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「自らビジョンを掲げ、行動する人財の成長を支援」 JTが次世代経営者育成で大事にしたWILL-CAN-MUSTの連結とは?

「個人の自律と組織へのエンゲージメント、どちらも高めたい」。
これは多くの企業が理想とする姿ではないでしょうか。一方で、キャリア自律を促し、見出された個人のWILLをどうやって会社と接続していけば良いのか、悩ましいという声も多く聞きます。

ローンディールでは、個人の「WILL」、それを実現するための「CAN」の解像度を高めながら、自分の所属する会社や組織の「MUST」と意味付けし、連続したストーリーとしてつなげていくというWILL-CAN-MUST連結ワークショップ(以下、WCM連結ワークショップ)を展開しています。

自分の会社の中で「何にどう取り組んでいくか」「どう成長していくべきか」「どう会社を活用していくか」が具体的になり、「自らの意志を持って自走できるようになること」をねらいとしています。

そこで今回、WCM連結ワークショップを導入いただいた、日本たばこ産業株式会社(以下、JT)、コーポレート部門・人事部で働く葛島彬人(くずしま・あきひと)さんと矢﨑友梨(やざき・ゆり)さんにお話を伺いました。
同社では、組織の体勢変更によりこれまで以上にグローバルでの活躍機会が広がり、特に次世代リーダーにおいては「自分がどうしたいか」を明確に持ち、ビジョンを掲げ、主体的にポジションを掴んでいく人財が求められるようになったといいます。WCM連結ワークショップを通じて、社員と組織にどんな変化が起きたのでしょうか。


次世代経営者育成において「自らビジョンを掲げ、行動する人財」の必要性が高まった

 
ー今回、御社の次世代経営者を輩出するプログラム「JT-Next Leaders Program」(以下、NLP)の一環で、WCM連結ワークショップを実施したと伺いました。まず、プログラムの概要を教えてください。

矢﨑:NLPは、グローバルに活躍する40代前半の執行役員候補や新規事業部門長候補を継続して輩出することを目的に、2013年より開始しました。年に1回社内公募があり、各選考プロセスを経て決定した認定者には5年間の成長支援期間が設定され、タフなアサインメントやNLP専用の研修といった成長機会が会社から提供されます。

実は当社には1980年代から早期選抜の取り組みがあり、選抜した人財に様々な機会を提供し育成するスタイルは、当社に長く根付いているDNAと言えます。

 Profile 矢﨑友梨さん コーポレート・人事部
大学卒業後、地元県庁に入庁。2019年にJTへ入社し、たばこ事業において吸う方と吸わない方の共存社会を目指す渉外業務に従事。2023年より現職に着任し、キャリア面談や社内公募制度といった成長支援領域を担当。

ー歴史の長いプログラムの中で、WCM連結ワークショップを導入されたのは、どのような背景からなのでしょうか。

矢﨑:大きな理由に、環境変化があります。当社の基幹事業はたばこ事業ですが、2022年よりその本社機能をスイスに移管し、事業運営体制のシングルマネジメント化を進めています。経営リーダーを目指すNLP認定者も、これまで以上に、グローバルの高い競争の舞台においても認められる成果を出していくことが必要です。

これまで人事部では、良質なストレッチのかかるポジションへの輩出など認定者のキャリアに対して一定のコントロールを行ってきました。これはNLPのメリットでもありますが、逆の側面では「活躍の場所は会社から与えられるもの」という意識が生まれ、認定者が受け身になる懸念もありました。社内のグローバル化が進み、ポジションの獲得競争も厳しくなる中で、「自らビジョンを掲げ、能動的に動く人財を育てないといけない」という問題意識が高まっていたんです。

ー事業環境の変化の中で、次世代経営リーダーには一層「自律」が求められるということですね。

葛島:別の観点では、当社は2023年2月に「心の豊かさを、もっと。」というグループパーパスを発表しました。このパーパスには、たばこ事業だけでなく、より広く「心の豊かさ」を追及する企業として世の中に信頼されたい、という想いが込められています。

この言葉は従業員に対しても向けられていて、従業員一人ひとりが「自分が考える心の豊かさ」を追及していくことが重要だと思っています。NLPに当てはめると、会社から成長機会を提供するため、どうしても「会社」が与える側に見えてしまうのですが、あくまで会社と従業員は対等で、認定者一人ひとりが何をやりたいのかを考えてほしいんです。

将来の経営リーダーを目指すNLPには、「自分が何を成し遂げたい人間なのか」を考え、それに向けて会社の持つアセットや提供される機会をどう活用するのかを言語化してほしいと考えた背景もあります。


 Profile 葛島彬人さん コーポレート・人事部
大学卒業後、2012年よりJTに入社。たばこ事業におけるエリアセールス、マーケティング、カスタマーサポート、海外たばこ事業関連の渉外活動に従事。2022年より同社コーポレート部門の人事部に着任、NLPにおける選抜、育成(OJT、Off-JT)の企画・運営を担当。

職歴や役職、年代の異なる多様なメンバーが対話したことで、思わぬ発見があった

 
ー実際にどのようにWCM連結ワークショップを実施されたのでしょうか?

