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大事なのは「鎧を脱ぐ」こと。他流試合から生まれた、新規事業の可能性

ベンチャー起業家が抱える戦略課題に対して、大企業の社員が解決策を提案し、本気で議論を重ねる「outsight(アウトサイト)」。毎週1回オンライン研修が行われ、下記の工程を繰り返し、多種多様なベンチャー企業の課題解決に向けて自身の持つアイデアや企画力を発揮しています。これまでに経験のない領域の課題に対する解決策を考え、課題解決力を養うとともに、ベンチャー起業家や社外の参加者から学ぶことで、情報感度を高め、視野を広げることを狙いとしています。

今回インタビューしたのは、東芝テック株式会社で新規事業を企画立案・推進する部署に所属し、チームのマネジメントも担っている米畑里美さん。
マネジメントという立場でoutsightに参加したことで何を得たのか。そしてどのような変化が起こったのか、お話いただきました。


まだまだ知らなかったベンチャーの世界


ーーまずはじめに、米畑さんがoutsightへ参加された理由を教えてください。
 
きっかけは、部署のメンバーがoutsightに参加していて楽しそうだったので、私も参加してみようかなと、とてもシンプルな理由です(笑)。メンバーからは、「いろいろなベンチャーの話を聞けて勉強になった」「他社の参加者から刺激を受けた」という話を聞きました。

【プログラムの詳細・outsight 公式サイトより抜粋】


私自身も6ヶ月で12社ものベンチャーのお話が聞けて、とても刺激を受けました。ベンチャーとの協業も多く、お話を伺う機会はありますが、時間が限られていることもあり、あまり多くの情報はお話しいただけないです。outsightでは、事業計画まで説明してもらえて、かつどんなことに悩んでいるかまで話してもらえる。こういった機会はなかなかないですよね。
 
それと、自分のことを客観的に見る良い機会になるのではないかという期待もありました。同じ社内で10年近くやっていると、ちゃんと企画できているのか、自己満足になっていないかがわからなくなることもあります。自分の企画力が「本当に社外でも通用するのか」を知る機会にもなったのではないかなと。

米畑 里美さん | 東芝テック株式会社 新規事業戦略部 新規事業開発室 エキスパート
2004年に株式会社東芝に入社し、携帯電話や冷蔵庫などの家電製品の商品企画を経験後、新規事業開発を担当。2016年にPOSシステムのリーディングカンパニーである東芝テック株式会社に転籍。データサービスを軸に新規事業創出に取り組んでいる。

 
ーー最初、参加してみていかがでしたか。
 
まず、ベンチャー企業側から事業紹介と事業課題についてお話しいただき、その課題について参加者から質問を投げます。その中から、ファシリテーターが課題の解決に繋がる質問をピックアップして答えてくれるので、まず「どういう問いかけをするといいのだろう?」という部分から考えなければいけないという、いいトレーニングになりましたね。

同時にファシリテーターというポジションの重要性も感じることができました。その場をまとめる人がどんな質問を拾って、どう返して進行していくのか。私も4人のメンバーをまとめる立場ではあるので、ファシリテーターがどう動くかによって場の良し悪しが決まるのだと勉強になりました。
 
ーーちなみに印象に残っているベンチャー企業はありますか。
 
個人的には、障害者雇用について取り組む「VALT JAPAN」さんの事業がとても印象的でした。就労継続支援事業所の代わりに営業を代行して、障害者の雇用先を開拓し、賃金をあげていくことに取り組んでいるベンチャーです。
 
あとは、スモールコミュニティの中で事業をされている企業が多くて驚きました。私たちは基本、サービスや商品をより多くの人に広げようと考えますが、彼らは特定の領域にどれだけ深く刺さるか、いかに小さいコミュニティで成り立たせられるかをゴールとしています。その思考の方向性が目から鱗でしたね。

他にも、物流や介護、育児、マイノリティなど、これまでの仕事では接点がない領域のベンチャーの話はとても勉強になりました。各企業の課題を解決するためには、どんな新規事業が必要なのだろうかと考える貴重な機会になりましたし、何より今、世の中には面白いアイデアを持ったベンチャーがこんなにたくさんあるんだということを知ることができて、それだけでも有意義な時間でした。

鎧を脱ぎ捨て、本音で挑んだ他流試合

ーーご自身の仕事において、ヒントになったことはありましたか?

自分の企画の曖昧さに気づくことができたことが、一番の収穫ですね。解決策記入の時に、「たぶんみんな好きだろうな」と根拠がない仮定で企画を作りがちだったのですが、ファシリテーターの方から「顧客と経営者の視点を両方持ったうえで、解像度の高さをどれだけ出せるかを考えましょう」と口酸っぱく言われました(笑)。
 
ーーなるほど。ファシリテーターの方からフィードバックがあるのですか?
 
