たった3ヶ月でも成果が出る!大企業のスポット人材がベンチャーを変えた
「未経験なのに私にできるの?」
ベンチャーから突然のオファー
-真田さんはどのような経緯でside projectに参加したのですか。
真田:テレビ朝日に勤めているのですが、子育て中のため現場でバリバリ働くことが難しく、今後の働き方を模索していたところ人事からside projectの話を聞きました。起業した友人が周りにいて、ベンチャー企業への興味もあったので手を挙げました。
自分のプロフィールなどを登録したのち、登録ベンチャーからオファーが来る仕組みなのですが、すぐにTRUSTART株式会社の荒木さんから連絡をいただきました。「強い組織を作りたい、そのために力を貸して欲しい」と。
テレビ朝日ではコンプライアンス担当として、組織内の不正やハラスメントなどへの対応、各種啓蒙活動をしています。人事の経験はなく、組織作りもしたことがないので「私にできるのか?」というのが最初の印象でした。
-予想外のオファーだったのですね。荒木さんは真田さんのどんな経験に着目して声をかけたのでしょうか。
荒木:当時私が感じていたのは、組織に関する課題でした。短期間で社員が一気に増えたこともあり、どうも皆がバラバラしている。このまま社員が増え続けると大変なことになるのではないか。組織を一枚岩とするために、現場の声を吸い上げ、施策を一緒に考えてくれる人はいないかとリストを眺めていたところ、目に留まったのが真田さんでした。
コンプライアンスの部署に所属しているということは、社員の悩みを吸い上げるスキルのある方に違いないと思い、すぐにお声がけしました。
お客様スタンスだったことを反省。
自分から動いてみたら、一気に加速した
-真田さんの働きやご活躍はいかがでしたか?
荒木:「従業員の真の声を聞く」をテーマに、当社の社員や派遣、パートタイムも含めて30名程の従業員と会話していただきました。
皆がどこに課題を感じ、この組織をどう捉えているのか。私たち経営層では拾いきれない現場の声を吸い上げていただきました。第三者という立場で、なおかつ真田さんというお人柄だからこそ得られた一次情報がたくさんありました。
-真田さんはベンチャー企業ならではの難しさを感じたシーンはありましたか?
真田:最初にぶち当たったのは、荒木さんがなかなか捕まらないという壁でした(笑)。ヒアリング対象となる社員との場をセッティングしてくださるのですが、あまりのお忙しさに途中から進まなくなることも。
最初はそこで動きが止まってしまっていたのですが、私自身が“お客様スタンス”になっていたことを反省しましたね。「代わりに窓口をお願いしたい」と自ら別の社員の方に頼み、リストを元に、お話をしたい人につないでもらう体制にしてから一気に加速しました。
荒木:私が窓口をしたかったのですが物理的にリソースを割けなくなり、真田さんにはご不便をおかけしてしまいました(苦笑)。side projectは3ヶ月という短い期間だからこそ、受け入れ側の体制も大切だなと感じました。
第三者ではなく、仲間になりたい。
「人対人」の関係性を求め、30人の社員から聞いた本音
-真田さんは他にも何かご苦労はありましたか?
真田:本業でもいろいろな人から話を聞く機会は多いのですが、side projectでは、私はあくまで社外の人間です。いきなり「話を聞かせてください」と声をかけられても戸惑いますよね。
腹を割って本音を話してもらうために「企業対企業」ではなく、「人対人」というスタンスを大事にしました。私がどういう人間かをお話しした上で、「あなたのことを知りたいです」「あなたのフィルターを通して、TRUSTARTがどう見えているか教えてください」とお話をしました。
最初はぎこちなくても、対話を重ねるごとに少しずつ本音を話してくださる方もいて。オフィスに何度も足を運ぶうち、お茶やランチに誘い合う関係性を育むことができました。
-オフィスに顔を出していたのですね。
真田:飲み仲間になるくらいの感覚で、ガツガツ行かせていただきました(笑)。実はプロジェクトが終了した今も、TRUSTARTの方とはランチをしたりお茶をしたり。人対人の関係性が続いています。
-距離が縮まると、リアルな本音が聞こえてきそうですね。
真田:そうですね。実はみんな、誰かに話したかったのだと思います。でも誰に話したらいいかわからなかった。
side projectに参加する前、私はコンサルタントのような立ち位置で、荒木さんに何かしらの提案をするのかなと思っていました。ただ参加して感じたのは、私は第三者にはなりたくないということ。第三者ではなく、TRUSTARTの皆さんの仲間になりたい。辛さを感じているなら、その辛さを一緒に味わいたい。自分にこんな思考があったのも新しい気づきでした。
ヒアリングした社員の本音から、施策を立案。
コミュニケーションの場を用意し、相互理解と共通理解を育む
-皆さんへのヒアリングから、人事施策は生まれましたか。
荒木:私とのコミュニケーションが足りないという声が意外と多く上がっていると知りました。これはすぐに解決できると、毎月第二・第四水曜日に参加型の食事会を開催するようになりました。
私から声をかけて参加してもらったり、部門・役職問わず、話したい人に参加してもらったり。すでに8回ほど開催しています。
小さな組織でも、チームが違うとお互いの仕事を意外と把握できていないんですよね。食事会を通じて、この部門とこの部門はもっとコラボレーションできるのではないか?とか、会話も増えて良いことしかありません(笑)。
-まさに真田さんのヒアリングから生まれた施策なのですね。長期的な施策もありますか?
