【第4章 人生が変わった】諦めなくて良かった 〜新サイネージ「LOOOK (R) by NTT MEDIAS」の誕生秘話〜
今回の主人公は、NTT西日本から、風景を配信するサービスを提供するベンチャー企業、株式会社ランドスキップに1年間レンタル移籍した佐伯穂高さん。佐伯さんは2017年4月から移籍を開始し、2018年3月に終了。
そして約1年後の2019年4月、ランドスキップと提携して新たなサービスをローンチしました。そんな佐伯さんのストーリーを全4回でお届けしていきます。
今回の主人公
佐伯 穂高(さえき ほたか)
NTT西日本ビジネスデザイン部 ビジネスクリエーション部門 所属。
新卒でNTT西日本に入社。支社で企画営業を経験したのち、数年前に本社に異動。念願の新規事業開発を行うビジネスデザイン部に配属になる。しかし、任されたのは事業の創出ではなく、事業のマネジメント。このままでいいんだろうか……という焦燥感、もっとチャレンジしたい!という想いから、レンタル移籍を決意。
<過去記事>
第1章 3年後が見えない
第2章 何もしなかったことが失敗
第3章 大企業にいたからこそ
第4章 人生が変わった
—もうここでは無理かも……
入社して8年、佐伯は、丁寧に意思決定を積み上げながら、品質の高いサービスを作り上げていく自社のビジネス開発のやり方をよく理解していた。
自社しか見ていなかったら、これが当たり前と思っていただろう。
しかし、ベンチャーへ行き、スピード感あるビジネス開発や、自ら意思決定するプレッシャーとその醍醐味を学んだ今、無理して自分がここでやる必要があるのだろうか、いつの間にかそう考えるようになった。
大手はベンチャーとは違う。
丁寧に進めていかなければならいことも、社内のルールを守らないといけないことも、他部署との調整を重ねていかなければ動けないことも良くわかる。それはひとつのプロジェクトが社会へ及ぼすインパクトが大きいから。だから否定するつもりもない。
だからこそ、ちょっとのことでは変わらない、変えられないと思った。
だったらもう大企業のビジネス開発のやり方に馴染めない自分が去るのが良いのではないか…。そんなふうに考えた。
「もうここでは無理かも……」
しかし、貴重な経験をさせてもらった恩もある。
会社に何か貢献しないといけないと…、という気持ちと、結局ベンチャーで経験したことも自社のビジネス開発に全然活かせないじゃないか……、そんな想いが入り交じる。
—あと3ヶ月だけ頑張ろう
移籍から戻って1ヶ月が経った頃、移籍時のメンターだったローンディールの細野との面談があった。その時、行き詰まりを感じていた佐伯は思っていることを洗いざらい話した。そして、
「実は、会社を辞めようと思っている……」
ボソッと言った。
正直、否定されると思った。
ローンディールは、ベンチャー企業への移籍というサービスを通じて、大手企業の人材を育成しようとしている。つまり、戻ってきてすぐ自分が辞めてしまうとなると、ローンディールにとっても良くないのではないか?
辞めることで迷惑がかかると思っていた。
しかし、メンター細野からは意外な言葉が返ってきた。
「わかるよ、すごくわかる。今がどんな状況かも、どういう気持ちかも。だから今の気持ちは否定しない」
そしてある提案があった。
「だけど、あと3ヶ月だけやってみたらどうか。この後、どんな道を選んだとしても、大きな組織と戦ったという経験、そして形跡が次につながると思う。だから期間を決めて、やれるだけやってみたらいいんじゃないか。それでダメだったら次に行くのでも遅くないのでは?」
佐伯は思わぬ提案にハッとした。
確かに、大企業でうまくいかない…という経験するのも、後々役に立つんじゃないか。そしてやるだけやったと納得できれば、会社に対しても未練がなくなるんじゃないか、そう思った。
あと3ヶ月頑張ろう、それでダメだったら辞めよう。
「頑張ってみます…!」
細野が寄り添い、本気で自分のことを考えて提案してくれたことが本当に嬉しく、勇気になった。
そしてこの後、ゴールデンウィークに入り、佐伯は会社から離れたことで、改めて自分の気持ちに気づく。
それはランドスキップでの移籍時代、事業開発に心からやりがいを持って取り組めたこと。そんなランドスキップのサービスを、自社が持っているインフラを活用してインパクトある事業に成長させたいと思ったこと。
佐伯は再びやる気が戻ってきた。
しかし数週間前のやる気だけの頃と明らかに違ったのは、サラリーマンを辞めるという覚悟ができたことだった。
