「自分発信で動けば、仕事は楽しくなる」 トレンドマイクロ 磯上翔一さん
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「自分発信で動けば、仕事は楽しくなる」 トレンドマイクロ 磯上翔一さん

2008年4月にセキュリティ・ウイルス対策ソフトの開発・販売を行うトレンドマイクロ株式会社に入社し、2019年11月までプリセールスエンジニアとして業務にまい進してきた磯上翔一(いそがみ・しょういち)さん。営業とエンジニアという2つの側面を持つ仕事にやりがいを覚え、仲間と協力する楽しさも見出していました。

ただ、任された業務をこなしているだけでは、自分自身の成長や会社への貢献につながらないのではないか、という課題感を抱き始めます。さらにスキルを伸ばしていくためには、主体的に動き、新しい仕事を開拓していく必要があると考えたのです。

そのタイミングで、上司から持ち掛けられたのが「レンタル移籍」でした。スタートアップという環境に身を置くことで、新たな一歩が踏み出せると感じた磯上さんは、2019年12月から2020年11月までの1年間、株式会社YOLO JAPANに移籍します。

日本で暮らす外国人に向けた求人サイトや研修サービスを展開しているYOLO JAPANでは、「トレンドマイクロでの業務に近い仕事だけでなく、まったく触れたことのなかった営業手法の改善につながるような業務も経験できました」とのこと。これまでとはまったく違う環境での仕事を通じて、磯上さんは“自ら動く”を実践できたのでしょうか。1年間の歩みと成長について、伺いましょう。

できていなかった
「自ら課題を見つけて取り組む」こと

――トレンドマイクロには2008年に新卒で入社されたとのことですが、どういった動機から志望されたのでしょう?

 動機は大きく3つあって、1つ目がグローバル企業だったこと。2つ目が、プリセールスエンジニアという職種に興味があったこと。3つ目が、働く方々に魅かれたからですね。選考の際に人事の方がフレンドリーに話しかけてくれたり、先輩社員も役職関係なく“さん付け”で呼び合っていたり、心地よく働けそうな会社だと感じたことが大きかったと思います。

――そこから10年以上勤めているということは、磯上さんの見立ては間違っていなかったのでしょうね。ところで、プリセールスエンジニアとはどのような職種ですか?

 IT系の製品やサービスをお客様に提案する立場なのですが、一般的な営業職とは異なり、よりテクニカルな部分でのサポートが中心になります。例えば、お客様に他社製品との違いを説明したり、デモを見せたり、導入後の運用について相談に乗ったり。主に販売するまでの支援を担当する職種です。

――希望していた職種ですが、実際に経験して、いかがでしたか?

 テクニカルな分野は上を目指そうと思うとキリがないですし、難しい部分は多かったです。一方で、直接的に販売に関われるところや、1つの目標に向けて社内外で協力して進めていく工程に、やりがいを感じていました。

 ただ、ある程度経験を積んでいくと、目の前のことを一生懸命やるだけでは成長を感じられなくなっていったんです。大きな成果を出すためには、上司から言われたことをやるだけではなく、自ら社内外の課題を見つけて、主体的に取り組むことが必要だと感じ始めました。

――いつ頃から、“主体的に動く”という課題感を抱いていました?

 3~4年前くらいからですね。当時の上司にも相談していたのですが、1~2年経っても自分から動けるようには変えられませんでした。なかなか具体的な行動に移せない時に、上司から「レンタル移籍はどう?」って言われたんです。

 レンタル移籍の存在は、以前から知っていました。自分が行くとは考えていませんでしたが、いざ上司から提案されて、行きたいと思ったんですよね。

 社内に残る方がラクだったのかもしれませんが、キャリアの選択で迷った際は「困難な道を選択する」ように考えているため、レンタル移籍を決断しました。スタートアップは事業が進むスピードが速く、1人に多様な役割が求められるというイメージがあったので、“自ら動く”という意識が習慣化できるのではないかと考えたんです。

取締役COOのパッションに魅かれて移籍を決めたスタートアップ

――レンタル移籍をした先はYOLO JAPANでしたが、志望した理由や決め手は?

 何社か面談させていただいたのですが、YOLO JAPANに赴いた時に、面談を担当してくださった当時の取締役COO・椿奈緒子さんの人柄に魅かれて、ここに入りたいと決断しました。

――椿さんのどのような人柄が、磯上さんの心をつかんだのでしょう?

