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「オフィスを飛び出して見えた、新規事業への向き合い方」 リコー 萩田健太郎さん -前編-

 今回の主人公・萩田健太郎(はぎた・けんたろう)さんは、精密機器メーカー・リコーに新卒入社し、今年で12年目。6年間の仙台勤務を経て関東に戻り、先端デバイス研究センターに所属しています。長年、開発の分野にいた萩田さんですが、昨年、初めて企画を担当することになったのです。

 企画は未経験。そう簡単に新規事業を提案することはできません。そんな日々の中で、「新規事業立ち上げの現場にいたことがないのに、企画なんてどうすればいいのか…」と悩み、モヤモヤを抱えていたといいます。
約半年、ただ立ちすくむしかなかった萩田さんに、変化のきっかけが訪れます。「社内でスタートアップ留学(リコーでのレンタル移籍の呼称)制度が始まる」という案内が届いたのです。スタートアップに行けば、新規事業立ち上げの現場を肌で感じ、今後、リコーで新しいテーマを提案していくヒントが得られるのではないか。そう考え、すぐに立候補しました。

 移籍した先は、スマホで撮影したお孫さんの動画や写真を祖父母の家のテレビに直接送れるサービス「まごチャンネル」を提供している株式会社チカク。ワクワクしながら飛び込んだ新しい世界で、萩田さんが手に入れたものは何だったのでしょうか。果たして、新規事業立ち上げのプロセスを知ることはできたのか。半年間の経験と現在の想いを聞きました。

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左はチカク共同創業者の佐藤さん、右が萩田さん

“新規事業立ち上げの経験を積める場所”を探していた

――萩田さんは、もともとリコーでどのような業務を担当していたのでしょう

 イノベーション本部という部署に所属していて、そこで扱っている技術を応用した新規テーマの企画を担当していました。

――企画の仕事は、ずっと担当されていたのですか?

 いえ、入社してから11年くらいはシステムの開発をしていて、企画の仕事に就いて半年くらいでした。だから、アイデアが全然出てこないんですよ。新規事業立ち上げの現場にいた経験がないから、急に任されても、できないですよね(苦笑)。

 これは大企業ならではだと思うのですが、新規事業の開拓といえば、目指すのは何十億円規模の市場なんですよね。それだけ大規模な市場だと、既に競合他社が独占していたりして、新たなものを打ち出すことが難しいんです。

 だからといって、自分のテーマの強みを全面的に打ち出そうとすると、ニッチな市場に寄っていってしまう。いろいろ検討したのですが、なかなかいい成果が出なくて、ずっとモヤモヤしていました。

――その状況は、どのように打破しようとしていましたか?

 “新規事業を立ち上げる”という経験を、どうにか積むことができれば、変わるのではないかと思っていました。その方法は全然わかっていなかったんですけど、その頃から社内で「ベンチャー精神が大事だ」と言われ始めていたんです。

 “ベンチャー精神”を学ぶためには、その現場に行くのが一番なんじゃないか、ってなんとなく感じていましたね。

――まさにスタートアップ留学で実現できることですね。

 そうなんです。モヤモヤを抱えていたタイミングで、「社内でスタートアップ留学制度が始まります」というメールが届いて、「コレだ!」って思いましたね。過去の自分だったらスルーしていたと思うのですが、その時は「スタートアップが経験できるなら、行きたい」と感じて、すぐに応募しました。

 どこからアイデアが生まれているんだろう? 世の中に提供するために、どのようなステップを踏んでいるんだろう? どのようなモチベーションで働いているんだろう? 企画から開発、提供に至るまで、具体的な方法も精神的な部分も学べたらいいな、と思ったんです。

――スタートアップ留学を決めた時の、上司や同僚のリアクションは?

 上司は部下の希望を尊重してくれる人で、「いいんじゃない」って、すぐに許可してくれました。同じチームの人も「いいじゃん」って、肯定的でしたね。


スタートアップのオフィスの在り方に驚き&ワクワク

――スタートアップ留学では、どのような企業を希望されていましたか?

 リコーでやっていることとは関係ないところに行きたいと思っていました。僕は料理が趣味なので、特に食関係の企業に興味があったんです。

――結果的にチカクに移籍しますが、興味のある食の分野とはやや異なる移籍先ですよね。

 スタートアップ留学の事前研修で、チカクの代表取締役の梶原健司さんがピッチをしに来てくれたんです。そのピッチがとにかく楽しそうで、引き込まれました。梶原さんがキラキラして見えたし、一緒に働くメンバーもハイスペックで興味深い方々だったので。興味がある分野とは違う会社だけど、楽しそうだなって思ったんですよね。

――人に魅かれて、決めたのですね。

 そうですね。スマホで撮影したお孫さんの動画や写真を、瞬時におじいちゃんやおばあちゃんに送る「まごチャンネル」というサービスを扱っていることもあって、アットホームなイメージも強かったです。

――そのイメージは、移籍してからも変わらなかったですか?

