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「筋のよいアイデアはどのように生まれるのか?」フロントランナー3名の思考プロセスに迫る

面白い企画を求められるものの、出てくるのはどこかで見たような案ばかり。精度高く顧客にささる企画をつくるにはどうしたらよいか。そんな悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。事業開発や戦略を考えるフレームワークは数ありますが、結局、重要なのは企画のタネとなるアイデア。
そこでローンディールでは、オンラインセミナーを開催し、プロダクト、ビジネスモデル、プロモーションの各分野で刺さる企画を出しつづける3名のフロントランナーに、「筋のよいアイデア」を生み出す思考プロセスについて語っていただきました。その一部を要約してお届けします。

この日、ご登壇いただいたのは、マクアケ共同創業者であり、大企業の技術シーズをプロダクトに落とし込んでヒット商品を生み出すMakuake Incubation Studio事業責任者の木内文昭氏。『注文をまちがえる料理店』『deleteC』『おすそわけしマスク』など、世の中にインパクトを与えるプロジェクトを次々とプロデュースする小国士朗氏。そして、リクナビNEXT編集長・リクルートキャリア執行役員を経て、現在は、脱・平凡なアイデアで事業成長を牽引する、ローンディールCSO(最高戦略責任者)の細野真悟。


バイアスを壊すことで、脱・平凡発想できる

—まずは、ローンディールCSOであり、ビジネスデザイナーでもある細野真悟より、ビジネスモデルの文脈におけるアイデア創出について。普段、レンタル移籍者向けに展開している「脱・平凡発想トレーニング」の一部を紹介した。

細野:以前より「アイデアを生み出すのにはどうしたらいいか」っていう相談が多かったので、そのプロセスをプログラム化し、レンタル移籍者に提供しているのが「脱・平凡発想トレーニング」です。

 そもそも、なぜ「脱・平凡発想」が必要なのかというと。今の時代、情報やツールなどにより、問題解決能力のベースがあがっているため、誰もが問題を解きやすくなっている。だからこそ普通ではない発想が必要。それに残り続けている問題は、普通の解き方では解けない難問が多いので、アプローチを変えないといけない。そこで「脱・平凡発想」を取り入れることで、多くの人が気づいていない着眼点を得たり、誰もが思いつかないソリューションが考えられるようになる。

 先入観を取り除く“バイアスブレイク”の方法を少しだけ紹介します。まずはそのビジネス領域のプロが考えそうな発想で勝負しようとしないこと。別の良さはないか、別のソリューションで解決できないか? って、いいアイデアが思いつくまでめちゃくちゃ考えることが大事。

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 仮に、「これまでに見たこともないフードデリバリーサービスを考えてください」というお題があったとする。普通、多くの店舗の中から好きなお店で好きなメニューを選べるという前提で考えがち。でも必ずしも1店舗から1メニューを選ぶ必要ないよねって。たとえばフレンチのA店とイタリアンのB店、中華のC店…、複数の店からおかずを選んで1つの弁当にできないか? とか。しかも配達員によるデリバリーではなく、キッチンカーが家の前に来てその場で作ってくれるという方法がとれないか? とか。つまり前提のバイアスを壊すということで、平凡な発想から抜けられる。

アイデア創出に欠かせない “らしさ”と“リアリティ”

—ビジネスモデルを考える上で、バイアスを壊し、新規性を取り入れることは外せない。それではプロダクトという視点で、BtoBの新規事業創出をサポートしている木内氏は、何を大事にしているのだろうか?