そうですね、得票数の多いアイデアについては、ファシリテーターやベンチャーの方からフィードバックがあるのですが、選ばれなかった案については自分から手を挙げて質問しないとフィードバックがもらえません。

私はよく手を挙げて「自分のアイデアのどこが良くなかったのか」を質問していました。その理由を聞いて落ち込むこともありましたが、絶対に自分の身になると思って。何度も質問をしていたので、他の参加者からも「米畑さんは心が強いね!」と言われました。実は前に出るのは得意ではありませんが、せっかくのチャンスなので積極的にならないともったいないかなって。私のあとに参加したメンバーにも、「自分から手を挙げてアドバイスを聞いた方がいいよ」と伝えました。
 
ーー参加する姿勢の大切さを、周囲にも伝えていたのですね。ちなみに、アイデアをブラッシュアップしてくれる場もあると聞きました。

はい。ベンチャーの方のお話を聞いた後に、少人数のグループに分かれてグループディスカッションをする時間があります。そこで、それぞれが感じたベンチャーの課題や想定アイデアについて意見交換ができるんです。

でも、みんなで遠慮しあって終わってしまう回もあって。とにかく「自分から鎧を脱ぐこと」が大事かなと思い、まずは自分が思っていることをちゃんと伝えようと決めました。そうすればいい他流試合の場になります。
 
ーー米畑さんが口火を切る役割を担っていらっしゃったのですね。リーダーとしてのキャラクターがここでも発揮されたのではないでしょうか。

そうでしょうか(笑)。そうだったら嬉しいです。

チームの成長につなげるために


ーーそういえば、同時期に米畑さんと参加していた同じ部署の方がoutsightをきっかけに協業をスタートされたそうですね。その際、米畑さんの後押しがあったと伺いました。
 
はい、協業を実現した松井さんは、参加ベンチャーのひとつだった​​yousual株式会社にかなり興味を持ったようで「何か一緒にやりたい!」とずっと話していました。なので「こちらから協業したいと提案してみたら?」とアドバイスしました。
 
やはり動かないことには何も始まらないですし、基本的に私たちのチームは「まずはやってみよう!」というスタンスなんです。結果的には、彼女の行動力があったからこそ、今回の協業が生まれたのかなと思っています。
 
▼ 参考:「outsightから生まれた、大企業とベンチャーの協業」

 
ーー米畑さんも、outsightでの「つながり」を活かして取り組まれていることがあるそうですね。
 
ともに参加する大企業の方々も、社外で何かの機会にお会いしたとしても名刺交換だけで終わってしまいがちですが、outsightではディスカッションの中で、その方自身のお話を伺うことができ、普段どのようなことに取り組まれているかを知ることができます。
 
意見を交わすうちに、ある企業の方と「社内だけだと行き詰まってしまうから、壁打ちを一緒にやりたいね」という話になって。今度、自社の持つデータとその方の企業の領域を掛け合わせたら、どういった新規事業が生まれるのか壁打ちをする予定なんです。

ーベンチャー企業だけでなく、参加企業とも関係性が築けるというのは、とても理想的ですね。

はい。それと今、ファシリテーターの細野さんを会社に招いて、研修をしていただいています。自分たちの企画の仕方をブラッシュアップしたくて。今回弱点だと感じた部分は、私個人だけでなく、部署としても弱点なのかもしれないと気づきました。解像度の高い企画を立てるためには、どんな視点を持つべきか、何が足りていないのかを部署のメンバーとも共有したいと思い、思い切って相談させてもらったんです。これまでは、曖昧な仮説を立てることが多かったのですが、現在は具体的な顧客の課題に基づいて企画を出せるようになりました。
 
ー米畑さんのようなマネジメントをする立場の方がoutsightに参加すると、チーム全体に波及効果がありそうですね。

そうですね。そうしたチームへの影響というところもありますし、厳しいフィードバックをもらうことで、自分のスキルを冷静に見ることができます。ひとつの企業で長く働いていると、自分の思い込みや、これまでのやり方だけでメンバーに意見を言ってしまうこともあると思うんです。井の中の蛙にならないためにも、リーダーとして前に立つ人にとって、outsightのような機会は必要かもしれない、と思いました。

outsightを通じて、ベンチャー企業、参加者、そしてファシリテーターとの良い縁を築き、現在は自身のチームへも波及させている米畑さん。ただ参加するのではなく、積極的に「プログラムを通じて成長したい」「学びをチームに持って帰りたい」という強い想いのもと、行動し続けています。米畑さんご自身、そしてチームがどのような変化を生むのか、楽しみです。
 

Fin


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協力:東芝テック株式会社
インタビュー・文:三上 由香利
提供:株式会社ローンディール
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