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夢を売るベンチャーから戻って思うこと 「この先は、みんなと一緒に」 【前編】

人当たりが良くて周りへの気遣いもできる、とても柔らかい人。
株式会社オリエンタルランド(以下、OLC)のマーケティング本部で働く井川千紗都(いかわ・ちさと)さんにお会いした最初の印象でした。

話し方も遠慮がちで、控えめな雰囲気———。
しかし、お話を伺っているうちに、その内側にある“湧きあがる何か”を感じました。それが何かを聞いてみると、7ヶ月間のレンタル移籍によって生まれた、実現したいことへの思いであることがわかったのです。
初めてのベンチャー、初めての営業、そして、初めてぶち当たった壁…。
そこで、何を見て何を得たのか?
井川さんが経験した、“向こう側”の世界について伺っていきます。

—「成果と言える経験がない」というジレンマ


移籍から戻って1ヶ月。
井川さんは現在、Eコマース事業の業務に携わり、日々忙しく動き回っています。同僚からは「強くなったね」と言われることも。
自覚がないという井川さんですが「自分の意見を言えるようになったからかも…」と心当たりはある様子。

「移籍期間中は学びと実践の繰り返しで、本当に濃密でした。頭もフル回転させましたし、…自分でも頑張ったなぁと思いますね(笑)。受け身ではなく自分から動かなければならないことも多く、自分の意見を発言する機会も多くありました。その影響なのか、OLCに戻ってきて、同僚からは『強くなったね』って言われるようになりました。自分ではよくわからないんですけど…。

ただ確かに、今までだったらマネージャーとか上の立場の人から何かを言われると、深く考えずに納得してしまっていたんですが、『本当にそうなんだろうか?』と一度自分で考えてから答えるようになったと思います。それで違うなって思ったら、違うって言えるようになりましたし。今までは、自分の自己評価がものすごく低かったので、自分が正しいかどうかわからず、意見を言うことができませんでした。今、自信が持てているのかというとそうでもないのですが、”自分を信じる感覚”は掴めてきていると思います」

そもそも井川さんは、自己評価の低さから、“自信を持って語れる経験”を得るために、レンタル移籍に手を挙げたのです。井川さんの所属するマーケティング部門は中途採用者も多く、社外での豊富な経験を持った仲間に囲まれていました。彼らは皆、自分の判断軸をしっかり持っていました。

一方の井川さんは新卒でOLCに入社し、OLC内での経験しかありません。現場からマーケティングまで幅広く見てきたとはいえ、多くの経験を持った彼らに対して、経験値が少なく、それらを自分の成果として語れない井川さんは自身を持てないでいました。
『自分の判断が正しいかどうかわからない…』、そんなジレンマを抱えていたのです。

「以前はテーマパークの現場にいました。店舗商品のスーパーバイザーを3年間やって、そのあとの異動で今のマーケティング部門に来たんです。現場からそのまま商品開発の本部に行くという流れもあったのですが、自分は、より多くの人にパークに来てもらう施策を考えるマーケティングに興味があったので、配属は自分の希望でもありました。

少し遡りますが、私がOLCに入ったのは、大勢の人がイキイキする空間をつくるということに興味があったからです。学生時代、マーチングバンドをやっていたのですが、その時の経験から、大勢で一体感をつくり出すことに、ものすごい楽しさと喜びを感じました。なので仕事でも、そういう体験づくりに関わっていきたい…と思ったのが入社動機です。

それで、3年前に今の部門に異動してきました。でも半年経ったくらいには、すでに自信を失っていましたね…。パークしか知らないってこともそうですし、自信を持って語れるほどの経験をしたことがなかったからだと思います。スキルを磨こうと思ってスクールに通ってみたり、違う企業で働く知人と話して情報を得たり、色々と学ぶ機会は作っていました。
でも、どんなに知識を持っても、それを経験に変えないと意味がなくて、悶々としていました。そんな時にレンタル移籍の話を聞いて、『これだ!』と思って、挙手したんです」

