「大企業人材を受け入れてみたら、視野が広がった」
大企業人材が活躍できるワケ
小林(インタビュアー):コネクテッドロボティクスさんでは、この3年間で5人の大企業人材(移籍者)を受け入れていらっしゃいますね。受け入れ続けているのは、どういった背景がありますか?
佐藤:やっぱり、みなさんポテンシャル高いんですよ。会社の重要なプロダクトにも関わってもらっていて、そんな中で、会社を成長させるきっかけをつくってくれています。むしろ「もっとお願いします」という感じです(笑)。
小林:なるほど! たとえばどんなことがあったのでしょうか。佐藤さんは彼らの働きを近くで見てこられたということですが。
佐藤:2019年に来ていただいた1人目の方には、半年後にローンチが決まっているロボット開発の案件担当をお願いしました。彼は、ロボティクスの分野は未経験ということだったんですが、その時は人が足りなかったので任せるしかなくて。不安もありましたけど、「なんとかなるでしょう」という感じでした。
実際、チームマネジメントもしながら、自分でロボットのマニュアルを見ながら覚えたりして。もちろん必要なところはサポートしましたが、彼がリードしてローンチまでやり遂げてくれましたね。その後に来てくれた方々も全員、ロボットについては未経験の中で、本当に活躍してくれていました。
小林:本人がパフォーマンスを出しやすいように、御社として工夫したことや、仕掛けたことはありますか。
佐藤:いや、特にはないです(笑)。放っておいても頑張ってくれる方々でしたので。というのも、やっぱり半年や1年という限られた中で、「何か残さなければ」という覚悟が本人にもあって、それがパフォーマンスにもつながっていたんじゃないかなと。
そもそも手を挙げて「外で学んでいきたい」って言って来ているので、何を実現したいのかっていうのは元々あるのだと思います。それが着火剤になっていたと思いますよ。
ただ、「適切な目標を持たせてあげること」は大事にしています。決められた期間の中で走り切れて、息切れする手前ぐらいの目標を立てられるかどうかっていうのが、その人を生かすうえで一番大事だと思うので。やっぱり成果をあげられれば自信になりますからね。
ちなみにうちでは、手を挙げれば経営会議や経営合宿に参加できるので、移籍してきたみなさんにも、参加してもらっていました。それも刺激になっていたのかもしれません。
小林:ちなみに、移籍者が開発に携わった案件を特許申請されるご予定だとか?
佐藤:はい。これから出願するので、関わってくれたみなさんにも色々と必要書類を用意してもらっているところです。
小林:本当にすごいことだと思います。期間限定でやってきた人にそこまで関わらせてしまうって。任せ方が大胆だなって(笑)。これってコネクテッドロボティクスさんの方針なんでしょうか。ここからは沢登さんにもお伺いしていきたいのですが。
沢登:そうですね。普通の会社だと、徐々に任せていくっていうやり方なのかもしれないですけど、逆です。当然、仕事ぶりを見てどこまで任せるかっていう調整は入れますけど、最初に面談があって、「任せられそうだな」って思える人に来てもらっています。なので任せることをデフォルトで設定してますね。それは通常の採用でも同じです。
小林:「任せられそうかどうか」を見極めるのに、どういうところを特に見ていらっしゃるんですか。
沢登:やる気とタフさでしょうか。やりたいっていう未来に対する熱量も大事なんですけど、どっちかというと過去どういう経験をしてきたか、どんな失敗をしてきたかとか。そうした経験を客観的に語れるかどうかですかね。どんなに経験豊富でも「俺はすごいんだ」みたいな感じだとちょっと...(笑)。
佐藤:経験もそうですが、お客さんのところに連れていっても大丈夫そうだなとか、1人でも外の人とコミュニケーションとれそうかなとか、人柄も重要ですね。
期待していなかった収穫
小林:大企業人材が御社の事業に貢献していることはわかりました。一方で、組織へのインパクトという面ではどうでしょうか。大企業、しかも期間限定という異質な人材が混ざることで、何か御社にとってポジティブなことはありましたか?
