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ヒットを生み出し続けるコンテンツプロデューサーに聞く!人を動かす企画をつくるには?

「アイデアはセンスではなく、ただのシステムだと思っています」。
「逃走中」「ヌメロン」をはじめ、数々のヒットコンテンツを生み出し続けるコンテンツプロデューサーの高瀬敦也さんは、自らの経験を元にそう話します。高瀬さんの発想法をさまざまな角度から伺ったところ、とんでもない法則がわかりました。時代をとらえ、人を魅了するコンテンツが生まれたプロセスは、一体どのようなものだったのでしょうか。高瀬さんをお招きして開催した対談イベントの一部を要約してお届けします。

やってみることで引き出しが増えていく


細野:
高瀬さんにお話を伺う前に、ビジネス発想力を構成する要素について整理しておきたいのですが、発想力というのは、「着眼点」「ソリューション」に分解して考えていくのが良いと思ってます。「着眼点」は何に目をつけるか、そして自分がそれを何とかしたいと思えるかということ。「ソリューション」はそれをどうやって実現するかということです。

やっぱりビジネスを考える上で最初のアイデアが面白くないと実現してもいいものにならないんじゃないか、というのがあって。面白い発想をするには、この「着眼点」と「ソリューション」の組み合わせ、つまり引き出しをどれだけ持ってるか? みたいなことに尽きるかなと思ってます。高瀬さん、どう思われますか? いきなりですけど。

高瀬:おっしゃる通りで、優秀な方はそういったことをされていると思います。でもやっぱり、それを“やるかやらないか”ということが一番大きいかなと。だってアイデアなんて毎日、星の数ほど世界中で生まれているわけなので。

細野:高瀬さんみたいにアイデアが思いつく人は、いくらでもあるって言いますけど、そのアイデアが思いつかなくてみんな困ってます(笑)。

高瀬:いやいや、本当に世の中そうなんだって(笑)。たとえば居酒屋でみんなで飲みながら話したり、ついでに会社や上司・部下の愚痴を言ったりすることってあると思うんですが、そういう会話って実はアイデアの宝庫なんですよ。日常の中にヒントは転がっています。そうやっていかに手持ちの札を増やせるか、そしてやってみるか。その数が増えれば当たる確率も上がりますから。結局は数が大事なんじゃないかと。

高瀬敦也さん|コンテンツプロデューサー
株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。1998年フジテレビ入社、営業局を経て編成制作局にて「逃走中」「戦闘中」「Numer0n(ヌメロン)」など企画性の高い番組を多数企画。「逃走中」「戦闘中」ではニンテンドー3DSのゲームもプロデュースし、シリーズ累計100万本を超えるセールスを達成。DJ活動も行い、自身もソロアルバム(CD)を全国リリース。フジテレビを退社した現在、さまざまな業種の新事業企画、新商品企画、広告プロモーション戦略立案など、幅広いコンテンツプロデュース・コンサルティングを行っている。オンラインサロン「コンテンツファクトリー2030サロン」主催。著書に『企画「いい企画」なんて存在しない』『人がうごく コンテンツのつくり方』がある。

細野真悟 ローンディール最高戦略責任者/ビジネスデザイナー 
2000年にリクルートに入社しリクナビNEXTの開発、販促、商品企画を経験した後、新規事業開発を担当。 2013年にリクルートエージェントの事業モデル変革を行い、1年で100億の売上UPを実現し、リクルートキャリア執行役員 兼 リクナビNEXT編集長に。  現在は企業間レンタル移籍プラットフォームを提供するローンディールのCSOを務めながら、フリーのビジネスデザイナーとしても複数のベンチャーの戦略顧問や大企業の新規事業部門のメンタリングを行う。スモールグッドビジネスを立ち上げたい人のコミュニティ「Fukusen」主催。著書に『リーンマネジメントの教科書(日経BP)』がある。

細野:なるほど。高瀬さんは具体的にどうやってその数を増やされているのでしょうか。

高瀬:やっぱり着眼する上でインプットが必要なんですが、最近のコンテンツは数がありすぎて追いつかないわけですよ。なので人の力を借りるようにしてますね。具体的には、誰かのおすすめとか、誰かが咀嚼したものをインプットするということです。たとえば細野さんに「最近面白いと思ったサービスは?」「最近イライラすることあった?」とかお聞きして、フィルタリングされた情報を入れる。

さらに、それを「この人に喋ったら面白がってくれそう」という人に話してみる。そうすると情報の精度が高まるんですね。自分で闇雲にネット記事を漁ったり本読んだりしても、時間がもったいないというか。たとえば今日みたいなウェビナーに出る前とかって特にネタを用意しなきゃって思うんですが、なかなかいいネタに出会えないから会う人みんなに「何かない?」って。