荒木:いくつか走っているものがありますが、なかでもご紹介したいのが真田さんによる対話の会です。会社の掲げるパーパスやバリューをもう一段社員に落とし込んだほうがいいだろうと開催していただきました。
真田:side projectの発表会として、ヒアリングした結果を共有し、それに対して荒木さんや皆さんからコメントをもらって対話をするという場にしました。社員同士がお互いの考えを知り、集団で対話する場も大切だと思いまして。
たとえばTRUSTARTが大切にしているバリューの1つに「Agility」があります。直訳すると機敏さや素早さという意味で、TRUSTARTの皆さんに染み付いているバリューです。
でも365日、昼も夜も関係なくすぐに返信をする素早さが大切かというと、そうではない。相手の状況や境遇を考えて返信することも大切です。何でも早く返すことが善ではなく、その背景には相手への共感や受容があるべきだと思うんです。
そんなお話をすると「すぐに返信できないことに実は負い目を感じていた」という声もあがってきて。会社が掲げる一つひとつのバリューについて、少し立ち止まって皆で考える。組織が大きくなるたびにこういう会を開催して、共通言語を作ることが強い組織作りにつながるのではないかと考えました。
荒木:真田さんからの発信がしっかりと皆の心に届き、受け止められていることがよくわかった会でした。これまで休むことなく走り続けてきてしまったので、今後は定期的に開催していきたいと考えています。
「もっと新しいことに挑戦したい」。
side projectでチャレンジ精神に火がついた
-両者にとって有意義な3ヶ月だったのですね。side projectを通じて真田さんの中で、何か変化はありましたか。
真田:もともと私は「やるかやらないか、迷ったらやる」を選択するタイプの人間です。大人になると、何かと理由をつけてやらない選択をすることが増えてくると思うんです。体調が良くないとか、子供の都合とか……。やらない理由ってたくさん見つかりますが、side projectを通して、改めて「やる」を選択する自分でいたいと思いました。TRUSTARTで挑戦をしている皆さんからの刺激がすごく大きかったのだと思います。
-今後の仕事やキャリアへの影響もありそうですか?
真田:今の部署にきてから5年が経過し、そろそろ新しい環境に異動したいと上司には伝えているのですが、選択肢の幅がすごく広がったと感じています。
異動先は自分のこれまでのキャリアに親和性のある分野で、スキルの活かせる部署がいいと考えていました。でもside projectで経験のない仕事をしたことで、自分の可能性は無限大だと感じたんです。軸さえ合っていれば、360度どんな方向にでも行けるなと。
-視野が広がったのですね。
真田:そうなんです。これまでの延長でキャリアを捉える必要はない。いままでは地上からの景色を見ていましたが、荒木さんに飛行機に乗せてもらって、見える世界が変わりました(笑)。
最近はテレビ局も新規事業に力を入れていて、社内募集もかかっています。私にビジネスは難しいだろうと手を挙げてこなかったのですが、今は実業に関わりたいという気持ちが強くなっています。マインドが変化したからか、新しい情報もどんどん入ってくるようになっています。どこかでまたTRUSTARTさんとも連携できたら嬉しいですね。
ベンチャーと大企業人材、両者がしっかり噛み合えば短期間でも成果を出せる
-お話を聞いていて、今回の真田さんとTRUSTARTのマッチングは両者にとってベストマッチだったように感じます。ベンチャー企業が side projectで大企業人材にオファーする際、ポイントはありますか?
荒木:探し方は大きく二通りあると思います。1つは課題が明確で、自社にない技術やリソースを社外に求めるケース。もう1つが抽象度の高い課題に対してリソースを求めるケースです。
いずれにおいても、うまくマッチすれば短期間でしっかり成果を生み出すことができます。今回は後者だったので、抽象度の高いテーマを頭に浮かべてリストを眺めてみたところ、真田さんのプロフィールにピンと来ました。
-実は、真田さん含めて3名の受け入れをされたそうですね。ベンチャー企業の視点で受け入れのメリットはどんなところにありますか?
荒木:スタートアップの限られた資金では投下できる人的リソースに限りがありますが、side projectでは市場になかなか現れない大企業人材がスポットで入ってくれる。そして両者が噛み合えば短期間でもしっかり成果を出せる。この手軽さは大きなメリットだと思います。
今回、真田さん以外のおふたりはそれぞれマーケティング、業務の仕組化に精通した方々だったのですが、当社にはない技術的なご支援をいただけて本当に助かりました。
-受け入れをされた方々との今後の関わりや期待についても聞かせてください。
荒木:もともと真田さんには、プロジェクトが終わった後も副業として同じ役割で関わってもらえないかと考えていました。ですから真田さんと社員のコミュニケーションが続いていると聞いて、もう感謝しかない。引き続きこの関係性を続けていけたらと思います。一方で、我々もTAKEするだけではなく、何かGIVEできればと考えていました。
side projectを通じて最初の一歩を踏み出すと、「新しい挑戦」のハードルが意外と低いことに気がつく。特にこれを社外で経験した意味は大きいと思うんです。大企業の方々がこの経験に最大限レバレッジをかけて新しいチャレンジをしてくれたら、スタートアップにいる者としてこれほど嬉しいことはありません。
真田:挑戦しているスタートアップの方々と出会い、対話をすることは大企業で働く私たちにとって視野を広げるうえでとても大事だと感じました。これからもいい関係性を続けられたらと思いますので、引き続きよろしくお願いします!
Fin
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