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【第2章 何もしなかったことが失敗】諦めなくて良かった 〜新サイネージ「LOOOK (R) by NTT MEDIAS」の誕生秘話〜

今回の主人公は、NTT西日本から、風景を配信するサービスを提供するベンチャー企業、株式会社ランドスキップに1年間レンタル移籍した佐伯穂高さん。佐伯さんは2017年4月から移籍を開始し、2018年3月に終了。そして約1年後の2019年4月、ランドスキップと提携して新たなサービスをローンチしました。そんな佐伯さんのストーリーを全4回でお届けしていきます。

今回の主人公
佐伯 穂高(さえき ほたか)

NTT西日本ビジネスデザイン部 ビジネスクリエーション部門 所属。
新卒でNTT西日本に入社。支社で企画営業を経験したのち、数年前に本社に異動。念願の新規事業開発を行うビジネスデザイン部に配属になる。しかし、任されたのは事業の創出ではなく、事業のマネジメント。このままでいいんだろうか……という焦燥感、もっとチャレンジしたい!という想いから、レンタル移籍を決意。

<過去記事>
第1章 3年後が見えない


第2章 何もしなかったことが失敗

—やることが既に山積み

移籍初日。
ランドスキップでは既にやることが山積みだった。

代表の下村はこの頃、様々な場に登壇したり、メディアに露出していたことから、多く企業から問い合わせが入っており、捌ききれていない状態だった。

実質動けるのは下村のみ。
「じゃあ佐伯さん、あとはよろしくお願いします!」
移籍して数日にも関わらず、まるっと任されることもあった。

これまでのランドスキップは、PRのためのコンテンツ制作など、企業や自治体からの受注案件がメインだったが、「バーチャルウィンドウ」という、風景コンテンツを配信するサブスクリプションモデルのサービスローンチにより、会社として大きく成長していくフェーズだった。

そのため佐伯は、経営戦略も考えながら、企画営業をする必要があった。NTT西日本で、経営企画、事業開発、事業推進、マーケティングなど、一通り経験はあるものの、組織というピラミッドの中で役割が分断されていたため、部分的な経験しかない。

そのため不安は大きかった。しかし、パートナーという意識で迎えてくれている下村の期待に応えようと、ただ必死だった。

—何もできない自分……

移籍して数週間が経ち、佐伯は、問い合わせ対応・リリース作成・営業と、目の前のことに追われていた。いずれも未経験の業務ではなかった。

しかし「自分ってこんなにできないんだ……」
やればやるほど気分が落ち込んだ。

問い合わせ対応ひとつにしても、どのように対応したら良いか自分では判断できず、都度、下村に聞いていた。

「自分で決めたらどうですか?」
そう下村に言われても、指示がないと決められない、動けない。
対応したらしたで「なぜそういう対応したんですか?」と問われることも多く、感覚が掴めない。

サービスのリリース作成も同様。
リリース資料を佐伯が作ることになったのだが、結局、多くの指摘が入り、むしろ手間をかけてしまったように感じる。

営業先でもそうだ。ランドスキップの価値をうまく説明できない。
本来であれば「こういう映像を流したら、こんな販促になりますよね?」と、相手のニーズにカスタマイズした提案が必要とされる。そうしないと相手がイメージできないからだ。

しかし、臨機応援に説明できない。「風景っていいでしょう、すごいでしょう!」という一辺倒の話ししかできない。佐伯は、下村の営業トークに対して、自分は1割くらいしか話せていないと感じていた。

展示会でも同じことが起こった。
ブースで来場者に説明する際も、相手に合わせてうまく説明ができない。

下村からも「全然ダメですね」と指摘が入る。

「自分は全然期待に応えられていない……」
移籍して3週目にして、気分はどん底だった。
“移籍して間もないから”は通用しない世界、ベンチャーはアウトプットが勝負。佐伯はそう考えていた。だからこそ必死で動いているつもりだった、しかし結果が伴わない。

当たり前にできると思っていたことが全然通用しない。
自分が今までやってきたことは、ここでは役に立たない。
意気込んで「期待に応えたい!」と言ったものの、そのできなさ加減に呆れた。

(下村さんは、部下ではなくパートナーとして期待していると言ってくれたのに、自分、何もできないじゃん……)

ツーッと涙が流れた。

—もう、限界……?

