6人だったローンディールのコミュニティが300人になるまで
こんにちは。ローンディールのコミュニケーションデザイナーの及川です。ローンディールは大企業からベンチャー企業に一定期間人材をおくり、大企業ではできない経験を積んで成長を促す「レンタル移籍」という事業をしています。このレンタル移籍には、レンタル移籍者、送り出す大企業、受け入れるベンチャー企業、そして移籍期間中に伴走するメンターと、ひとつのプロジェクトに様々な人が関わっています。そんな中で、「レンタル移籍」の効果を高めるために、コミュニティ運営が実は大切な役割を担っているんです。
私がローンディールでコミュニティ運営を担当してから3年半ほど経ちますが、最初は6名の交流会からスタートしました。それが今ではレンタル移籍者は120名を超え、導入企業は41社とコミュニティに関わる人はどんどん増えています。この膨らみ続けるコミュニティと向き合い、事業フェーズに合わせて試行錯誤をしながら運営方法を模索してきました。
これまでの経歴を振り返ると、ベンチャー向けのシェアオフィスでのイベント運営や、リノベ業界での広報PRなどに携わっていました。その傍ら、80歳まで働くことを見据えてローンディールで副業をスタート。ちょうど複数人が同時にレンタル移籍をスタートするタイミングだったこともあり、原田さん(ローンディール代表)の「コミュニティ担当やってみない?」の一言から、楽しくも迷宮のような(笑)コミュニティ運営に関わることになりました。
担当してからどんなことを考え、何をしてきたか。このコラムがコミュニティ運営に携わる方、今後始めようと考えている企業の方にとってヒントとなれば嬉しいです!
6人からスタートし、徐々に膨らんだコミュニティ
ローンディールのコミュニティの発端は、レンタル移籍者の集まりから。大企業からベンチャーに飛び込み、個々に奮闘する人たちを集め、交流できる機会をつくる。お互いから刺激を受け学び合う場ということで、19世紀末に芸術家たちが集い切磋琢磨した場であるサロンから名前を取り「ローンディールサロン」と呼んでいます。
悩みや経験を共有して、移籍者がお互いから学ぶこと。また私たちが移籍者の声を聞き、サービスの改善に活かすこと。これらが移籍者コミュニティを運営する2つの目的です。
サロンは、メンターや上司のアドバイスとはまた違った形で、移籍者の背中を押してくれる場です。例えば私が以前メンターをしていた大手メーカーに勤める入社5年目の北田さん。彼は移籍中、大企業で身につけた仕事のやり方が全く通用せず、自信を失いかけていました。そんな時に開催されたサロンで先輩移籍者の話を聞く機会が。その方が発表の中で「日々先が見えず苦しかったが、ある時ふと足元を振り返ると、自分がすごく高ところまで登ってきていたことに気が付いた」と。この話を聞きいて北田さんは「今自分はもがいているが、動いていれば前に進むんだ」と、自分の動き方に自信が持てるようになったと話してくれました。
サロンが軌道に乗ってきた頃、レンタル移籍期間を終了する人が出てきました。すると今度は「レンタル移籍経験を活かすには、戻ってからの上司の理解がものすごく大事」ということに新たに気づきます。これを受けて移籍者の上司を対象とした勉強会をスタート。移籍者を活かすためにはどういう風にマネジメントをしていけばよいかを話し合うコミュニティになりました。
さらにその後、導入してくれた人事同士でベストプラクティスを共有できるといいよねということで人事コミュニティができ、ベンチャー企業も他社の様子を知りたがっているのでベンチャー企業だけのコミュニティを作り...というようにどんどん立ち上がり、今では全部で5つ。対象者も300名を超えるほどになりました(!)
サロンの懇親の様子(2020年1月開催)
コミュニティから事業につながる循環の仕組み
各コミュニティでは、3ヶ月〜半年に1回のペースでイベントを開催し、参加者の困りごとのヒントとなるコンテンツを用意しています。例えば今年1月に立ち上げた、導入を担当した人事担当者コミュニティ。
立ち上げは決めたものの、一体何をテーマにしたらいいのか分からない! そこで最初は各参加者が困っていることをとことん挙げてもらう場にしました。そうすると、みんなが悩んでいる共通の課題が見えてきます。それを次の会のテーマに設定します。例えば「経営層を巻き込みたい」と悩んでいる人が多くいて、一方で経営者を巻き込むためにうまく工夫してレンタル移籍を実施している方がいます。となると、次のイベントにはその方に登壇してもらい、みんなで話を聞く会を開催。さらには、それぞれの悩みが組織や人材育成といったもっと大きなテーマの場合、コミュニティ外の人も参加できるオープンイベントにしてしまうこともあります。するとこれをきっかけに、新たにレンタル移籍に興味を持って検討してくださることも。コミュニティから派生して、マーケティングや導入に繋がる、こんな循環を意識して運営しています。
ちなみにオープンイベントへの登壇は、準備もありますし企業の皆さんにに負担をかけているのでは..という不安もありました。ところが「自分のやっていることを整理できる良い機会」と言っていただくことが多々あります。さらに「登壇したことで、新たな学びがあった」という言葉をいただいたり、数百名の前で話す機会がご本人のブランディングになったりと、人前で話す機会自体を価値と捉えてくださる場合もあることに気づきました。本当にありがたい限りです。
鍵は「フラットな関係」づくり。
時には事業の課題も赤裸々に共有
上記のように、イベント登壇のようなちょっと負荷がかかるものも、快諾してくださる方が多い。ここにコミュニティ運営の鍵があるように思います。掘り下げてみると、この要因のひとつはローンディールとコミュニティメンバーがフラットであることではないかと考えています。
