「ベンチャーに人を送り出したことで、 村田製作所に起こった変化とは?」株式会社村田製作所 筏克弘さん ✖️ 安田圭佑さん
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「ベンチャーに人を送り出したことで、 村田製作所に起こった変化とは?」株式会社村田製作所 筏克弘さん ✖️ 安田圭佑さん

「意欲ある人に、新規事業立ち上げの経験をしてもらいたい」。
株式会社村田製作所ではたらく筏克弘(いかだ・かつひろ)さんと安田圭佑(やすだ・けいすけ)さんが、レンタル移籍(※ 村田製作所では「ベンチャー留学」という名称で展開)を導入した背景には、そのような思いがあったといいます。その思いは実現し、昨年、2人の挑戦者をベンチャーへ送り出しました。あれから半年が経ち、事業開発を経験した2人は”自信を得て”自社に戻ってきた様子。そこで、挑戦者をそばで見守り続けてきた筏さんと安田さんに、「ベンチャーに人を送り出したことで、組織や人にどのような変化が起こったのか?」語っていただきました。

「起業家精神」を体感してほしい

ーーそもそも、筏さんと安田さんが所属されているのは人事部門ではないと伺っています。どのような背景から、レンタル移籍を導入されたのでしょうか?

筏:私は技術管理部に所属していて、技術者の人材育成にも携わっています。人事部門は全社的な人材開発やキャリアプログラムに取り組んではいますが、技術者と一緒に仕事をしている立場から、もっと彼らに寄り添った育成が必要だと思って、そうしたプログラムをずっと探していたんですね。

一方、安田さんは新規事業推進部で、事業創出のために様々な動きをしていて、そうした中で、お互いの関心や問題意識が一致して、今回一緒に、レンタル移籍の導入を行うことになったという経緯です。

村田製作所 技術管理部・筏さん

ーーちなみに、具体的にはどのようなプログラムが必要だとお考えだったのでしょうか?

筏:「新規事業立ち上げの経験が積めるプログラム」を探していました。これまで、研修形式で事業創出を模索する試みは行ってきているものの、事業の種は出てきても、実際に事業に結びつかない。というのも、参加している現場の人たちが、そもそも「事業を立ち上げる」ということに対して、想像力が働かないのだと思ったんです。

2019年に75周年を迎えた村田製作所ですが、元々はベンチャーから始まっています。とはいえ、「起業家精神で新しい事業を創出しよう」って会社が掲げたとしても、ここまで組織の規模が大きくなると、多くの人がそうした経験を経ていないので、「起業家精神ってなんだろう?」ってなる。なので、実際のベンチャーに身を置いて、

「起業家精神とはこういうことなのか」

って体感してもらいたいと。会社の看板に頼らずに経験ができるのは、ベンチャーマインドを身につけるいい機会だと思いました。それに、事業創出では、必ずベンチャーのステージは通らないといけませんので。

ーーそうした思いを実現するために、社内でどのように進めていったのでしょうか?

安田:レンタル移籍の導入自体は比較的スムーズでしたが、応募者をどう集めるかは、色々工夫しましたね。まずはベンチャーに興味を持ってもらおうと、「ベンチャーにおける働き方と事業開発のリアル」みたいなテーマの講演会を社内で行いました。リアルな事業開発を知ってもらった上で、応募してもらおうと。それから、未知の領域に飛び込む不安を少しでも払拭するために、上司の後押しが大事だと考え、行きたいという本人だけではなく、その上司も巻き込んで進めていきました。

社内ではじめての取り組みなので身近に事例がないわけです。だから、

「ベンチャーに行って自分に何ができるんだろうか」「何か持ち帰ることができるんだろうか?」

といった不安を抱えてしまう。そうした時に、上司の応援は勇気になったと思います。

村田製作所 新規事業推進部・安田圭佑さん

筏:いきなりベンチャーに行くとなると、誰だって構えますよね。でも上司がサポートしてくれることで、一歩踏み出そうってなる。なので、送り出す上司や部門にとってもWin-Winの状態にすることを意識しました。

それから、移籍する人と同世代である安田さんが事務局の担当だったというのも良かったと思っていますよ。安田さんが、同世代の目線で、今回の取り組みをみんなに話してくれていたので、応募する人のハードルが下がったのでは。安田さんがいなかったら集まらなかったかもしれない(笑)。

本人をどれだけ後押しできるか

ーー良い連携ができていたようですね! ちなみに、お二人がこうした越境経験に情熱を注いでいらっしゃるのは、危機感をお持ちだからなのか、それともご自身の経験からこのような思いに至ったのか、 どのような背景があるのでしょう。

安田:僕は前職でコンサルタントとして事業支援をしていました。転職で村田製作所に入ったのも、ここで新規事業をやりたいという動機からです。有難いことに挑戦の機会はあって、社外も巻き込みながら新規事業をつくることにも携わっています。そうした中で、大規模組織において、今回のような取り組みが必要だと感じていました。

筏:私は以前、事業部のR&D部門で商品開発をしていました。そこで、本筋とは異なる新商品が出来上がっていく過程を経験してきました。今でこそ、その事業も拡大していますが、当時はいわゆる社内ベンチャーの状態。ノウハウもあまりなく、生みの苦しみや、競争相手の中で生き残る大変さを、紆余曲折ありながらも経験できた。

一方、今、私のいる技術開発本部にいる多くの人は、事業を育てていく楽しさを感じることをできないまま仕事をしている状態。そこでいくら私が「昔はこうだった」って語っても伝わらない(笑)。それよりはベンチャーに行って体感してもらった方が早いわけですよ。

