見出し画像

「レンタル移籍」導入担当者に聞く「外に出ないと得られない経験がある」 リコー 上田仁士さん

 精密機器メーカーの株式会社リコーは、2020年1月より「レンタル移籍」を導入。スタートアップ留学という名称で、新規事業担当者から研究者まで、様々な分野で活躍する4名をスタートアップへ送りました。そして半年間の移籍を終えて、今年6月には全員が帰任。そこで「レンタル移籍」導入担当者である、イノベーション本部 オープンイノベーション推進グループ 上田仁士さんに、導入の背景や、導入後の人財の変化などについて、お話を伺いました。

ーーまずは、導入の背景について教えて下さい。

 我々が所属するイノベーション本部は、研究部門と新規事業開発部門が合体した、次のリコーを創造する組織です。創造力を結集し、変革を生み出し、未来起点で新しい価値を提供していく活動をしています。

 しかし、次の柱となる事業がなかなか立ち上がりにくいという課題も持っています。スピード感が欠しく、多産多死の文化から遠いと感じています。我々の部門はお客様から遠く、お客様の課題を自分事として取り組めていないのではないか、そもそもお客様に本当に価値があることを提案できていない可能性もあると思っています。

 私自身は、ものづくりを担当する事業部からベンチャーキャピタルを経て、今の部門に移ってきています。この様な経験があったので状況を客観的に見ることができました。そこで、現状を打破するためには、不確実なものに挑み、多産多死、修羅場や、厳しい環境の中で自ら答えを見つけにいくスタートアップでの経験が必ず役に立つと考えていたのです。

ーースタートアップでの経験によって、人財の変化において、どのようなことを期待されていたのでしょうか?

 ひとことで言うと、「リーン思考でアジャイルなアプローチができる自律型イノベーターの育成」をしたいと考えていました。仮説構築・検証・失敗からの学び・意思決定のプロセスを回し続けて精度を上げていくリーンなマネジメントができ、同時にアジャイルな考動ができる。そして、バックキャストでお客様ニーズを自分事として捉え、自ら考えて動くことができる、そんな人財になることを期待していました。それは、事業開発者に限らず、研究者、マネージャーなど、すべての人財に必要なことだと考えています。

ーースタートアップへ送り出すというのは初めての試みですが、導入に当たって、障壁はありましたか?

 最初、「レンタル移籍」の導入を人事・法務に相談したところ、比較するものがなかったので、これは出向なのかそれとも派遣なのか、そもそもカテゴリーがわからない、といったような答えが返ってきました。私自身の勉強不足で様々なツッコミが入りました(笑)。最終的には弊社に労務指揮権がある研修に該当すると整理することができました。

ーー他にはどのようなことがあったのでしょうか?

 たとえばですが、「スタートアップに行かせて労務の指揮ができるのか?」という声があがりました。残業や出張は弊社のシステムでこれまで通り事前申請を行ってもらって把握することや、本人から提出される週報・月報があるので、そこでしっかり管理できるということで理解してもらいました。また、最も重要な「メンタル管理ができるのか?」という声もありました。こちらは、ローンディールのサービスの中にメンター制度がありメールや対面などで随時フォローしてくれることと、週報・月報を上長が見て本人と話す機会をつくれることなどを話して理解を得ました。

ーーちなみに、一期生はどのように決めたのでしょうか?

 イノベーション本部全体に、年齢制限も設けず広く公募をかけました。ただし、現場の状況などもありますから、上司に推薦をつけてもらうことが条件で。その後面接を行って、本人の意思を大事に決めました。決める上で一番のポイントはやはり「本人の熱意」。違う環境に行って奮闘するわけですから、それを打破するためには熱量が必要です。最終的には30代前半の3名と50歳1名の計4名に決定しました。

ーー留学された4名は、現在はすでに帰任していらっしゃいますね。
3ヶ月以上経ちましたが、上田さんから見て、変化はありますか?

 まずは当事者意識。ともかく自分達が動かないと何も始まらない、その結果を責任を持って受け止め、次に提案する考動をしています。たとえばですが、留学者4名はスタートアップでの経験を社内に広めようとTeamsを使ったサロンを始めました。最初は全然参加者が集まらなかったものの、集客の仕方や内容の見直しをするなどの工夫をして、60人以上が集まるサロンになりました。参加者の満足度も85%を上回っているようです。
 次にリーン/アジャイルな考動力です。今までは、自分の実力を超えた課題に対して、あれこれ考えて進まなかった留学者が、考動の先に答えがあると知り、既存の研究テーマへ、マーケティングのプランを設計する立場として参画し、悩み過ぎずアイデアを実験するプロセスを用い始めています。
 当然、これらはスタートアップでの経験によって身についたことなのですが、彼らを支えてくれたメンターの存在も大きかったように思います。1人の留学者につき、1名のメンターがついてくださるのですが、みなさん、優秀な方々でした。大手とスタートアップ、両方の経験がある方も多く、月次の1on1ミーティング、および都度のメンタリングで、本人たちの学びと支えになっていたようです。

ーーみなさんご活躍されているようですね。帰任先はどのように決められたのでしょうか?

 今回の留学は、新規事業担当者が2名、研究者が2名でした。いずれも元の部署に戻ってもらっています。そもそもが、元いた部門でイノベーションを起こしてもらうこと、リーンなマネジメントをできるようになってもらうが大事だと考えていましたので。

ーー最後にお聞かせ下さい。今後、スタートアップ留学を社内で広めていくために、どのようなことをしていらっしゃるのでしょうか? また、導入したことで、社内で変化したことはありますか?

 まず、留学者の週報・月報から一部を抜粋して、一覧にまとめて役員に送っていました。また、社内のデジタルサイネージやポータルサイトにもリリースを載せたり、社内でインタビュー記事も作成して出したりしました。さらには、社長が取締役会で話題に取り上げるための機会をつくったり、帰任者の報告会に役員を積極的に呼んだり、とにかく認知度を上げていく活動をしています。

 それから、先ほどお話ししたように、帰任した後、留学者たちの考動に変化が生まれています。部門の中でも、彼らの活躍を他のメンバーにも波及させたいという声も聞きます。これは嬉しいことですね。


これからのますますのご活躍が楽しみですね。
ありがとうございました

Profile  上田 仁士さん
株式会社リコー イノベーション本部 戦略統括センター オープンイノベーション推進グループ
リコーに入社後、化成品の開発設計生産技術、外売事業を担当後、新規事業開発部門を経て、イノベーション本部でオープンイノベーション推進とイノベーティブ人財の育成に取り組んでいる。


▼ 関連記事
「ベンチャーで掴んだ手応え “組織の中の技術者を活かす”という挑戦」
 リコー遠藤雄也さん

「オフィスを飛び出して見えた、新規事業への向き合い方」
リコー 萩田健太郎さん

「エンジニアがスタートアップで見つけた“効率化の本質”」
リコー 片山絋さん


【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計41社115名のレンタル移籍が行なわれている(※2020年10月1日実績)。→詳しくはこちら

協力:株式会社リコー
文:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/
この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
4
大企業で働く社員が「レンタル移籍」を通じてベンチャー企業で学び、奮闘し、そして挑戦した日々の出来事をストーリーでお届けします。http://loandeal.jp

こちらでもピックアップされています

はじまりは人事の挑戦から
はじまりは人事の挑戦から
  • 6本
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。