矢﨑:新規NLP認定者12名が支援期間スタートのタイミングで参加する導入研修のプログラムの一つとして、WCM連結ワークショップを実施しました。約1ヶ月かけて自分のWILL・CAN・MUSTを言語化し、その集大成として最終日には、代表取締役社長をはじめとした経営陣の前で「支援期間における自身のコミットメント」をテーマにひとり3分間の決意表明スピーチを行いました。

導入研修ではねらいを3つ設定していました。

1つ目が「原点の獲得」です。

支援期間中、認定者には、厳しく困難なアサインメントや逆境体験など、多くの苦難が待ち受けています。そんなときに初心を思い出し、立ち返えることのできる原点体験のようなものを提供したいと考えました。

2つ目は「認定者同士のネットワーキング」です。

認定者の成長は日頃の業務が基軸となるため、部門や勤務地の異なる認定者同士の交流機会はそう多くありません。ワークショップを通じて親睦を深めることで、志を同じくする仲間として、今後に続く関係性を築いて欲しいという想いもありました。

最後の3つ目は、経営陣との交流を通じた薫陶の獲得です。

具体的には認定者による3分間の決意表明スピーチや、懇親会形式のフィードバック時間を設けました。経営陣に対して臆することなく、堂々と自分の個性や想いを伝えるためには、内省を十分に深めておくことが重要ではないかと考えました。

振り返ると、WCM連結ワークショップはすべてのねらいに効果があったと思います。

ーワークショップで工夫したことや、効果があったと感じることはありますか?

矢﨑:ローンディールの大川さんとの打ち合わせで、「経営リーダー候補が対象なので、自分のWILLを持つことはもちろん、会社や組織のWILL・CAN・MUSTとの接続まで語れる形にもっていきたい」とお願いしたんです。それを踏まえて、当社に合う良い形でチューニングをしていただきました。

具体的には、WCMの接続場面でサーキット形式でのピッチを行い、業務領域の異なるメンバーからツッコミを受ける機会があったり、ストーリーに落とし込むための個別1on1を大川さんに実施いただいたり。本音で語り合いながら、どう会社の方向と自身のWILLを繋げていくか、繰り返し考えを深める時間を設けていただきました。

また、ワークショップの中で行うペアワークを、あえて共通点のない認定者同士で設定したんですが、これもとても良かったですね。NLPには階層があるため、管理職を担っている人もいれば、20代の若いメンバーもいます。職歴の近い人同士で話した方が良いかと思っていたのですが、「あえて接点のない方をつなげたほうが、質問が生まれて会話量も増えるし、思いがけない刺激ももらえますよ」と助言をいただいて。結果的に、その形で実施したことで予想以上の関係構築に繋がりました。

マネジメントを務める上位階層の認定者からも、「若手とフラットに熱意をぶつけ合う機会なんてなかった。マネジメント歴が長くなって、自分自身に丸くなってきた部分があったと気づいたし、逆に勇気をもらった」という感想もあって。思いがけない発見を生むこともできたんじゃないかと思います。

葛島:人事としても認定者一人ひとりの深いところまでを理解できているかというと、そんなことはありません。そんな中で人事から「WILLを言語化してみて」と言っても、認定者からするとハードルが高いと思うんですよね。その意味では、この領域に知見のあるローンディールさんにお願いできたことが良かったですし、ワークショップの進め方も、自分だけではなく、他の人の考えの掘り下げにも協力するスタイルだったので、新鮮でしたね。

ーワークショップ実施期間中には、認定者からどのような反応がありましたか?

