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リモートワークがうまくいく人材・組織とは? 実体験から語る「フレキシブルな働き方」

リモートワークが日常になり、大企業の働き方やマネジメントスタイルが変革を迫られています。一方で、ベンチャーは元々リモートを導入している企業も多く、働き方という観点ではそこまで大きな影響は見られません。

そんな状況を受けて、ローンディールは4月初旬「リモートワークがうまくいく人材・組織とは?」をテーマに、オンラインセミナーを開催しました。ローンディールは大企業からベンチャー企業に、人材を一定期間派遣する「レンタル移籍」を提供しています。本セミナーでは、大企業と大企業、両方を経験したレンタル移籍経験者にスピーカーとして登壇してもらい、ベンチャーでの実体験を伺いながら、フレキシブルな働き方を実践するヒントを探りました。その一部をお届けします。

ー柔軟な働き方が成功している組織の共通点とは?

ーー当日、スピーカーとして参加してくれたのは、大手通信事業会社からベンチャーへレンタル移籍した佐伯さんと、大手サービス会社からレンタル移籍をした西川さんの2名。ローンディール代表・原田がファシリテーターとなり、ベンチャーで各々が経験した「フレキシブルな働き方」についてのトークが繰り広げられました。

● スピーカー
佐伯さん:大手通信事業会社に勤務。社会人11年目。2017年より1年間、「映像コンテンツ」のベンチャーにてレンタル移籍を経験。メンバーとのやりとりはほとんど遠隔で行っていた。2018年に帰任したのち、自社でデジタルサイネージ事業を立ち上げる。

西川さん:大手サービス会社に勤務。入社13年目。2019年6月より、「イノベーティブなアイデア」を促進するベンチャーに移籍を経験。主にワークショップやイベントの企画運営に携わる。社員の多くがリモートワークを行っている環境だった。

ーーまずは、リモート等の柔軟な働き方が成功している組織の共通点について。

原田:今回のセミナーは、大企業にいながらベンチャーでの働き方も知っている、そんな移籍者の方々にお話しいただくことで、大企業におけるリモートワークのヒントになるのではと思い、企画させていただきました。そもそも、リモート等の柔軟な働き方が成功している組織の背景には、以下のような共通点があるように見受けられます。

・オンラインに最適なツールが導入されている
・個人が主体的に動けている
・組織への信頼関係がある

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これらについて、ベンチャーではどうだったのか? 経験者のおふたりに伺っていきたいのですが、まずは、この1つ目の「オンラインに最適なツールの導入」について、いかがでしたか?

佐伯:所属企業でのコミュニケーションは、メールと電話と対面が殆どでしたが、ベンチャーでは全然違いましたね。例えば、メールではなくSlackを使いますし、会議もWherebyを使ってオンラインで行ったり、タスク管理はTrelloを使ったり、資料共有もGoogledriveを使ってスプレッドシートなどのクラウドで管理していたり…最初は大変でした。

西川:私の場合も、所属企業は対面やメールで行っていたものを、ベンチャーではSlackやZoomが主でした。

原田:ツールの差は結構あるようですね。ちなみに、ツールが変わったことで、コミュニケーションに変化はありましたか?

西川:Slackにしたことで、かなり柔軟な会話ができていましたね。というのもSlackだと、「ちょっといいですか?」みたいな気軽な会話がしやすいんです。メールだと、一回で伝わるように書かなければいけないという意識があって、気軽な質問を投げかけたり、キャッチボールがしにくいというのがあります。それにSlackだとレスポンスしやすいので、メールのようなタイムラグは生じにくいですね。すぐに聞いてすぐに返ってくるという。

原田:なるほど。コミュニケーションが活発化するのは、リモートでは良さそうですね。一方、遠隔でのコミュニケーションで、上手く伝わらない…みたいなことはありませんでしたか? 佐伯さんの場合、社長が遠方にいるという状態で仕事を進めることが多かったと聞いていますが。

佐伯:社長とは月に3・4回会う程度で、あとは遠隔でした。一応、ぶつかりそうになった時のルールを設けていまして。会話がエキサイトしかけたら、お互い電話をしよう、ということにしていました。それまでは色々ありました(笑)。

原田:これはまずいなって思ったら電話すると。それは大事かもしれないですね。西川さんも、多くのスタッフがリモートという環境だったんですよね。どうでしたか?

西川:オフィスには常時3人くらいしか出社していない状態でした。でも「オフサイトミーティング」というのが月1回あり、全メンバーが集まって会話しましょうと。大きな議論をしたり、みんなの思いを共有したり…、とにかくメンバーが思う存分話せるように、丸一日かけてやっていました。こういう場があったので、コミュニケーションは大丈夫でした。

ーマネジメントしなくても、主体性が生まれる

原田:便利なツールだけに頼るのではなく、オンラインとリアルの組み合わせがポイントですね。ではベンチャーで働いてみて、共に働くメンバーの「個人の主体性」という部分では、どうでしたか?

西川:社員が10名、外部スタッフもいれて20人くらいの組織でしたが、“マネジメントをしない”スタイルでした。プロジェクトやタスクも、メンバーの挙手制で獲得していく感じです。なので、自分から意思表示していかないとタスクも取れなければ自己成長もないという環境。SlackやZoomを使ってのコミュニケーションが主でしたが、静かに座って待っていても何も動きません。

原田:「挙手をしない方が、余計な仕事していなくて給与がもらえるからいいや…」とはならないってことですよね。

西川:企業の思いに共感して、共にそれを実現したいという人が集まっていたので、みんな誰に指示されなくても、自分から動けている状態。私も感化されて自ら動くことができました。

原田:やはり個人が主体性を持つには、共感した人の集まりが前提になっているんですね。ちなみに、佐伯さんのところは?

