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夢を売るベンチャーから戻って思うこと 「この先は、みんなと一緒に」 【後編】

株式会社オリエンタルランド(以下、OLC)のマーケティング本部で働く井川千紗都(いかわ・ちさと)さん。井川さんがレンタル移籍をしたのは、宇宙ベンチャー・ALE。
【後編】では、移籍のクライマックスから、オリエンタルランドに戻ってからの思いについて、伺っていきます。
→ 前編こちら

—思考をとことん深めるということ

井川さんは、営業の企画書を幾度も、作りは直し作りは直し…を繰り返したと言います。それは、クライアントからのヒアリングを経て練り直した、というのもありますが、先輩である佐藤さんからの影響が大きかったようです。
佐藤さんはALEのセールス部門の責任者。井川さんに、思考を深める大切さを教えてくれました。

「私に営業のことを教えてくれていたのは、佐藤さんという女性の方でした。佐藤さんは本当に頭キレキレの方で、最初から最後まで、なんてすごい人なんだろう…って。学ぶことばかりでしたが、中でも思考を深めることの大切さを徹底的に教えてもらったと思います。
佐藤さんはひとつの企画書を作るにも、徹底していました。私が企画書を見せると『なぜここでこれを伝えるのか?』『なぜこの流れなのか?』『どうしてこうなるのか?』など、ひとつひとつの説明に対しての深掘りがすごかったんです!  写真ひとつにしても『なぜこの写真なのか?』と。

最初は問われても、なかなか深めることができませんでした。『なんでだっけ…』って考えて考えて…こんなに頭を使ったことがないくらい考えて。それで導いた答えに対して、再び問いを投げかけられて煮詰まる…みたいな繰り返しでした(笑)。実際、一つひとつに意図を持って資料の流れを作ってみると、内容がぐんと良くなりました。

苦しかったですけど、いい機会と気づきをくださり、佐藤さんには本当に感謝しています。自分が今まで、いかに深く考えないでなんとなくでやってきたんだなぁ…ということがわかりました。それからですね、自分でも深めていく癖がついたのは」

そして、気づけば移籍も後半に突入。
井川さんの中で、ひとつの山場でもあった、EXPOの出展準備が始まります。

「11月に『デジタルコンテンツEXPO』というイベントにALEが出展することになっていまして、移籍後半はその準備に追われていました。イベントの物理的な忙しさと、展示会で何を発信するのか? ということを私の方で提案する必要があって、かなりバタバタしていました。
実は、私自身が来場者に向けてピッチをするということも決まっていて。
経験もないですし、人前で話すのはめちゃくちゃ苦手なので、どうしようかと。でも実際は、勝手に言葉が出てくるくらいうまく話せました(笑)。

というのも、数日間の出展で、ピッチは最終日。毎日ブースに来るお客さんにALEのことを話し続けたことで、ピッチをする頃には、口がかなり慣れていたんです。たぶん100回以上はブースでALEの説明をしたと思います。なので緊張はしましたけど、ピッチも問題なくクリアできましたし、ブースにも多くの方が立ち寄ってくれて、良い場になりました」

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EXPに出展した、ALEのブースの様子


「それから、私の方で、ノベルティとしてクリアファイルを作ったのですが、ある企業の経営者の方がとても気に入ってくれて。
その会社の関係者に大量に配ってくれたんです。ALEのPRという部分で、違う面でも外に広めることができて嬉しかったです」

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井川さんが実際に制作したクリアファイル

—衛星の打ち上げ、移籍のクライマックス

イベントが終わると、ALEにとっての一大イベント、流れ星を流すための人工衛星2号機の打ち上げが行われました。

2019年12月初旬、打ち上げ当日。
打ち上げ場所が海外だったため、井川さんは仲間とともにモニターの前でその瞬間を見守ります。

結果、打ち上げは見事、成功しました。

「モニターの前で、ALEのスタッフとみんなで見ました。もう…本当に感動的でした。自分の中では、“いよいよ感”もすごくありました。打ち上げまではエンジニアさんの仕事、打ち上がったらセールスの仕事、そんな感覚でした。『この後は自分たちが出る番!』 みたいな感じで、バトンタッチされた気分で、気合が入りましたね」

