【第3章 大企業にいたからこそ】諦めなくて良かった 〜新サイネージ「LOOOK (R) by NTT MEDIAS」の誕生秘話〜
今回の主人公は、NTT西日本から、風景を配信するサービスを提供するベンチャー企業、株式会社ランドスキップに1年間レンタル移籍した佐伯穂高さん。佐伯さんは2017年4月から移籍を開始し、2018年3月に終了。そして約1年後の2019年4月、ランドスキップと提携して新たなサービスをローンチしました。そんな佐伯さんのストーリーを全4回でお届けしていきます。
今回の主人公
佐伯 穂高(さえき ほたか)
NTT西日本ビジネスデザイン部 ビジネスクリエーション部門 所属。
新卒でNTT西日本に入社。支社で企画営業を経験したのち、数年前に本社に異動。念願の新規事業開発を行うビジネスデザイン部に配属になる。しかし、任されたのは事業の創出ではなく、事業のマネジメント。このままでいいんだろうか……という焦燥感、もっとチャレンジしたい!という想いから、レンタル移籍を決意。
<過去記事>
第1章 3年後が見えない
第2章 何もしなかったことが失敗
第3章 大企業にいたからこそ
—世の中がざわざわするようなコンテンツを作りたい
移籍して3ヶ月が経った。
「何もしないという失敗は絶対しない」
そう心に誓った通り、佐伯は、積極的にVRコンテンツの企画を行った。
例えば、企業や観光のPRを目的としたVRコンテンツ制作の受託業務や、馴染みのなかったアイドルのVR制作にもチャレンジした。ランドスキップのクリエイティブチームと連携し、クリエイターやナレーターの手配、台本を作ったり、VR上でのアイドルの振付を考えるなんてこともあった。
「VR」「アイドル」という、ただでさえ未知の分野。自ら手足を動かし、ディレクションもする……、とにかく目まぐるしい日々だった。
しかし充実していた。NTT西日本では何かクリエイティブを作るとなった場合、広告代理店や制作会社に発注し、直接的に制作に関わることは少ない。現場で何が行われているのか見る機会も殆どない。
しかし実は、作る現場こそがとても面白い。自ら作り上げていく楽しさを感じていた。また動画の撮影に立ち会ってみると、机上では想像できなかったことばかり。初めて分かる課題も多々あり、現場に触れ続けることの大切さも知った。
企画から制作まですべてに携わったことで、「やったことがなくても、実現できるんだ……」という新たな可能性にもワクワクしていた。
そして、佐伯が積極的に挑めたのも、新しいことにチャレンジするマインドと、それを助けてくれる仲間がいるという、ランドスキップの環境があってこそだと感じた。
ランドスキップでは、日々アイデアを出しあい、それが企画へと発展し、最終的に形になる。そこに制限はない。そんな中で、「もっといいものが作りたい…」佐伯は常に考えていた。
「世の中がざわざわするようなインパクトがあるコンテンツをつくりたい」アイドルコンテンツ以外にも、様々なVRコンテンツの企画・制作に携わっていた佐伯は、何にでもチャレンジできるという機会を得て、いつの間にか熱い想いを抱くようになっていた。
—大企業にいたからこそできる、大企業とのアライアンス
こうして半年が経った頃には、コンテンツのプロデュースからディレクションまで、自信を持って取り組めるようになっていた。ベンチャー企業で働いていると日々新しいことばかり。毎日少しづつでも何かができるようになることで、自身の成長も実感できた。
その頃。以前より進めていた、とある大手企業とのアライアンスが少しずつ具体的になり始めていた。大手メーカーのハードと、ランドスキップのソフトを組み合わせてパッケージ化するというもの。スピード感を重視するランドスキップと、様々な意思決定を必要とする大手では、進み方もスタンスも大きく異なる。
そこで佐伯が担当することになった。
スピード感を意識しながらも、大手のリズムにも合わせながら進めていくのは、ベンチャーと大手側、どっちの状況も理解できる佐伯だから成し得ること。
大手の場合、ロゴ1個にしても、様々な部門の意思決定が必要なる。
そのため、承認後に変えるのは困難なこともあり、都度細かく詰めてながら調整していく必要がある。当然時間もかかる。また、他部門との調整などにより、止まってしまうこともある。佐伯は、それを理解しているからこそ、これら細かい調整を粘り強く繰り返した。
その中で学んだことは、相手の役職や決定権の有無にかかわらず、事業や考えに強く共感してくれ、情熱を持って社内で推進してくれる人を味方につけること、これが大切だと思った。
