「会社という枠を超えて、自分の強みを活かすには?」園部浩司さんのはみだしのすすめ
#01
ロールモデルが見つかるとイメージが湧く
園部さんは、NECマネジメントパートナーを25年間勤め上げたのち2016年に独立。現在は会社員時代に磨いたファシリテーションスキルを活かして、年間2500人以上のファシリテーターの育成に携わっています。園部さんとファシリテーションの出会いはいつだったのでしょうか。
「ファシリテーションに出会ったのは今から15年くらい前ですね。会社に入って経理・販促・企画など、いくつかの部門を経験した後、組織変革や業務改革の仕事をやっていた頃です。
社内をどのような風土にしていけばいいのか、どうすればサービスが良くなるのか、売上が上がるのかなど、会社のあらゆる課題をすべて洗い出して解決していく会社全体の大きなプロジェクトのリーダーをやらせていただいたんですね。このとき取り入れたのがファシリテーションのスキルでした」
その当時は「ファシリテーション」が日本であまりスタンダードではなく、情報もまだ少なかったといいます。だからこそ、自らの強みになっていったそう。
「当時はまだ浸透していなくて。セミナーや本もほとんどなかったんですよね。でも、ちゃんと勉強を続けたことで、ぶっちぎりのスキルになっていったわけです。明らかに会議を回す時、他の人と違いが出るようになりましたね。『園部が会議に来るとすごいまとまるよね』みたいな周りの反応もあって(笑)。それが強みだと気づいてからは、よりフォーカスしていくようになりました」
前例の少ないない「ファシリテーション」に向き合うにあたり、目指したいロールモデルが見つかったことも大きかった様子。
「『ザ・ファシリテーター』という森時彦さんのすごい本に出会ったのも大きかった。主人公がファシリテーターとしてどう会社内で活躍していくかという内容で、事業部長を支えながら、裏方としてファシリテーションをしていく主人公の話。「これがまさに僕の仕事かもしれない。自分もこういうふうに社内で活躍したいな」ってイメージがわいたんですよ。本の中でロールモデルに近いものが見つかったみたいな感じですね」
#02
「会社と自分とっていいこと」をカタチにする
こうして「ファシリテーション」をひとつの軸に、活動を広げていった園部さん。大きな転機は、社外でそのスキルを試してみたことにあるといいます。
「ファシリテーションは、社外でも結構いけるんじゃないかってなんとなく思っていたんですが、その価値を知る術がなくて。そんな時に、私が所属していた部門が赤字になったので、『じゃあ、稼いできます』って、ファシリテーションのコンサルティングをメニュー化して、外の会社に売りに行ってみたんです(笑)。
自分で営業して、『トライアルでちょっとやってみませんか』みたいなところから入って、何社か見つけて。どういうふうに伝えたら買ってもらえるかということはすごく考えて動いていたので、実際に受注も取れました」
加えて、園部さんはストリートアカデミー(ストアカ)でも講師業を始めます。すぐに人気講師となり、コンサルティング同様、会社に利益をもたらすことになります。
「ストアカは僕自身は知らなかったのですが、周りから『こういうサービスがあるよ』って教えてもらって。『園部さんストアとか絶対向いてるよ』って同僚に言ってもらえたので、じゃあやってみるかと、『売上は全部会社に落とします』と言って、始めてみました。
当初から、ファシリテーションは絶対売れると思ったんですよ。というのも、まだ教えられる人がほとんどいなかったので。一方で、明らかにニーズが高まっているのもわかっていたので、そこをうまく組み合わせたのが良かったかなと。ちなみに、NECの名前も出していたのもブランド力として大きかったと思いますよ。
みなさんも外で自分のスキルを活用してやるときには、可能だったら会社名とか使った方がいいんじゃないですか。僕は売上は全部会社にすることで実現させました。市場価値を確認できるというのを手に入れたかっただけなので、互いにとって良いやり方だったんじゃないかなって」
#03
価値を提供できるかもしれない相手を見つける
「会社にとってもプラスになること」。これも、はみだす上で大事なことのひとつ。一方で、「無料でもいいから誰かの困りごとをサポートする」のも、価値を試す上でおすすめだといいます。
「僕の場合、ファシリテーションでいけるという確信を持って進めていましたけど、たとえば『自分はもしかしたらこれが強みかもしれない』って思うスキルがあったら、それを誰かに提供する機会を設けて、無料で試してもらうとかもありなんじゃないですかね。
僕も、ベンチャー企業をお手伝いさせていただいたこともありますよ。知り合いのベンチャーなどに「一緒にやらせてくれない?」って。そうやって、数社お手伝いをしている中で、自分のスキルがどう通じるかっていうのは確認することができました」
こうして社外でもファシリテーションを中心に、自らの価値を確認できた園部さんですが、普通は度胸がいることのように思います。園部さんの根底には「いける!」という自信があったということですが、そもそもどのように自信をつくっていったのでしょうか。
「それでいうと、生まれつき根拠のない自信というか、自己肯定感は高いタイプなんですね(笑)。でも当然それだけじゃなくて、すごく努力はしてますよ。会社員時代、僕よりすごい社畜はいないというくらい、ずば抜けて社畜でしたから。やっぱそれだけ泥水飲んできています。
