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【第2章 ベンチャーで働くということ】30歳の新人 〜入社9年目で見つけた、 本当のチャレンジスピリットとは?〜


<過去記事>
第1章 「2万人の期待を背負って、関西電力からベンチャーへ」

ースピードについていけない!

田村が移籍して1ヶ月が経過していた。
ツールの使い方から教えてもらうという、なんともやるせない初日を経て、相変わらず、ITリテラシーの低さが要因で、効率的に作業ができず悩ましい日々を送っている。

田村の指導役として、事業開発責任者の伊藤がいつもフォローしてくれた。商談の打ち合わせ同行からはじまり、各種ミーティングへの参加。
とにかくキャッチアップするのに必死だった。

特に、慣れなかったのはチカクの「スピード感」だ。

業務ひとつひとつにスピードが問われた。
今まで数日かけてやっていたことを数時間で求められる。

関西電力では、大人数が関わる大規模なプロジェクトでの仕事が主だったため、各部署との調整や稟議を得ることが重要だった。
となると提出資料ひとつにしても、一字一句間違うことなく細かくチェックし、説得力のある資料を数日間かけてしっかり作りこむことが求められる。

ー「自分のちょっとしたアクション」で結果が変わる面白さ

梶原社長からとある資料作成を頼まれた時のこと。
きちんとした資料を数日かけて提出しようと思っていた田村は、たった1時間後に「資料できた?」と梶原社長から声をかけられ、びっくりする。

チカクでは、その場で即断して即実行せねばいけないことも多かった。
それは、計画から実行までに時間を要する今までの仕事のやり方とは180度異なる。
しかし、その場で決断して実行したことがすぐに結果として帰ってくる、という面白さも味わうことができた。

ひとりで決められることが少なく、自分の成果、というのが見えにくい大規模な仕事ばかりを経験してきた田村は、自分のちょっとしたアクションによってすぐに結果が出るのが嬉しかった。

すぐ行動すれば、すぐに結果が出る。
ダメならすぐ改善してまた行動すればいい。
こうして、スピードの大切さを知った。

ー「しなければ」から「したい!」へ

そんなベンチャーならでは洗礼を受けながらも、田村が頑張れたのは、梶原社長を始めとするチカク社員の熱い想いだった。

田村は関西電力で、財務関係の業務を約5年間担当していた。
その経験もあり、チカクでも財務資料の担当を任される。

本来、田村は事業開発を行うミッションなのだが、「得意なことをやりながら新規業務に慣れた方が良いであろう」という梶原社長の配慮だった。

財務資料を作る上で、チカクの社員全員と様々なコミュニケーションをとる必要がある。これによって話す機会が増え、田村は社員たちと近づけた。心配していたエンジニアたちとも仲良くなれた。
そして、仲良くなればなるほど、皆、熱い想いと強い意志を持って業務に取り組んでいることを知る。

スキルだけではなく、人としても尊敬できる素晴らしいメンバーだと知り、彼らと働ける喜びを感じた。そしてその想いは、「キャッチアップしなければ」、から、「キャッチアップしたい」という想いに変わっていた。

ー持っている資産はどんどん使え!

そんなある日、田村は梶原社長から、とある地方都市に「まごチャンネル」の提案をするために、その地方都市の自治体のニーズを調べてもらえないかという相談を受けた。
「そのためには、自治体の生の声を聞くのが一番」というものだった。ネット情報の参考資料から抜粋しようと思っていた田村は、「自治体の職員さん、当然直接知っている人なんていないしなぁ……」と悩んでいた。梶原社長は「その街に知り合いはいないの?」などと無邪気に聞いてくる。

田村は自分の知人や仕事関係の仲間を洗い出し、その市と関連がありそうな人がいることを思い出した。さっそく連絡を取ってみたところ、市長とも繋がっていることがわかり、無事、ニーズを聞くことができた。

「そうか……」田村は思った。
目的を達成するための手段はいくらでもあって、一般的な方法を考えるよりも、自分だったら何ができるかを考えることが大切なんだ。

ここから少しずつ、田村に「自ら動く」という意識が芽生え始める。

ー顧客をよく見て、顧客視点で考えるクセをつける

移籍して3ヶ月目に入った頃、ある大手百貨店の催事会場で、「まごチャンネル」を来店者向けにPRするという展示の担当をひとりで任されることになった。
展示用のパネル制作、POP作りなど、準備を重ね、はじめて任された仕事ということもあって、気合いが入る。

しかし、展示会初日、ブースには人がほとんど来ない。
何がいけないんだろうか、田村は必死で考えた。展示物のパネルの位置を変えたり、POP広告を工夫したり、話しかける言葉を変えてみたり、日々できることを改善した。

「まごチャンネルって知ってますか?」
「お孫さんいらっしゃいますか?」
「これ、どうやって使うと思いますか?」

田村は、ブースの前を通る人通る人、それぞれが興味をひきそうな言葉を選び、話しかけ続けた。
その結果、日に日に立ち止まってくれる人は増え、最終日には目標人数を達成することができた。達成できた背景には、「すべては顧客視点、迷ったら顧客に戻る」というチカクの考え方を自分なりに遂行した、という努力が大きかった。

田村はこの経験により、少しずつ自信を持てるようになる。
展示ブースでの経験を経て、田村は、顧客のニーズを探るためのユーザーインタビューや、モニター調査などを積極的に行った。

「まごチャンネル」のエンドユーザーはシニア。介護施設に訪問し、入居者の方に体験してもらい、生の声を聞く機会も多くあった。
そして、ユーザーと触れる機会が増えたことで、自らも課題を見つけられるようになっていた。まさにチカクが掲げる「顧客ファースト」の視点になっていた。

今まで「すごい」と思っていたチカク社員の意識に少し近づけた気がして、嬉しかった。

ープレゼンは戦場「俺のこんな良い話を聞け!」
という自信が大切

移籍して4ヶ月が過ぎ、年度末で慌ただしい3月某日。
ひとりで遂行できる業務も増えた頃、田村は「起業家万博」での登壇を任されることになった。

「起業家万博」は、ベンチャー企業が、ICT(情報通信)を用いた新規事業を発表し、資金調達からビジネスマッチングまでを行うイベント。
会場には様々なベンチャー企業が集い、各々のプレゼンを行っていた。

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起業家万博のプレゼン時の田村。

田村は他の企業のプレゼンにすっかり圧倒されていたが、登壇前に梶原社長から、プレゼンは戦場「俺のこんな良い話を聞け!」というくらいの気持ちで話すべき、というアドバイスをもらい、思いきり話すことができた。
反省点はあったものの、田村の中で、自らの経験を出し切った満足感はあった。自分の携わったサービスを、胸を張って堂々と言える機会に感謝した。

そして、移籍して4ヶ月が過ぎた頃、気づいたらいつもサービスのことを考え、「当事者意識」を持てるようになっていた。

しかし、だからこその悩みも生まれる。
「残り2ヶ月弱で自分は何が貢献できるんだろう、関西電力に何を持ち帰れるんだろう」と。
限られた時間を前に、再び大きな壁にぶち当たることになる。


↓ 【第3章 「マインド」が変わる時】へ続く ↓


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取材協力:関西電力株式会社、株式会社チカク
storyteller:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール 
http://loandeal.jp/

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