複読のすすめ【ぼくらは仕事で強くなる vol.11】
連載「ぼくらは仕事で強くなる」は、ローンディール 代表 原田による個人ノートです。組織やマネジメントのこと、自分自身のキャリアについてなど、日々感じていることや取り組んだことを綴っています。週1回程度更新しています。
複数の本を同時並行で読んでいくのがおもしろいなぁと思っています。で、これは自分自身の発想力や独自性を鍛えるための、面白い手法のような気がするので、今日はそんな話をしてみます。
と、思って調べてみたら、同時に本を読むことはどうやら「併読」というそうで、「読書量を増やすために効果的」という文脈で書かれていることが多いようです。が、私はそこにちょっと別の価値を提唱してみます。それは、そこに繋がりを見出す面白さです。本と本のつながり、ビジネス書と小説だったり、漫画と実用書だったり、そこにはいろんなものが見出せるもんです。
そもそもこの記事を書こうと思ったのは、まさに今、その繋がりを見出して面白いなぁと思っっているからです。
読んでいる本は『ホモ・デウス』(ユヴァル・ノア・ハラリ)と『演劇入門』(平田オリザ)。どうでしょう。ここに繋がりがあるなんて、ちょっと不思議な感じがしませんか?
例えば・・・
『ホモ・デウス』によると、無数の見知らぬ相手と柔軟に協力できるのはサピエンスだけ、それゆえに地球を支配していて、大規模な協力が決定的に重要。人間同士の争いにおいても、協力が上手だった側が常に勝利してきた。革命は、数だけでは起こせない。
・・・といったことが書かれています。
一方『演劇入門』では、「コンテクスト」という言葉が、一人ひとりの使う言語の範囲、という風に説明されています。そして、様々な社会の単位でコンテクストを作り上げることで円滑なコミュニケーションが成り立つ。そして、一方でコンテクストには必ずずれが生じる。それをすり合わせることが表現をする際には不可避である。そこから、さらに新しいコンテクストが生まれる、と。
・・・とあります。なるほど、協力というのはつまりコンテクストと読み替えることもできて、そのコンテクストも単に共有するレベルから、異なるコンテクストにおける摩擦を乗り越えたときに、より大きなうねりになるのかもしれないな。なんて考えが深まります。
もし自分たちの将来を知りたければ、この世界に意味を与えている虚構を読み解くことも絶対に必要なのだ。
とか
閉塞を打ち破るのは、常に辺境から歴史の蓄積に対して差異を感じ、異和を唱え、変革しようとする者たちである。
っていう文章が出てくる。ちょっと要約しちゃってますけど、どっちの本に書かれていても違和感のない文章だなぁって感じがしませんか?こうやって考えていくと、そうか、今は何となにのコンテクストが繋がっているのか、とか、それが繋がっているということはこれからこうなりそうだな、という想像が働くとか。コンテクストということを意識して時代を見るというのはやっぱり大事だなぁ、とか。解像度をあげながら、いろいろ考えさせられるわけです。
他にも、
元々学校は生徒を啓もうし教育することが主眼で、成績は計測手段に過ぎなかったのに、いつしか良い成績を達成することに的が絞られてしまった。
と『ホモ・デウス』にあれば、『演劇入門』に
多様なコンテクストを持った子供たちに、教育・学校という架空のコンテクストを共用してしまったことが、現在の学校教育の問題の源泉だ。
・・・なんて出てきて、話がリンクしてきたりします。
いかがでしょう?今回初めて、その共通項を書き出してみて、ちょっとだけ自分なりに解釈を書き加えてみたわけですが、とっても面白いプロセスでした。
『ホモ・デウス』なんて世界で100万部以上売れているそうですけど、20年以上前に書かれた『演劇入門』と並行して、その関連性にゾクッとしながら読んでいる人はなかなかいないんじゃないですかね。
もともと私自身、サッカーとかでよくある「レンタル移籍」をビジネスの世界でできないかっていう発想だったり、とか、大企業とベンチャーを繋ぐという組み合わせだったり、比較的遠くにあるものをこじつけることが好きなようです。イベントの企画をするときとかも、面白い人に声をかけておいてそこから共通項を見出してコンセプトを作る、みたいなことをします。
これは私だけに限った話じゃなくて、いわゆる「新結合」「新しい組み合わせ」が求められる世の中、「こじつけ力」みたいなものを求められることは、ますます増えていきますよね。そんな中で、複読してこじつけて考えてみるというのは、発想力や解像度を上げる訓練になりそうだな、と思っています。ご興味がある方、ぜひ試してみてください!
そして、自分は「ビジネス書A×小説B」でこんな気付きを得たよ、みたいな複読マリアージュ自慢大会とかしたら、めっちゃ面白そうだな、と妄想しています。
では!
▼ 過去のノートは以下より
【レンタル移籍とは?】
大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計41社115名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年8月実績)。→詳しくはこちら