—評価や昇格はいらない
3ヶ月だけ本気で頑張ろう。
ゴールデンウィークが明け、佐伯はさっそく、移籍後に新しく上司となった笹原に相談した。
笹原もアメリカ留学から帰ってきたばかり。
佐伯は、思うように進められないもどかしさに加え、自分が今考えているビジョンや想い、そして新規事業を進めるための理想のチーム作りについて語る。
そして「これで成果が出なかったら辞める覚悟はできている、だから挑戦したい」と、正直に話した。
覚悟があった佐伯は、どんなに論破されたとしてもぶつかっていこう、そう決めていた。
——しかし笹原は。
「これを通すためには、何を揃えたら上が納得してくれるのか、どんな言い回しの説明がいいのか?」真剣にアドバイスしてくれた。共感もしてくれた。
笹原もちょうど海外留学から帰国して、それを自社でどう活かすかと考えていたタイミングだったようだ。
味方になってくれる上司が近くにいる……心強かった。
佐伯は笹原の力を借りながら、更にその上のマネージャー層に、ランドスキップとの新規事業開発に関するプレゼンをすることになった。事業計画に加え、自分で意思決定できるチーム体制でやらせて欲しいということ、それから、ランドスキップとの協業事業への熱い想いを語った。
「結果が出るまでは評価や昇格はいらない。うまくいかなかったら覚悟はできている、だからやらせて欲しい」と。
すると、
「……じゃあ、やってみるか」
背水の陣で挑んだ戦いで、見事勝利を勝ち取った。
後で振り返ると、会社が求めているような事業計画ではなかったかもしれない。それでもランドスキップとの新たな可能性、そして佐伯の熱意と覚悟が動かした。
季節は少しずつ夏に変わろうとしていた。
—少しずつ、仲間が増えていった
6月、佐伯は本格的にプロジェクトをスタートさせる。
最初はひとりで動いていた。孤独だった。
しかし頑張る佐伯の背中を見て、快くサポートしてくれる人が少しずつ増えていた。不言実行で黙々と動いた甲斐があった。
サポートしてくれる仲間は、先輩であろうと後輩であろうと関係ない。
皆、自主的に参画してくれている。それぞれができることをプレイヤーとして協力してくれる。上司さえも一緒に汗をかいてくれる。縦割りではなく、ランドスキップにいた時のような横の一体感が生まれ、佐伯は嬉しかった。
—いよいよ開発へ。見えてきたローンチ
動き出してあっという間に3ヶ月。
プロダクトの企画設計が固まり、10月に入ると開発するフェーズに入った。開発メンバーをアサインし、少しずつ形になっていく様子を近くで見守った。
ここでもランドスキップでの経験が活きた。
受委託の関係ではなくて、制作チームとともに、知恵を出し、汗をかいて進めていくという関係。おかげで納得いくプロダクトの完成が見えてきた。
今思えば4月末に細野に相談し、3ヶ月と決めたリミットはとうの昔。
会社にチャレンジする機会を与えてもらい、悩みながらではあるものの、こうして一歩ずつ、想いが形になっていく。
仲間も増えた。直接関わらなくても応援してくれる人も増えた。
もちろん、今自ら辞めるつもりなどない。
今はやれるところまでやるという選択肢しかない。
「あの時諦めなくて本当に良かった…」
佐伯はそう心から思った。
———そして12月。プロダクトの完成が見えてきた頃、年度明けにサービスをローンチすることが決定した。
—人生が変わった
年明けて直ぐ、ランドスキップより、月額サイネージサービス「LOOOK(ルーク)」が発表された。
http://loook.landskip.co.jp/
佐伯は、この「LOOOK」とNTT西日本グループ・NTTメディアサプライ株式会社との協業を進めていた。同グループが持つ巨大ネットワークを活用し、「LOOOK (R) by NTT MEDIAS」というブランド名でもサービス提供を行い、空間演出と情報発信を行っていく予定だ。サブスクリクションモデルの同サービスは、ランドスキップにとっても、そしてNTT西日本グループにとっても新たな事業ドメインになる、佐伯はそう確信している。
ローンチは4月に決まった。
リリース準備などに終われ、佐伯は大詰めを迎えていた。
———4月12日。
「LOOOK (R) by NTT MEDIAS」が初めて公の場で発表された。
翌週4月19日には無事ローンチした。
佐伯は無事にローンチできたことに心から安堵した。
「あの時逃げなくて本当に良かった…」
それと同時にこみ上げてくる熱い何か。