別にみなさんに泥水を飲めって言っているのではなく、経験は自信につながるということ。やっぱり、やり抜いた経験は自分を強くしますから」
#04
マイナーチェンジから始めればいい
積み重ねた経験を活かして、外の世界でも価値を発揮していった園部さん。そこから独立に至るわけですが、転機はあったのでしょうか。
「独立しようと思ったのは43歳くらいの頃で、結果的に45歳で辞めるんですが、一番のきっかけは組織変革を社内で行う際、外部のコンサルの方に手伝ってもらったことでした。その人たちの立ち振る舞いとか仕事の進め方とか課題解決の仕方をすごく学ばせていただいて。『すごいなこの人たち』って思ったのと同時に、『自分でもいけるかもしれない』って思っちゃったんですよね(笑)。
自分がやってることが全部言語化されて、再現性が持てたわけです。こういうふうにサービスって作っていくんだ、コンサルティングってこういう風に関わってくんだっていうのを理解できたので、独立に突き進みましたね」
会社でも大きな成果を出し続け、重要な役職についていた園部さんですが、決意は固かったそう。そうして独立したあとは、会社員時代のさまざまな経験が大きく役に立っている様子。
「独立して、組織でプロジェクトリーダーをやっていたっていうのが、本当に強みになっています。ありとあらゆる課題を泥水飲んで解決してきましたから(笑)。たいたいのことはお客様と同じ立場で『わかるわかる』って言えるんですよ。そうした経験値で選んでくれているお客様も多いですね。だから、みなさんの今の経験が、後々役に立つ時がくると思いますよ」
そんな園部さんが、独立後も大事にしていることのひとつに、「枠、超えよう」というメッセージがあります。それは「枠を超えるような仕事にチャレンジし続けていく」ということ。
「これも経験なんですけど、こじんまりやっちゃう時って、何の感動もなく終わるみたいなことありませんか。枠を超えるってことは、何かを変えるのでリスクもあると思うんですよね。でも、そのリスクを取ってでもチャレンジをして、やりきったときに成果がすごく大きく出るっていう経験が僕は多いんです。
いきなり大きなことをしようとしないで、1個1個ちょっとした工夫でいいと思うんすよね。劇的なイノベーションを目指すとかっていうことよりも、小さいマイナーチェンジで常にバージョンアップさせていくってことを意識していけばいいんじゃないかなって。
僕の会社名は『園部牧場』って言うんですが、これは仲が良かった前職の後輩の女性が一緒に考えてくれました。『羊が1匹、羊が2匹のように、大ジャンプじゃなくてちょっとジャンプぐらいの人をわんさか育てることをしたい』って話したら、『それって牧場じゃないですか』って言ってくれて。枠超えルールを大事に、社名も枠を超えてみました(笑)。
実際、ホームページに、羊が飛んでいるイラストがあって牧場とか言っている会社に連絡してくる人っていい意味で普通の人じゃないんですよ。やっぱりここに面白さを感じた人が来てくれるんで、わかり合える。チャレンジしてよかったなって思いますね」
#05
「やらなかったら後悔しないか」を自らに問いかける
園部さんが超えているのは社名だけではありません。ファシリテーションのプロでありながら、寿司職人見習いという不思議な肩書きも持ち、働き方の常識も超えています。
「せっかく独立したので、やることは自分で全部決めていいわけです。ビジネスのスキルをずっと20数年も高める努力をしてきたので、伸びしろは少ないかもって思っちゃったんで、仕事の幅を広げていくときに、対局の職人になるのはいいんじゃないかって。
どういう気持ちであのこだわりを持っているんだろうとか、職人さんの仕事に込める想いってどういう気持ちなんだろうとか知りたくなって。たまたま、寿司の学校があったので入りました。寿司って誰でも喜んでくれるし、 実際、お客様に忘年会振舞ったりとかできるので、一見遠く見えるけど、工夫次第でつなげることもできるわけです」
最後に。これから会社という枠を超えてチャレンジしたい人へメッセージをいただきました。
「リスクの大きさとか安定とかそういったことを考えてしまうと、ちょっと飛び込みにくくなっちゃいますよね。だから、僕は何かに迷ったとき、『もしこれをやらなかったら後悔しないか』っていうのだけを常に基準にしてるんですね。
みなさんは、収入や仕事が安定してる方も多いと思うのですが、リスクを取ってでもチャレンジした先には想像を超えた大きなリターンがあると思うので、一度飛び込んでみるといいんじゃないかなと思います。失うものは、案外少ないかもしれない。
僕は常にチャレンジする人間でありたいし、感動を味わえる仕事を続けていきたいって思っていますよ。みなさんもぜひ、人生1回しかないので楽しんでください」
いかがでしたか。
自分の強みや軸がわからないという方も多いと思うのですが、園部さんのお話を伺って「経験の積み重ね」こそが、変えがたい強みのひとつになると、改めて感じました。今はまだ経験が何になるかわからなくても、あとあと効いてくる。だからこそどんどん経験してみる。会社の枠を超えて、経験量を増やしていく。その繰り返しが大事なんじゃないでしょうか。みなさんの、はみだし(本業の枠を超える)を応援しています。
文=小林こず恵 / 提供=4th place lab
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