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こうして、レンタル移籍に行くことを決めた井川さん。
移籍先のベンチャー企業に求めたのは“没頭できる経験”でした。

「具体的にこういうスキルやマインドを得たい、とかはなくて、外の世界に行って、世の中を体感したいと考えていました。プロジェクトなり企画なりをとにかく没頭してやりきりたい、そういう思いでした。今までも、もちろん仕事に没頭することはあったんですが、一人で、自ら推進していくような仕事の進め方ができていませんでした。
それに、代理店さんもしっかり付いてくださる。だから『自分でやりきったぞ』みたいな経験がありませんでした。だからそういう経験をすることで、自信につながるかな…という期待もありました」

— 唯一無二の「人工流れ星」に向き合う日々

そんな井川さんが選んだのは株式会社ALE
選んだ理由のひとつに、ALEが手がけるプロダクトのインパクトでした。ALEは人工流れ星を流すベンチャー企業。働くみんなが唯一無二のプロダクトを生み出すために力を合わせて日々前進している、そんな環境にワクワクしました。また、ALE代表の岡島さんの思いの強さと、岡島さんが、井川さんを求めてくれたことも決め手になりました。
岡島さんは、井川さんの“みんなが楽しいと思える空間を作りたい”という思いをしっかり受け止め、「井川さんのその感覚は(ALEに)合っていると思う」と、歓迎してくれました。

そして2019年6月、ALEでのレンタル移籍がスタート。
しかし移籍して早々、ALEのすごい人たちに圧倒され、井川さんは”改めて”自信を失ってしまうのでした。

「自由度も高くて、楽しい環境ではありました。スタッフは外国の方もいらっしゃるのですが、英語ができない日本人に慣れている方ばかりだったので、コミュニケーションで苦労することもなく、むしろ、ワクワクしました。でも、とにかく周りの人たちがプロフェッショナルで、圧倒されちゃいまして…。改めて自分と比べて落ち込んだりもしました。それにビジネスのトレンドとか、社会の流れとかの会話についていけない。

自分があまりに一般常識を知らないんだなぁって思いましたし、ALEの人たちからも、あまりの知らなさにビックリされました(笑)。いかに情報を求めにいっていなかったんだなぁって、反省しました…。気づいて良かったです(笑)」

そんな井川さんは「人工流れ星」の営業をすることになりました。しかし営業に関しては、ALEにおいてもトライアル・アンド・エラーを繰り返しながらやり方を探っている状況で、明確な目標が定められてはいませんでした。井川さんは「どこに向かっていけば良いのか…」と悩みます。しかし、わからないからと言って立ち止まっているわけにはいきません。ゴールが決まっていない中でも、「動いてみることの大切さ」を徐々に知っていきます。

「最初の1ヶ月はとにかくインプット期間で、先輩について営業先に同行したり、資料作成を手伝ったりして過ごしました。より、外の人に会う仕事をしたいって思っていたので、営業は初めてでしたけど、全然抵抗はなく、新鮮でした。うまく話せなくても初めてだから仕方ない…くらいの気持ちでいたので、大変さはありませんでした。
それよりも、会社から与えられる営業の金額などの目標がなくて、『自分はどこまで頑張ったらいいんだろう』というゴールの見えない感じの方が悶々としてしまいました。

(OLCで)仕事している時は、やらなきゃいけない業務がたくさん存在しているので、動けない…っていうことはありません。ALEでは『人工流れ星』というプロダクトやビジョンはあるものの、そこに向かっていくために、個々人が何をすべきかということが、会社で決められているわけではありませんでした。ちょっとした環境の変化で動き方が変わったりもします。自分はどのように動いたら良いのか、どこまでやったら良いのか…それがわからない状態が続いていました。

でも、日々の時間を生産につながる動きに変えていかないと…という焦りは常にあって。だからとりあえずは行動しようと思って、営業をしながらも、マーケティングの経験を活かして他のスタッフのサポートをしたり、とにかく動いていました。結果、動いているうちに、これが足りない、あれをやった方がいい、という自分の意思も生まれてきて。目標や指示を待つのではなく、自分からつくっていくことの大切さを知りました」