それは「ありがとう…」という感謝の想い。
諦めない選択をくれたメンター細野を始め、社内でプロジェクトを推し進めてくれた上司の笹原、それから参画してくれた仲間、機会を与えてくれた会社。それから、ここまで熱い想いにさせてくれたランドスキップの下村。
それ以外にも、近くで応援してくれたり支えてくれた仲間もたくさんいる。彼らに対して、感謝しかない。
そして、1年間新規事業を進めてみて分かったことがある。
ベンチャー企業ではリスクをとらないことがリスクで、リスクをテイクしていく(チャレンジしていく)マインド、行動が必要とされる一方、大企業には安心安全に物事を進めていくために、リスクをマネジメントする仕組みが徹底的にできているということ。
そして、この仕組みが大企業の成長を支えてきたのも事実。なので、急にやり方を変えることができないのは当たり前だし、すべてを変えようと思う必要もない。
ただ変えられることもあって、その為には誰を巻きこみ、何から変えればいいのか、それを見極めながらやっていけばいいということ。
ベンチャー企業ならではの推進力と大企業ならではの組織力のギアが噛み合ったとき、これまでにない大きなイノベーションがうまれるのではないかと想像が膨らむ。
移籍から帰ってきて1年が経った。
3年前の春は、今こんなふうに新規事業を実現できるなんて思ってもみなかった。
「為せば成る…」
ランドスキップだけではなく、NTT西日本でも実現できたことで、「人生が大きく変わったなぁ…」そう感じる。
—まずは成果を出す、そして組織改革も
佐伯は今、ようやくスタートラインに立てたと思っている。
「LOOOK (R) by NTT MEDIAS」で結果を出す、それが目下の目標。
そしてもうひとつチャレンジしたいことがある。それは組織改革である。
自分はたまたま理解ある上司に恵まれたが、過去の経験から、そう提案が順調に進むことはなく、上に提案し続けている間に疲弊して熱量が覚めていくというパターンが多い。
だからこそ、今は新規事業の結果を出しつつも、3年後の目標として、熱意ある人がどんどんチャレンジできて、プロジェクトに没頭できるような環境を作りたいと考える。
—後日知った、上司の応援
佐伯は最近になって、あることを知った。
それは半年以上前、プロジェクトが正式にスタートして、グループ企業との連携を必死で進めている時のことだった。
ある日急に、事業が進めやすくなったことがあった。
これは今まで自分が必死で動いてきた結果と思っていたが、実は、プロジェクトの承認してくれた部長が、グループ企業などに話しに行ってくれていたことがわかったのだ。佐伯はこの事実を知った時、胸が熱くなった。
見えないところで応援してくれている人が実はたくさんいたことに気づいた。あの頃は、組織の中で孤独に戦っていくと粋がっていたけれど、いろんな人に支えられてここまで辿り着けたことを改めて実感する。
「自分も早くプロジェクトで結果を出して、チームを支えられる人間になる」そう誓った。
———佐伯は、これからの一年、結果に向き合っていくことになるだろう。
でも今はひとりじゃない、仲間がいる。
「来年の春は、自分を支えてくれた仲間と笑顔で迎えたい」
心からそう願っている。
End
「&ローンディール」編集部よりお知らせ!
【参加者募集】7月3日(水)開催
「ローンディールフォーラム2019 人材流動化の先にあるもの」
昨年5月に開催し、250名もの方にご来場いただいた「ローンディールフォーラム」を今年も開催します。今回のフォーラムでは「人材流動化の先にあるもの」と題して、レンタル移籍を経験した方々による事例紹介、大企業のマネジメント層の方々による社外経験が組織にあたえる影響についてのセッション、さらに、特別ゲストをお招きし「人材の流動化」についてのパネルディスカッションを行います。ぜひご参加をお待ちしております。
<イベント概要>
日程:2019年7月3日(水)
時間:15:00〜18:30 終了後、会場で懇親会あり。
場所:Base Q(東京ミッドタウン日比谷 6階)
費用:一般 3000円(税込)
詳細・お申し込みはこちら → https://eventregist.com/e/loandealforum2019
協力:NTT西日本、株式会社ランドスキップ
Storyteller:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
https://loandeal.jp/