 椿さんは以前在籍していた会社で事業を立ち上げた経験をお持ちでしたし、話してみるとアイデアの豊富さや決断の速さを感じて、この方と一緒に働いたらたくさんの刺激をもらえると思ったんです。

 仕事に対しても熱いパッションを持っている方で、すごく魅力的に感じましたね。じっくり考えてから行動するタイプの自分と対極にいる椿さんから学べることは多いだろうと思い、期待感も大きかったです。

――人に魅力を感じたという部分は、トレンドマイクロの志望動機にも通じる部分ですね。

 そうですね。そこで働く人を基準にしているところはある気がします。

――YOLO JAPANに関しては、どのようなイメージを抱いていましたか?

 実は、移籍先を決める軸として、「グローバルな要素のある会社」「いままでと違う職種」「できるだけ人数が少ない職場」という3つで考えていました。YOLO JAPANは在日外国人向けサービスというグローバルな要素があり、非エンジニア職だったので、イメージには近かったと思います。

 また、日本で暮らそうと考えている外国の方を支援することで、人口減少が懸念される日本の豊かさを維持し、社会を安定させていくというビジョンにも共感しました。

――職場環境はトレンドマイクロと違ったと思いますが、すぐに馴染めました?

 YOLO JAPANは大阪と東京に拠点があり、東京のオフィスはアルバイトも含めて10人程度だったので、かなりアットホームな雰囲気で歓迎されている感覚がありました。業務に関する不明点も、皆さんイヤな顔せず丁寧に教えてくださったので、すぐ馴染めましたね。

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YOLO BASE(YOLO JAPAN運営)のオープン1周年イベント時の1枚。右から2番目が磯上さん。

「過去の経験」を活かすことで「成果」につなげる

――移籍して、最初に任されたのはどのような業務でしたか?

 YOLO JAPANでは在日外国人専門の求人サイトを展開しているのですが、企業側が求人内容の調整や応募者の面接の設定を行う管理ページの改善を任されました。

 具体的には、企業の採用単価をグラフで見られるような改修です。開発の方は別にいるので、私は新しい仕様のデザインを考え、サンプルを作り、開発の方に依頼する立ち位置でした。

――顧客向けサービスの改善という業務は、トレンドマイクロでも経験がありました?

 ウェブページを扱うことはなかったですが、製品担当のエンジニアをしていた際に、お客様の要望を収集して要件定義し、開発部門との調整を行う役割を担っていました。考え方は、トレンドマイクロにいた頃と近しいものがあったと思います。

――ということは、業務でつまずくようなこともなかったですか?

 そうですね。ウェブサービスとセキュリティソフトという違いはありましたが、お客様が求めるものを実装するという目標は同じだったので、比較的戸惑うことなく取り組めたかなと思います。椿さんのサポートもありましたし、プロジェクトマネジメントの考え方はトレンドマイクロでの業務とも共通していたので、最初の頃、苦労した記憶はほとんどありません。

――順調だったのですね。他にも担当していた業務はあったのでしょうか?

 求人サイトの仕事もしつつ、営業の効率化に関する業務も担当しました。ちょうど私が移籍する前後で、YOLO JAPANでは顧客管理のシステムを導入したところだったんです。椿さんと相談しながら、そのシステムを活用した企業のリード獲得のプロセス作りを行いました。顧客リストを作ったり、企業をステータスで分けて優先順位を設けたり、効率よくアプローチできる仕組みを構築していきました。

――こちらの業務も順調に進んでいった感じがしますね。

 顧客管理のシステム自体は初めて触れるものでしたが、エンジニアをしてきた経験から、基本的な操作はすぐ理解できました。職場の方にも操作方法を教えるなど、貢献できた部分も大きかったかなと思います。

――着々と業務をこなしているように思えますが、新鮮さや楽しさは感じられましたか?

 売上に直結する業務だったので、数字として結果が見えやすかったのは良かったですね。例えば顧客管理システムでいうと、過去の営業傾向を踏まえ、YOLO JAPANのサービスにフィットしそうな会社をリストアップすることで、ヒット率をあげることができたり。

 営業部門の方々が頑張っている場面を目の当たりにしていたので、自分の働きによってお客様の獲得に一歩近づいたことを実感できたことは嬉しかったですし、自信にもつながっていきました。

環境の変化で気づいた“移籍前と変わっていない自分”

――お話を聞いていると、とにかく順風満帆だったようで、そのまま最後まで走りきったのでしょうか?