木内:「Makuake Incubation Studio」は、企業向け新製品開発サポートプログラム。8〜9割が大手企業で、一部上場企業30社以上の実績があります。

 プロジェクトを進める上で大事にしているのは、事業担当者のWILLとSKILL。当事者として何をやりたい人なのかっていうことと、失敗と成功を繰り返して実行していく力。やはり、当事者意識がないと、新しいことをやろうとしても、壁にぶち当たった時に心が折れてしまう。とにかく、関わる人たちが本当にやりたいことであることが前提。

 それから、プロダクトを作り上げる上で重要なのは以下の3つ。一つ目は「らしさ」。流行っているからといって自社にケイパビリティがないのにやろうとしても上手くいかない、その企業がこれまで勝ってきた必然性やユニークポイントを活かした上で考えた方がいい。二つ目は「市場の魅力」。市場構造を観察した上で勝てる市場なのかどうかということ。但し、顕在市場ありきではなく、「新たな市場を創り出す」と言う観点も大事。三つ目は「リアリティ」。話題になっても売れなかったら1円にもならない。ポイントはユーザーが買うかどうか。買うと言ってくれる人に行き着くまでインタビューなどを愚直にやっていくということ。当然これらに加え、新規性や時代性なども求められます。ユーザーは驚きがないと買ってくれないので、どうやって指名買いを起こすのかっていうことが重要です。

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ー参加者から木内氏に質問。「ニーズを解決していくための考え方やフレームワークで意識していることは何か?」「アイデアを出すのは企業側なのか、Makuake側なのか?」

木内:まずは“らしさ”の観点からその技術などの機能特性を洗い出した後に、メリット(価値)を見つけ出し、その上でユーザー体験と組み合わせてベネフィットに変換するという流れを取っている。また、アイデアは、基本的には企業の方と一緒に出すようにしている。我々が提案する側で企業が“提案される側”だと、担当者の熱量が低くなってしまう。「社内で絶対に通すぞ」って、最後まで諦めない“ワンチーム“をつくることが重要。

大事なのは「良い問い」を立てること

—それでは、価値創造におけるアイデアの創出はどうか? 元・NHKの番組ディレクターとして「プロフェッショナル仕事の流儀」などを手がけ、現在は「deleteC」ほか、社会的インパクトのあるプロジェクトを生み出し続ける小国士朗氏に聞いた。

小国:僕が大事にしているのは、Tele-Vision(テレ・ビジョン)という考え方です。これはテレビの語源ですけど、テレは遠くにあるもので、ビジョンは映すもの。つまり、誰も見たことがない風景や触れたことがない価値を形にして広く届けることを大切にしています。その手段は番組でもアプリでもイベントでも、何でもいいんです。

 認知症の人がホールスタッフを勤める「注文をまちがえる料理店」というイベント型のレストランも、みんなの力でがんを治せるプロジェクト「deleteC」もそうですし、今年5月にスタートした「おすそわけしマスク」も同じです。「おすそわけしマスク」は、55枚のマスクを買ったら、そのうち5枚が福祉現場に提供されるという仕組みなのですが、これはマスクの買い占めが起こっていた時期に思いつきました。日々マスク買い占めが報道される中、売る人に対しても買う人に対してもネガティブな捉え方でしか映されていないことに違和感を覚えました。なので、マスク提供者も購入者も、マスクが足りない状況にある方々もすべてが幸せになれる、三方よしの仕組みを作ろうと。結果、70万枚が売れ、900施設近くにおすそわけができました。

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 また、最近ゲイツ財団などと一緒に立ち上げたのが「Hack the World(世界を、書き換えろ)」というプロジェクトです。一枚の絵=Visionでもって、世界の風景を書き換えてしまうような人たちを「Vision Hacker」と呼んで、彼らと一緒に世界をより良いものにしていこうよ! というコンセプトではじめました。ここで大事なのは「良い問い」を立てること。Hack the Worldというのは、「世界を書き換えようよ」と言っているだけで、どんな世界を、どうやって書き換えるのかはその問いを受け取った人たちにゆだねられています。僕がやることは、人々が思わず乗っかって、一緒に解きたくなるような問いを作ること。ソリューションは、みんなで一緒に考えていけばいいと思っています 。

