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“外のモノサシ”で測ることで見えた自分の価値 【トレンドマイクロ 凌勇樹さんのベンチャー移籍物語 -前編- 】

果たして、これまで培ってきたスキルは、外の世界でも通用するのか――。セキュリティ関連ソフトの開発・販売を行っているトレンドマイクロ株式会社に勤める凌 勇樹(りょう・ゆうき)さん。2011年に入社し、営業部門で鍛えられ、3年前にマーケティング部門に異動。営業時代に得た相手の特性を見極める能力を活かし、オンライン・オフラインにおけるマーケティング施策の遂行に奮闘してきました。
そんな日々の中で、ふと自分のスキルを客観的に測ってみたくなったのだそう。そのタイミングで、レンタル移籍の存在を知ったといいます。
凌さんが選んだ移籍先は、契約マネジメントシステム「ホームズクラウド」を提供するスタートアップ・株式会社Holmes。トレンドマイクロのような大企業とはまったく違う環境で、自分のスキルを活かすべく、1人目のマーケティング担当として赴いたのです。
凌さんは「レンタル移籍」というチャレンジによって、どのような答えを見つけ出したのでしょうか。2019年1月からの1年間の活動を、紐解いていきましょう。

ーレンタル移籍は“ローリスクハイリターン”な挑戦の場

――社内の人事制度としてレンタル移籍があると知った時は、どう感じました?

実は、トレンドマイクロで全社導入される前に知ってたんです。というのも、トレンドマイクロでは、エンジニア部門で先行導入してたんですね。1年半くらい前だったと思います。でも、エンジニア部門以外には公表されていなかったんです。

――当時、マーケティング部門にいた凌さんは、どこで知ったんですか?

情報収集の意味でGoogleアラートを使っていて、「トレンドマイクロ」ってキーワードが引っかかると通知が来るように設定していたんです。ある日、ローンディールさんのイベントに弊社の人事総務本部長が登壇したっていう記事が飛んできて、読み進めていったら、レンタル移籍が先行導入されてるって書かれていました。後輩が第1号として制度を使っていて、「これいいじゃん!」って思いましたね。

その時点で、当時の上司に「レンタル移籍が正式制度化したら行きたいです」って交渉したら、「絶対に行くべきだ」と応援してくれたんですよ。そして、正式に人事制度として導入された瞬間に「行きます!」と、手を挙げました。

――晴れて、全社制度化してからの第1号になったんですね。ところで、レンタル移籍のどんなところに、興味を持ったのでしょう?

私は、キャリアの築き方は自分で考えないといけないと思ってるんですね。そう考えた時に、トレンドマイクロで培ってきたスキルは、果たして外でも通用するのかという漠然とした不安があったんです。新卒で入社してからそれまで、外のモノサシで測ったことがなかったので。そして、スキルを測る機会として、レンタル移籍ってローリスクハイリターンじゃないかと思ったんですよね。だから、早い段階から狙ってました(笑)。

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――確かに、自分自身のスキルを外の世界で活かすチャンスですよね。

私のニーズにぴったりハマる制度だったんです。

――移籍先として、Holmesを選んだのは、なぜでしょうか?

移籍先を選ぶ際に、2つの希望を出しました。1つは、BtoBの事業を行う企業であること。いままでずっとBtoBの畑にいたから、移籍先でも戦力になれると思いましたし、トレンドマイクロに戻ってからもBtoBに関する仕事がしたかったからです。もう1つは、ビジネス職であること。開発はできないので(苦笑)。また、ITセキュリティのソリューションは、どうしてもお客様のビジネスが毀損されることを防ぐ、つまり“マイナスをゼロにするもの”なので、せっかくならITを使ってお客様の業務が便利になる、効率化される、そんな“プラスに働くソリューション”を提供しているところがいいな、という思いもありました。

絞っていった結果、2社残って、その1つがHolmesだったんです。2社それぞれに面接していただき、より深く事業内容などを見ていったところ、Holmesは資金調達をした直後で、「これから本格的に伸ばしていくぞ!」という雰囲気でした。ただ、まだまだ人材も少なければ、社内制度も整っていないカオスな状態だったんですよ。せっかくの機会なので、カオスな環境でチャレンジしたいと思い、Holmesに行くことを決めました。あっ、あとCEOの笹原健太さんが、私と同じく横浜DeNAベイスターズのファンだったことも、ポイントの1つだったかもしれません(笑)。

――まったく新しい環境に進んでいくことに、多少は不安もあったのでは?