 実は……、移籍して5ヶ月目の2020年4月末、椿さんが退任されたんです。それまでずっと、椿さんが私の成長を考えて仕事を任せてくれていたので、一緒に働けなくなって落ち込みました。もともと椿さんの人柄に魅力を感じて移籍を決めたところも大きいので、「ここにいる意味あるのかな……」なんて、弱気に考えてしまったりして(苦笑)。

 また、新型コロナの影響もあり、在宅勤務になったんです。そうなると社員同士のコミュニケーションも取りづらくなって、ますます距離感と孤独感を覚えるようになりました。正直、自分が必要とされているかわからなくて、ツラかったですね。

――一気に環境が変わってしまったのですね。その状況は、打破できましたか?

 孤独感はなかなか拭えなかったですけど、あることに気づきました。いままでは、椿さんに導いてもらっていたんだって。新たな業務についていくのに必死で、学ぶことも多かったのですが、上司から言われたことをやるというスタイルは、トレンドマイクロにいた頃と変わっていなかったんです。

 トレンドマイクロの上司やメンターの木本さんに相談した時に、「移籍の目的の“自ら動く”を実践できていないのではないか」と、指摘されたこともあり、自分で課題を見つけて、解決するアクションを起こすしかなくなりました。改めて、“自ら動く”という意志を固められました。

――原点に立ち返る大きな気づきですね。どのようなアクションを起こしていったのでしょう?

 まずは、週1で各セクションの部長が集まるミーティングに参加させてもらい、社内の状況の把握を行いました。そこから課題を見つけていけるかなと。

――かなり具体的に動いていったのですね。課題は見つけられましたか?

 ええ。コロナの影響から、新しいサービスをスタートさせたタイミングだったのですが、これまで通りの営業手法だけでは限界がありそうだと感じました。

 そこで、新規リード獲得のためにコンテンツマーケティングを推進したいと考え、営業やクリエイティブ担当の方にも協力していただき、外国人採用のノウハウをまとめたホワイトペーパーの共有に注力しました。

 私の目標としては、今までのテレアポ主体から切り替えて、別の手法を両立できるようにしていきたかったのですが、半年ではそこまでは行けませんでした。ただ、ホワイトペーパーの公開により、一定のリード獲得につながった実感があったので、成果は出せたのではないかと思っています。

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YOLO JAPANメンバーとの集合写真

未知なるチャレンジが教えてくれた「仕事の楽しさ」

――環境の変化によって、“自ら動く”を実践できたようですが、どのような学びが得られましたか?

 自ら課題解決に乗り出すことで、仕事はいくらでも楽しくできるんだと知りました(笑)。いままでは淡々と業務をこなしていたというか、仕事は楽しむものじゃないって感覚が強かったんだと思います。

 ですが、自分でアクションを起こすと、成果が出たらうれしいし、出なければ悔しくて、ほかの方法を試してみようって考えが自然と浮かぶんです。結果を待つドキドキ感や、次はこうしたら良くなるかもって考えるワクワク感を体感できたことが、レンタル移籍の最大の成果かなと感じています。

 移籍期間の前半に椿さんから感じていたパッションこそ、仕事に対するワクワク感だったのかなって思いますし、その姿を間近で見られたから、主体的に動くことができたんだと思います。

――仕事に対する姿勢が変わった1年間だったといえそうですね。

 そうですね。チャレンジすることに対しても、恐れを抱かなくなったどころか、楽しさを感じられるようになりました。

 ビジネスの進め方も正解も決まっていない環境だったからこそ、試行錯誤しようと考えられたし、チャレンジできたのだと思います。そして、うまくいかなかった時も、うまくいかないとわかったことが収穫なのだと知りました。動いて失敗するより、立ち止まって動かない方がマイナスなんですよね。

――レンタル移籍が終わってから、何か変化はありましたか?

 “自ら動く”という意識が高まり、経験をもっと積みたいという思いが生まれました。

 これはプライベートの経験ではありますが、息子が通う保育園の運動会が中止になってしまったんです。子どもたちのために何かやってあげたいという思いで幹事となり、有志のお父さん5人で運動会を企画しました。パンフレットなどを作り、同じ保育園に子どもを通わせているご家族に声をかけて。

――以前の磯上さんだったら、考えられないことですか?