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打ち上げを見守る様子

ひとつの山場であるEPXOを終え、人工衛星打ち上げという一大イベントを見守り、井川さん自身も、移籍のクライマックスに向けて、最後の頑張りを見せていました。

「顧客開拓を海外にシフトすることになりました。でも移籍終了の11月末までは時間が短く、何も結果を残せない…と。なのでOLCに、延長の依頼を出しました。実は海外にアプローチをしている中で、可能性がある企業が1社あって、そこに最終企画書を送るところまではどうしてもやりきたい、と考えていたんです。そのためにはどうしても12月末くらいまでかかってしまう…。せっかくこういう機会をもらったのに、中途半端な状態で帰るのは良くない、途中で戻るのは嫌だなって考えていました。結果的に、理解してもらえて、12月末まで猶予がもらえたので、最後の一ヶ月は、海外に向けた提案に没頭して過ごしました。

なんとか間に合いました…。年末ギリギリまで企画書づくりをしていて、最終提案を出すところまではいけたので、自分の中ではやりきった感があります。先方とのやりとりは今もALEの方が引き継いでやってくださっているようです。結果につながると良いのですが…」

最後は粘り、力を出しきり帰ってきた井川さん。
その情熱は2020年1月、OLCに戻ってきてからも続いています。
「以前より少し自由度が高い」という環境の中で、井川さんは今後自主的に動いていくつもりでいるようです。

「今は、移籍前と同じくEコマースの部門にいるのですが、Eチケットの担当になり、少し業務が変わりました。今までは答えを持っていそうな人がいる状況だったので『自分がやらなくても…』という感覚があったのですが、今は、そうではなく、自分で考え抜いて、動いて、推進していかなければいけないなという風に考えるようになりました」

—みんなが一丸となれる環境を・・・

そんな井川さんの思いに応えるように、「レンタル移籍」導入の担当者であり、人事部の中平さんも「応援したい」と、人事としての思いを語ってくれました。そして、井川さん含め、移籍者の挑戦を、社内で波紋のように広げたいと話してくれました。

「井川さんはじめ、戻ってきた人たちは、すごくいい刺激を社内に持ち帰ってきてくれています。だから、ここで終わって欲しくないって思います。

社内で周りを巻き込んで何かをしていくためには、自分で自分をプレゼンしていかないといけないと思いますが、思いを言語化して人に伝えていくことで、それが自信になって、もっと強くなれるはず。井川さんの行動が、周り人たちにとっても、良い波及効果になれば良いなと。

そのために、私たちが人事の立場としてできることは、どうしたらこの経験を自社で活かせるのか、最大化できるのか、それを移籍者と一緒に考えて、サポートしていくことだと考えています」

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「頑張ろうね!」と、井川さんにエールを送る中平さん。
「ありがとうございます」と、その応援を受け取った井川さんは、目を潤ませながら笑顔で答えてくれました。

「実は業務の自分ごと化は、以前よりできていると思います。今までは、与えられた業務であったり、自分が今できそうなことという基準で働いていましたが、今はちょっと違います。

自分がこうした方がいいと思った時、周りに協力してもらうにはどうしたらいいんだろう? っていう視点が生まれました。それに、視野もだいぶ広がっています」

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「見える世界が広がって、改めて思うことなのですが…。
これは以前からの思いでもあるのですが、私は、みんなと”本当のパートナー”になってパークを盛り上げる、ということがしたいんだなと。外部の企業の方とご一緒する時はどうしても発注側、受注側という関係ができてしまいがちですし、社内でも組織や業務で意見が割れてしまうこともあると思います。

でも、そうではなくて、それぞれが持っているリソースやスキルを最大限に生かして、みんなが『パークをもっと盛り上げていこう。そのために何ができる?』と同じ思いで一丸となって、一緒にいいものを作っていける環境が必要だと思うんです。それこそが私が実現したい姿なんだと考えています。私には、まだ巻き込み力や推進力が足りないかもしれないですけど…、今後、共感してくれるみんなと、そういう環境づくりを目指したいなと思っています」

そう話す井川さんの言葉からは、控えめな印象を受けつつも、熱く湧きあがるものを感じました。
井川さんがその思いを、自分の言葉で“自信を持って”伝えられた時、思いは連鎖し、形になっていくのでしょう。

これからですね、井川さん。


Fin


※ 井川さんのレンタル移籍先・ALEさんは、世界初「人工流れ星」実現を目指す宇宙スタートアップ企業です。最新情報は以下からチェックいただけます!
Twitter: @ALE_StarAle / Instagram: @ale_starale

【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2016年のサービス開始以降、計32社78名以上のレンタル移籍が行なわれている(※2020年1月実績)。→詳しくはこちら


協力:株式会社オリエンタルランド / 株式会社ALE
Storyteller:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール

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