1ヶ月が過ぎようとしていた4月下旬。
佐伯の気持ちは限界にきていた。下村に正直な気持ちを打ち明けた。

「自分は期待に応えられなくて申し訳ないと思っている。ただ、一緒に大きくしていきたいという気持ちは強い。だから、5月は、まずは自分が役に立てる業務からやらせてほしい……」精一杯の言葉だった。

すると下村はこう言った。
「それは自分の大事な意志決定だと思うので評価したい。でも佐伯さんは、今の業務に “答えがない”ということに、悩んでいるんじゃないんですか? 実は僕も悩んでるんですよ?答えがないことに一歩踏み出すことは怖いし、悩みます。でもそんな中で、自分で意志決定しているんです。だから佐伯さんも自分で決めていけばいいんですよ」

(下村さんも怖い? 悩んでいる?)
ハッとした。佐伯は、上司が求めていることを基準に考える癖ができていたため、下村の求めているものに応えようと必死だった。だからそれに応えることができず、悩んでいた。

しかし下村が求めていることはそうじゃない。佐伯が意志をもって進めていくこと。一緒に悩みながら進んでいくことだった。

下村が見せてくれた「僕も悩んでます」という本音に救われた。

—できることから始めた結果

佐伯は自分ができることに向き合った。
自分はガンガン提案することはできない、完璧なリリースも作れない。

けれど事業を運用していくことや、交通整理は得意だ。
この頃、複数のプロジェクトが動き出していたため、佐伯はそれらのディレクションやマネジメントを引き受けることにした。また、経営戦略をまとめるなどのサポートも行う。

この動きによって、佐伯はランドスキップに大きく貢献できた。

今までの事業推進の経験を活かしつつ、新たな領域のプロジェクトで成果が出せたことに、佐伯にとっても大きな自信となる。

—何もしなかったことが失敗

自信を取り戻した佐伯は、「自分も一歩踏み出すのは怖い」という下村の言葉を勇気に、企画提案にも再びチャレンジしていた。

最初は、相変わらず思うような提案ができなかった。
上手くいかないことも多く、落ち込んだ。

だからこそ、映像コンテンツの知識を深めたり、ニーズをヒアリングしたり、自分にできることを精一杯やった。提案資料に「リアリティが足りない」と指摘を受け、どうしたら相手の心を動かすメッセージが作れるのか? 必死で考えた。

今度は諦めなかった。
それらを繰り返すうちに、佐伯は、コンテンツの価値を様々な角度から伝えられるようになった。営業先でもスムーズなコミュニケーションが取れるようになった。

失敗しても諦めないことで前進する、佐伯は身を以って経験した。
それと同時に過去の自分を振り返る。

今まで、やらかしたという経験もなければ、怒られたこともない。
社会人になってからは、いかにミスなくそつなく業務をするかが重要で、それが仕事なんだと思っていた。つまり失敗しないように生きてきた。

でも今は違う。
何もしないことが、失敗だと思える。

今まで環境や誰かのせいにして、やってこなかったことは山ほどある。
ふてくされていたこともある。
だからこれからは、何もしない、という失敗は絶対しない、

そう心に誓った———。

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「&ローンディール」編集部よりお知らせ!
【参加者募集】7月3日(水)開催
「ローンディールフォーラム2019 人材流動化の先にあるもの」

昨年5月に開催し、250名もの方にご来場いただいた「ローンディールフォーラム」を今年も開催します。今回のフォーラムでは「人材流動化の先にあるもの」と題して、レンタル移籍を経験した方々による事例紹介、大企業のマネジメント層の方々による社外経験が組織にあたえる影響についてのセッション、さらに、特別ゲストをお招きし「人材の流動化」についてのパネルディスカッションを行います。ぜひご参加をお待ちしております。

<イベント概要>日程:2019年7月3日(水)時間:15:00〜18:30 終了後、会場で懇親会あり。場所:Base Q(東京ミッドタウン日比谷 6階)費用:一般 3000円(税込) 詳細・お申し込みはこちら → https://eventregist.com/e/loandealforum2019
協力:NTT西日本、ランドスキップStoryteller:小林こず恵提供:株式会社ローンディールhttps://loandeal.jp/

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