんです」

セミナーでの告知だけでなく、すでに関係性がある方には直接メールも送った。これも、YOLO JAPANで集客のために送っていたメルマガが役立ったそう。濵田さんは、「大企業の方は、メルマガなどの一斉送信にためらいを感じる人も多いと思うが、自分はそういうのは既になくなっていた」という。 その甲斐あって、最初から100名もの人がコミュニティへの参加を表明してくれた。こうして2月6日(風呂の日)にパナソニックのお風呂好きコミュニティ『バス・オンラインサロン』は開設された。

部署や会社の垣根を超えて生まれるコミュニケーション

『Teams』のチャンネル内では、濵田さんを中心にお風呂に関する情報が共有され、そこからコミュニケーションが生まれているそうだ。

「ある芸能人の方が、YouTubeでパナソニックのバスルームを紹介してくださっていたので、コミュニティでシェアしたんです。その方はお風呂の中の照明に少し思うところがあったみたいで、動画の中で話されていました。するとそれを見た照明開発部門の人が、どういう照明なのか、詳しく解説コメントを入れてくれて。さらにその解説を見たCS部門でお客様のお問い合わせ対応されている人が、『こういう情報はありがたい!』と、そこで交流が生まれたり」 

どんな情報を必要としているのか、コミュニティ内でアンケートを実施。ニーズに沿ったセミナーを実施している。先日は「バスルームの特注品の導入事例を知りたい」という声が多かったため、関連部署や全国から納入事例を集め、その中から数名、現場担当者にも出演してもらい、セミナーを行ったそうだ。

「楽しんで学べる時間にしたいので、進行役と対談形式でセミナーを行っています。時短勤務の方も気兼ねなく参加していただきたいので、お昼休みに30分で行うなど時間の工夫もしています。おかげさまで参加していただける方も増えて、毎回150名ぐらいの方が参加してくださっています」

濵田さんはコミュニティを運営する中で、いくつかルールを設けている。

「入会するためのルールとして、『お風呂に関心が高い人(つまり“お風呂好き“)』を掲げています。お風呂が好きなことに役職や立場は関係ないとお伝えしております。だからここは、気兼ねなくお風呂について語れる場なんです。入会した人しか情報が見られないセミクローズドなコミュニティなので、安心して発言できるということもあるかもしれません」

現在、お風呂好きコミュニティには640人もの方が参加。今では「人事の研修担当に紹介されて入りました」という方もいるそう。濵田さんが発足した「バス・オンラインサロン」は、社内でも大きな注目を集めているようだ。

「コミュニティ作りがうまくいっているのは、意図的にテーマを絞ったからだと思います。『お風呂』にフォーカスしたことで、参加するイメージも沸きやすいと思っています。得られるものも明確で、好きなものに対してのことなので意見を出しやすいと感じることで参加ハードルが下がるのだと思います。それに、自分の業務にまったく関係ないことには、みなさん、なかなか勤務中に時間を割けないと思うんです。なので、コミュニティ内で発信された情報を見たあとすぐに使えるぐらい、仕事に直結した情報発信を心がけています」

移籍中に得たスキルをフル活用

YOLO JAPANでは、WEBメディアの立ち上げやSNS発信など、WEBマーケティングに関する仕事にも携わっていた濵田さん。その経験を活かし、システムバスのWEBマーケティングを強化する「WEB部(WEB系の情報共有・施策を実施する関連部署の集まり)」を自主的に立ち上げた。システムバス事業とWEBを管轄する部署、宣伝関連の部署の中からメンバーを募って、月1でミーティングを行うほか、自グループ内にWEB部専用のTeamsチャンネルをつくり、パナソニックのお風呂についてWEBを活用した認知を広げる活動・販売に直結する施策の検討を行っている。

「パナソニックの「ENJOY YOUR ROOM」というサイト内にお風呂に特化したページを制作、SNS広告の出稿、インスタライブなども行い、WEBからショウルームへの来場者数を増やす仕組みをつくっています。お風呂の部門で前例をつくり、他の部門へ派生できるように、まずはトライアルでやってみようと」

※ バナーはHPより抜粋

もっと商品の良さを伝えたいと、YouTube動画を制作。シナリオからキャストの手配まで濵田さんが行ったりするそうだ。そして、WEB部で、動画や広告を見た人が、どのくらいショウルームに足を運ぶのかという検証をおこなった結果、十分に促せていることがわかった。

「WEBやSNS広告でお客様の来場を促せるという結果が数値で現れたので、これを軸にさらに認知を増やすためにどうプロモーションすべきかを話し合っています。結果がでたことも嬉しいですが、一緒にやっているメンバーの意識も少しずつ変わってきて。最初はSNSやYouTubeに苦手意識があったり、知識が少なかったメンバーも積極的に自分から情報を持ってきてくださるようになりました。受け身から、攻める姿勢に変わっていると感じています。ミーティングも毎回、すごく盛り上がります」

「YOLO JAPANで教えてもらったことをパナソニックに置き換えて実践しているだけという感覚ですが、今までできていなかった分、成果は少しずつ出てきています」

9ヶ月の集大成の成果が導いた「金賞」

こうしておよそ9ヶ月、走り続けてきた濵田さん。その集大成が現れたのが、各事業部で取り組む「WITサークル」での取り組みだった。WITサークルとは、事業の中で必要な改善ポイントを洗い出し、改善策に取り組むチームのこと。濵田さんは、水廻り商品全体の事業部の中で代表メンバーに選出され、さらに、そのリーダーに抜擢された。

