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「覚悟を決めたらいいことしかなかった」 大手企業でもたった1年間で新規事業をローンチできたワケ

「サラリーマンというものを捨ててやっていこうと覚悟を決めた……」

そう話すのは、NTT西日本の佐伯穂高さん。
会場には、アステラス製薬、NTTドコモ、関西電力、パナソニックなど、大手企業に勤める社員らが集まり、目を輝かせながらその話を聞いていた。
彼らは皆、レンタル移籍者である。

「レンタル移籍」とは、大手企業の社員が一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。

———2019年5月某日。
東京ミッドタウン日比谷にあるBASEQにて、イベント「LoanDEAL Salon Vol.10」が開催された。「LoanDEAL Salon」はレンタル移籍者コミュニティの勉強会で、この日のメインは、1年前に「レンタル移籍」を終えたNTT西日本の佐伯穂高さんによる体験談。

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この会場に集まるのは、レンタル移籍中の人や、これから開始する人や終えた人。移籍が終了して既に1年経った佐伯さんの動向に皆が注目する。

皆、自身のレンタル移籍の経験が自社でどう活かせるのか、そこが知りたい様子。

佐伯さんは今年の4月、NTT西日本グループであるNTTメディアサプライより「LOOOK (R) by NTT MEDIAS」という空間演出デジタルサイネージサービスをリリースした。佐伯さんが移籍していたベンチャー企業・株式会社ランドスキップとの協業である。移籍が終了してちょうど一年経ったタイミングだ。

佐伯さんは、(移籍を終え)自社に戻ってからの一年間を振り返り、

「人生が大きく変わった…」と語る。そして移籍から戻り、どうやってたった一年で新規事業のローンチまでこぎつけたのか、その裏話をしてくれた。

ー「ベンチャーでの経験を活かしたい!」熱い想いと、大企業という高い壁

佐伯さんが移籍したランドスキップは、「世界の風景を連れてくる」をコンセプトに、風景動画をデジタルサイネージ等に配信するベンチャー企業。そこで事業開発を担当することになった佐伯さんは、最初は何も会社に貢献できない自分に愕然とした。

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しかし諦めずにチャレンジを続けた結果、今までの経験を活かしつつ、出来ることが少しずつ増え、最後は様々なプロジェクトを結実させるに至った。

そんな佐伯さんは「ベンチャー企業で身につけたことを大企業でも活かしたい!」と、強い想いを持って移籍を終えたと語る。この時既に、自社で実現したい新規事業のアイデアは持っていた。後に実現するランドスキップとの協業事業である。

しかし大企業に戻ってみると、ベンチャー企業の時ように物事が進まない。部門内での擦り合わせ、上への説明など、ピラミッド型で縦割りの組織の中で意思決定に時間がかかる。そんな状況に一人で立ち向かうことに疲れ、「もう辞めたい…」と強く思ったこともあったと言う。

しかし、メンターの細野氏から「そう思うのは当然。戦うだけ戦ってみて、それから辞めても遅くない」という一言で、やれるだけやってみよう!とスイッチが入る。

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ーサラリーマンを捨ててみた。覚悟を決めたらいいことしかなかった

とりあえず頑張るだけ頑張ってみよう。それでダメだったら辞めることになっても構わない。そう覚悟した佐伯さんは「成果が出るまでは昇進や昇格、評価はいらない。だから、この事業を自分のやり方でやらせてほしい!」と上に直訴。まさに背水の陣。

しかし、覚悟を決めたらいいことしかなかったと言う。

「誰にどう思われてもいい」と腹を括ることで、いい意味で周りに気を使わなくなり、無駄なことに時間を割かなくなった。プロジェクトを進める時間や社外との交流に没頭することができた。そして何より仲間ができた。

ー賛同者が参加しやすい仕組みを作った

ひとり奮闘している佐伯さんを見て、「頑張ってる佐伯さんを見て…」「熱意やビジョンに共感して…」など、徐々に仲間が増えていった。プロジェクトが動き始めてくると、今度は「キャリアアップになりそう、スキルが身につくかも」と、単にビジネスに共感した人だけではなく、いろいろな理由で協力をしてくれる人が増えたことも新しい発見だったという。

また佐伯さんは、賛同者が参画しやすいように、従来の上下関係・命令系統ではなく、賛同する人が得意分野を活かして役割を担うフラットな組織をイメージして、プロジェクトに参加する人を巻き込んでいった。

会社や上司がやれと言っているからやっているのではなく、やりたいからやる、そんな仲間が増えたことで、社内でも認知され、「手伝おうか」そう言ってくれる人も自然と増えた。

ーメンバーの市場価値があがる事業にしたい

佐伯さんは、関わってくれたメンバーに“市場価値があがるスキル”を身につけて欲しいと考える。昔なら、会社は雇用し続けることが社員への最大の還元だったと思うが、今は違う。社員の市場価値があがり、次に羽ばたいていける状況を作ることが大切だ。だからこそ「自分はそんなリーダーでありたい、関わってくれたメンバーの市場価値があがる事業にしたい」と語る。それが事業を推進していくひとつの原動力になっている。

ー理解あるマネージャーがいたからこそ

仲間はもちろん大切。しかし、自分を理解してくれる上司がいてくれてこそ…、とも語った。

佐伯さんにとっては、同じ部門の担当課長・笹原さんの存在が大きかった。

当時、笹原さんに、サラリーマンを辞める覚悟をし、魂を込めて事業プレゼンした佐伯さん。止められると思った。しかし笹原さんは、「どうやったら実現できるのか?」を一緒に考えてくれたと言う。ベンチャーマインドを持った人材と、既存組織をつないでくれる上司の存在が必要、自分は恵まれていたと振り返る。

ー笹原氏が語る、大企業で新規事業を推進するには?