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—楽しさと迷走の中で。はじめての生みの苦しみ


そんな井川さんが、自分のペースをつかめてきたのは移籍して2ヶ月目くらいから。とはいえ初めての営業。おまけに “人工流星”という特殊なプロダクト。なかなか一筋縄ではいきません。ひたすらもがく日々が続きます。

「(移籍して)2ヶ月目くらいから、営業も一人で行っていました。営業先は、過去にALEが出展した展示会でつながった企業とかにアプローチするなどもしましたが、1社目に行ったら2社目を紹介してくれて、2社目が3社目を紹介してくれて…という感じで、企業の方が協力的だったおかげで、多くの企業にアプローチできました。

営業は初めてだったので、まずはしっかり説明できるようにならないと…と、 喋れるように練習をして挑んだのですが、みんな“人工流れ星”という珍しいプロダクトに興味を持ってくれ、向こうからバンバン質問してくれたおかげで、コミュニケーションはスムーズでした。

この頃は、(当時、2020年に予定されていた)「人工流れ星」を流すイベント協賛の話がメインで。話したら『面白いね』て反応も良く、話もしっかり聞いてもらえました。でも協賛するかどうか…、って具体的な話になると、そこから先が進みません。
正直、金額もそんなに安くないですし、協賛によって提供できるメリットや企業に還元できることも、まだ漠然としているところもあって。企業ごとにカスタマイズもできていませんでした。
『花火でもなく、お祭りでもなく、人工流れ星のイベントに協賛する必要性は…?』この答えを明確に言えないと、せっかく興味を持ってもらってもビジネスで関係は築けないんだ…と痛感しました。

そこに正解はないので、自分たちでつくっていくしかありません。個々の企業に合わせて提案する必要もあります。なので『こういう使い方はどうですか?』って相手にぶつけて反応を見てまた練り直して…の繰り返し。何度も同じ壁にぶち当たりました。でも、企画を考えること自体はすごく楽しかったですし、生みの苦しみだと思って頑張りました!

また、メンターの徳永さんにも、毎月の1on1で、様々な相談をしていたのですが、徳永さんは『私もそういうときあるわー! はははは!』と笑い飛ばしてくれたんです。徳永さんがいつも明るく受け止めてくれたおかげで、些細なことを気にしていた気持ちがスッキリすることが何度もありました。感謝しかありません」

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井川さんのアイデアメモ

悩み、もがきながらも、少しずつ自分で動けるようになってきた井川さん。営業の醍醐味もわかってきた様子。近くで支えてくれたメンター・徳永さんの存在も大きかったようです。

後半では、ALEで最後に見せた頑張り、そしてOLCに戻って、これから実現したいことについて伺っていきます。


→後編に続く


※ 井川さんのレンタル移籍先・ALEさんは、世界初「人工流れ星」実現を目指す宇宙スタートアップ企業です。最新情報は以下からチェックいただけます!
Twitter: @ALE_StarAle  /  Instagram: @ale_starale


【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計32社78名以上のレンタル移籍が行なわれている(※2020年1月実績)。→詳しくはこちら


追悼
井川さんのメンターを務めてくださった徳永奈緒美さんは2020年2月21日にご逝去されました。生前、徳永さんは移籍者に限らず私たちローンディールのメンバーに対しても、いつも暖かく励まし、ご指導をしてくださいました。心から感謝を申し上げるとともに、ご冥福をお祈りいたします。
協力:株式会社オリエンタルランド / 株式会社ALE
ストーリーテラー:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール

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「&ローンディール」は、企業間レンタル移籍プラットフォームを提供する株式会社ローンディールの公式WEBマガジンです。大企業で働く社員が「レンタル移籍」を通じてベンチャー企業で学び、奮闘し、そして挑戦した日々の出来事をストーリーでお届けします。http://loandeal.jp