「まずは創業者の松下幸之助さんの言葉を借りて、チーム名を『君、それは人の役に立つんかね』という名前にしました。どのようにしてお客様の役に立ち、利益をあげられるかということをテーマにしたんです。バス事業の中では、特注のお風呂の売り上げをどう上げていくのかが、課題でした」

そこで濵田さんのチームは、コミュニティ内でのヒアリングや、営業やショウルームの方などからの情報をもとに、どんな層にどういったシチュエーションで特注のお風呂が必要とされているのかを明確にした。そこで得た結果を参考に、WEB部でHP制作を行い、SNSやコミュニティでの勉強会で積極的に発信するなど、より多くの人に情報を届け、採用件数を増やす取り組みを行った。

それだけではなく、作業の効率化にも取り組む。見積もりに時間がかかりすぎると、提案のハードルが上がってしまう。それを解消すべく、WEB内で簡単に見積りができるようシステムを改善し、見積もり時間や商品納期の大幅な短縮をはかった。

これらの結果、収益性が低いとされていたシステムバス事業の収益性の改善に繋がった。そしてこのWITサークルの取り組みが、パナソニックで行われている社内コンテストの中でも「金賞」として表彰されたのだ。今年の11月には、世界中のパナソニックグループで行われるコンテストにもエントリーされ、取り組みが紹介されるそうだ。

「数億円単位で販売効果や成果が数値化できたことが一番大きな結果だと思いますが、やはりこのコロナ禍でコミュニケーション手段をデジタルにいち早く移行できたことも大きかったと思います。コミュニティやWEB部の活動により、特注の認知度を社内で上げていくことができた。松下幸之助さんも『雨が降れば傘をさす』という言葉を残していますが、この2年で変化してしまった環境に見合った判断ができたことも、評価していただけたんじゃないかなって。実際に商品を納入し、多くのお客様に喜んでいただいています」

次なる挑戦は、新商品開発のチームづくり

様々な挑戦が芽を出し、活躍を続ける濵田さん。現在は、新商品開発のプロジェクト担当として奮闘している最中だ。全国で約9つのエリア、全員で58名のプロジェクトチームのまとめを担う。発売年度に向けて、新商品のデザイン・プロモーション・競合リサーチや販売目標設定などを各エリアごとに行っている。ここでも、レンタル移籍で得た学びが役立っているという。

「新商品というと大きくプロモーションをすることを考えがちですが、まずは小さく、身近なところから始める。たとえばですが、今ある商品でチャレンジングな販売企画を小さく試してみて、数値化して市場の反応を見る。新商品の販売時にはその結果をもとに販売戦略を立てていけるようにと考えています」

また、競合他社とタイアップするという発想もチーム内に持ち込んだ。これまで競合商品とバッティングしないように考える傾向にあったが、口コミでも人気の高いシャワーヘッドとパナソニックのお風呂をセット販売するという、異例の販売企画をチームに提案したのだ。

「敵を作らず、たくさんの人を巻き込んでいくほうが、うまくいくと移籍中に経験をしたからこそ、出てきた発想だと思います。チラシや提案書も僕が作るのでサクっとやりましょう! と声をかけ、それを使ってすぐに代理店へも提案してもらいました。早々に結果が出たので、高速PDCAの大切さを、身をもってチームで共有できたんじゃないかなと思っています」

まずは1%、改善することを目指す

多くの学びを活かし、日々邁進している濵田さん。移籍終了時から今を振り返り、改めてどんなことを感じているのだろうか。

「移籍から戻ってすぐの時はやる気も満ち溢れているし、新しい事業を作ってやるぞ! という気持ちが高まるんです。でも僕は、今やっている仕事に移籍の経験を足していくことによって、まずは1%、改善することを目指しました。大企業で新しい事業というとやはり経営層は数十億とか数百億の規模で考えがちです。そんなことすぐにできるはずがない、それをベンチャーに移籍して肌で感じてきました」

「しかし今担当している数百億の事業の中で改善の数を一つでも増やし、収益性を高めていく。たったの1%でも数百億の事業の中では大きな1%となります。ようやく移籍前に目指していた姿も色々と見えてきました。結果的に新商品に関われていますが、これも積み重ねで成果をだせたからこそ。今からが本当の勝負ですね」

レンタル移籍で身につけた知識や経験によって、多くのことを学んだ濵田さん。濵田さんが習得したことと、会社に今、必要なことが重なり合っているのかもしれない。けれど、それ以上に濵田さん自身が持つ人を巻き込む力、楽しむ力があるからこそ、多くの結果が出ているのだと感じる。

「僕は、誰かのありがとうの言葉のために働いています。誰かの役に立つ、誰かが喜んでくれる。誰しもが改善したいとか困っていることがあって、それを解決することで喜んでくれるお客様や仲間がいて、それに伴って利益にもなる。僕の仕事は、たまたま今自分が気づいただけで、きっといずれは誰かがやらなきゃいけない、困りごとを解決する策『ソリューション』を提案していくこと。そう捉えることで、どんどん仕事のモチベーションも上がっていくんですよね」

誰かの「ありがとう」のために。そんな気持ちをもって働く濵田さんをみて、私も!と同じ想いを持つ人が増えていく。その輪が広がることで、誰かの困りごとが解決される商品ができたり、仲間に思いやりをもって行動する人が増えていくのだろう。濵田さんのソリューションは、これからも続いていく。     


Fin
   

【オンラインセミナーのお知らせ】

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【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計53社 153名のレンタル移籍が行なわれている(※2021年9月1日実績)。→ 詳しくはこちら

協力:パナソニック株式会社 / 株式会社YOLO JAPAN 
文:三上 由香利 撮影:其田 有輝也
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/

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