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「エンジニアがスタートアップで見つけた“効率化の本質”」 リコー 片山絋さん -後編-

 精密機器メーカーの株式会社リコーに勤める片山絋さんが、2020年1月から半年間移籍したのは、イメージセンサーと画像処理に特化したソリューションを提案している株式会社フューチャースタンダード
 「非効率な業務を改善する方法を知りたい」という思いで、スタートアップ留学を志願した片山さんですが、リコーで培った業務スタイルが評価されることもあったそうです。当初思い描いていた“効率化の本質”は、得られるのでしょうか。 
 スタートアップという環境の中で、上司からかけられたひと言が、片山さんの思考を変えていったといいます。半年間で起こった変化を、振り返っていきましょう。
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与えられた業務の意味・目的を考える“考察力”の重要性

――前半のお話だと、移籍先のフューチャースタンダードでも順調に業務をこなしていた印象ですが。

 躓いた部分もありました。サーモカメラでの温度検出システムのデモンストレーションに向けて、開発を進めている時のことです。

 デモで使用するセンサーの性能評価をすると、精度があまり高くなかったので、「このセンサーは、性能に不安があります」と報告しました。その報告に対して、上司から「性能が足りないなら、デモを乗り切るためにどういう工夫をすべきか教えてほしい」と言われたんです。

 そのひと言で、自分の考えが及んでいなかったことを思い知らされました。僕の仕事は、いいセンサーを選定することではなく、デモを成功させることだったんですから。

――丁寧に進めるだけでなく、任されている業務の意味を理解することが大切だということですね。

 そうです。僕はこれまで、上司から言われた作業をただこなす、といった部分があったように思います。でも、本来はその業務がなぜ必要で、どのような目的につながっているのか理解したうえで、その先まで見通さなければいけないことに気づかされました。

 そこからは、まず業務の目的を確認し、その目的を達成するためにどう進めていけばいいか、自分なりに考えて進められるようになりました。目的が明確になると、やるべきことが見えてきて、業務に前のめりになれたんです。

 その点、フューチャースタンダードでは社員全員に目的が共有されていて、1人として他人事感がなかったのです。

――組織が大きいと目的の共有が難しくなりそうですが、重要な気づきですね。

 そうなんです。この半年間でもっとも学んだことは、“考えることの重要性”ですね。僕はもともと行動してから判断するタイプだったのですが、ニーズはどこにあるのか、目的を達成するために何が必要か、隙あらば考えるようになりました。

 リコーに戻ってきてからも、この工程は今やるべきなのか、考えるようにしています。例えば、新規案件を前にしてニーズやシーズを洗い出す作業などは、本当に必要なのかと。ほとんどは必要だという結論に達するのですが、一度立ち止まることで、目的にどう影響するか見直す機会になりますね。


今後取り入れたいのは、効率的な方法を選択する「柔軟性」

――スタートアップ留学を決めた動機のひとつである“効率化”については、その本質を見極められましたか?

 これも“考察力”と直結するのですが、業務の必要性を考えることで、必要なことに集中でき、無駄なことをしなくなりましたね。どうしたら効率良く作業を進められるか、ばかりに気を取られていたのですが、「なぜこれをやるのか」、それをしっかり考え、理解して行動することが、本当の効率化につながるのだと、わかりました。また、先ほどもお話ししましたが、フューチャースタンダードのように、社員全員に目的が共有され、一人ひとりが考えて行動できることが、組織としての効率化につながると思いました。今はまだ個人レベルですが、最短距離で業務を進められている感じがあります。

 また、コミュニケーションの取り方1つとっても、リコーにいる頃は社内で決まっているツールを一貫して使用していました。しかし、フューチャースタンダードではSlackを使う時もあれば、メールを使う時もあるし、資料の受け渡しもクラウド上で行ったり、USBで直接手渡したり。その瞬間にもっとも効率のいい方法を選択していたのです。