その甲斐あって、それから数ヶ月後、佐伯の移籍が終了する3月末頃、ようやくリリースまでこぎつけることができた。
—ベンチャーで学んだお金の考え方
佐伯は、コンテンツ制作だけではなく、お金の考え方についても新たな気づきを得ていた。これまでランドスキップは資金調達をすることなく「自社で稼ぎながら、それを未来に投資していく」という経営を続けてきたベンチャー企業だった。
だからこそ、リアルな事業が生まれる。スピード感のある意思決定ができる。自らの生み出した価値、その稼ぎがダイレクトにランドスキップの成長に影響する。
佐伯は、このランドスキップの経営理念に強く共感した。
もちろん資金調達により、潤沢な資金の中で事業開発をするのもいいが、自分たちで作ったお金で事業を回すということは、会社を自分事化しやすく、いいものを作って会社を大きくしようと、皆が一丸となれると思った。
大きい組織にいると、数千万ですらも小さいと錯覚してしまうことがある。でも本来はそうではない、いずれも大切なお金。ここでは10万でも100万でもとても大切に思える。おかげで契約書や請求を疎かにせず、入金を確認するまでが仕事と捉えられるようになった。
また、自身の稼ぎがどう成長に貢献するのか、常に気にする感覚も身についたと思う。
—戻った後のこと
年が明け、残り3ヶ月を切った頃から新しい社員受け入れの準備を始めていた。佐伯の後任でもある。採用のための原稿制作から採用準備などに携わり、いよいよ自分の移籍が終わることを実感し始める。
同時に、戻った後のことを具体的に考え始めていた。
この時すでに、自社に戻ったあとランドスキップと提携したい、サービスのアイデアはあった。どこまでできるかはわからない……。それでも1年、ベンチャーで学んだこと、新しくできるようになったことを活かして挑戦してみたい、とやる気は十分だった。
それに、気がつけばこの1年、交換した名刺は400枚を超える。
これら繋がりは大きな財産になりそうだ。
できないことでも、やればできるという自信もついていた佐伯。
「今後も一緒にやりましょう」と下村に約束し、ランドスキップを離れる寂しさと、ホームへ戻る安心感、そして熱い想いを持って、移籍を終了した。
—意気込んで戻ってきたものの…
2018年4月末。
佐伯がNTT西日本に戻って1ヶ月が経っていた。
帰ってきた佐伯は一人葛藤していた。
大企業のカルチャー、作法に自分を合わせるのか、それともベンチャー企業で培ったマインドや情熱を大切にするのか……。
ベンチャーでやってきたことを活かしたい、ランドスキップと新規事業をやりたい、そう強い志を持って戻って来たのだが、配属されたのは既存の新規事業プロジェクト。 VRや4K映像配信といったテーマこそ近いが、日に日に増す苛立ちと焦燥感。
この1年は自分の裁量、自分の判断で、スピードを持って次々と進めることができた。しかしここでは縦割り、ピラミッド構造の組織に加え、膨大な事務処理や調整業務。安心安全に既存の大きな事業を推進する中ではその必要性は理解していたが、新規事業を0から作る事においては馴染まない。
佐伯の中で不協和音が起こっていた。そして、思い通りに進まないもどかしさに、所属プロジェクトへの情熱がだんだん薄れていった。
(大企業のカルチャーに染まり、元の自分に戻るくらいなら…)
そう考えていた佐伯は、ローンディールのメンター細野にボソッとこぼした。
「会社辞めようと思っています…」
「&ローンディール」編集部よりお知らせ!
【参加者募集】7月3日(水)開催
「ローンディールフォーラム2019 人材流動化の先にあるもの」
昨年5月に開催し、250名もの方にご来場いただいた「ローンディールフォーラム」を今年も開催します。今回のフォーラムでは「人材流動化の先にあるもの」と題して、レンタル移籍を経験した方々による事例紹介、大企業のマネジメント層の方々による社外経験が組織にあたえる影響についてのセッション、さらに、特別ゲストをお招きし「人材の流動化」についてのパネルディスカッションを行います。ぜひご参加をお待ちしております。
<イベント概要>日程:2019年7月3日(水)時間:15:00〜18:30 終了後、会場で懇親会あり。場所:Base Q(東京ミッドタウン日比谷 6階)費用:一般 3000円(税込) 詳細・お申し込みはこちら → https://eventregist.com/e/loandealforum2019
協力:NTT西日本、ランドスキップStoryteller:小林こず恵提供:株式会社ローンディールhttps://loandeal.jp/