佐伯:私のところも、マイクロマネジメントをしないことで、一人ひとりの主体性を大事にするという考えでした。そもそも移籍当時は、社長含めて4人とかしかいなかったので、やることがたくさんあり、主体的に動くしかないっていう…(笑)。社長から「事業を推進していくパートナーだと思っている」という熱いメッセージをいただいたのも、「失敗してもいいからやってみましょう」と言ってもらえたのも、行動の原動力でした。

ー「相互理解」と「能力への信頼」が関係構築につながる

原田:「ビジョン」と「パートナー」が、主体性のキーワードになってきそうですね。それでは3つ目の、「組織の信頼関係」はどうでしょうか。

佐伯:そうですね…、まずは相互理解が大事じゃないかなって。社長と腹を割って喋ったことで、この人はこういう考え方なんだなとか、こういう事情があるんだなとか、その人の人間性への理解を深めたことで、信頼関係が強まったと思います。あとは、自分ができる業務を増やしていくことで、仕事への信頼を獲得していきました。能力への信頼ですね。

原田:能力への信頼。なるほど…! それは社長だけでなく、他のメンバーとの信頼構築においても?

佐伯:はい、リモートが多いので、仕事の結果が一番信頼を掴めると思って働いていました。「ちゃんと納期までに責任感もってやってくれる」とか、「何かしら結果を残してくれたよね」とか。たとえそれがいい結果じゃなくても、何かしら行動して、何かしらの結果を導き出すということを、会社も評価してくれていましたし。リモートだと、どうしてもプロセスが理解しにくくなると思うので。

西川:確かに、リモートだとプロセスを評価しにくく、アウトプットでしか評価しようがない…という議論はこちらでも出ていて。プロセスもきちんと評価すべきだって話になっていました。でも、リモート環境でアウトプット以外を評価するとなると、アクティブになっている時間やレスポンスの件数とか、そういうことが指標になってしまうというという懸念もあって。これらの評価指標も、これからの課題かなと思います、ベンチャーに限らず。

佐伯:たとえば、リモートでコミュニケーションが減ると、上司は「部下がちゃんと働いているのかな」って疑心暗鬼になるかもしれないですし、部下は上司に対して「もっと指示をして」とか「どう思われているんだろうか?」って承認欲求が高まったりすると思うんですね。だからこそ、今までは非効率だからと排除していた雑談コミュニケーションが、今は必要なのかなと思いますね。

ーツールよりも心理的安全性が大事…!?

原田:今おふたりは大企業に戻ってきて、ベンチャーとは異なる環境で、異なるツールを使って働いていると思いますが、そこにもどかしさはありませんでしたか?

西川:確かにツールは便利でしたけど、「あのツールはいいから入れよう」みたいなことはしていません。ツールよりも「働き方の意識をどう変えるか?」を気にしていました。オフィスだろうがリモートだろうが、みんなが意見を言い合える環境が必要だと思っていたので、そこに力を入れました。具体的にやってみたことがあって、社内の人が、お互いどういう特性を持っているのかということが不透明だったので、“私のトリセツ”みたいな感じで、「知ってほしい10のこと」を共有する場を作りました。とにかく心理的安全性をつくることが第一歩かなと。

原田:先ほどの主体性と、相互理解による信頼構築につながりそうですね。佐伯さんは戻って2年ですよね。いかがですか?

佐伯:私は、ツールも可能な範囲で便利なものを使いたいと思っていたので、上司に直談判しました。やっぱり全社導入となるとハードルが高いので、たとえば、「新規部門はスピードが大事だから導入してもいいよね」みたいな感じで、まずは部門で取り入れてもらって、使った結果、良いとなれば、全社で進めていくみたいなステップがいいんじゃないかと思います。

ーー当日は100名近い方がオーディエンスとして参加。そんなオーディエンスの方からの質問。「リモートで、業務時間の管理はどうしていましたか?」という勤怠管理に関するもの。

西川:Googleカレンダーを使ってスケジュールを共有していました。予定もデイリーで入れるのではなく、月曜日にウィークリーの予定を入れるなど決めていました。

佐伯:同じくGoogleカレンダーですね。時間はフレックスで、任されていました。自分でスケジューリングして、その中で成果を出してくださいと。社長が、「やる気ないのに働いた1時間は意味がない。休むときは休んで、あとで時間を作って成果を出す」という考え方だったので、いかに生産性の高い時間を削り出すか…ということを考えていました。

ーー続いては、「自社の方が良かった」と思う点について

佐伯:今、新規事業開発をやらせてもらっているんですが、やはり、人的サポートがあったり、資金を用意してもらえたり、相互支援がすごくあります。ベンチャーでは、自分一人でやるしかないですからね。なので、孤独にはなりづらいです。スピード感はないかもしれませんが、精神的安定を保ちながら挑戦できるって、本当にありがたいなって実感しています。

西川:なんだかんだ、リアルな場での信頼関係の構築は強いと思います。なので、今までリアルな場で培ってきた社内での関係性があるから、リモートになっても強いんじゃないかって。

原田:当然、大企業とベンチャー、どちらがいい悪いではなく、状況に応じて、フレキシブルに取り入れていくことが大事ですね。今まさに、強制的に変化しきゃいけない状態。それをいかにチャンスに変えられるかだと思っています。オンライン飲み会やオンラインイベントで、地方にいる人と繋がれるなど、今までとは違う動きも生まれています。今の状況下にあっても、その中でできることに向き合って、この先につながるよう、みんなで社会を盛り上げていけたらと思います。

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【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計36社95名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年4月実績)。→詳しくはこちら

レポート:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/

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