当日会場に駆けつけていた佐伯さんの上司 NTT西日本 笹原貴彦さん。
笹原さん自身もアメリカ留学から帰国して、それをどう自社で活かすか、という状況にあったため、佐伯さんが力を発揮できない状況をよく理解できたと話す。

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そして、大企業で事業を推進する際のポイントを話してくれた。
「すでに莫大な売上や利益を生み出す規模になっている既存事業と比較すると、新規事業の売上は本当に小規模で、あえて取り組むメリットを理解されにくい。そういうスケール感がネックになるのであれば、先行者利益や将来的なビジネスポテンシャルを提示するのもひとつ。また、売上以外のポイントで評価してくれる人もいるはずなので、そういうキーマンを探しに行くのも一つの手段」とのこと。

また、「キーマンを見つけて説明し続ける粘り強さが大切。上司のタイプを分析して、どうしたら賛同者になってくれるのかを考えることも重要なタスク」と語る。

ー大企業で“ベンチャーでの事業開発”は活きるのか?

また、会場から「ベンチャー流の事業開発のやり方が、大企業でも必要なのか?」という質問が出た。それに対して笹原さんは、「必要だと思う。(ベンチャー企業のように)いろいろトライすることで精度が高まる。しかしベンチャー流と社内で言っても、ベンチャーを経験していない人には分からない。もっと言ってしまうと、ベンチャー流という表現はNGワードにしてしまった方が良いと思う。余計な反感を買う恐れがある。例えば、少額投資で出来るやり方…とか、自分なりに社内で伝わりやすい言葉を探す努力が必要なのでは?」と返す。

一方、こんな質問も。「自分の会社は、失敗は絶対に許されない。新規事業をやる上で失敗をどう考えているのか?」

佐伯さんは、「もちろん絶対に失敗できない領域もある。しかし新規ビジネス開発は失敗を積み重ねながら育てていくものだと思っている。だから、ここに関しては失敗を許していこう、ってトライする分野を決めてやっている。成功確率が見えないことも多い。そんな時は“顧客がこう言っている”といったような、一次情報を活用して社内に説明し突破している」と答える。
会場からは次々と手が挙がり、熱い質問タイムが続いた。

 ↓ 佐伯さんの人生を変えた、レンタル移籍のストーリーを公開中! ↓

ー「あなたのタグは何?」ワークショプ

またこの日は、ローンディール主導でワークショップも行われた。

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まずは自身のタグ、例えば所属企業や事業内容、事業関連するコンテンツなどを洗い出す。

レンタル移籍をする上で「自分は何者なのか?」という自分の「タグ」を意識することが大切。この「タグ」こそがイノベーションのタネになるからだ。自分のタグと、他者のタグの掛け合わせることで、どんなイノベーションが生まれるのか、それを体験できる内容だった。

例えば、会場には、「クリエイター」「弁当」「お祭り」「流れ星」「ドローン」など様々なタグが集まり、「お祭りと流れ星を掛け合わせたら?」「クリエイター弁当はどうか?」などユニークな案が生まれた。いずれも、ここに集まったメンバーだからこそ実現し得るコンテンツ。

自分のタグ、それから他者のタグを知るという探索活動は、いつまでも尽きなかった。

End

「大切なのはさらけ出す力!?」前回「LoanDEAL Salon」のイベントレポートも合わせてチェックしてみてください!


「&ローンディール」編集部よりお知らせ!
【参加者募集】7月3日(水)開催
「ローンディールフォーラム2019 人材流動化の先にあるもの」

昨年5月に開催し、250名もの方にご来場いただいた「ローンディールフォーラム」を今年も開催します。今回のフォーラムでは「人材流動化の先にあるもの」と題して、レンタル移籍を経験した方々による事例紹介、大企業のマネジメント層の方々による社外経験が組織にあたえる影響についてのセッション、さらに、特別ゲストをお招きし「人材の流動化」についてのパネルディスカッションを行います。ぜひご参加をお待ちしております。

<イベント概要>
日程:2019年7月3日(水)
時間:15:00〜18:30 終了後、会場で懇親会あり。
場所:Base Q(東京ミッドタウン日比谷 6階)
費用:一般 3000円(税込)
早割 1500円(税込)※ 5/21までのお申込の場合
詳細・お申し込みはこちら → https://eventregist.com/e/loandealforum2019
Report:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/

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