ーーそれにはベンチャーがピッタリだと。

筏:知の探索が大事だというのがベースとしてあって、なるべく村田の名前は通用しない、遠い領域のところに行ってもらおうと。だからといって、「こういうベンチャーに行ってこうして欲しい」とか押し付けることはなく、本人の自立性を尊重したいと思っていましたね。本人の行動をどれだけ後押しできるかっていうのを大事に考えています。

ーー「第一期」は、山田さんと澤井さんの2名が移籍に行かれましたね。移籍中はどのように見守られたのでしょうか。

安田:あまり介入しすぎることなく、つかず離れずでしたね。基本は、メンターの方と(ベンチャーの)社長を信じて動いてもらうのがいいかなと思っていましたから。メッセンジャーで繋がってチャットを気軽に送りあえるカジュアルな関係性づくりはしていましたけど。

あとは、お一人目の山田さんが、数ヶ月後に行った澤井さんのちょっと先輩としてコミュニケーションを取ってもらいつつ、お互いが支え合ってくれたらいいかなと、見守っていた感じです。とにかく二人が元気そうでいてくれればいいかなって(笑)。

筏:それに、私たちがあれこれ言うまでもなく、メンターの方が、1on1やメールのやりとりを通じて、すごくいいコメントをしてくださっていた。彼らにとってもいい支えになっていたようですし、メンターの存在によって、十分、安心安全な環境が作られていたように思います。私たちは、応援団でありたいなと。

安田:そうですね、ファンであり、仲間でもある。

▼ 山田さんと澤井さんのストーリーはこちら


人は変わるんだ、って実感できた

ーーこの春、移籍者のお二人が戻ってきましたが、何か変化は感じますか?

安田:雰囲気が変わりましたよね。山田さん、澤井さん、お二人ともキャラクターは違いますけど、、なんというか、落ち着きや自信が感じられる。ベンチャーにいた時も、お客さんや社員といった感じではなく、明らかに同じビジョンに向かっていく”一員”として、入り込んでいた。そうしたマインドを得たことで、変わったのかもしれません。

ーー具体的な動きは何かありますか?

安田:山田さんでいえば、社内の勉強会を主催していますね。部門を超えて、研究開発のメンバーが自らの事業アイディアを営業できるように商談のトレーニングをしたりしているようです。山田さんは寡黙なタイプの方だったので、本当に信じられません。

筏:人を巻き込んでいくようなキャラクターじゃなかった。

安田:澤井さんも社会貢献をテーマに色々と動いているようです。山田さんの取り組みにも関わっているようで、共通言語を持つ二人が、一緒に何かを進めていくのは楽しみですね。


ーー筏さん、安田さんが移籍者のお二人から刺激を受けていることはありますか?

筏:人って半年でこんなに変わるのかって、正直、びっくりしていますよ(笑)。帰ってきて数ヶ月経っていますが、より進化しているように感じる。

改めて、人は変わるんだって実感できましたね。

安田:こんなにドラマティカルなことが、人起点で起こることってあまりないので、ドラマを見ているような感覚で。主人公である彼らに、感化されていますね。

社内で挑戦する人と応援する人を増やしていくために

ーー筏さん、安田さんが、具体的に戻ってきた後の活動をフォローすることはあるのですか?

安田:たとえば、Teamsで、ベンチャーに行った二人と、ベンチャーに興味がある人を繋ぐなど、コミュニティ作りのサポートをしています。

筏:社内報告会などの資料作りの相談に乗っていました。「社内の人に伝わるにはどうしたらいいのか?」などという、オーディエンス視点のアドバイスは心がけていましたね。

ーー第二期の方々がもうすぐベンチャーに行かれるようですが、第一期のお二人が戻ってきたことによって、何か影響はありましたか?

安田:山田さん、澤井さんの話を聞いて、だいぶリアリティが伝わったようで、不安よりも、自分でも大丈夫かもしれないって考える人が増えたように思います。今年じゃなくてもいずれは行きたいという声も上がったりして、社内の挑戦意欲が高まっているかもしれません。

ーー社内への浸透も進んでいるということでしょうか。

安田:認知度は明らかに高まりました。各地域からも手を挙げる人が増えているのも嬉しいことですね。先日、オンラインで社内報告会を開催した際も、最大で200人くらい視聴してくれていました。

ーー今後、どのような広がりを期待されていますか?

筏:人数を増やしたいということでもなく、意欲がある人や、上司に挑戦し続けて欲しい。継続性を大事にして火が消えないようにしたいですね。「先々に道があるぞ」って見せることが、モチベーションになるし、行く本人も、後に続く人のために頑張ろうと思えるでしょう。


安田:
行った人たちは、「組織還元」の前に、まずは見渡せる範囲の個人に影響を与えていくと思うんですね。そうした人たちが、部門を超えて繋がって、新しいことに挑戦したり、そうした挑戦を応援する人が増えていけばいいなと思っています。

ーー最後に、お二人ご自身のこれからの挑戦を教えてください。

安田:やっぱり、移籍から戻ってきた人が、新しいことをするときに支援していきたいですね。それから私自身も新規事業を立ち上げたり、タイミングを見てレンタル移籍にも挑戦したいと思っています(笑)。

筏:レンタル移籍に参加した人たちが「参加して良かった」と思える場づくりです。そのためには、私自身も色々試して、変化を取り入れて行く必要があります。まずは、戻ってきた移籍者たちも巻き込みながら、この取り組みに関わる人が二倍三倍とかに広がっていくような工夫をしていきたいですね。

ーーありがとうございました!

FIn

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