矢﨑:週1回くらいのスパンで集まりワークをしていたのですが、そのワークの間に認定者同士で自主的に時間を設け、延長戦をしていたようなんです。正直、これは思いがけない反応でした。

ワークショップが、過去や未来、価値観など様々な方向に話の広がる設計だったので、「もっと相手のことを知りたい!」とか「もっと聞いてもらいたい!」というスイッチが入ったのかなと思います。言葉を紡ぐプロセスは時に苦しくもありますが、回を重ねるたびに場が温まっている様子がうれしかったです。

掘り起こしたWILLを自分から語り、周りにも広げて欲しい


ー最終日には、WCM連結ワークショップを通じて言語化した想いや行動計画を宣言したとのことですが、どんな様子だったのでしょう。

葛島:皆さん話したいことがあふれたのか、3分じゃ足りない様子でした(笑)。内容も本当に個性それぞれで、立脚点がグループパーパスの話だったり、生活のなかで拠り所にしている話だったり、「今まで考えてきたものすべて忘れて、好きにしゃべります!」という人もいました。それぞれ違っていて、良かったですね。

矢﨑:緊張しているだろうと思いつつ、晴れやかな表情で堂々と発表されていたのはすごく印象的でした。当日も、特に若手メンバーは開会前の短い時間にも練習をしていたのですが、その様子が楽しげで。それが聴く側の経営陣にも伝わって、和やかな雰囲気で拍手をもって決意が受け止められていました。直後に実施した懇親会も大いに盛り上がり、一連の研修が良いかたちで繋がったという感覚がありました。

ワークショップの様子。和気あいあいとした雰囲気

 ー印象的だった宣言もありましたか。

矢﨑:本当に十人十色でしたが、個人的には、支援期間にとどまらず、「こういったことが自身のキャリアすべてを使って成し遂げたいことなんです」と言い切る方がいて、引き込まれましたね。

葛島:発表を聞いた経営層からも、「あの人雰囲気変わったね」「あの人はこうした特性を持っているんだね」といったコメントがありましたね。今回は時間も限られていましたので、今後深めていく中で、もっとJTならではの多様性やビジョンにつながっていくことを期待しています。

ー参加された方の感想にはどんなものがありましたか?

矢﨑:有難いことに参加して良かったという感想を多くいただきました。「自分一人ではここまで言語化できなかった」という声や「似たようなキャリア研修は受けたことがあるけど、ここまで深堀して、具体的なアクションとして言語化する、この濃密さはなかった」とか。

個人と会社のWILL・CAN・MUSTを接続させるって、日常業務のなかだけではなかなか難しいんじゃないかと思います。NLPとして支援期間がスタートするこのタイミングでひとまとまりの物語として具体化できたことで、5年間でなすべきことが明確になり、自信が一層ついたように見えました。

ー今回の経験が、皆さんの成長にもつながっていきそうですね。

葛島:そうですね、これはあくまでスタート地点だと思います。今回自分で宣言したことを実行するのも大事ですが、それぞれに内省し、WILL・CAN・MUSTを繋ぐプロセスを学んだこと自体が、とても価値が大きいのではないかと。今後偶発的に、あるいは自主的に、このプロセスを活用してもらえたら良いなと思いますね。

矢﨑:実施前に、大川さんから「WILLは変化していくもの。今回はβ版をつくるのが目的」と伺い、そのコンセプトがすごく刺さって。まさに今、認定者はWILLのβ版を手に入れた段階なので、伴走支援するなかで今後のアップデートに注目していきたいですね。

葛島:すぐに成果の見える取り組みじゃないんだと思います。今回の宣言に基づいて、認定者それぞれが今後どんな変化を起こし、成果を生み出していくのか。今後の活躍に期待していきたいです。

ー最後に、今回ワークショップに参加された方に今後期待することをお聞かせください。

葛島:引き続き成長に貪欲に、挑戦を続けて欲しいですね。「JTが社会に必要とされ続ける企業であるためには」という問いに答えるために、タフな経験も積んでいって欲しいです。

矢﨑:今回のスピーチでは、着飾った言葉ではない、等身大のまっすぐな熱意をみなさん語られていました。あの場だけではなく、率先して社内で自分のWILLを語ったり、周囲のWILLを引き出したりと、NLPを中心にWILLを考える輪が広がっていくといいなと感じます。WILLに向き合うことって、誰しもが必要だと思ったので。一歩踏み出すときの軸や足場として、いつ始めても遅くないですよね。

ー今回のワークショップで得た経験が、今後どんな風に御社で芽吹いていくか楽しみです。今日はありがとうございました!

Fin

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【WILL-ACTION Lab.】

自律型人材を育て、組織を活性化する研修プログラムを開発・提供しています。プログラムに関するご相談・資料請求は以下よりご覧ください。

協力:日本たばこ産業株式会社
インタビュー・文:大沼 芙実子
撮影:宮本七生
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/

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