沢登:ありましたよ。マクロな視点で、大企業ならではの仕事のやり方を持ち込んでくれたりとか。たとえば、我々は社内でプロダクトを開発することはできても、製造を外注したり委託する発想もスキームも全然できていなかったので、そこに大企業のやり方を取り入れて、補ってもらいました。そういう補完関係が築けたのがとても良かったですね。
もともと、外の人から組織を見てもらうことで、良いところや改善点など客観的な意見をもらいたいという期待はありました。そうした風土づくりに影響を与えてもらうとか、メンバーのやる気の底上げになったらいいなとかを想定していたんですね。
もちろん、その点でもプラスになったと思うのですが、仕事のやり方や、ものの見方でこんなに違いがあるんだっていうのは非常に大きな発見でした。
小林:メンバーの方々にとっても、いい刺激にもなっていたということでしょうか。
沢登:視座が上がったり、視野が広がったというのは確実にあると思います。目の前の仕事に精いっぱいになっちゃって、マクロに見られないことって多いんですよね。それが必ずしもダメなわけではないんですが、そうじゃない視点を持ち込んでくれていました。
小林:それは面白いですね。大企業人材がベンチャーに行って視座が上がった、という話はよく聞きますが、逆もあるんですね。
沢登:そうですね、見ているところが全然違うので。しかもみなさん、自主的に提案したり、発信してくれていました。自分が何か役に立つことはないか? という気持ちで動いていたようなので、メンバーともうまく関係が築けていたようです。みなさんコミュニケーション力が高かったので、すごく溶け込んでましたよ。
佐藤:僕らも移籍者だからって特別視はしなかったですし、お互いが刺激を受け合えればいいなくらいに思って見ていました。
ベンチャーには大企業人材という多様性が必要
小林:最終的には移籍者のみなさんは、半年や1年で去っていくわけですけれども、その後の関わりとかはあるんですか?
佐藤:コミュニケーションは定期的にとっていますし、まったく関係性がなくなったということはないですね。先日も、とある移籍者が担当していたロボットのそば屋が海浜幕張でオープンしたんですが、そのオープン日に過去の移籍者が来てくれて。なんかほっこりしましたね(笑)。
移籍者が手がけたロボットがまた次の移籍者へ、という感じで引き継がれているので、みなさんにとって、帰ってこられる場所みたいな感じになっているといいなって。
小林:ずっと関わり続けられる関係っていいですね。じゃあ、移籍が終わる時も、さみしさみたいな感覚ではないのでしょうか。
沢登:退職者を送り出す時と変わらないですが、やっぱり短い期間ですごく頑張ってくれているので、誇らしい気持ちで見送っていますね。移籍者のみなさん自身も、全力で走ってやりきったというか清々しい気持ちで巣立っていくので。
小林:最後に。コネクテッドロボティクスさんは、大企業人材を受け入れてポジティブなことも多かったようですが、どのようなベンチャーが大企業人材を活用すると良いと思いますか?
沢登:合うか合わないかに関わらず、まずは受け入れるべきだと思いますよ(笑)。やっぱり多様性がないと組織としてすごくリスクだと思うんですよね。
私も以前は、自分以外全員同じバックグラウンドという環境で働いていたことがありました。でもそれだと、その中が1人が辞めたいって言い出したら全員揃ってやめるみたいな、一枚岩になってしまう。それって逆に脆いんですよね。だから、珊瑚礁みたいに多様性があった方が生き残れる可能性が高いと思います。
正直、採用とか人の受け入れって失敗することもあります。ただ、すごく学びが多くて。我々もたくさん失敗してますし、失敗から学ばないと良い組織づくりはできないと思うんですよ。だから、試してみる価値はあるんじゃないかなと思いますね。
小林:沢登さん、佐藤さん、ありがとうございました!
Fin
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