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「まだ始まっちゃいない」とはとても言えない40代の学びなおし【ぼくらは仕事で強くなる vol.3】

連載「ぼくらは仕事で強くなる」は、ローンディール代表 原田による個人ノートです。組織やマネジメントのこと、自分自身のキャリアについてなど、日々感じていることや取り組んだことを綴っています。週1回程度更新しています。


北野武監督の『キッズリターン』を見て胸を熱くしていたのも、もはや四半世紀前。って書くと、ほんと時代を感じますね・・・。あの頃、自分の前には無限の選択肢があって、発想もやることも稚拙だったけれど、やっぱり今から振り返ってみるとまぶしい時間だったなぁ…なんて、郷愁に浸っている場合じゃない!!

勉強が苦手で、どちらかというと芸術表現とかそういうものに惹かれて、カメラを手にしてふらふらしていた学生時代。写真撮影ができるからという安直な理由でベンチャー企業で働くようになって、結果的にビジネスの方にどっぷりつかって、紆余曲折あって37歳で起業して、挙句の果てに、この年(もうすぐ43歳!)で大学院に通うことになりました。我ながらずいぶん殊勝な選択をしたなぁと思いつつ笑、勉強についていけるかなぁ、とすごい初歩的で強烈な不安を抱きながら入学の準備をしている今日この頃です。

ということで今日は、自分がなぜ大学院なんていう、縁遠いところに行こうと思ったのかを書いてみます。

端的にいうと、起業をして5年、自分の中にあるものを出しつくした感じというか、今の自分で行けるところの限界を感じたというか、それが一番の理由です。

2015年に起業をして、あの頃は5年も会社が続くなんて夢にも思っていなかったし、ましてや社員が10人以上になるなんて、考えもしなかった。それはもちろん嬉しい誤算以外の何物でもありません。かかわってくれたすべての人に、心から感謝をしています。

ただ、私個人の現状に関して言うと、不安やもどかしさを感じることが増えてきました。

この5年間、今までの人生で蓄積してきたいろんなものを総動員して、事業を実現するために注ぎ込んできました。例えばコミュニケーションの取り方だったり、企画の立て方だったり、マネジメントの仕方だったりといったところは社会人として15年、特に創業期のベンチャー企業で試行錯誤してきた経験が活きたなぁと思っています。一方で起業するまで、人材育成・イノベーション・組織開発といった文脈で仕事をしたことはなかったので、一生懸命インプットをしてきました。それら、自分に蓄積されていたものと新たにインプットされた知識をうまく融合できたとは思っています。ただ、融合したところでいったん形ができてしまったような、進化が止まってしまうような気がしています。その裏には、自分に蓄積されていたものを出しつくしてしまった感覚があるのです。

そして、もどかしさも感じています。私たちが取り組んでいるレンタル移籍という事業、おかげさまで40社近くの大企業、300社以上のベンチャー企業と関係を築くことができ、100人がレンタル移籍をしてくれました。レンタル移籍をしてくれた人たちが経験していること、大企業やベンチャー企業に与えている影響、そしてこれから起こせるであろう変化。結構すごいことが起こりそうな気がするのですが、それを自分自身が捉え切れていないのではないか、うまく社会に対して伝えきれていないのではないか、というもどかしさ、です。本当はみんながものすごいことをしてくれているのに、自分の感度が低いがゆえにそれを見いだせていないのではないか、と。

さらに言うと、今の自分の環境を快適と感じているということ。理想的な素晴らしい仲間が集まって事業に取り組むことができています。チームの雰囲気も、最高です。そして、そこに危機感を覚える自分がいます。レンタル移籍をしてくれるみんなに、「挑戦しましょう!試練が成長につながるんですよ!」なんて言っているくせに、自分は最高です!とか言って、のうのうと生きているのではないか。移籍者のみんなが必死に戦っているのに、今の自分は戦っているといえるだろうか。そんなことを疑問に思っている時点でだめだと思う。

原田という個人の限界が、ローンディールという会社の限界になってはいけない。それぞれが向上心高く事業に取り組んでくれているので、そんな心配はないと思いつつも、一方でどうしても創業者の目線の高さというのは大事なんだろうと思うのです。だから、やっぱり自分が、コンフォートゾーンを抜けなくては。もう一度、何者でもない自分に戻って(別に今も、たいした何者でもありませんけれど!)勝負をしてみたい。こんなことを考えて、大学院に通うという選択をしたわけです。

有難いことに、いろいろと気付きを与えてくれる方々が周りにいて、改めて、自分はどう在りたいかを考えました。そして、自分は「未完成」でいつづけたいのだという結論に達しました。もちろんそれは「未完成」であることを良しとして立ち止まるということではありません。「完成させたい」と強く願って挑む日々を過ごしながら、一方で「やりきった」とか「やりとげた」とか、そういう感覚を持ちたくない。いつも、「もっとうまくできたんじゃないか」「次こそ」っていう想いで物事に向き合っていたい。いくつになっても、どんな状態になってもそうありたいな、と。

やりきりたいと思いながら未完成でいる…一見矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、そういう矛盾をどれだけ内包しうるかということが人生の面白さだったりするので、それはそれでよいかな、と思っています。

やっぱり、いくつになっても「バカヤロー、まだ始まってもいねぇよ!」って思いながら勝負をしていたいものです。

ということで、20数年ぶりの学生生活とことん、恥をかいて来ようと思いますし、またそこで葛藤や失敗があればシェアしていきたいなぁと思っています。とはいえ、来週には英語で自己紹介をしなきゃいけないと知って、(たった1分のスピーチなのに!)それだけで戦々恐々としていることを、白状しておきます。どうなることやら。では、また。

※ 写真は2年前、初めてオフィスを借りた直後。何もなくて、キャンプ用のイスとテーブルで仕事をしていた。あの頃は確かに、まだ始まってもいなかったな!!そう考えると、現在地をどう捉えるかで、これから先も、きっといくらでも挑戦できるんだろうな、と思う次第です。

【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計38社97名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年7月実績)。→詳しくはこちら


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