 はい、まさにアットホームでした。まったくギスギスした感じはなくて、皆さんすごく楽しそうに仕事をしていました。ただ、面接で初めてオフィスに伺った時は、驚きましたね。

 マンションの一室で、オフィス感が全然なくて、スタートアップってこういうところから事業を始めるんだなって。面接するスペースも、皆さんのデスクと仕切られていなくて、それぞれが仕事をしている中で面接をするみたいな(笑)。そのオフィス感のなさに、ちょっとワクワクしましたね。

――入社してから、働き方や事業の進め方での発見はありました?

 チカクでは「OKR」という目標管理方法を導入していて、3カ月に一度、社内全体での目標を設定していました。結構シビアな目標を決めるのですが、社員の皆さん全員でそこを目指していくんですよね。そして、3カ月後に振り返って、目標を再設定するんです。

 リコーにいる時は、期初の個人面談で上司と一緒に個人的な目標を決めて、期末に振り返ることはありました。ただ、その個人的な目標が、会社にどう役立っているのか、不明瞭だと感じているところもありました。

 チカクの「OKR」のように、全社で1つの目標を共有することで、明確なゴールが見えるので、業務もよりスムーズに進められると感じましたね。今後、自分が中心になってチームを作ることができたら、絶対に「OKR」を取り入れようと思っています。

新規事業立案の第一歩は「ニーズの把握」にあり

――チカクでは、どのような業務を担当されたのですか?

 新規事業立ち上げの業務を担当させてもらいました。面接の時に「新規事業に携わりたいです」と話したら、やらせていただけたんです。

――新規事業立ち上げの方法を、ダイレクトに学べる環境ですね。

 そうなんですよ。既にチカクの中で練られたアイデアを渡されて、そこから事業として展開していく方法を探る作業だったので、ゼロからのスタートではありませんでした。ただ、企画のアプローチ方法がリコーとはまったく違って、入ってすぐ学びがありました。

 これまで私は、自組織の技術の活かし方を重視して、技術がハマる市場を探っていたんです。でも、チカクで重視していたのは、お客様でした。ユーザーが抱いている課題やニーズを知ったうえで、それを解決する商品やサービスを提供するというやり方です。

 僕がチカクで進めた事業は、おじいちゃんやおばあちゃんからお孫さんへのプレゼントに関するものだったのですが、まず始めた作業は顧客インタビューでした。今のパパやママ、おじいちゃん、おばあちゃんが何に困っているのか、聞くところから始まったんです。

――シーズではなくニーズを重視するアプローチに、気づいたのですね。

 私がこれまで考える自組織のミッションは“自分たちが持つ技術を世の中に広げていくこと”だったこともあり、ニーズを把握することの重要性には、なかなか気づけていませんでした。

――早々に新たな気づきが得られたのは、スタートアップ留学の意味がありましたね。顧客インタビューは、どのように進められたのですか?

 アドバイザーとしてついてくれた方と相談して、最初は社内のパパやママに話を聞くことになりました。入社した翌日から社内の方たちにアポを取って、1週間くらい社員インタビューをしました。

 家族構成を伺ったうえで、「いつ頃、どんなプレゼントをもらっていますか?」ってインタビューをして、深掘りしていきました。生の声を聞くといろんな課題が出てきて、そこから事業になりそうなものを選別していく作業は楽しかったです。インターネットでカタカタ調べながら、1人で企画を考える進め方の100倍くらいやりがいがありました(笑)。

――萩田さんに合っているやり方だったのかもしれないですね。

 もともとコミュニケーション能力は高い方だと思っていたので、インタビューは苦ではなかったですね。

 入社1週間でインタビューをこなして、気づきがたくさん得られたスピード感は、スタートアップに来たからこそだなって感じました。

――移籍早々にイキイキと働き始めたようですが、苦労した点はありませんでしたか?

 新規事業の立ち上げは、ほとんど僕1人で行う形だったので、基本的にすべての作業を自分で担当しなければいけないところが、大変といえば大変でした。

 一度、LINEを使って顧客の方々にアンケートを取ることになったんです。Googleフォームでアンケートを作り、LINEで投げて、返ってきた回答を解析する。その作業はすべて初めて行うものだったので、手間取ることもあり、アドバイザーの方にも手伝って頂きましたが、経験できてよかったです。

 プレゼントが掲載されたカタログのサンプル作りも、自分で担当しました。最終的にはデザイナーさんにかなり協力してもらったのですが、1から10まで自分が携わって進めていく工程は楽しかったです。入社1カ月くらいで、事業を進めるうえでの事務手続きもお客様とのやり取りもすべて任されて、確実に経験値が上がりましたね。

持ち前のコミュニケーション能力で、新たな職場に馴染み、初めての経験にも積極的に取り組むことのできた萩田さん。順調に学びを得られているように見えましたが、入社2カ月目にして、大きな挫折を味わったとのこと。萩田さんの人生を変えるターニングポイントについては、後半でお届けしましょう。

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【チカクより積極採用のお知らせ】

チカクに関心を持っていただいた方に、「採用資料」をお手紙というカタチでまとめております。現在、積極採用中ですので、カジュアル面談も含め、ぜひ応募いただければと思います! ご応募お待ちしております。
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【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計41社115名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年10月1日実績)。→詳しくはこちら


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協力:株式会社リコー / 株式会社チカク
インタビュアー:有竹亮介(verb)
提供:株式会社ローンディール
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