いや、シンプルに楽しみって気持ちが強かったですね。実際どうなるかは、正直わかんなかったですけど。

ー新天地に馴染むための第一歩は「信頼」の積み上げ

――ベンチャーの現場は大企業とは全然違うと思いますが、実際働き始めてどうでした?

違和感しかないですよね。移籍当初は、社員が私を入れて15人くらいしかいないし、企業としてのルールもほとんどない。「毎朝9時から朝礼がある」って聞いて、マジ!? って思ったし、勤怠管理をGoogleスプレッドシートで行っていることにも、本当に驚きました(笑)(※現在は時間も変更のうえ週1回となり、勤怠管理もシステム化されている)。

――これまでと違う文化には、馴染めました?

自分で言うのもおかしいですけど、文化にも職場にも、馴染むのは割と早かったと思います。

――早く馴染むために、実践したことや意識したことはあったんですか?

最初にやらなきゃいけないと思ったのは、信頼をスピーディーに積み上げることでしたね。私が強みを生かせる時って、自分らしく働ける時なんです。好きなことを好きにやれて、文句があれば伝えられて、「あいつだからしょうがないか」って言ってもらえる状況なんですよね。それをどう組み立てるかっていったら、信頼の積み上げだと思うんです。

Holmesのよかったところは、Win Partyという成果発表会が1カ月に1回あったこと。頑張った社員に対して「すごいね」「ありがとう」って承認する文化はさまざまな企業にあるけど、Holmesは「承認されることも義務」ってカルチャーなんですよ。要は「ドヤれ」って話です。ドヤって発表する場があるなら、そのために頑張れますよね。発表会の最後には、全員の投票でMVPを決めるんですけど、初回でMVPを取ったら信頼を勝ち取れるだろうと思って、最初から全力を出しましたね。結果、MVPを取ることができました。

――MVP獲得のため、入社してまずは何をしたんですか?

入社2日目だったと思うのですが、笹原さんから「自社主催のセミナーをやってみよう」と言われたので、やってやろうじゃないかと。Holmesはそれまでマーケティングチームもなく、コーポレートサイトで製品紹介をしているくらいだったので、「実際に製品の使い勝手を見てみたいというニーズがあるんじゃないか」という仮説を立てて、コンテンツを準備していきました。

トレンドマイクロでセミナーを開いた経験があったので、イベント開始前や休憩時間に流しておくスライドが必要だよねとか、アンケートやバインダー、ボールペンも用意しないととか、必要なものはすんなりイメージできたんですよ。ただ、Holmesのメンバーにとっては初めての経験なので、「凌さん、よくそんなとこまで気づくね」って驚かれました。自分としては当たり前だと思っていたことが、初めて経験する人にとっては価値になる。培ってきた経験は無駄じゃなかったって、この時点で気づき始めましたね。

――当たり前だと思っていたことが、重宝されたんですね。

それまで社内にマーケターがいないこともあって、私がやることすべてに新鮮に驚いてくれて。イベント自体も大成功を収めることができたので、この業務を通じて信頼の一段目が築けたかなって感じました。

スタートアップのよさは、手数が打ちやすいところだということにも気づきました。大企業だと、何をやるにも関係各所の調整や決裁が必要で、すごく時間がかかる。一方でスタートアップは、権限の委譲まではいかないものの、「こうしよう!」を提案できて、トップの決裁さえ取れればOK。人も少ないので、薄く広くいろんな分野の業務を遂行することができる。ここが大企業との一番の違いであり、楽しさなのかなって思いましたね。

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凌さん自身も登壇したイベントでの写真


ー立ちはだかる壁は「トップとのコミュニケーション」

――自由度の高い環境の中で、実際に提案したことや実現したことは?

