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【特集】大企業で働く「R&D人材」が、ベンチャーに行ってつかんだもの 7選

「自分は外でも戦える人材なのだろうか? このまま研究者としての道を極めていくだけで良いのだろうか? どうすれば顧客志向になれるんだろうか?」これらは、大企業で働くR&D部門の人材が、ベンチャーに行くに至ったきっかけです。

ローンディールでは、「レンタル移籍」を通じ、大企業のあらゆる部門で働く人材が、様々なベンチャーで奮闘する姿を見てきました。そんな中、2020年以降、主に研究開発を行うR&D部門の人材がベンチャーへ行くケースが増え、なんと、2020年はレンタル移籍全体の4割近くを占めていました。

そこでR&D部門の人材が、外に出てみたことでどのような気づきがあったのか?  何を得たのか? 今回、7つの事例 + 番外編をご紹介します。R&D関連の部門で働くみなさまにとって、良いヒントとなれば幸いです。

<R&D人材がベンチャーでつかんだもの 7選>
01 
顧客に接するだけが「顧客志向」ではない
02  ナンバーワンの技術がなくてもいい
03  自分は技術者としてどう生きていきたいのか
04  最善の手を最速で撃ち続ける
05  プロジェクト成功のヒケツは「人を巻き込めるか」
06  効率化の本質は“考察力”にあった
07  自発的に取り組んだことで、情熱を取り戻した
番外編 「リーンスタートアップ × ユーザーファースト」を活かして、大企業で挑戦中!


01 顧客に接するだけが「顧客志向」ではない

東芝テックで音声対話技術の研究開発に取り組んでいる綿田さんは、3次元データ解析技術を使って、足のサイズにぴったり合う靴探しを支援する小売店向けサービスの提供を行う株式会社フリックフィットへ移籍しました。
今までは、「お客様と接する機会がなければ、お客様のことはわからない」と思ってきた綿田さん。しかし、「データをもとに仮説を立てて推定する」というやりかたを学んだことで、「実際のお客様の声を聞くことは大事。でも、顧客に接するだけが顧客志向じゃない」と気づくのでした。

02 「ナンバーワンの技術がなくてもいい」

村田製作所の研究開発部門に所属している山田さんは、コミュニケーションロボット「unibo(ユニボ)」を開発するユニロボット株式会社へ移籍し、営業企画を経験しました。そんな中で、ベンチャーでの研究開発と大企業での研究開発の違いを目の当たりにします。それは、ベンチャーは「品質だけを意識しているのではない」ということ。コストや納期、アフターサービスやカスタマイズ力など、トータルの価値提供を強化することで、選ばれるものをつくっているということでした。

03 「自分は技術者としてどう生きていきたいのか?」

パナソニックでエネルギーソリューションの開発に関わってきた福島さん。福島さんが移籍したベンチャーは、「イエバエ」を使って畜産糞尿を約1週間で有機肥料に100%リサイクルする循環システムを構築する株式会社ムスカ。そんな中、とある先輩技術者から「君はスペシャリストとしてやっていくのか? ジェネラリストとしてやっていくのか? “技術者”という言葉は広義だけど、君はどう生きていきたいの?」と尋ねられました。その時は、明確に答えられなかった福島さんですが、ベンチャーでの経験を経て、自分の進むべき道が見えてきたといいます。

04 「最善の手を最速で撃ち続ける」

アサヒクオリティーアンドイノベーションズで、基礎研究の事業化戦略を行っていた鐺さんは、触覚を持つ遠隔操作ロボットの開発で注目を浴びているTelexistence株式会社へ移籍しました。ロボティクス事業の最前線を任された鐺さんですが、「自分が間違った判断をしてしまったらどうしよう」と悩んでいたといいます。そんな時、背中をおしてくれたのが「最善の手を最速で撃ち続ける」というCEOの考え方でした。それからは、「もしミスがあれば、リカバリーの最善策を最速で打ち続ければ良い」という考え方に変わったそうです。

