【第2章 何者になりたいのか?】「流れ星」を売る男 〜早くプロフェッショナルの一員になりたい〜
<過去記事>
第1章 「プロフェッショナルを目指して、 NTT西日本からベンチャーへ」
—ALE唯一の「広報」として
気がつけば、毎日「人工流れ星」のことを考えていた。
梶原が、ALEで任された業務は、取材対応やPRなどを行う「広報」の仕事。移籍したちょうどその頃から、ALEの取り組みが様々なメディアで注目され、岡島社長は毎週のように取材を受けたり、講演会に参加したり、PRのための活動に追われていた。
梶原は、自身が広報をやるとは思っていなかったのだが、必要とされていたタイミングということもあり、今できることとして忙しい岡島社長に代わって取材や講演会の調整などを行うことになった。
取材対応や原稿の校正は初めてではあったものの、担当者と連絡を取り合い、進行管理するという一連の業務においては、NTT西日本で長年培ってきた調整スキルが活き、比較的スムーズに遂行することができた。
移籍初日からプロフェッショナル集団に圧倒され、「早くALEで自分の立場を確立したい!」と思っていた梶原にとって、自分の役割が明確にあり、何かしらに貢献できているという状況は何よりも救いだった。
ALEでの社内ミーティングの様子。右列手前から2番目が梶原。
とはいえ、原稿に書かれている内容は「宇宙」に関することが大半。
最初は、原稿チェックの際、書かれていることが正しいかすら判断できず、周囲のメンバーに聞いたり、宇宙関連のドキュメントをひたすら読むなど、とにかく必死だった。
しかし、喜びの方が大きかった。
梶原は、岡島社長の記事が様々なメディアで公開され、多くの人が「人工流れ星」に興味を持ってくれることが心から嬉しかった。
また、岡島社長の講演会の資料作りのサポートなども行っていたのだが、講演会の参加者たちが、「人工流れ星」への理解を深め、興味を持ってくれることに感銘した。
「人工流れ星って本当に素晴らしいんだ……!」
梶原は、この取り組みを伝えられる立場にあることに、誇りとやりがいを感じていた。
—深まる「ALE愛」
移籍して3ヶ月。
この頃の梶原は、「自分が何をしたらALEのためになるのか?」
そればかり考えていた。
岡島社長の取材や講演会に同行しているうちに、ビジョンや想いが染み込んでいく。移籍3ヶ月目の6月には、「実際に宇宙に行く人工衛星」をテストしている場にも立ち会えた。多くのスペシャリストたちが実験に実験を重ね、こうして形になっている過程を思うと涙すら出てくる。
こうして梶原は、どんどんALEのことが好きになり、気がついたら一番のファンになっていた。
それは、周囲からも「愛が滲み出ている」と言われるほどだった。
徐々に宇宙に関するリテラシーが高まってきた。
写真左が岡島社長。右が梶原。
—「決断できない!」承認を求めてしまう癖
そんな梶原には、どうしても抜けない癖があった。
それはすぐに“他人に承認を求めてしまう”ということ。
NTT西日本での業務は、小さな決断はあるにせよ、基本的には上司がOKを出したら実行、という流れが当たり前。
しかし、ALEでは自分で決断して実行することが求められる。
「自分はこう思うから、こうすべき!」と自ら答えを見つけ出す必要があるのだ。しかし、ついつい誰かの同意を求めてしまう。同意が得られないと実行できない。
「僕の決断が間違っていたら、ALEに損害を与えてしまうかもしれない……」
大好きなALEにとって、マイナスになるようなことはしたくない! という想いも強く、自分で決断することが怖かった。
NTT西日本より、ALEの方が提案が通りやすいかもしれない。
しかし、実施した結果、それがどのような影響をもたらすのか、その重大性を常に自分で考えなければいけない。
自分にはその覚悟が足りていない、梶原はそう思った。
—「決めなきゃいけない状況」をつくることが大切
「なんとかこの課題を突破したい……」
そう思っていた時に、梶原に「メディアブリーフィング」の責任者、という業務がやってくる。
メディアブリーフィングとは、メディアや記者を集めて、事業説明を行うPRイベントのこと。梶原は、会場探しから当日の資料作り、コスト管理まで一連の業務を行うことになった。
何から着手していいか戸惑ったものの、自分が進めないと何も進まない状況だった。だから逐一確認している余裕はなく、どんどん実行していかないと間に合わない。
梶原は、時には無理やり決めるという手段を取り、何とかイベント当日を迎えた。
7月某日。
イベントは無事に終了。
課題は残るものの、参加者の満足度は高くALEの認知度向上に貢献した。
大変ではあったが、決断できないでいた自分にとってはいい経験となった。そしてここでもNTT西日本での、調整しながらきっちりと業務を行う、というスキルが大きく役立っていたと感じる。
実際に梶原がコーディネートした取材記事の一部
テレ朝newsの記事
メディアブリーフィングでは予想を上回るテレビカメラが入り、即日テレビニュースになるなど、ALEの認知度向上に貢献したと実感できた。
東洋経済ONLINEの記事
「報道」であるため、基本的に原稿をチェックができない。取材時にきちんと丁寧にALEのメッセージを伝えることに腐心した。
スペインのWEBマガジン
「CondéNet Traveler」の記事
メディアブリーフィング以降、海外からの取材が急増。出来上がった記事はスペイン語で書かれ、英語圏以外の人へもALEの事業を知らせることができた。
—「あれ、何者になりたいんだっけ?」
メディアフリーフィングという一大イベントが終わり、梶原は、先が見えない不安に立ちすくんでいた。
イベントはうまくやれたと思う。
反響もあり、貢献度も高かった。
岡島社長をはじめ、ALEのメンバーからも感謝された。
しかし、自身の心の中では、期待していたような満足感や達成感が得られないでいた。
それは、今までの広報業務全般も含め、与えられた仕事をミスなくこなすことばかりに注力し、自発的に何かを提案してチャレンジするようなことをしてこなかったからだ。
もともと梶原は、新規ビジネスの立ち上げや、アライアンス開拓を目標に移籍をスタートしている。にも関わらず、何もできていない自分に気がついた。自分のやるべき仕事があって、役に立っているという安心感。そして、大好きなALEの一員であるという満足感により、本来の目的を見失いつつあったのだ。
では今からチャレンジしよう!
…という話であれば簡単なのだが、梶原の問題点はもっと深いところにあった。「何にチャレンジしたいのか?」と問われても答えられないのだ。
梶原以外のメンバーは、当然のようにALEで実現したいことを明確に持っている。自分がALEで生み出せることは何か、自分だからこそNTT西日本に持って帰れることは何か、そして、それ以前に自分は何者になりたいのか、それが分からないことで、次に何を目標にチャレンジしていいか分からなかった。
「僕はここでどうしたいんだろう……」
移籍して5ヶ月目に入り、梶原は、答えのでない質問を、ひたすら自問自答することになる。
第3章「火星でインターネット!?」へ続く
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取材協力:西日本電信電話株式会社、株式会社ALE
storyteller 小林こず恵
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