マーケティングに関わることは、何から何までやりました。例えば、Salesforceを使ったマーケティング施策実行のための基盤作り。スタートアップのHolmesには前例がないので、何か判断しようにも評価ができず困ったんですよ。だから、見込み客はどうやって入ってきたのか、どれくらいが商談につながったのか、受注につながったのかというデータを可視化できるように基盤を作りました。

もちろん、オンライン・オフラインのマーケティング施策による見込み客獲得も行っていましたが、3月はヘルプサイトの構築を行っていましたね。商談が増えすぎてしまって、セールスが対応し切れないみたいな状態だったので。

――まったく違う分野の業務もしてたんですね。そもそも、凌さんに課せられたミッションはあったんですか?

マーケティングの担当なので、メインとなるミッションだったりKPIだったりは「見込み客の獲得」でしたが、ベースとなっているのは、笹原さんの「その施策が、ビジネス拡大にどれだけ貢献するのか?」のひと言に応えられるか。それだけでしたね。トレンドマイクロで働いてきた時は、自分の個人の営業予算や部門の目標という単位で考えていて、会社をどうやって大きくするかって感覚はほとんどなかったんです。Holmesでは、会社を拡大するという視点を持った方々と一緒に働けて、すごく勉強になりました。

業務の中で難しかったのは、笹原さんにマーケティング施策の目標や成果を報告すること。経営者にとっては、「メールの開封率10%改善しました」「セミナーの来場者が15人増えました」とか、そんな現場目線なことはどうでもいいんですよ。「こういう施策を実施した結果、見込み客をこれだけ獲得しました。商談化率はこのくらいで、受注率がこの程度だから、これだけの売上貢献の見込みです」と、明確に伝えることを意識していました。

――業務そのものではなく、コミュニケーションの部分で課題が出てきたのですね。

そうですね。特に4月から6月くらいは、笹原さんと直接やり取りする機会が多かったんですが、超苦しかったです(苦笑)。笹原さんは、私が出会った人の中でもっとも頭がいいというか、天才なんですよ。頭の回転が速くて、ロジカルなのはもちろん、先が見えているというか、常人とは違う景色を見ている感じ。こういう人が世界を変えていくんだろうなって感じさせるタイプ。だから、私には言っていることが理解できない時もあったんです。「その訴求の仕方は、ホームズクラウドが目指す世界観と合わないんだよね」とか「そのデザインだとHolmesらしくない」とか、そういうフィードバックをたくさんいただきました。

12月に脳の使い方のテストを受けてわかったんですけど、私は典型的な左脳型でサイエンスタイプだったんです。笹原さんの言葉を理解するには、右脳型のアートの領域も必要だったのだと思います。だから、マッチしなかった。毎週提出する週報の中で、「仕事への気力」を数値化するんですけど、4月から6月だけわかりやすく下がりましたね。苦悩の時期でした(苦笑)。

念願の「レンタル移籍」は、予想以上に順調に進んでいたように見えましたが、意外なところで壁にぶつかった凌さん。この苦難を、どう乗り越えていったのでしょうか。「下期は“飛躍”でした」と語るレンタル移籍後半のエピソードは、次回お送りしましょう。

→後編へつづく

【Holmesより、人材募集のお知らせ】

株式会社Holmesでは、「世の中から紛争裁判をなくす」という志のもと、契約プロセスの構築と、契約管理をオンラインで実現する、クラウド型契約マネジメントサービスを提供しています。オウンドメディアにて、採用情報に加え、社員の生の声やプロジェクトの様子も掲載中です。興味がある方は、ぜひ、ホームページやオウンドメディアをご覧ください!

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・Holmesのサービスについてはこちら


【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計36社95名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年4月実績)。→詳しくはこちら

協力:トレンドマイクロ株式会社 / 株式会社Holmes
インタビュアー:有竹亮介(verb)
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/

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