細野:皆さん、とんでもない秘密を聞き出してますよ(笑)。めちゃくちゃ大事だと思う、これ。やっぱり高瀬さんは凝縮された情報を交換しているんですね。面白い方との繋がりがあるから情報も面白くなる。

高瀬:いや、会話相手は別に昔の同級生とかでもいいんですよ。たとえば高校の同級生と20年ぶりに会うとしますよね。そしたら出てくる話題は20年分の中のチョイスになるわけなので、相当凝縮されてますよね。

細野:すごい考え方!

高瀬:いろんな人生経験をしていると思うんですよね。会社辞めまくっている人からは、辞めまくったっていう人の情報が手に入る。だから相手が立派な人とか有名人である必要は全くないです。

細野:面白いですね。着眼点って解像度がすごい大事だなって思ってたんですけど、そのやり方は合理的だなって改めて思いました。一方で、ソリューションの方はどのように意識されてますか? 解決策の方ですね。HOWの増やし方みたいなことは。

高瀬:冒頭にも言いましたけど、それはやっぱり自分でやってみたことの数だと思います。その数を増やすために、なるべく断らないようにしてますね。やったことないことって、たじろぐじゃないすか、普通。でも、やったことがなくてもできるふりをします(笑)。

細野:やれますって言って、1回やればもうやったことになると。そういうことですか。

高瀬:やったことがないことができれば自信にもなるし、そこで得られるものは計り知れないというか、知らないことをいっぱい手に入れられる。特に今の時代ってあんまり業種業態とかの区別がなくてクロスオーバーしてるので、きっとどこかで生かせますから。

細野:それは間違いないですね。高瀬さんはやってみることで引き出しを増やしているということだと思いますが、そうなると、実行力も大事になってきそうですね。

高瀬:僕はよく「結び付け力」って言うんですが、垣根を越えて結びつけられる人材って今の時代、すごい重宝されますよね。情報だけ持ってきてつなげるみたいなことじゃなく、手触り感ある武器の中からどうやって組み上げていくかみたいなことが大事なんじゃないかと思います。

決めていくことから、企画がはじまる


細野:
やはり着眼点とソリューションの数が圧倒的に多いからヒットの確率が高まるということはわかりましたが、やっぱり高瀬さんだからヒットを生み出せたんじゃないかと、会場にいる皆さんも考えているんじゃないかと思います。高瀬さんはもともと天才肌だったんでしょうか?

高瀬:いや、天才肌ではないですね、全く。ずっといろんなことやり続けて、動き続けて、トライアンドエラーをする中でパターンを増やしたという感じです。むしろ、子どもの頃はかなり内向的で人の目を気にしながら生きていました(笑)。

自信がなかったからこそ誰かに認められたくて、当時からノートに迷路ゲームを作ったりして。インセンティブをつければみんなやってくれるかなと思って購買で消しゴム買って景品にしてみたり(笑)、そんなことをしていましたね。

細野:すごい、その頃からコンテンツを作っていたとは。

高瀬:ひねくれていただけかもしれませんが、そうやって当時から、世の中を斜めに見る癖はあったかもしれません。動き続けているのも不安だからやっているという感じですし。

細野:信じられないですよね、これだけヒットを飛ばしているプロデューサーが。でもそうやって動き続けて数をこなしているから、ヒットに繋がっているわけですよね。もう少し高瀬さんの内側を探っていきたいと思いますが、会場からこんな質問がきています。

「番組を企画する際は、何をもとに作られているのでしょうか。商品を開発する企業と同じように視聴者の声を拾って企画をするのでしょうか。もしくは直感的に面白そうという思考で作られているのでしょうか?」ということですが。

高瀬:僕は100%前者ですね。ただ当時は「本能的に好きだからやりたいんです」みたいな企画の方を好む人も多かったですし、そういう企画が通りやすかったりもしました。

細野:でも高瀬さんはそうじゃなくて、世の中の空気を感じ取って当てにいくというか。

高瀬:そうですね。会社にとって今後必要になりそうなものや、可能性がありそうなマーケットに対して、一生懸命作ろうとしていました。

細野:調査というか、生活者の声をどうやって拾うんですか。

高瀬:テレビですね。実はテレビって結構使えるんですよ。テレビというと皆さん、同じことをずっとやってるとか、くだらないことをやっているって言う人もいるんですが、でもテレビって唯一の「マス」なんですね。「マスの空気」を追う媒体なんですよ。基本的にマスに受けられないことはやらない。今の時代は、個人が自分の好きな情報にだけ触れて生きていけるから、テレビを見る必要がないと思うんです。でもテレビは社会全体の大きな波やうねりみたいなのを知るにはすごい使えるツールですよ。