 率先して企画するなんて、考えられませんね。子どものためにという思いと同時に、自分でゼロから生み出したいという気持ちもありました。

 運動会が終わった後に、参加してくれた人たちが「やって良かったです。またやりましょう」って、言ってくれたんです。自分が動くことで、人の気持ちを動かせるということを実感して、すごくうれしかったし、アクションを起こすことにより一層楽しみを見出すことができました。

築き上げている最中の部門だから
「移籍の経験」が武器になる

――昨年12月にトレンドマイクロに戻ってからは、引き続きプリセールスエンジニアとして働いているのですか?

 いえ、レンタル移籍終了と同時に異動して、現在は新卒と第二新卒のエンジニアを育成する部署でマネージャーを務めています。

 移籍中に、トレンドマイクロの上司から異動を打診されたんです。話を聞いてみると、今の育成の部署は設立されて2年ほどで、教育プログラムはひと通りできているものの、まだまだ整備されていない点がありました。移籍中に身につけた“自ら動く”を、実践しやすい部署ではないかと感じました。

 あと、私自身、かつて半年間の育児休業を取得したことがあるんです。今回のレンタル移籍も含め、私の経験を伝えることで、次世代のエンジニアのキャリアの参考にしてもらえるんじゃないかと思ったんです。だから、自分の意志としても、異動を願い出ました。

――新しい部署に配属されて2カ月ちょっとになりますが、動き出せていますか?

 今は前任者から引き継いだばかりで、研修を回すことが大変すぎて、レンタル移籍がはるか昔に感じられるくらいバタバタしています(笑)。ただ、人の成長を見ていく楽しさと難しさが感じられるようになってきて、業務改善や効率化のカギも見え始めています。

――「人の成長を見ていく楽しさと難しさ」とは?

 楽しさは、成長を促進するために支援したり、障害を取り除いたりすることで、こちらの期待以上に成長してくれることですね。難しさは、成長の度合いが一人ひとり違うことです。同じ研修プログラムを受けてもらっても、理解の深度や成長の度合いは異なるので、マネージャーとして、それぞれの状況を理解することが重要だと感じています。

 とはいっても、理解度を定量的に測り、個人に合った支援を適切に提供することは簡単にはできません。今後はそこをいかに仕組み化できるかがカギだと思いますし、考えるべき部分だと捉えています。

――磯上さんの働きかけで、教育の質が変わっていきそうですね。

 質を上げていきたいし、レンタル移籍での経験を活かせるチャンスだと感じています。

 YOLO JAPANは、目標に対していかに最短距離で動くかという考えで進めている会社でしたが、現在の育成の部署も同じだと思うんです。短い研修期間の中で、即戦力として活躍できる人材を輩出することが目標なので、移籍した1年間で培った考え方は適用できるかなと。

――工夫しながらリード獲得につなげることと、個人に合う教育を提供することは、手法としては近しいかもしれませんね。

 そうですよね。走りながら、軌道修正してゴールを目指すという点では、同じ考え方が適用できると思っています。あと、レンタル移籍を通じて学んだことがもう1つあります。内省の大切さです。移籍中は週報や月報を提出したり、木本さん(メンター)との面談で取り組みを振り返ったりする機会があったので、課題や実践できたことが見えてきて、成長の実感を得られました。

 考えや悩みを言葉にして伝えることで、ぼんやりしていた自分の思考がはっきりしたし、フィードバックをもらうことで、自分にない視点に気づくこともできました。定期的に行動を振り返り、言葉にすることは大切ですね。

 自分自身も振り返りを続けていこうと思っていますし、今は上司の立場でもあるので、部下との面談の際に、相手が持っていないであろう視点や経験を伝えていくことを意識しています。


10年以上、1つの仕事に集中してきた磯上さん。だからこそ、新たな一歩が踏み出せないという課題がありましたが、移籍先のYOLO JAPANで大きく環境が変わった時、その一歩を踏み出すことができたのです。大きな環境の変化が、背中を押すきっかけになったといえるでしょう。
トレンドマイクロでも新天地で働き始めたことで、さらなる進化が待っているかもしれませんね。

Fin

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協力:トレンドマイクロ株式会社 / 株式会社YOLO JAPAN
インタビュアー:有竹亮介(verb)
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/


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