05 プロジェクト成功のヒケツは「人を巻き込めるか」

東芝テックで、複合機を活用したソリューションの企画・開発を行っていた永井さんは、AI技術を活用したサービスの開発・運営を行う株式会社GAUSSへ移籍しました。仮説を立て実際にモノを作りを経験をした永井さんは、「プロジェクトは、担当者レベルで完結するものではなく、みんなを巻き込んでこそ成功するのだと実感した」と話します。巻き込む人数を増やし、スキルを掛け合わせることで、事業の可能性が広がることを知ったのです。

06 効率化の本質は“考察力”にあった

リコーで働く片山さんは、画像エンジン開発本部でソフト開発を行っていました。業務の効率性を高めるために、映像解析AIプラットフォーム「SCORER」を運営する株式会社フューチャースタンダードへ。システムを作る業務を経て見つけたものは、一見、効率化とは真逆にも思える“考察する”ということ。まずは業務の目的を確認し、その目的を達成するためにどう進めていけばいいか?  を徹底的に考える。それは決して遠回りではなく、むしろやるべきことが見えてきて、必要なことに集中できるようになったといいます。

07  自発的に取り組んだことで、情熱を取り戻した

オリンパスの研究室で生物系顕微鏡のシステム構築に従事していた澤田さんは株式会社フューチャースタンダードへ移籍。開発畑をずっと歩んでた澤田さんですが、未経験であるコンサル業務や、展示会でのプロダクト説明などを担うことになります。不安を抱えながらも、「やります!」と手を挙げ、積極的に行動を増やしていった澤田さん。そうした自発的な行動を積み重ねていったことで、「言われたのはここまでだから、これ以上やる必要はない」という事なかれ主義ではなく、「自分の仕事だから責任を持ってやる!」という情熱を取り戻したのでした。

【番外編】「リーンスタートアップ × ユーザーファースト」を活かして、大企業で挑戦中!

ここからは「ベンチャーで身につけたことを、自社に戻ってどのように活かしているのか?」を一部事例をご紹介します。

ベンチャーから戻って約1年。IHIで働く水谷拳さんは、もともとはガスタービンや火力発電設備の研究開発に携わってきました。ベンチャー経験を経て、技術ありきの考え方から、価値観が180度変わったと話します。リーンなやり方で、顧客の声を反映していくというプロセスを活かして、事業創出に取り組んでる様子。

一方、リコーで働く萩田健太郎さんは、ベンチャーから戻ったのち、自社で主催するアクセラレータープログラムにアドバイザーとして参加するなど、社内で積極的な活動をしています。同プログラムでは、ベンチャー側の立場も考慮しながら、ベンチャーが求めるスピード感で活動を進めていたそう。
今後は、ベンチャーで得たユーザーファーストの考え方と、リーンスタートアップのやりかたを活かして、自社で子会社化できるくらいの事業を創っていきたいとのこと。


* * *

いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介したケースはごく一部で、多くの移籍者が各々の気づきを得て、自社に戻っています。ちなみに、2021年3月には「これからのR&D人材」をテーマに、プロフェッショナルをお招きし、オンラインイベントも開催しました。その際のレポートは以下よりご覧いただけます。

最後に。
ローンディールでは、タブロイド紙も発行しており、最新号である5月号では「R&D人材」の活躍を取り上げています。紙面をPDFでも公開しておりますので、ぜひ合わせてご覧ください!

Fin

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【レンタル移籍とは?】

大手企業の社員が、一定期間ベンチャー企業で事業開発などの取り組みを行う、株式会社ローンディールが提供するプログラム。ベンチャー企業の現場で新しい価値を創りだす実践的な経験を通じて、イノベーションを起こせる人材・組織に変革を起こせる次世代リーダーを育成することを目的に行われている。2015年のサービス開始以降、計47社 134名のレンタル移籍が行なわれている(※2021年5月1日実績)。→詳しくはこちら


文:小林こず恵
提供:株式会社ローンディール
http://loandeal.jp

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