 大企業だと「情報が散らばらないように、ツールを1つに絞る」というルールが決まっていて、確かに情報をまとめる方が効率的な場面もあります。ただ、その場の状況に合わせて選べる柔軟性も、効率を上げることにつながるんですよね。

――決められたルールが本当に効率的なのか、一度考えてみることは必要ですね。

 はい。いままでの自分はこんなにも何も考えずに働いていたのか…って恥ずかしいくらいです(笑)。

――過去の自分が恥ずかしくなるほど、成長できた半年だったと。

 そうですね。もう1つ、移籍前から気になっていたスタートアップのコミュニケーション方法の部分でも、気づかされることがありました。

 代表の鳥海哲史さんや社歴の長いメンバーが使っていて、自分も使えそうだなと思ったのが「とはいえ」というフレーズ。自分の理想を語った後に、「とはいえ、今回はこういう状況だから、この方向性で進めようと思う」という形で話すんですよ。

 理想や雑談を省いて、やるべきことだけを指示すると、下からの反発は生まれやすいと思うんです。しかし、鳥海さんたちのように、「理想はあなたと一緒ですよ」と示してから現実的な話を切り出すことで、無駄な議論が避けられるし、場の雰囲気も良くなるのだと知りました。僕もさっそく取り入れています。

――思いを共有することが、円滑なコミュニケーションにつながるんですね。

 理想について30分間演説しても、相手には伝わりにくいですが、毎回ちょっとだけ話すことで、浸透しやすくなるという気づきもありました。いつも同じ理想について話していれば一貫性が出て、説得力も増しそうですよね。

 日常の何気ない言葉遣いや話し方は、実際にその会社で働かないと見えてこない部分なので、経験できて本当によかったです。

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移籍最後、フューチャースタンダードにて。右が片山さん。


リミットがあるから自由にチャレンジできた

――半年の留学が終わり、リコーに戻ってからは、どのような業務を担当しているのでしょう?

 部署を異動して、今はAIのモデルを作り、学習させるといった業務を担当しています。新規事業というより、既存技術を高めることを目的にした開発です。

――改めて、スタートアップ留学を経験して、よかったですか?

 そうですね。改めて、別の会社に行ったという事実が、自分にとって大きかったと感じています。まったく異なる環境での新たな経験の中で、たくさんの気づきが得られたので。

 半年や1年というタイムリミットがあるところも、レンタル移籍のよさだと思います。僕は半年後にリコーに戻るという状況ですから、その半年間を全力でやり切るしかないんです。だからこそ、自由にいろいろなやり方を試すことができました。

 長い間、1つに会社に属していると冒険しづらくなるので、すごくいい機会になりました。

――リミットがあるからこそ、思い切り動けるという側面はありますよね。

 決して後悔しているわけではないんですが、移籍する前にもっといろいろ考えていれば、今以上にたくさん学んでこられたのかな、とは感じています。

 最初の1~2週間は「半年間、長そうだな」と感じましたが、今振り返るとあっという間でした。思考が変わる大きなきっかけになったので、このチャンスを与えてもらえたことに感謝しかないですね。


 非効率な業務プロセスという目の前の課題から、“効率化”という深淵なテーマの本質を探し求めていた片山さん。しかし、スタートアップで見つけたものは、一見、効率化とは真逆にも思える“考察する”ということでした。
 一人ひとりが「考える」ことは決して遠回りではなく、無駄を省き、必要なことに集中するために重要。そして、これを組織として行うためには、コミュニケーションをしっかり取り、「ビジョンや目的を共有すること」が大切である、ということを知ったのです。今はまだ知識を得たばかり。これから学びを活かして、社内の環境を整備し、よりよい働き方へと導いてくれることでしょう。

Fin

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協力:株式会社リコー / 株式会社フューチャースタンダード
インタビュアー:有竹亮介(verb)
提供:株式会社ローンディール
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