見出し画像

【第3章】 初めて実感できた“自分の成果”


<過去記事はこちら>
【第1章】「自分のスキルは外で使えるのか?」というギモン
【第2章】 自ら“仕事を拾いにいく”ということ

—「営業電話で門前払い」からのスタート

「そうですか、失礼します…」

2019年2月。
オイル&ガスのプロジェクトをひとり任された新井は、導入先の候補となる企業にアポイントの電話をしていた。
しかし、話すら聞いてもらえず、門前払いされていた。

事業の目標は、当然、導入先の獲得。まだ立ち上げたばかりということもあり、(移籍期間)残り4ヶ月程度で獲得まで持っていくのは現実的に難しいかもしれない。せめて検証実験(POC)までは持っていきたい、そう考えていた。しかし、担当者に会うことさえクリアできずにいた。

要となる”営業”はまったく初めて。日揮にいた頃、新規で電話をすることがあったとしても、日揮という名前を出せば、だいたい話したい相手まで通してくれた。だから躓くことはなかった。しかしベンチャーではそれは通じない。営業電話に緊張しつつ、「会いたい人に会うということがこんなに大変なことなのか…」と、壁を感じる。

新井は考えた。
「どうしたら、担当者までつないでもらえるのか?」

つないでもらったところで、ドローンに興味を持って会うに至るにはどうしたらいいのか? そのためには、どういう話し方が効果的で、どのようなロジックで説明したら響くのか…。新井はひたすら電話をかけながら、相手との会話をヒントに、その答えを探っていった。

何件かけただろう、何人と話しただろう。PDCAを繰り返した結果、徐々にではあるが話を聞いてくれる企業も増えた。アポイントの確率が高まっていく。自分の戦略がうまくいき、新井は何とも言えない興奮を覚えた。

「これ、めちゃめちゃ楽しいな…」
いつの間にか大変だった営業電話も楽しくなっていった。

—企画提案書の未熟さに愕然

アポイントは取れるようになった。
しかし新井はその次のステップで再び躓く。
それは、アポイント先へのプレゼン資料である「企画提案書」だった。
そもそも「企画提案書」を作ったのも今回が初めて。

初めてとはいえ、自分が作成した提案書と、(テラドローンの)社員が作成したものを比べ、「これほどまでに差があるのか…」と愕然とした。
新井は、ただ製品の説明を並べることしかできなかったのだ。

プレゼンでも、独りよがりで一方的な説明しかできない。
つまり、相手の需要を捉え、相手に合わせた提案することができなかった。

「どうしたら相手に響かせることができるのか…」

場数を踏んで、相手が求めていることを知り、組み立てていくしかないと新井は意を決し、営業電話の時と同じく、ヒアリングを重ね、自分なりにPDCAを回していくことになる。

—“自分の成果”が確認できた瞬間

プロダクト開発を進める傍ら、顧客開拓、営業、提案…を繰り返す日々を送り、気づけば4月に入っていた。

移籍も残りあと2ヶ月だ。
新井は少しずつ相手に合わせた提案ができるようになり、多くの企業担当者と会うことを実現していた。結果、幾つかの実証実験を確約できた。

実施は6月以降になるため、立ち会えないのは何とも心残りだが、実証実験は獲得につながる大きな第一歩。新井は自分の中で決めていたマイルストーンをクリアできたことに安堵する。そして、周囲からも大きく感謝されたことで、貢献できたと実感した。

テラドローンでは、CEOの徳重から全スタッフに向けて、メンバーの活躍をメッセージで流すということがあった。「◯◯さんが活躍している、みんなも続け!」と言ったようなメッセージが定期的に送られてくる。
新井はそれを受け取りながら、「自分もいつか…」そう思っていた。

そんなある日、オイル&ガスの事業で、初めて企業から実証実験を獲得したときのこと。
新井がそれを報告すると、徳重から「新井さんさすがです。おめでとうございます」というメッセージが全スタッフに向けて送られた。

「ようやく自分の名前が載った!」
新井は嬉しかった。
嬉しくて、思わずその画面を保存した。ずっと求めていた、“自分の成果”ということがわかりやすく証明された最初の出来事だった。

—明らかな成長で掴んだチャンス

実証実験も決まり、移籍も終わりが見えてきた頃、大手の石油・天然ガス開発企業である会社からコンタクトがあった。
現在、大企業ではアナログをどうデジタルにしていくか、というデジタルトランスフォーメーション(DX)が課題となっている。オイル&ガスの分野においては、1日に何人もの人が点検作業をしているため、ドローンによって作業効率あげたいということでヒアリングにやってきた。

またとないチャンスだった。新井は、テラドローンが世界で手掛ける、オイル&ガス分野のドローン点検事業をプレゼンした。
担当者は新井のプレゼンを絶賛した。そして、近々アブダビ(アラブ首長国連邦)で、世界中のオイル&ガス分野の企業が集まる場があるから、ぜひそこでこのプレゼンをしてほしいと頼まれたのだ。

スケジュールなどの関係から、新井は行けず、現地のパートナー企業が代打でプレゼンをすることになったのだが、自分の考えたプレゼンが認められたことは自信になった。

直接的な売上につながったわけではないが、(オイル&ガス分野の)トップ企業が集まる世界的な場で、プレゼンの機会を得て、テラドローンという名前を世界に知らしめることができたのは、貢献できたことの一つだと思う。

数ヶ月前は、一方的に喋り、ただサービスを伝えることしかできなかった。
でも今は違う。

相手に響く言葉の使い方や、ストーリーを考えられるようになった。
相手の興味ポイントを見つけて、掘りさげて提案できるようになった。
顧客ファーストの視点で、コミュニケーションが取れるようになった。

新井は確実に成長していた。

そして、
「自分はエンジニアである前に、ビジネスマンでありたい…」
そう強く思うのだった。

→最終章へ続く


【テラドローンさんより、人材募集のおしらせ】

今回、新井さんがレンタル移籍をした、テラドローンさんでは、各種分野の人材を募集しているそうです。東京に本社をおき、全国6拠点、海外20拠点以上を構える、世界で注目されているベンチャー企業です。ぜひ、チェックしてみてください。→採用情報はこちら


【レンタル移籍とは? 】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計29社68名以上のレンタル移籍が行なわれている(※2019年10月実績)。→ お問い合わせ・詳細はこちら


協力:日揮株式会社、テラドローン株式会社
Storyteller:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?