ひとつ例をあげると、メンターという移籍者に伴走する方々がいます。大企業で新規事業担当者やキャリアコンサルタントなど、様々な背景をお持ちの皆さんですが、彼らを集めたローンディールサミットというコミュニティがあり、半年に1回イベントを開催しています。その時も単純にメンターとしてのメソッドを共有するというより、ローンディールが今抱えているお悩みや迷っていることを、なかなか赤裸々に共有します(笑)。その上で、各業界で活躍するメンターの皆さんに、率直な意見をいただく。委託者(=ローンディール)と受託者(=メンター)ではなく、「レンタル移籍」をもっと面白いものにするために、同じ目線で考えるメンバーとして議論する場にしています。このようなディスカッションを通して、事業を一緒に育てている感覚を持っていただいているように思います。
メンター向けイベント。事業の近況や悩みを率直に話す原田(2019年3月)
30人の壁!コミュニティメンバーそれぞれが当事者意識が持ちにくい状態に
冒頭でちらっと、コミュニティ運営を「迷宮のような」と書きましたが、ゴールのなさにモンモンとすることもしばしばです(笑)。
最初は集まる場を用意すれば自然と会話が生まれていたのが、30人を超えたあたりから風向きが変わってきました。人数が増えることで古いメンバーにとっては「知らない人が増えたな」となり、新しい人とは距離が縮まるまでに時間がかかるようになっていったんですね。どこでも起きうることと思いますが、人数が増えたことで、参加者が当事者意識が持ちにくい状況になりました。
ここはなかなか悩みましたが、1対多数のコミュニケーションだとどうしても薄くなる。そこで、人数を絞りながら交流機会をつくることにしました。過去を振り返ると、移籍者にとって同期の存在が大きく、サロンは同期と久しぶりに会える場。なのでコミュニティに混ぜる前に、5〜10人程度の同期会をはさむことにしました。大学のゼミでいう同期と、ゼミ全体の同窓会をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。同期の繋がりが強いと、その後の同窓会にもみんなが集まりやすくなるように、小さなグループをつくりつつ、大きな集団に馴染ませるようステップを変えました。
また人数が多くなってからは、これまで以上にコンテンツが重要だと感じています。コンテンツで人を集め、その先につながりを作る。コミュニティの求心力については、まだまだ課題も多いですが、少しずつトライしていく予定です。
コロナでハードルが激上がり。
コミュニティのオンライン化で、つながり作りに試行錯誤
さてここでちょっと切り口を変えて、コミュニティのオンライン化についてお話します。今春からコロナが流行し、コミュニティの運営方法も180度変化せざるを得ない状況になりました。皆さん感じていることと思いますが、オンラインになって、つながり作りのハードルは激上がり! イベントの場を温めるのも、自由な交流を促すことも、参加者にお任せとはいかない状況になってしまいました。
交流が発生しやすい仕掛けとして試行錯誤を続けた中で、少し糸口が見えてきたのでいくつかご紹介します。
○ マメにインタラクティブな仕掛けを挟む
イベント中「聞く」に落ち着いてしまわないよう、頻繁にインタラクティブな時間を設けています。冒頭で質問を投げかけたり、15~20分に1度はQ&Aタイムを挟む。さらにはパネルセッションで取り上げる質問を、参加者の投票で決めるということも。「参加している」感を持ち続けてもらうと離脱者が少ないですね。
○ 懇親タイム用に、自己紹介シートを用意する
非言語から読み取れる情報が減るので、自ら話したいことや興味を発信してもらうためのツール。スプレッドシートを用意し、名前、所属と、今の興味や今日話したいことなどを書き込んでもらいます。「初めまして」の人でもシートから話題を探れるようにしました。
○ 交流のためのグループ分けは、知り合い同士を一部混ぜる
全員が初対面だと、限られた時間でなかなか話が掘り下がらないことも。なので知り合い同士を混ぜて、グループの会話を引っ張ってもらいます。運営サイドが混ざれる場合は、彼らがHUBとなって回すとスムーズ。全くいない場合は、フレンドリーな方をうまく混ぜることでカバーしています。
○ 参加できなくても「次は行きたい!」と思わせるフォローを
参加できなかった人にも熱量を伝えるために、当日の写真(スクショ)をとって共有します。何の話をしたか、どんな意見が出たか?なども以前より丁寧にフォローしています。これはオンライン/オフラインいずれも効果的ですし、参加した人にとっても良い振り返り機会となります。

オンライン開催イベント(イメージ)
おわりに...
運営をしていてしみじみと楽しさを感じるのが、コミュニティに参加している方々が肩肘張らず、素で楽しんでいる姿を見たとき。もちろん皆さん入り口は仕事なのですが、コミュニティはガチガチの”オン”ではなく、”オフ”に近い場。仕事やキャリアの深い部分について会話をしていたり、本音がふと出る姿をみると、とても嬉しい気持ちになります。
さらに、自らの内発的な動機で関わっている方が多いので、個々の熱量が高い。こういう方達がお互いに影響を与え合いながら、周りにも熱が伝わっていく。この熱波の源泉のような場から、もっともっと組織をや世の中の熱量を高めていけるんじゃないか。ローンディールのコミュニティを通して、そんな景色をつくっていけるのではないかと、私自身ワクワクしてならないのです。
Fin
【レンタル移籍とは?】
大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計41社115名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年10月1日実績)。→詳しくはこちら
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提供:株式会社ローンディール
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