 これからは「問いの時代」になると思っています。そして、問いに余白をどれくらい作れるかということがとても重要です。問いっていうのは大喜利のお題みたいなもので、どれだけたくさんの人が参加できるか、関われるのかってことが大事。ですから、子供からお年寄りまで、「私もできる、僕もできる」っていう問いが結果的に大きなインパクトを与えられると思っています。

ー参加者から小国氏へ質問。「そもそもなぜそんなにアイデアが浮かぶのか? ストックがあるから浮かびやすい状況なのか?」

小国:違和感をすごく大事にしています。例えば「deleteC」は、最初から構想があったわけではなくて。僕の友人から「がんを治せる病気にしたいと本気で思っています」と相談を受けて、医師でも製薬会社の人間でもない僕に何ができるのかな…と思いあぐねていたら、その友人がアメリカにあるMD Anderson Cancer Centerというがん専門病院で働く日本人医師と知り合ったんですと、医師の名刺を見せてくれました。そうしたら、その名刺のCancer Centerの「Cancer」のところにびーっと赤い線が引いてあって「えっ、これはなんでだろう?」って違和感を覚えた。そこから発想を膨らませて、商品の「C」を消した特別な商品を企業に作ってもらって(たとえば、C.C.レモンのCを消してもらって)、その商品の売り上げの一部が、がんの治療研究に寄付されるという、今の企画に繋がったんです。先ほどの「おすそわけしマスク」もきっかけは違和感です。

アイデアは腹の底から生み出されるもの

—会場から3名へ質問が。「アンテナの立て方で意識していること」について

細野:みんなが問題だって言っていることは、本当の問題じゃないと思って、捉えています。先ほどの小国さんのマスクの買いだめの話でいうと、そもそもみんなが悪いって言うのはおかしいんじゃないか? って。買いだめ自体が問題ではなく、買いだめが問題だってみんなが言っていることがおかしいんじゃないかって。視点をずらして考えています。

木内:感情ってどこで動くんだろうっていうのを意識している。特にToC向けでは人はロジックだけではものを買わないと思ってて、感情が動いた時にお財布が開くと思っています。なので、売れているものはどういう気持ちの変化が起こっているのか?というのを手掛かりにしています。

小国:“熱狂する素人”でありたいと思っていまする。何のプロっていうのを持たないようにしていて、素人感覚を大事にしています。だから、ちょっとした違和感にいちいち反応できるし、どの分野もほとんどの人が素人だと思っているので、素人の僕の心が本気で動いたら、同じように心動く人がいるんじゃないかなって思って企画をしています。

ー最後に。アイデア創出やアイデアの実現において大事なことを、3名それぞれの視点から語られた。

細野:発想力って運動能力に近い。身体的に「これいける、いけない」ってありますよね。「今、すごくいいボールが投げられそう」とか、そういう感覚。それって、メソッドを学んだからといってできるものではない。ニュースの捉え方を変えてみる、動き方を変えてみる、そういった日々のトレーニングが大事です。

木内:やはり自らの内発的動機。「なんでこんなに一生懸命になれるんだろう」とか、内なる感情に目を向けること。そして、その感情の力をテコに絶対に実現させるって、諦めないで続けることが大切なんじゃないかって思います。

小国:アイデアって天から降ってくるのではなくて、腹の底から生み出される感覚に近いです。足元にあったり、見過ごしていることの中に、「何だ、ここにあったんだ」ってことが多い。僕は、「すっげーより、ずっけー」という考え方を大切にしていて、周りから「それやられたらずるいよね」って言われることをやりたい。それって、木内さんの話にもあった“らしさ”、周りから見た時にその人しか持っていないコアコンピタンスが大事だということです。そこを掘ってクリエイティブにしていった方が、誰もまねできないものになりやすいし、圧勝できると思います。

Fin

【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計38社97名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年7月実績)。→詳しくはこちら

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Report:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/
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