細野:僕も結構テレビ見るんですけど、ツールとしてとらえるっていう発想は新しいですね。じゃあ、そうしたインプットからどうやって面白い企画に繋げるんですか。これは皆さん知りたいことだと思いますが。

高瀬:アイデアって天から降ってくるものではないし、先天的なものでもなくて、ただのシステムだと思っています。インプットする力だったり、思いついたことをやりきる力だったり、それを結び付ける力だったりとか。そういう複合的な力ですね。

※ 高瀬さんの資料より抜粋

とはいえ、何から初めていいか分からないという方も多いと思うので、そういう時はとにかく少しずついろんなことを決めていくことですね。たとえば、目的とか予算とか少しずついろんなこと決めていく。「若い女性に売りたい」ってなったら発信する媒体も決まるし、スタッフィングも決まってくる。そうやってとにかく片っ端から決めていく。そうすると企画になっていきます。

細野:高瀬さんの本にもやっぱり決めていくことが大事だって書いてありますね。

高瀬:だって納期が2ヶ月後なのか2年後なのかで、企画の幅って全然違うじゃないすか。そこを決めないでイメージしたり議論したりすると時間だけが過ぎていくっていう。制約条件はどんどん出した方がいいんですよ。制約条件が多ければ多いほど企画は作りやすい。

発想のヒントは過去にある


細野:
改めて、高瀬さんは、右脳的な発想でバンバン当てている人かと思いきや、制約とか目的っていう再現性が高い話が多くて面白いですね。結局はセンスとか言われちゃったら終わると思ったので(笑)。

またこんな質問が来ています。50代の方ですね。「企画の数をこなすという環境に身を置いてこなかったのですが、50代の今からでもできる企画のアイデアを考えるための訓練はあるのでしょうか?」ということですが、いかがでしょうか。

高瀬:そもそも企画に「新しいものはない」っていう前提があります。どれも元々あったものを置き換えたりしているだけです。なので50代の方が昔経験したこと、熱中したことを、仮にそのままやったとしても受け手も違えば運営する人も違うので、それだけで別の企画になるんですよ。そこに着眼してみたらいいんじゃないかと思います。

僕が20代の頃って、もののたとえを映画でする先輩が多かったんですね。なぜならその人たちは映画で育っているから。僕の世代はテレビゲーム全盛期だったので、ゲームを共通言語にして語ったりする。「逃走中」も、いわゆるテレビゲームを疑似体験したいニーズはあるだろうなと思って、生まれたものです。

だから、YouTubeを見た世代はYouTubeをたとえに企画を考えると思いますし、これからはTikTokになってくると思いますね。

細野:最後にもう一つ質問にお答えいただきたいのですが、「高瀬さんは何年先ぐらいまで見ていますか」ということ。これは気になるところですが。

高瀬:ゼロ年です、ゼロ。わからないですよ、先なんて。世の中ってやっぱりちょっと半歩遅れてついてくるので、今をちゃんと見てればちょうどいいタイミングがつかめると思います。

細野:皆さん、1年後とか2年後とかっていう回答を予想していたんじゃないですか?

高瀬:それができてたらもう今頃お金持ちでしょ(笑)。もちろんトレンドというか、大きなうねりみたいなものは見た上でやってますけど、その時点でもう過去なんですよ。だから僕には未来は読めないですね。

細野:「今をちゃんと見る」は、めちゃめちゃ大事ですよね。最後に皆さんにメッセージをいただけたら。

高瀬:そんなに何か偉そうにものを申せる人間ではないんですけど。僕もいい歳なんで、世の中に何を残せるんだっけ? みたいなことを考えたときに、何かの役に立てることを形にできればいいなって思っています。本を書いたり、今日のような場でお話しすることで何か残ったらいいなと。仕事もそういうつもりでやっていますので、少しでも興味を持ってくださったらお気軽にご連絡いただけたらと思います。

ちなみに今日、始める前に会場から質問がいくつ出るんだろうっていうのをクイズにしようって、予想してましたよね。僕が10個で、細野さんが12個。村上さん(運営スタッフ)が15個だって。

細野:結果、12個だったので僕が当たりましたね(笑)。もう質問は受け付けませんから。でもこうやって何でも企画にしちゃう高瀬さんって改めてすごいなって思いました。今日もありがとうございました!

Fin

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レポート:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/

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